タグ別アーカイブ: 現場日記

軒が深いから「おいでよHOUSE」‐4‐ヨソはヨソ。ウチはウチ。

 現在、同じような工程で現場が4件進行しています。

 一番初めに建て方を迎えたのが、この「おいでよhouse」。

 さらに同じような工程で、隣地の工事も始まっています。こちらは当社とは無関係ですが。

 1日目の昼休みでこの状態でした。

 2日目の昼で、ここまで進みました。

 最近は工場でのプレカットが主流なので、柱一本一本にこんなスタンプが押されてくるのです。

 おいでよhous

 あと「e」だけなので何とか入れて貰えると……

 8文字と決まっているのでしょう。仕方ありません。

 現場の主役はやはり大工。

 棟梁は花形です。

 梁の上を身軽に移動し、仮筋交いを固定して行きます。

 市街地ではどうしても1階が暗くなります。

 よって主空間は2階に上げています。

 更にその上にロフトもありますが、このあたりは追々。

 右隣は3階建てで、こちらは2階建て+ロフトです。

 ヨソはヨソ。ウチはウチ。 

 大阪の家庭なら、どこからでも聞こえてくる会話です。

 全くその通りですが、隣地のサイディグが前に積んであったのですが、同じ黒のようで……

 槇原敬之は「どうしてこうも比べたがる?」と詞にしました。

 間違いなく家も花も世界にひとつです。

 しかし、生物は「負けたくない」という闘争心を本能として持っています。

 なら上手使ってしまえばよい、そう考えています。

 商売の神様、松下幸之助は「嫉妬は狐色に程よく妬く」と言いました。

 何事も過ぎなければ良いと教えてくれるのです。

文責:守谷 昌紀

■■■9月11日発売『リフォームデザイン2020』「回遊できる家」掲載
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【News】
■10月23日『homify』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■5月16日『homify』(英語)の特集記事に「下町のコンクリートCUBE」掲載
■5月10日『Houzz』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■4月8日『Sumikata』東急リバブル発行に巻頭インタビュー掲載
■2月13日 『Best of Houzz』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞

■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました

メディア掲載情報

◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

「THE LONGING HOUSE 」‐4‐PC板素敵

 建物を建てるためには最低4m幅の道路に、2m以上接している必要と法が定めています。

 これを接道義務と言います。

 「The Longing House」の接道は東側。

 Tの足先が、僅かに接しているという感じです。

 北を見ると、この敷地が住宅地に囲まれていることが良く分かります。

 Tの頭側。西側隣地が一段高くなっています。

 ここにどういった対処をするかは、計画開始時からの課題でした。

 どういった提案をし、どういった苦労があったか。

 そして柱を建てる所ことになった経緯は、前々回に詳しく書きました。

 外構計画の目玉。

 ようやく柱の間にPC板が設置されました。

PC=プレキャスト・コンクリート

 読んで字のごとく、工場で生産された鉄筋コンクリートです。

 工場で作るため条件をコントロールしやすく、安定した品質が確保できるとされています。

 言わば、工場生まれの打ち放しコンクリート板。

 コンクリート素地の肌合いは滑らかで、何とも素敵なのです。

 今回のPC板は1枚が約600kg。下部には少し隙間を開けています。

 理由はまた書くのですが、現在は仮置きの状態で24cmあります。

 最終的には、これをもう少し狭めるのです。

 監督から「大きな木槌で、だるま落としみたいに抜きますか!」という冗談も出ました。

 実際には3枚乗っているので1.8tonあるのでそれは無理。

 じわじわと下げて行き、どこかで止めなければなりません。

 その工法を聞いて、なるほどと思いました。

 「初めての事ばかりなので、さぐりさぐりやってます」と言っていたのですが、そのストーリーがこの塀を、全く違う次元へと導いてくれるのです。

 これは前回の帰り道。阪神高速池田線から見える、大阪湾に沈む夕日です。

 昨日から環状線南行き10日間通行止めで、下道で会社まで戻りました。

 普段よりも混んでいたのだと思いますが、普段なら30分の道程が2時間弱掛かりました。

 当たり前にあるものが無くなった時、初めてその価値が分かるものです。

 心しておかなければと思ったのです。

文責:守谷 昌紀

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建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

住み継ぐ「コンクリート打放し H型プランの平屋」‐4‐ソリッド感と透明感

 先週、基礎の打設が終わった「コンクリート打放し H型プランの平屋」。

 週末、定例打合せがありました。

 Hの横線が二つの棟を繋ぐので、そこがエントランスになります。

 エントランス奥には裏庭があり、この空間もなかなか魅力的な空間です。

 南には、旧家としての和の庭が残っています。

 LDKの開口は、これらに面して開かれています。

 灯篭があったり、カエル石があったり。

 ミニマルな建物とこれらの外部を、どう結び付けるかも腕の見せどころです。

 CGのアニメーションをUPしてみます。

 打ち放しの建築は、コンクリートのソリッド感、ガラスの透明感をどう連続させるかが大切です。

 コンクリートの強度を活かし、かつ閉鎖的にならないよう腐心するのです。

 南からは光を取り込むために、ガラスの透明感が主役になります。

 俯瞰で見ると、そのリズムが分かりよいでしょうか。

 エントランスからの景色。

 90度右に曲がるとLDK。


西にキッチン。

 東にはテレビを含めた飾り棚があります。

 子供部屋も、出来る限りコンクリート打ち放しの良さを引き出したいと考えました。

 キッチン裏には奥さんの家事室も。

 極めてシンプルに、2つの棟を中央の動線でつないだコンクリート打放しの平屋。

 打ち放しはやり直しが効かないだけに慎重に現場は進んでいます。

 連続するソリッド感と透明感。

 これこそが打ち放しの魅力だと思うのです。

文責:守谷 昌紀

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軒が深いから「おいでよhouse」‐3‐コンクリートは鮮度が命

 サンマ1匹が100円台まで下がったと新聞に出ていました。

 そんなことが記事になる時代になったのですが、太古から秋は秋晴れと決まっています。

 今週は晴れ空が続きました。

 水曜日の9時頃現場へ行くと、すでにコンクリートの打設が始まっていました。

 「おいでよhouse」はかなり縦長の敷地です。

 現場内に4人、現場前に3人くらいのチームで打設して行きます。

 コンクリートを荒らしたくないので、打設は一番奥からすることが大半です。

 ポンプ車がアームを目一杯持ち上げ、奥へホースを送り込みます。

 ホースの先端をさばいているのは一番若い職人。

https://youtu.be/-A1tDNxFs6E

 これがなかなかの重労働です。

 もうひとりは満遍なくコンクリートが広がるよう、バイブレーターを当てて行きます。

 振動でコンクリートが広がる様子が、動画なら伝わるでしょうか。

 コンクリートは生ものにつき、鮮度が命です。

 打設した後を追いかけるように、左官職人がコテで押さえて行きます。

 更に気温によって1~5時間後、水が引いた後に再度コテで仕上げるのです。

https://youtu.be/YO9mXQ7jcic

 生ものが半日後には人の手では変えることができなくなり、翌日には完全に不可能になります。

 少し事情があって停滞していた現場ですが、順調に進みだしました。

 お隣の敷地も、同じようなタイミグで工事が進んでいますが、一番前の形はなかなかに特徴的です。

 2週間後あたりには建方まで進みそうで、形を見るのを楽しみにしているのです。

文責:守谷 昌紀

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「The Longing House 」‐2‐「もうダメだ」が仕事のはじまり

この計画の敷地は形状にかなり特徴があります。

旗竿敷地は経験がありますが、T字型は私も初めてです。

平面的な形状を活かすのは勿論ですが、現実は2次元ではありません。

T字の頭の部分に面する隣地が一段高くなっているのです。

計画がスタートした際、クライアントはこの隣地に対しての安全対策も合せて提案して欲しいとのことでした。

建物の設計も簡単ではありませんでしたが、これらは建築から少し下がって、土木の世界の話とも言えます。

そこは、普段山奥の湖へ通っている経験が活きました。

山道で土砂崩れがあった時、このような方法で土留め壁を構成し、復旧工事を進めて行きます。

これなら応用できるかもと考えたのです。

当初は鉄筋コンクリートの擁壁を計画していました。

さあ基礎工事となった際に「掘り方のことを考えた時、隣地が崩れてこないか心配で……」と監督から相談があったのです。

正直、参ったなと思いましたが、京セラ名誉会長の稲盛さんからこう教えて貰いました。

 もうダメだというときが仕事のはじまり

それならと、この方法を提案したのです。

監督も「それなら何とかなるかも」と再度工法を練り直し、ようやくここまでこぎつけました。

ドリルで2mの穴を掘りますが、擁壁の地中部分があたりなかなかうまく行きません。

できるだけ擁壁に近い場所を、文字通り手探りで探します。

何とか2mまで到達すると、今度はセメントミルクを注入しながら攪拌です。

ドリルを上に移動させながら、全体にセメントミルクを練り込んでいくのです。

そして今度はH鋼を吊り下げ、セメントミルクで満たされた穴に差し込みます。

この鋼材を手仕事で微調整。

そしてH鋼を設置。

セメントが固まればもう動かすことは出来ないので、今しか調整は出来ません。

監督が「んっ!ちょっとずれてる?」。

慌てて押したり、クサビを打ち込んだり。

もうコントみたいですが、何とかなったようです。

何とかならなかったとしても、何とかするしかないのですが。

建築においての精度は、通常0.5mmくらいでしょうか。

しかし土木となるとそこまでは求められません。この現場を見れば一目瞭然です。

図面ではどう描けても無理なものは無理なのです。

どこは厳しく、どこは許容するか。

現場に足を運び、対話をしなければその判断はずれてしまい、裸の王様になってしまうのです。

文責:守谷 昌紀

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「The Longing House 」‐1‐プロローグ

 曇りの天気予報をくつがえしての快晴。

 雨降って地固まるという常套句もあるが、やはり地鎮祭は晴れるに越したことがない。

 神主の狩衣(かりぎぬ)も、晴れ空のもと鮮やかだ。

 クライアント家族が一同に会し、神聖な時間を過ごすことで、工事の始まりを実感するのである。

 建築会社の鍬入れが終わり、式典は無事終了。

 地鎮祭の時は、模型も一緒にお祓いして貰うようにしている。

 左にあるのが1/100で右にあるのが1/50の模型だ。

 1/100の模型を見ると分かりやすいが、この計画の特徴は何と言ってもT字型の敷地である。

 接道は東で、T字の足の部分が接している。

 反時計まわりに90度回すと、T字の頭の部分が見えてくる。

 この頭に当たる部分には、主に平屋部を配置した。

 南東角からみるとその形状が分かりやすいだろうか。

 LDKに光を取り込むよう、南には大開口を備えた。

 連続するウッドデッキは、金額調整の中で最後の最後まで課題となったが、何とか実現できることになった。

 そのLDKと直交する形で、個室が集まる2階棟が東に続く。

 2階棟を東へ進むとT字の足に戻り、東端のエントランスとなる。

 ファサードは、この建物のボリュームを想像させない、品あるものにしたかった。

 コンセプトは「家族でワイワイ、ちょうどいい家」だ。

 子育て真っただ中の5人の家族が楽しく暮らせるよう、家事動線は奥様と練りに練った。

 また、将来は両親とも楽しく暮らせよう、ちょうどいい距離感を保てる部屋も備えている。

 完成予定は来年3月で、計画がスタートしてちょうど2年。

 コロナ下の環境もあったが、2年くらいがちょうどだったのかなとも感じる。

 タイトルの「The Longing House 」には、「憧れの家」と言う意味が込められている。

 その意味は、追って紹介していきたいと思う。

文責:守谷 昌紀

■■■4月8日『Sumikata』東急リバブル発行
巻頭インタビューが掲載されました

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■2月3日『Houzz』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■12月3日 『Houzzユーザーが選んだ人気写真:キッチン編』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が5位に選出
■9月30日発売『suumoリフォーム 実例&会社が見つかる本 関西版』「回遊できる家」掲載
「トレジャーキッズたかどの保育園」
地域情報サイトに掲載

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「ときめく紺色の家〈リノベーション〉」‐12‐ときめきました?

 6月末に竣工した「ときめく紺色の家」。

 先週2ヵ月点検に行ってきました。

 クラアントから「ようやく見て貰えるようになりました」というメールもあり、楽しみにしていたのです。

 疑っていた訳ではありませんが、その言葉に偽りなしでした。

 渋滞で少し遅れて到着すると、監督はすっかりくつろいでいます。

 最後に見た現場の最終形から、完全なる「家」に変化していました。

 緑や小物が入ってくると、空間はクライアントのカラーに染まっていきます。

 料理で言うと、最後の味付けのような感じでしょうか。

 奥さんはすっきり好きで、キッチンまわりは気持ち良いくらい片付いています。

 オーディオはご主人こだわりのレコードプレーヤーも。

 収納の中はレコードがびっしりでした。

 完成形を見ていなかったのがパウダースペースです。

 奥さんと娘さんが2人並んでお化粧できるようになっています。

 モザイクタイルと鏡を壁に埋込みました。

 遣り替えが出来ない分、緊張感が無くはありませんが、その決断分美しいのです。

 とても気に入っていると言って頂きましたが、むしろその決断をして下さったことに、私が感謝するのです。

 奥さんは。夜照明を落としてヨガをするそうです。

 その時に、この小屋組みや天井がとても美しいそうです。

 面倒で手間の掛かるところに美は宿ります。必ず狭き門を選ばなければならないのです。

 リビングの先には、ご主人愛用のロードバイクが置いてありました。

 計画時にはエントランスに置くことにしていました。

 しかし、この計画とご自身の独立が重なり、なかなか練習ができずで、試合などは一旦休止中だそうです。

 それでも、「また乗りたいと思って頑張れるからここに置いてあるんです」と。

 私のクライアントは、なぜここまでストイックな人が多いのか分かりませんが。

 未来の暮らしに夢を持ち、ご家族の幸せを心から願う方々と仕事するのは、本当に楽しいものです。

 勿論その過程においては、大変なことも無いことはありませんが、全く無いとそれは辻褄が合わない気がします。

 金額だったり、納期だったり、コントロールしきれないように見えるものも、何とかすると決めれば何とかなるものです。

 この計画のタイトルは「ときめく紺色の家」だったので、「ときめいて貰っていますか?」と質問するつもりでした。

 聞き忘れてしまったので、次回撮影に訪問した時に聞いてみます。

 「ときめかない」とは言い難いとは思いますが、答えにはさほど意味がありません。

 ここを訪れると私がときめくのですから。

文責:守谷 昌紀

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軒が深いから「おいでよhouse」‐2‐トライCG

前回、軒が深いから「おいでよhouse」というコンセプトが決まるのは、あっという間だったと書きました。

そこからは、クライアントとこのお家はどうあって欲しいか、どうあるべきかを考えて行きます。

その途中にあるのがスタディ模型です。

建築は通常で言うなら人生で最も高い買い物です。

よって、失敗したからやりなおし、という訳にはいきません。

それで、設計図面を仕上げるまでの検討が大切なのですが、私としては描いたり、模型を切ったり剥がしたりしながら、「手」で検討するのが一番良いと思っています。

しかし、2000年頃からCAD化が進み、現在はCG全盛時代となりました。

なんでも挑戦です。

まだまだ造り込みは甘いですがトライしています。

エントランスから1階廊下。

階段を登りきった先にある、スタディコーナー。

そして壁面収納を備えたLDK。

ロフトとの繋がり感も分かりやすいかもしれません。

見下ろしてみます。

「ウォークスルーは見れないですか?」という要望も増えてきました。

3分くらいでまとめてみました。

ニューヨークに住む友人が「文法が苦手だと思うなら、そこから勉強すればいいよ。そうしたら、英語がめきめき上達するから」と言われました。

不得手だと思っているところこそが、自分の伸びしろだという意味です。

まだまだプロクオリティとは言えませんが、リモート打合せが増えた今だからこそ、積極的にトライできるとも言えるのです。

全てはクライアントの幸せの為に。

ビールの宣伝ではありませんが、そこをどれだけ純粋に突き詰めて行けるか以外に違いを出すことは難しいと思っています。

文責:守谷 昌紀

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軒が深いから「おいでよhouse」‐1‐プロローグ

1997年、初めて住宅誌に作品写真を送った時のこと。

編集者に「コンセプトが大事だから」と言われた。暗にコンセプトが弱い、明確でないと言われたことになる。

しかし今考えると、半分は正しく、半分間違っていると思っている。

建物は草木ではないので勝手に生えてくることはない。どんな建物にも明確なコンセプトが確実に存在する。

例えば、「利益を限界まで追求する」というのも明確なコンセプトである。

敷地は大阪市内の住宅地。

間口5m程の敷地に、駐車場とエントランス周りの空間を配置した。

俯瞰するほうがその形状が分かりやすい。

そのシビアな配置の中で、1m程もある軒の張り出を見て貰えるだろうか。

1階は3つの個室。 

北側接道の為、2階の南側にLDKを配置している。

そして、LDKに面して9畳程あるロフトを設けた。

ロフト下には天井高を抑えられる、浴室などをまとめてある。

北側道路に面したスタディコーナーは、こじんまりとした空間だが、落ち着いて勉強ができるはずだ。(多分)

まだお子さんが小さいので、ロフトは遊び場としてかなり期待している。

高い天井は面積以上の解放感を与えてくれるはずだ。

 今は家の中がゴチャゴチャしていて、なかなかお友達にも来て貰えない。

 新しいお家が出来たら、今はお呼ばれしているお友達を是非招きたいんです。

 そんなお友達を家の前で、傘を差したまま待たせるのは嫌なんです。

奥さんからこの話を聞いた時、この計画の幹となるコンセプトにするべきだと思った。

プロジェクト名はその場で『おいでよhouse』に決めたのだ。

コンセプトとは出来上がった建物を説明するためにあるものではない。

生物にとってのDNAのようなもので、この建物が存在する理由と、その設計の根幹となるものである。

自身が暮らした兵庫県中部に位置する街では、玄関に軒や庇が無い住宅など無かったのだと思う。

市街地で暮らすようになり、そのことに気づき、言葉にできるところが凄いと思ったのだ。

このコンセプトは間違いなく正しい。ならば良い建築が出来上がることはは確定している。

しかし現実はいつものことながらで、厳しい金額調整、そしてハードネゴの下ようやく着工となった。

「おいでよhouse」

何度聞いてもよい響きだ。

悦に入っているのが私だけにならないよう、気を引きしめて竣工を目指そうと思う。

文責:守谷 昌紀

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「ときめく紺色の家〈リノベーション〉」‐11‐思い立ったが吉日だった

 2019年の年始にオファーを貰ったこちらの計画。

 6月末に、施主検査という区切りを迎えました。

 この1年半にお会いした回数は30回。

 半分の15回が、現場での打合せでした。

 リノベーションにおいては特に、現場打合せが仕上がりの差を生むのです。

 エントランス前の階段とスロープは、クライアントの生活動線、これまでの経験、そして美しさとコストを含めて何度も検討しました。

 「とても良い感じ!」と言って貰ったのです。

 この計画の目的であり、テーマは以下の通り。

 ときめく 笑顔でいられる 家にいる時間が大事 ファンキー

 ファンキーを一手に引き受けてくれたのがこの玄関です。

 エントランスからすぐの洋室。

 ピンクの壁が、ピンクの建具に写り、よりピンクに。

 こちらもファンキー?

 引戸を開けると廊下にピンクが漏れ出していますが、ここには小さな隠し扉。

 大工の腕の見せ所です。

 廊下突き当りにある洗面と浴室。

 大きくはないだけに、ミリ単位の精度で既製品を造り付け家具のように納めています。

 ミラーキャビネット下、モザイクタイルに気付いて貰えるでしょうか。

 最奥にある寝室は、ウッドデッキを備え、明るさ、機能とも充実しています。

 目隠しルーバーの上下に、隣地の庭を借景として取りこんでいます。

 ここは洗濯干し場。

 雨天時用のホスクリーンが室内に見えていますが、これは取外しができる優れものです。

 ガラス棚を備えたアクセントクロス。

 遊び心が溢れておるのです。

 2階のフロアキャビネットも予算の関係で、既製品となりました。

 しかし、知恵を絞って母、娘が一緒にお化粧が出来るスペースを何とか捻出しました。

 モザイクタイル中央、鏡がまだだったのが残念でしたが。

 キッチンに立つと東西に流れる風を感じることができます。

 バルコニー側には横長の窓と引戸があり、そこを開けると一気に風が通り抜けるのです。

 この日は天気も良く、御陵の緑が目に鮮やか。

 絶景、一歩手前くらいでしょうか。

 最後に、先日届いたクライアントのメールを一部抜粋してみます。Hさん勝手して済みません。

 もう、現場打ち合わせがないと思うと少しさびしく思います。

 何気にあの色々なお話が楽しかったものですから。夫婦共々そう思っています。

 ただ、もう一度1年半前に戻って、1からリノベーションのことを考えるのは、とてもじゃないけど大変なので、思ったときに行動していて大正解だと振り返って思います。

 思い立ったが吉日。

 私が設計するかは別にしても、オファーという行動がまず大きな決断で、大変な行動力を必要とします。

 その決断をした時点で、成功は確約されていると私は思っています。

 「こんな暮らしをしてみたい!」

 そう思った瞬間に、その夢は実現したに等しいのです。ただ、行動に置き換えるという条件だけは付きますが。

 この日、2階へ上がった瞬間、奥さんが歓声を上げて喜んでくれました。

 「ずっとここ居たい」と言われたので「もう現場じゃないので、奥さんのものですよ」と笑っていたのです。

 さて、この「ときめく紺色の家リノベーション計画」を楽しんで貰えたでしょうか?

 次回は2ヵ月点検で、その次が撮影をイメージしています。私自身も、いまから楽しみにしているのです。


文責:守谷 昌紀

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■2月13日 『Best of Houzz』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞
■2月3日『Houzz』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■12月3日 『Houzzユーザーが選んだ人気写真:キッチン編』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が5位に選出
■9月30日発売『suumoリフォーム 実例&会社が見つかる本 関西版』「回遊できる家」掲載
「トレジャーキッズたかどの保育園」
地域情報サイトに掲載

■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました

メディア掲載情報

◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記