タグ別アーカイブ: 長尾街道

松原/脳神経外科「うえだクリニック」‐13‐前向きであるということ

 年始から、4度延期させて貰っていた「うえだクリニック」の撮影ですが、ようやく晴れてくれました。

 前日までの予報は、晴れと曇りが半々くらいの予報。

 天気図を見ていると、午前中に1回くらいは晴れるチャンスがあるだろうと決行しました。
 
 結論で言えば、本当にチャンスは1度だけで、冷や冷やしたのですが。

 このクリニックはかなり大きいので、私の役割はほぼサポート一辺倒です。

 自分のカメラでも、色々撮りたかったのですが、数えるほどしかカメラを構える機会がありませんでした。

 勿論、折角プロにお願いしているので、職能を存分に発揮して貰うのが一番です。

 今回は、知り合いの建築家に紹介して貰った、冨田英次さんにお願いしました。

 私より少し若いですが、同じような年代で気さくな人です。

 前の道の人通りの多さには絶句していましたが。

 15時くらいまで掛かって、何とか午前の部が終了。

 2階のスタッフエリアがかなり充実しているので、バックヤードは私が撮ります。

 前クリニックはこれらのスペースがなく、転院の大きな動機となったので、重要な部分でもあります。

 院長も来られていたので、無理を言ってトレーニング風景も撮らせて頂きました。

 院長だけでなく、スタッフの中にトレッドミルで走っている人もいるという、何とも健康なクリニックなのです。

 シャワールームがあれば、ちょっと走ろうかという気分になりやすいでしょう。

 当社のトイレにも、実はシャワーを備えているのですが、別室はかなり羨ましいものがあります。

 院長は、富士山をマラソンで走って登ったり、160kmマラソンに出るレベルで完全なるアスリートなのです。

 夕景撮影時は、雨もぱらつきましたがギリギリセーフという感じ。何とか撮影を終了しました。

 極めて前向きな院長のパーソナリティが、この計画を成功へと導いてくれたのは間違いありません。

 コロナウィルスの件も「今回の経済状態の悪化を教材に、不況を知らない子供たちに教育できる機会と前向きに考えています」と言っておられました。

 成功したいる人で、ネガティブな人とはたったの一人も会ったことがありません。

 人は弱いものですから、環境に左右もされるし、嘆きたくもなります。

 しかし、環境の奴隷であるだけでは、折角万物の霊長という看板を外さなければなりません。

 夜家に帰ってから、暇をもて余している子供達に、「何処か行きたいところってある?」と聞くと、娘が「ボーリング!」と即答でした。

 「いやあ、ボウリングは密室だし、ちょっと……」と答えると、「島根へ行ったらいいやん!」と。

 なるほど、その手があったか!と思わず膝を叩きました。よって、来週のどこかにボウリング遠征へ行くことに決定しました。

 ポジティブである事とは、行きたいところがある、見たい景色があるということだと、改めて気付かされたのです。

 大人になっても、仕事を始めても、このくらい前向きあってくれたらと願うのですが。

文責:守谷 昌紀

■■■2月13日 『Best of Houzz』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞

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【News】

■2月3日 『Houzzの特集記事』「阿倍野の長屋」が取り上げられました
■12月3日 『Houzzユーザーが選んだ人気写真:キッチン編』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が5位に選出
■9月30日発売『suumoリフォーム 実例&会社が見つかる本 関西版』「回遊できる家」掲載
■7月21日BS朝日『大改造!!劇的ビフォーアフター』「住之江の元長屋」再放送
■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました
■4月1日発売『デンタルクリニックデザイン事典vol.1』「さかたファミリー歯科クリニック」掲載
「トレジャーキッズたかどの保育園」
地域情報サイトに掲載されました

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◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

松原/脳神経外科「うえだクリニック」‐12‐オープン

 オファーを貰ったのは昨年の8月上旬。
 
 天気は生憎の曇天ですが、1年2ヵ月が経ち、何とかこの日を迎えることができました。

 診療開始は8時半ですが、開院前に列が出来上がっていました。

 いよいよ扉が開きました。

 待って下さる方も多いので、日よけとなるようなものが欲しいと院長からリクエストがありました。

 庇では心もとないので、建物の張り出し部を大きく設けたのです。

 自転車止めは腰掛けられるよう丈夫に作ってありますが、これだけ停まればその役割は果たせそうにありません。

 診療開始と共に、院内も見てきました。

 花も続々と届き、受付前に飾られています。

 昨日ものぞきに来ていたのですが、前日に何とかここまで来ました。

 ただ、院長も、医療機器メーカーの方も準備、調整で予断を許さない状況ではあったのです。

 廊下に面して2つトイレがありますが、これらもデザインしました。

 そういう意味では、端から端まで関わらせて貰うのが建築設計の仕事です。

 診察が始まったなら、次のハードルがMRIの撮影です。

 10時に1人目の撮影があることは聞いていました。

 スタッフの方を、医療機器メーカーのオペレーター、現場担当の人達がサポートしてくれます。

 右手にあるCT室は撮影時以外にX線はでません。

 こちらもサポートの方がひとり待機してくれていました。

 クリニックは本当に多くの職種の人達が関わっているのがよく分かります。

 昨日のぞいた時に、その磁場の強さを見せてくれました。

 MRIから3m程離れているとそこまで磁力はありません。

 しかし、1.5mを切れると、大きめのレンチが水平に近い状態で引っ張られているのが分かります。

 大きな磁力が、なぜ詳細な画像を生むのか理解はできていませんが、体へのダメージを最小にし、検査できる最新の医療機器なのです。

 撮影の様子を見ていましたが、上の画像は奥からの映像です。

 患者さんを不安にさせないように、色々な配慮がなされていました。

 11時頃までクリニックに居ましたが、その前まで車の渋滞が伸びてきます。

 本当に人通りの多い活気のある通りで、人口の減少など微塵も感じられません。

 まだ残工事もあり、息をつく余裕はありませんが「うえだクリニック」は新たな章に入りました。

 勤勉な院長、献身的なスタッフに支えられて、地域に愛されるクリニックとなったのですが、その日常をこの建物が少しでもサポートしてくれたらと願うだけです。

 診察室1、2とも、東側のハイサイドとトップライトから自然光が入ってきます。

 もし訪れることがあれば、少し意識して見て下さい。

文責:守谷 昌紀

■■■『suumoリフォーム 実例&会社が見つかる本 関西版』2019年9月30日発売に「回遊できる家」掲載

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【News】
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『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
ギャラクシーブックスから2017年11月27日出版
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『homify』5月7日「碧の家」掲載
『houzz』4月15日の特集記事
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松原/脳神経外科「うえだクリニック」‐10‐光という移り気な素材

 「うえだクリニック」のオープンまで、残すところ2週間となりました。


 
 外壁が仕上がり、かなり最終形が見えてきました。

 濃い茶が青い空に映えています。

 クリニックの顔とも言える受付。

 やはり人の心象に最も影響を与えるのは人です。

 来訪者が分かりやすく、またスタッフが働きやすいよう、院長と模索した受付カウンター。

 受付時に荷物を置く下段のカウンターも、綿密に設計したつもりです。

 しかし、何と言ってもこの下地です。大工の手数が見てとれますが、建築は見えないところで差がでるのです。

 6m強ある待合の吹き抜け。

 まだ、移動足場が残っていますが、明るく、開放的な空間を演出してくれるはずです。

 診察室は適切な大きさがあり、あまり大きな空間は求められません。

 しかし、院長はここでかなりの時間を過ごすことになるので、少しでも快適な空間を目指しました。

 まず、東面に小振りなハイサイド設けています。

 加えて、患者さんが座る席の横に、トップライトを設けました。

 建物の中央部はどうしても暗くなるからです。

 屋根が高い位置にあるので、見上げると煙突のような形状になっています。

 明るすぎない間接光を、安定して供給してくれるはずです。

 床の仕上げ工事に、職人が休日出勤してくれていました。

 2階では電気工事も。

 待合の大開口の前には、バルコニーのような空間があります。

 この外側に光の入り過ぎを抑えるルーバーを取り付けます。

 明るく、明るすぎない空間を求めて、建築設計の仕事を四半世紀続けてきました。

 建築に失敗は許されないので、動物が巣穴を中心に狩りをするように、少しずつ、少しずつ、その距離を伸ばしてきました。

 待合の開口部には、その経験を全てつぎ込んでいるのです。

 光という形のない移り気な素材を、どこまでリードできたのか。間もなく答え合わせの時間がやってきます。

文責:守谷 昌紀

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松原/脳神経外科「うえだクリニック」‐9‐「働くおじさん」建築現場Ver.

 先週の土日は、医療機器の搬入でした。

 3月に工事がスタートしてから8月24日(土)、25日(日)は、常に頭の中にありました。

 CT、MRIを搬入する為には、それを受け入れる準備が終わっていなければならず、それを消費税の駆け込み需要の中で実現しなければならず……

 条件のひとつは「足場がとれている」ことでした。

 塗装はまだですが、一旦足場を撤去。そんな理由ではありますが、初めて全体像を現してくれました。

 設計者の私が言うのも何ですが、手応えは十分です。

 そうこうしているうちに、CTが到着。

 てきぱきと準備が進み。

 残してある開口部を通過。

 一番奥の部屋に納まりました。

 この日に何とか間に合わせるため、付きっきりで現場に張り付いてくれた監督、大工オールスターズには心から感謝しています。

 翌25日(日)はMRIの搬入日。

 このドーナツ状の部分で5~6tonあるそうで、大きなクレーン車が待機していました。

 精密機械であり、かなり高額な医療機器でもあり、現場の緊張感が伝わってきます。

 トラックから降ろした後は全て手作業。

 特殊なレールの上にベアリングのようなものが敷きつめられました。

 その上に、ソロリとMRIのドーナツ部が乗りました。

 道路の通行許可を警察で取っての作業ですが、出来る限る速やかに終わりたいものです。

 待合を通過。

 MRI室に入ってきました。

 レールからジャッキで下し、更にベアリングを敷きつめます。

 90度回転して、所定の位置に収まったのです。

 配管の接続などは夕方まで掛かるはずですが、私はここで会社に戻りました。

 「現場日記」は、建築の出来上がっていく過程と、現場の熱気や、面白さを伝えられたら、という気持ちで始めました。

 小学校の時に見たテレビ「働くおじさん」の建築現場Ver.です。

 「♪ 働くおじさん、働くおじさん、こ~んにちは~ ♪」

 仕事を終え、充実感を漂わせて去っていくちょっと強面のクレーンオペレーター。

 責任者の腕章を巻き、汗を浮かべながらてきぱきと動き回る輸送、搬入のリーダーは誠実タイプ。

 医療機器のメーカーの搬入責任者は、工事がスタートした時からの付き合いで、この道一筋といった職人タイプ。

 無事仕事が終わった時の、ほっとした表情は誰しも美しいものです。

 ただ、それは責任の重さに比例します。

 若い時は誰もが下っ端。

 そんな顔を見て、自ら責任を取りに行く位の気概があれば、仕事人生はとても楽しいものになるはずです。

 やまはひとつ超えましたが、後ろには連山が続いています。それが仕事というものなのです。

文責:守谷 昌紀

■■■『大改造!!劇的ビフォーアフター』7月721(日)BS朝日で「住之江の元長屋」再放送
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大阪ガス『住まう』11月22日発行に「中庭のある無垢な珪藻土の家」掲載
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松原/脳神経外科「うえだクリニック」‐8‐やま

大阪では、台風10号の影響は最小限で済みました。

外観は再びメッシュシートに覆われていますが、向かって左下、待合には大きな開口部が開いています。

MRIの搬入口として開口してあるのです。

MRI室側からみると、一直線に外が見えるのが分かりるでしょうか。

webサイトにMRIの説明がでていました。

 大きな磁石による“ 強い磁場”とFMラジオに使われているような“電波”を使って画像を得ます。そのため、MRIは放射線による被ばくがなく、小児や健常な方も安心して検査を受けることができます。 

画像の自由度も高く、非常に高度な、高価な医療機器です。

重さは7ton程あり、また電磁波をシャッタアウトするシールドの設置も必要で、建築との取り合い部も多岐にわたります。

工事が始まる前から、医療機器会社の担当者には定例打合せに参加して貰いました。

内装の色は院長と私で決めて良いとのことだったので、「緑の検査室」としたのですが、その搬入が今週末に迫ってきました。

現場の方は、壁面の施工が進んでいます。

目地処理をし。

クロスを貼っていきます。

この糊付け機が現場にやってきたら工事も終盤です。

朝来た時にはむき出しだった待合の吹抜けも、帰りにはクロスを貼り始めていました。

「やま」はその言葉とおり、最も困難な場面を指す言葉でもあります。

この「やま」を越えると、後は下り坂かと言えばそうではありませんが、一つ目の大きなやまがやってきました。

MRI搬入の当日、私ができることは何もありませんが、見に行ってこようと思います。

いくつやまが来たとしても、ひとつずつ越えて行くだけです。

飛行機もロケットも持っていないので、歩いて越えていくしかないのです。

文責:守谷 昌紀

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松原/脳神経外科「うえだクリニック」‐4‐現場は全てを知っている

 関西地方が梅雨入りする前日、「うえだクリニック」の建方工事がスタートしました。


 
 基礎工事、配管工事までは非常に順調に進んでいました。

 消費税の駆け込み需要もあってか、プレカットにかなりの時間を要してしまいました。

 しかし泣き言を言っている時間などありません。

 早速、建方1日目の現場へ行ってきました。

 きわめて人通りの多い長尾街道ですが、道路の使用許可もギリギリの建方工事となりました。

 安全を預かる警察としては、勿論「出来るだけ出っ張らないよう」、工事をする側は「仮歩道をつくるので、ここまでの許可を……」といった交渉になるのです。

 建築とは、人手と時間が兎に角かかるものなのです。

 1階の柱を建て終わったところで、昼休憩となったようです。

 建築現場では垂直のことを「たち」と言います。

 たちのでていない柱はまるで、枝葉の無い林のよう。

 それが微調整され、梁と繋がれた時にピリッとした景色に変わります。

 1階エントランス部は、条例によるバリアフリー対策と、重量のある医療機器を搬入するため、段差はほぼありません。

 うず高く積まれているのは羽子板ボルト。

 その数は、現代の木造建築がいかに頑丈かを視覚で証明してくれます。

 この日は、2階床の合板まで張る予定だと、顔見知りの大工が教えてくれました。

 私はここでタイムアップ。

 翌々日の梅雨入り2日目、朝一番に再訪しました。

 躯体は2階まで組みあがり、ピタリとたちもでています。

 この段階でも、この建物のポテンシャルを感じさせてくれるのです。

 先程の、段差ゼロのエントランスからクリニック内に入っていきます。

 正面に受付を見ながら、左手が待合。

 2層吹抜けの空間は、優しい光が差し込むよう設計しました。

 受付横にメイン通路があり、右に診察室、左に検査室が並んでいます。

 丁度コンクリートの道が、高度な医療機器が通っていく花道です。

 奥に掛かっていたハシゴで2階に上がります。

 2階は全てバックヤードですが、とても面白い空間構成になっているのです。

 吹抜け部にはキャットウォークのような空間があります。

 その両サイドが外部となっており、間接光を高い位置から取り込みます。

 患者の人は上がれませんが、奥まっているところがポイントで、その部分は院長が年に1、2度掃除してくれることになっているのです。

 全ての柱に「うえだクリニック」と刻印があります。

 同じく梁にも。

 枝葉の無い林が、柱、梁と役割を与えられたとき、材木から建築となって行きます。

 役割がそれぞれの価値を持たせるのは、人であれ、材であれ全く同じです。
 
 自由で居たいと反発する人を見ることがありますが、自由と怠惰をとり違えているのではと言うと、言いすぎでしょうか。

 仕事が好きそうな、若いオペレーター君。

 まだ20代だそうで、ここで昼ごはんを食べていました。

 穏やかな、熟練の大工。

 ブルーシートを日よけにしての昼食です。

 仕事が好きで、現場が好きな人と会うと、それだけで気分が良いのです。

 独立してすぐは、人など雇えないので、クライアントからの電話も、営業を断るのも、現場からの電話も、全てひとりで受けていました。

 休憩時間などと言うものは、私にはありませんでした。

 今も人手不足で、それに近い状態に逆戻りしていますが、それでも何とかやっていけます。

 楽しく、充実した人生を歩みたければ、仕事を好きになるしかないのです。特に男にとっては。

 友達が居ない私が孤独を感じないのは、家族が居ることと、仕事好きの人間と、時々会うことが出来るからだと思います。

 正直に「時々」と書いたのですが、できればそんな人とだけ、仕事がしたいものです。

 一歩一歩前に進んでいっている実感はあります。自分の仕事人生の中で、目標にどれだけ近づくことができるのか。

 現場だけが全てを知っているはずなのです。

文責:守谷 昌紀

■■■『大改造!!劇的ビフォーアフター』4月7日(日)BS朝日で「住之江の元長屋」再放送
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松原/脳神経外科「うえだクリニック」‐3‐必ず勝つ

 前回まで、医院の場所を南大阪と書いてきました。

 移転をまだ公式にアナウンスする前だったからですが、晴れてその環境を説明できます。

 近鉄、河内松原駅から北に商店街が伸びています。

 この商店街は中高野街道で、守口と高野街道を結ぶ南北の主要街道でした。

 駅から40m程北上すると、東西を走る長尾街道にぶつかります。

 交差点には「阿保(あお)茶屋跡」の石碑があり、当時からの賑わいを知ることができるのです。

 この長尾街道を西に200m程進むと国道309号線(内環状線)にぶつかります。

 この交差点が「松原警察西」。

 桜の御紋が輝いていますが、近くに警察があるのは、治安面においては何とも心強いもの。

 その「松原警察西」と「阿保茶屋跡」の中央あたりに、現「うえだクリニック」はあります。

 この長尾街道は、現在もよく整備されており、非常に人通りの多い生活道路なのです。

 うえだクリニックの一番の特徴は、MRIやCTなどの最新設備を使った、脳神経外科の専門性です。

 この日も多くの自転車とまっており、時折のぞく待合室は一杯でした。

 より高度な診療機器を導入し、より快適な待合を備えたクリニックにしたい、という院長の動機がこの計画の推進力になりました。

 新敷地は、現クリニックから約60m東に行ったところ。

 院長は、以前近くの総合病院に勤めていましたが、この活気ある長尾街道がともて気に入っていたと言います。

 私も何度か足を運びましたが「ここはベトナム?」と言いたくなるほどなのです。

 警察の前から、クリニックの前まで渋滞が連なることもしばしば。

 広い歩道は、ひっきりなりに人が行き交います。

 現場は基礎が立ちあがり、いよいよ建方を待つ状態になりました。

 その前に、埋設配管を埋める作業が続いていました。

 現在も繁盛医院ですから、新しいクリニックを設計する私としてはプレッシャーも感じます。

 クリニックの専門性、人柄、活気ある環境、そして最新の医療設備。更にクリニックは大きく、新しくなります。

 これで発展がなければ間違いなく私の責任です。

 長らくこの仕事をしてきましたが、「必ず勝つ」と決めています。

 建築はかなりの金額が掛かりますし、やり直しはほぼ出来ません。よって、負けることなど許されるはずもありません。

 その時に、一番大切なことはやはり「人」だという結論に至りました。

 建築家・高松伸さんも「建築家にとって最も大切なものはクライアント」と言われていました。

 私に友達は居ませんが、クライアントには大変恵まれているのです。

文責:守谷 昌紀

■■■『大改造!!劇的ビフォーアフター』4月7日(日)BS朝日で「住之江の元長屋」再放送
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