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軒が深いから「おいでよHOUSE」‐8‐頭が良くなる家

 虫も這い出す啓蟄。

 暖かい日は暖かく、寒い日は寒く。当たり前と言えば当たり前ですが、丁度そんな時期です。

 北側の道路から見ると、外壁のサイディングが張り終わり、シートが取れるのを待つばかりです。

 2階に上がると道路側にあるのがスタディコーナー。

 手間に見えるガラスブロックはサンワカンパニーのチェコガラスを2種。

 小さな空間ですが、スタディコーナーはお子さんが勉強する際、集中しやすい環境を求めて設計した空間です。

 3、4年程前だったか、中部地方から車で初期相談に見えたご家族がいました。

 「いつも、木々が太陽に向かってまっすぐに伸びていくようなイメージで家づくりをしたいとお伝えしています。この計画において、ご家族の太陽とは何でしょうか?」という質問をしました。

 「子供の頭が良くなる家!」

 奥様から即答でした。あまりにもダイレクトで分かりやすい答えで、思わず笑ってしまったのです。

 そのご家族から、その後の連絡は無かったのですが、これは中々に遣り甲斐のあるテーマだなと思っていたのです。

 スタディコーナーからバルコニーをのぞくと、黒いサイディングが見えています。

 全体像は、もう少し楽しみにとっておきます。

 2階の奥にあるのがLDKで、南に出来る限り開口をとりました。

 左面の壁には造作家具で一面の収納をつくりますが、その上のハイサイドも効いています。

 最後の最後まで悩んでもらったキッチンの取付が終わっていました。

 上部にあるロフトとの関係は、なかなかに面白い構成になっています。

 頭が良くなるかは、本人の努力によるところが大きいでしょう。しかし、子の成長を本気で願う親の気持ち、いや気迫は必ず伝わると思います。

 ということは、「おいでよhouse」は頭がよくなる家?10年先が楽しみなのです。

文責:守谷 昌紀

■■■1月27日 『Best of Houzz 2021』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞

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【News】
■12月28日発売『suumoリフォーム(関西版)』にインタビュー記事掲載
■10月23日『homify』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■9月11日発売『リフォームデザイン2020』「回遊できる家」掲載
■5月16日『homify』(英語)の特集記事に「下町のコンクリートCUBE」掲載
■5月10日『Houzz』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■4月8日『Sumikata』東急リバブル発行に巻頭インタビュー掲載

■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました

メディア掲載情報

◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

「THE LONGING HOUSE 」‐7‐明るく、素直に、前向きに

 今年の節分は2月2日で、124年振りだったそうです。

 節分はその名の通り、冬と春の境目。カレンダーで決めるものではなく、太陽と地球の関係で決まるから今年のようなケースもあるとのこと。

 宇宙のリズムが全てを内包している訳です。

 「THE LONGING HOUSE 」のファサードは東向きで、定例打合せの始まる午後2時にはあまり光が当たりません。

 道路からアプローチし、建物に入っていきます。

 道路側から見ると分からないのですが、この上部は空が見えます。

 屋根がないのです。

 その部分を2階から見下ろすと、このようになっています。

 現在まだ床はありませんが、グレーチングを取り付けると光庭となります。

 光庭を2階廊下からみると、正方形の窓越しに光が漏れているのが分かります。
 

 1階の階段から見上げると、1階廊下にも光を落としているのが伝わるでしょうか。

 バルコニーであり、光庭であり、アプローチの明かり取りであり、1階の廊下の間接照明。1粒で4度美味しいのです。

 これだけ複雑な形にすると、相応のコストも掛かりますが、東面の光環境を考えると、これが最善の案と考え提案しました。
 

 反対に、平屋棟は南を向くのでかなり恵まれた条件です。


 

 メインの開口をL字に取り、奥深くまで光を送る為のハイサイドを加えました。

 

 更に、最も深い位置に光を落とすトップライトも。

 屋根上から見ると、こうなっています。

 

 この屋根の反射光も、2階の個室へ光を届ける役割をはたしています。

 光と風をいかに建物内に届けるかが、全ての計画のスタートになります。

 それを、クライアントのパーソナリティと照らし合わせてブラッシュアップして行くのが私の設計手法です。

 30代前半までは、ファーストプランに辿り着くまでかなり悩み、時間が掛かりました。

 今も簡単にでてこないことはありますが、それは法規面であったり、コスト面であったりすることが多いのです。

 それで、以前は何に悩んでいたんだろうと思うことがあります。

 しっかり敷地を見て、あとは明るく前向きに。素直に考えれば答えは必ず見つかるはずなのに。

 ただ、完成時に4度美味しいと思って貰えるかは、残り2ヵ月程の頑張りに掛かっています。

 宇宙を私がコントロールすることは出来ません。宇宙のリズム、原則を受け入れることから全ては始まるのだと思っているのです。

文責:守谷 昌紀

■■■12月28日発売『suumoリフォーム(関西版)』にインタビュー記事掲載

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■5月10日『Houzz』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■4月8日『Sumikata』東急リバブル発行に巻頭インタビュー掲載
■2月13日 『Best of Houzz』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞

■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました

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軒が深いから「おいでよHOUSE」‐7‐ ? or !

 10月着工から3ヵ月が経過し、いよいよ終盤戦です。

 完成まではあと1ヵ月半くらいでしょうか。

 養生シートの越しですが、冬の晴れは空気の澄んでいる感じが伝わってきます。。 

 1階は3部屋の個室が集まっているので、空間としては小さなものになります。

 廊下に本棚スペースを準備したり、ニッチや鏡を設けたりと、敷地巾を最大限い活用できるよう、色々なことを試みています。

 2階のトイレも壁下地が貼り上り、埋込の手洗いが付いていました。

 現在大人気の「乾太くん」はリンナイが発売したガス衣類乾燥機ですが、右のくぼみに設置されます。

 材工で15万円前後はしますが、評判は上々のよう。当社としての初採用がこの「おいでよhouse」になりました。私も楽しみにしているのです。
 

 しかし見せ場は何と言っても2階のLDKです。

 1階での打合せが終わり、先に2階に上がった奥さんの「わ~!すご~い!」という声が階下にいる私にも聞こえてきました。

 接道が北なので、南と東はかなり思い切って開口を取っています。

 特に東の高い位置にある窓は、最後の最後まで迷い、現場で打合せをしてから採用になったのです。

 一度建築確認申請が下りたなら、本来はそう変更をするものではありません。

 しかし、この仕事だけをしてきた私でも、現場を見てみないと判断し辛いことは多々あります。

 この辺りは、確認申請を一からやり直しにならない限りは、少々のことはお引き受けしているのです。

 この日も監督と大工のAさんを交えて、ああでもない、こうでもないと3時間半ほど打合せしていました。

 Aさんが、いつもより腰を入れてクギを打ち込んでいるなと思ったら、金物取り付け用のより硬い下地を張っている箇所でした。

 道具が進化したとしても、へっぴり腰では良い物は出来上がらないのです。

 建築は大きく、人手もかかるので金額もかなりのものです。それゆえ完成前に実物を見ることは出来ません。

 ショールームやモデルハウスとて、実際の環境に持ってくることは出来ないので、全てはイメージの世界です。 

 その時に、楽しむベースの人と、そうではない人では、私の判断もやはり違ってきます。

 「それなら行ってみましょう!」

  そう言えるかは、良い物にしたいという気持ちと同じくらい、クライアントのパーソナリティが大きく影響するのです。

 外観のフォルムは概ね出来上がりました。

 打合せの度に、クライアントの顔が「?」にならないよう、「!」となるよう全の瞬間にベストを尽くす覚悟なのです。

文責:守谷 昌紀

 

■■■12月28日発売『suumoリフォーム(関西版)』にインタビュー記事掲載

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「ときめく紺色の家〈リノベーション〉」景色というびっくり玉手箱‐9‐

 5月も残すところ2日になりました。

 他府県への移動解禁が先か、梅雨入りが先か気をもんでいましたが何とか間に合ったようです。

 できれば来週末まで待って貰えると嬉しいのですが。

 昨日は雲一つない快晴で、生駒山へ伸びる道も気分爽快です。

 足場がとれ、建物の色や形が一層よく分かるようになりました。

 昼以降が良いのが、西を向く建物の特徴です。

 玄関前の庇は柱を無しとしました。

 これは現場で監督と棟梁から提案があり変更になったもの。

 その技と経験がいかんなく発揮されている所なのです。

 1階奥にある洋室は、隣の庭を借景としています。

 そして、奥さんが最後まで拘ったガラス棚があります。

 何を置くかは、もう少し先まで引っ張りたいと思います。

 2階へLDKを上げ、大空間を確保したのですが、空へ向かって開くハイサイドが特に良いのです。

 南隣の瓦屋根から反射した光が、天井に光を届けているのが伝わるでしょうか。

 ご夫妻、監督と「ここからの眺めはいいねえ」としばし佇んでいる、の構図です。

 景色の良さが、写真ではなかなか伝わらないのが私のジレンマですが。

 東面の窓は高さは通常とし、L字に視界が広がるように配置しました。

 柱があるので、完全なコーナーFIX窓ではありませんが「ほぼコーナーFIX窓」といったところでしょうか。

 遠くに生駒山地、二上山を望み、こちらの景色も素晴らしい。

 ある程度は計算していますが、結局は足場とシートが取れるまで分からない、びっくり玉手箱です。

 今回「も」、お宝がでてきました。

 良いことばかり書きましたが、ひとつやってしまったこともあります。

 キッチン横の階段へ光を落とす開口を、減額作業で無くしました。

 奥さんから「この時点で爆弾発言してもいいですか?」と前置きを貰ってから、「今から階段に窓なんか付けられないですよね」と。

 泣く泣く減額したとはいえ、もしかすると光が足りないかもと思っていたので、「外壁の窓は難しいですが、室内窓なら何とかできると思います」とお伝えしました。

 追加費用を最小とする方法を監督と考え、その金額も納得頂き、実現に至ったのです。

 20代の頃は現場が怖い時もありました。

 「何か言われたらどうしよう」ということですが、40歳手前くらからは面の皮が厚くなったのか、そう思わなってきました。

 何があったとしても、切腹まで求められることはありませんし、問題があったとしたら、良くなる方法を全力で考えるだけと腹をくくったこともあると思います。

 人の仕事に完璧はないとも言えます。しかし、家という驚く程高価なものを、「まあまあ」で納得してくれる人は居ません。

 少なくとも、私のクライアントには居ませんでした。

 ということは不可能とも言える完璧を目指すしかないのです。

 現場打合せでは、いつもトップギアに入れ替えます。

 ここはクライアントと監督と私達で創り上げる劇の舞台。そろそろ最終章に差し掛かってきました。

文責:守谷 昌紀

■■■4月8日『Sumikata』東急リバブル発行
巻頭インタビューが掲載されました

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■5月16日『homify』(英語)の特集記事に「下町のコンクリートCUBE」掲載
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■2月13日 『Best of Houzz』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞
■2月3日『Houzz』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■12月3日 『Houzzユーザーが選んだ人気写真:キッチン編』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が5位に選出
■9月30日発売『suumoリフォーム 実例&会社が見つかる本 関西版』「回遊できる家」掲載
■7月21日BS朝日『大改造!!劇的ビフォーアフター』「住之江の元長屋」再放送
「トレジャーキッズたかどの保育園」
地域情報サイトに掲載

■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました

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松原/脳神経外科「うえだクリニック」‐10‐光という移り気な素材

 「うえだクリニック」のオープンまで、残すところ2週間となりました。


 
 外壁が仕上がり、かなり最終形が見えてきました。

 濃い茶が青い空に映えています。

 クリニックの顔とも言える受付。

 やはり人の心象に最も影響を与えるのは人です。

 来訪者が分かりやすく、またスタッフが働きやすいよう、院長と模索した受付カウンター。

 受付時に荷物を置く下段のカウンターも、綿密に設計したつもりです。

 しかし、何と言ってもこの下地です。大工の手数が見てとれますが、建築は見えないところで差がでるのです。

 6m強ある待合の吹き抜け。

 まだ、移動足場が残っていますが、明るく、開放的な空間を演出してくれるはずです。

 診察室は適切な大きさがあり、あまり大きな空間は求められません。

 しかし、院長はここでかなりの時間を過ごすことになるので、少しでも快適な空間を目指しました。

 まず、東面に小振りなハイサイド設けています。

 加えて、患者さんが座る席の横に、トップライトを設けました。

 建物の中央部はどうしても暗くなるからです。

 屋根が高い位置にあるので、見上げると煙突のような形状になっています。

 明るすぎない間接光を、安定して供給してくれるはずです。

 床の仕上げ工事に、職人が休日出勤してくれていました。

 2階では電気工事も。

 待合の大開口の前には、バルコニーのような空間があります。

 この外側に光の入り過ぎを抑えるルーバーを取り付けます。

 明るく、明るすぎない空間を求めて、建築設計の仕事を四半世紀続けてきました。

 建築に失敗は許されないので、動物が巣穴を中心に狩りをするように、少しずつ、少しずつ、その距離を伸ばしてきました。

 待合の開口部には、その経験を全てつぎ込んでいるのです。

 光という形のない移り気な素材を、どこまでリードできたのか。間もなく答え合わせの時間がやってきます。

文責:守谷 昌紀

■■■『suumoリフォーム 実例&会社が見つかる本 関西版』2019年9月30日発売に「回遊できる家」掲載

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【Events】
■9月15日(日) 9:00~12:00 高槻高校文化祭にて
「頼れる卒業生」による無料相談コーナーに参加

【News】
『大改造!!劇的ビフォーアフター』7月21日(日)BS朝日で「住之江の元長屋」再放送
『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
ギャラクシーブックスから2017年11月27日出版
amazon <民家・住宅論>で1位になりました
『homify』5月7日「碧の家」掲載
『houzz』4月15日の特集記事
「中庭のある無垢な珪藻土の家」が紹介されました
『デンタルクリニックデザイン事典vol.1』4月1日発売に「さかたファミリー歯科クリニック」掲載
「トレジャーキッズたかどの保育園」
地域情報サイトに掲載されました

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