本日、「碧の家」をwebサイトにUPしました。
大阪の下町にある四軒長屋の一住戸を、フルリノベーションした計画です。
サブタイトルは「 100年を紡ぐ物語」としました。
これは、現場日記の第2回目のタイトルでもあります。
昭和10年代に建てられたこの長屋に、ご家族は越してこられました。
お父様は残念ながら早世されてしまい、皆さんでこの家を守ってこられたのです。
解体の途中、床下からでてきた火鉢は、掘り炬燵の底にあったものだろうということでした。
昭和初期の暮らしが、目の前に活き活きと蘇ってきます。
100年前、人は家の中でも火で暖を取っていたのです。
リノベーションブームと言って良いほど、この言葉を頻繁に聞くようになりました。
「価値を高める」という意味ですが、古いものの価値が低いなどということは全くありません。
人は思い出に中にも、過去にも生きます。
創り手は、そこをよく理解していないと、ただ封をするような仕事をしてしまうのだと思うのです。
特定の何かを非難したい訳ではありませんが、リノベーションは新築を目指すものではありません。
オーダーが古建築の改修ならその仕事を全うしますし、新たな価値を求めたいと言われればそれを目指します。
私たちの仕事は、クラアイアントの幸せを実現する為にあるのですから。
その要望にどこまで応えられたのかは、分かりませんが、真っすぐに取り組んで来たつもりではあります。
1階の階段は反対向きに付け替えました。
奥にある、お母様の寝室に少しでも光を届けるためです。
階段上にあるトップライトが、その価値を高めてくれます。
奥にあった外部通路を、通り庭と解釈しました。
横にあるトイレは、思い切った色使いになっています。
トランプと不思議の国のアリスの物語がここに織り込まれているのです。
通り庭をはさんである洗面・脱衣室。
トップライトの光が落ちてきますが、お母様の寝室にも漏れ落ちるようになっています。
長屋の北側を、どうすれば心地よい空間にできるか。
「住之江の長屋」、「阿倍野の長屋」と、そして「碧の家」と、様々なトライをしてきました。
2階寝室の写真を、この計画のメインカットとしました。
ロフトに続くこの部屋は客間。
親族が見えた時に泊まって頂く空間です。
そこには、100年に渡ってこの家を支えてきた梁があります。
色を塗るのではなく、汚れを丁寧に落として貰いました。
これは監督からの提案でした。
「折角なら、色を付けるのでなく垢を落としてあげましょう」という考えです。
色を付けるより余程手間のかかる仕事で、物に対する敬意がなければ出てこない考えです。
一も二もなく賛成しました。
「作品」という言葉は、良い意味でも、悪い意味でも使われます。
創り手のエゴを含んだ言葉として使われる場合が校後者でしょうか。
「商品に魂を込めれば作品となる」
私はこの言葉を支持したいし、信じています。
文責:守谷 昌紀
■■■毎日放送『住人十色』4月14日5:00pm~5:30pm
「回遊できる家」放映
■■■『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
ギャラクシーブックスから11月27日出版
amazon <民家・住宅論>で1位になりました
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【Events】
■4月1日(日)「トレジャーキッズたかどの保育園」開園
【News】
■『住まいの設計05・06月号』3月20日発売に「回遊できる家」掲載
■『houzz』5月28日の特集記事に「あちこちでお茶できる家」掲載
■『関西の建築家とつくる家 Vol.2』2月1日発売に「阿倍野の長家」掲載