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住み継ぐ「コンクリート打放し H型プランの平屋」‐6‐クルクルとハッカー

 ようやく冬らしい気温になってきました。

 と思っていたら、関越道では大雪で多くの車が立ち往生。ほどほどが良いですが、こればっかりは……

 「H型プランの平屋」は、いよいよ工事が佳境に入っています。

 鉄筋コンクリート造の建物は、まず外側の型枠を起し、内側に鉄筋を組んでいきます。

 コンクリートと鉄の長所を組み合わせたこの構造は、大空間を安価に造る為に考えられたと言われています。

 そのコストパフォーマスの良い躯体を、そのまま仕上げにしようというのが「コンクリート打ち放し」です。

 よって、電気の配線、LANの配管、水道など、全て躯体の中に通り道を確保しておかなければなりません。

 一度コンクリートを打設したなら、もうやり替えることは不可能なのです。

 それゆえ、現場には常に緊張感があるのです。

 今日の午前中、定例打合せに行くと屋根スラブの配筋が始まっていました。

 レッカーで鉄筋を仮置き。

 それを人力で配置。

 更に、鉄筋と鉄筋を一本ずつ番線で結束していきます。

 その作業量は膨大……

 職人はキビキビとハッカーという道具をクルクルと回しながら、結束して行きます。

 機敏過ぎて、カメラで追うのも四苦八苦でした。

 何故ハッキングという悪さをする輩と同じ名前なのかは知りませんが、色々な意味で「対極」と言って良いかもしれません。

 型枠は最終的には上部以外全て閉じられてしまいます。

 コンクリートが打設された重さに耐えれるよう、室内は無数のポストで支えられます。

 この暗い、ポストの林がどんな空間になるのか。

 型枠をばらすまでのこのワクワク感も、コンクリート打ち放しの魅力なのです。

文責:守谷 昌紀

■■■9月11日発売『リフォームデザイン2020』「回遊できる家」掲載
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【News】
■10月23日『homify』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■5月16日『homify』(英語)の特集記事に「下町のコンクリートCUBE」掲載
■5月10日『Houzz』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■4月8日『Sumikata』東急リバブル発行に巻頭インタビュー掲載
■2月13日 『Best of Houzz』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞

■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました

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◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

「THE LONGING HOUSE 」‐5‐棟梁プレゼンツ、屋根の上

 先週末に上棟式を迎えた「The Longing House 」。

 横断幕を揚げてみました。

 何とかここまでやってきたのですが、敷地の課題をどう解決したかを昨日の日記にまとめてみました。

 横断幕のある東面こそ細身ですが、T字の敷地だけに中は流石に広い。

 工務店が祭壇と御幣を準備してくれています。

 ご家族が見えると、お子さん達は早速端材を手にとって遊んでいました。

 「トゲだけは気を付けてね」と声を掛けましたが、勿論現場は格好の遊び場。

 ご家族は気が気ではないと思いますが、お子さん達の気持ちは良く分かるのです。

 監督の進行のもと、式典が開始。

 まずは四方を清めてまわります。

 そして御幣が棟梁に託されました。

 2階の一番高い所に掲げ、皆で二礼・二拍・一礼。

 式典が終わるとどこのお子さんもソワソワし始めるもの。

 「2階に上がりたい!」となりました。

 更に「屋根の上にも上ってみたい!」と。

 棟梁の言うことを聞いて貰うという約束で、屋根の上のなかよし兄妹という構図です。

 お兄ちゃんが慎重に匍匐(ほふく)前進する横を、妹さんはスイスイと。

 さらに「ジャンプしてもいい?」と。

 棟梁にOKを貰い、ピョンピョンと。

 こんな所は、女の子の方が案外平気なのでしょうか。

 この日は土曜日だったので、一旦手を止めての式典でした。

 大工4人が、忙しく動き回っている姿を見て貰うのはとても良いことだと思います。

 米と言う字は「八十八もの手間をかけて作られるもの。一粒も残しては駄目」と祖母に言われたことがあります。

 家を建てるには、ざっと20業種くらいの職方が入り、5カ月くらいは掛かります。

 平均3人として延べ2,700人。仮に一日33手間とすれば89,100手間。

 クライアントの奥様が「おそらく人生で一度であろう場面に毎回ワクワクしています」と言ってくれました。

 また「子供たちも、建築中の自宅の屋根に登ったのは強烈な思い出になったことでしょう」とも言って貰いました。

 八万九千百手間。

 稲作より大変というニュアンスではありませんが、現場の過程を見て頂ければ、多くの方は納得してくれると思うのです。

文責:守谷 昌紀

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アトリエmの現場日記

軒が深いから「おいでよHOUSE」‐5‐上棟式はする?しない?

 先日棟上げを終えた「おいでよhouse」。

 日曜日は上棟式でした。

 この10年くらいで言えば、上棟式をする割合は1/3くらいでしょうか。

 さらに式典を神主さんにお願いするケースが1/3くらい。

 残りの2/3は、略式で監督が神主さんの変わりをするという感じです。

 この日は神主さんが見えたので、立派な祭壇がありました。

 滞りなく式典が終わり、御幣がクライアントから棟梁に手渡されました。

 ちょっと退屈気味だったお子さんも「さあ2階へ!」。

 市街地ではやはり2階LDKプランが有効です。

 こちらの場合は更にロフト付き。

 棟梁に御幣を揚げて貰い、全員で「二礼・二拍・一礼」。

 これで全て終了しました。

 終了と同時に、お子さん達は更に一段上のロフトへ一目散。

 棟梁がサポートしてくれました。

 子供は何故危ないところが好きなのか……

 もっと真ん中に立ってくれると良いのですが、気持ちは分かります。

 このロフト、サイズもかなり大きく、建物のフォルムを決定づけているもので、仕上がりが楽しみです。

 「地鎮祭や上棟式はするほうが良いですか?」

 こう聞かれることは本当に多いので、私なりに書いてみたいと思います。

 上棟式の有無は冒頭に書いた通りで、現代の風潮をよく表していると思います。

 地鎮祭になると、開催の割合が2/3くらいで、神主さんに来て貰うケースが1/2くらいに変わるでしょうか。

 結論で言うと、開催しなくても全く問題ないと思いますし、有無によって工事の仕上がりが変わることもありません。

 「折角の機会だからしてみたい」と言う方が催されればよいと思います。

 また手土産の件も良く聞かれますが、有り、無しが半々くらいでしょうか。

 これも無くても全く問題ありません。

 「おいでよHouse」のクライアントは準備して下さったのですが、以下の3つを頂きました。

 まずはご家族のお名前が入っているお酒。

 そしてお菓子と赤飯です。

 昔は帰省の度に祖母が作ってくれたので、私は赤飯が大好きです。

 (嫌いな食べ物はこの世に1つも無いのですが)

 月曜日の弁当に入れて貰しましたが、懐かしく、そしてとても美味しく頂きました。

 日本酒を飲む機会も最近はめっきり減りましたが、その日の晩に頂きました。

 石川県の大吟醸でとても飲みやすく、美味しく頂いたのです。

 お酒に関しては、お名前だったり、計画のコンセプトだったり、選ぶことを楽しんでおられたクライアントが多かったように思います。

 選ぶのが楽しいと思えば準備して貰えば良いですし、極端に言えば米菓子だけ、「ぱりんこ」だけでも全く問題ないと思います。

 建築は土地に根差したものですし、日本においてのはやはり「お米」に関するものが間違いなさそうです。

 本来は、奥さんのお母さまが見えられる予定でしたが、大阪がこの状況なのでキャンセルとなってしまいました。

 コンセプトの通り、完成したならまずはご親族に遊びに来て貰えればと思うのです。

 文責:守谷 昌紀

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軒が深いから「おいでよHOUSE」‐4‐ヨソはヨソ。ウチはウチ。

 現在、同じような工程で現場が4件進行しています。

 一番初めに建て方を迎えたのが、この「おいでよhouse」。

 さらに同じような工程で、隣地の工事も始まっています。こちらは当社とは無関係ですが。

 1日目の昼休みでこの状態でした。

 2日目の昼で、ここまで進みました。

 最近は工場でのプレカットが主流なので、柱一本一本にこんなスタンプが押されてくるのです。

 おいでよhous

 あと「e」だけなので何とか入れて貰えると……

 8文字と決まっているのでしょう。仕方ありません。

 現場の主役はやはり大工。

 棟梁は花形です。

 梁の上を身軽に移動し、仮筋交いを固定して行きます。

 市街地ではどうしても1階が暗くなります。

 よって主空間は2階に上げています。

 更にその上にロフトもありますが、このあたりは追々。

 右隣は3階建てで、こちらは2階建て+ロフトです。

 ヨソはヨソ。ウチはウチ。 

 大阪の家庭なら、どこからでも聞こえてくる会話です。

 全くその通りですが、隣地のサイディグが前に積んであったのですが、同じ黒のようで……

 槇原敬之は「どうしてこうも比べたがる?」と詞にしました。

 間違いなく家も花も世界にひとつです。

 しかし、生物は「負けたくない」という闘争心を本能として持っています。

 なら上手使ってしまえばよい、そう考えています。

 商売の神様、松下幸之助は「嫉妬は狐色に程よく妬く」と言いました。

 何事も過ぎなければ良いと教えてくれるのです。

文責:守谷 昌紀

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「THE LONGING HOUSE 」‐4‐PC板素敵

 建物を建てるためには最低4m幅の道路に、2m以上接している必要と法が定めています。

 これを接道義務と言います。

 「The Longing House」の接道は東側。

 Tの足先が、僅かに接しているという感じです。

 北を見ると、この敷地が住宅地に囲まれていることが良く分かります。

 Tの頭側。西側隣地が一段高くなっています。

 ここにどういった対処をするかは、計画開始時からの課題でした。

 どういった提案をし、どういった苦労があったか。

 そして柱を建てる所ことになった経緯は、前々回に詳しく書きました。

 外構計画の目玉。

 ようやく柱の間にPC板が設置されました。

PC=プレキャスト・コンクリート

 読んで字のごとく、工場で生産された鉄筋コンクリートです。

 工場で作るため条件をコントロールしやすく、安定した品質が確保できるとされています。

 言わば、工場生まれの打ち放しコンクリート板。

 コンクリート素地の肌合いは滑らかで、何とも素敵なのです。

 今回のPC板は1枚が約600kg。下部には少し隙間を開けています。

 理由はまた書くのですが、現在は仮置きの状態で24cmあります。

 最終的には、これをもう少し狭めるのです。

 監督から「大きな木槌で、だるま落としみたいに抜きますか!」という冗談も出ました。

 実際には3枚乗っているので1.8tonあるのでそれは無理。

 じわじわと下げて行き、どこかで止めなければなりません。

 その工法を聞いて、なるほどと思いました。

 「初めての事ばかりなので、さぐりさぐりやってます」と言っていたのですが、そのストーリーがこの塀を、全く違う次元へと導いてくれるのです。

 これは前回の帰り道。阪神高速池田線から見える、大阪湾に沈む夕日です。

 昨日から環状線南行き10日間通行止めで、下道で会社まで戻りました。

 普段よりも混んでいたのだと思いますが、普段なら30分の道程が2時間弱掛かりました。

 当たり前にあるものが無くなった時、初めてその価値が分かるものです。

 心しておかなければと思ったのです。

文責:守谷 昌紀

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住み継ぐ「コンクリート打放し H型プランの平屋」‐4‐ソリッド感と透明感

 先週、基礎の打設が終わった「コンクリート打放し H型プランの平屋」。

 週末、定例打合せがありました。

 Hの横線が二つの棟を繋ぐので、そこがエントランスになります。

 エントランス奥には裏庭があり、この空間もなかなか魅力的な空間です。

 南には、旧家としての和の庭が残っています。

 LDKの開口は、これらに面して開かれています。

 灯篭があったり、カエル石があったり。

 ミニマルな建物とこれらの外部を、どう結び付けるかも腕の見せどころです。

 CGのアニメーションをUPしてみます。

 打ち放しの建築は、コンクリートのソリッド感、ガラスの透明感をどう連続させるかが大切です。

 コンクリートの強度を活かし、かつ閉鎖的にならないよう腐心するのです。

 南からは光を取り込むために、ガラスの透明感が主役になります。

 俯瞰で見ると、そのリズムが分かりよいでしょうか。

 エントランスからの景色。

 90度右に曲がるとLDK。


西にキッチン。

 東にはテレビを含めた飾り棚があります。

 子供部屋も、出来る限りコンクリート打ち放しの良さを引き出したいと考えました。

 キッチン裏には奥さんの家事室も。

 極めてシンプルに、2つの棟を中央の動線でつないだコンクリート打放しの平屋。

 打ち放しはやり直しが効かないだけに慎重に現場は進んでいます。

 連続するソリッド感と透明感。

 これこそが打ち放しの魅力だと思うのです。

文責:守谷 昌紀

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軒が深いから「おいでよhouse」‐3‐コンクリートは鮮度が命

 サンマ1匹が100円台まで下がったと新聞に出ていました。

 そんなことが記事になる時代になったのですが、太古から秋は秋晴れと決まっています。

 今週は晴れ空が続きました。

 水曜日の9時頃現場へ行くと、すでにコンクリートの打設が始まっていました。

 「おいでよhouse」はかなり縦長の敷地です。

 現場内に4人、現場前に3人くらいのチームで打設して行きます。

 コンクリートを荒らしたくないので、打設は一番奥からすることが大半です。

 ポンプ車がアームを目一杯持ち上げ、奥へホースを送り込みます。

 ホースの先端をさばいているのは一番若い職人。

https://youtu.be/-A1tDNxFs6E

 これがなかなかの重労働です。

 もうひとりは満遍なくコンクリートが広がるよう、バイブレーターを当てて行きます。

 振動でコンクリートが広がる様子が、動画なら伝わるでしょうか。

 コンクリートは生ものにつき、鮮度が命です。

 打設した後を追いかけるように、左官職人がコテで押さえて行きます。

 更に気温によって1~5時間後、水が引いた後に再度コテで仕上げるのです。

https://youtu.be/YO9mXQ7jcic

 生ものが半日後には人の手では変えることができなくなり、翌日には完全に不可能になります。

 少し事情があって停滞していた現場ですが、順調に進みだしました。

 お隣の敷地も、同じようなタイミグで工事が進んでいますが、一番前の形はなかなかに特徴的です。

 2週間後あたりには建方まで進みそうで、形を見るのを楽しみにしているのです。

文責:守谷 昌紀

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「The Longing House 」‐3‐ほぼガンタンク

気持ち良い秋晴れの下、定例打合せ前の現場に立ち寄ります。

この計画はT字の敷地が特徴ですが、頭の棒線の左から敷地を見てみます。

南側から見ることになり、日の当たり方が良く分かります。

今度は反対の北側から。

敷地環境は人の手ではどうすることもできないので、この紐解きが建築設計の始まりとなるのです。

T字の縦線の下。東から見てみます。

敷地をよく見れば、どの空間をどの場所に配置するかは自然に決まって行くものなのです。

前回「もうダメだ、が仕事のはじまり」と書きました。

何とか擁壁の件を解決したのですが、一難去ってまた一難。

またまた歯ごたえのある課題がでてきていたのですが、それも何とか解決の糸口が見えてきました。

びっくりするくらい色々な課題がでてくるのが建築です。

全く問題がなく、簡単に解決できることに、お代を払ってくれる人など居るはずもありません。

困難こそが仕事の本質なのです。

そんな中、スーパーパイロットが助けに来てくれました。

トラックから手際よく一人で地面に降りたち、さっと仕事を始めます。

いつ見ていても鮮やかなもの。

もう完全にガンタンクを操るリュウ・ホセイなのです。

定例打合せを終え、阪神高速で会社に戻ります。

現場や打合せはエンターテイメントです。

大変を楽しく。

これが私のモットーなのです。

文責:守谷 昌紀

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「The Longing House 」‐2‐「もうダメだ」が仕事のはじまり

この計画の敷地は形状にかなり特徴があります。

旗竿敷地は経験がありますが、T字型は私も初めてです。

平面的な形状を活かすのは勿論ですが、現実は2次元ではありません。

T字の頭の部分に面する隣地が一段高くなっているのです。

計画がスタートした際、クライアントはこの隣地に対しての安全対策も合せて提案して欲しいとのことでした。

建物の設計も簡単ではありませんでしたが、これらは建築から少し下がって、土木の世界の話とも言えます。

そこは、普段山奥の湖へ通っている経験が活きました。

山道で土砂崩れがあった時、このような方法で土留め壁を構成し、復旧工事を進めて行きます。

これなら応用できるかもと考えたのです。

当初は鉄筋コンクリートの擁壁を計画していました。

さあ基礎工事となった際に「掘り方のことを考えた時、隣地が崩れてこないか心配で……」と監督から相談があったのです。

正直、参ったなと思いましたが、京セラ名誉会長の稲盛さんからこう教えて貰いました。

 もうダメだというときが仕事のはじまり

それならと、この方法を提案したのです。

監督も「それなら何とかなるかも」と再度工法を練り直し、ようやくここまでこぎつけました。

ドリルで2mの穴を掘りますが、擁壁の地中部分があたりなかなかうまく行きません。

できるだけ擁壁に近い場所を、文字通り手探りで探します。

何とか2mまで到達すると、今度はセメントミルクを注入しながら攪拌です。

ドリルを上に移動させながら、全体にセメントミルクを練り込んでいくのです。

そして今度はH鋼を吊り下げ、セメントミルクで満たされた穴に差し込みます。

この鋼材を手仕事で微調整。

そしてH鋼を設置。

セメントが固まればもう動かすことは出来ないので、今しか調整は出来ません。

監督が「んっ!ちょっとずれてる?」。

慌てて押したり、クサビを打ち込んだり。

もうコントみたいですが、何とかなったようです。

何とかならなかったとしても、何とかするしかないのですが。

建築においての精度は、通常0.5mmくらいでしょうか。

しかし土木となるとそこまでは求められません。この現場を見れば一目瞭然です。

図面ではどう描けても無理なものは無理なのです。

どこは厳しく、どこは許容するか。

現場に足を運び、対話をしなければその判断はずれてしまい、裸の王様になってしまうのです。

文責:守谷 昌紀

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住み継ぐ「コンクリート打放し H型プランの平屋」‐3‐並々ならぬ愛情

 秋分の日も過ぎ、ようやく日差しも和らいできました。

 計画名の「H型プランの平屋」は、敷地が大きくなければ成立しません。

 建物の解体が終わり、庭木もほぼなくなりました。

 こうして見るとやはり広い。

 建物解体が終わった後でも、庭木・庭石がかなり残っていました。

 これらを撤去するのがなかなかの仕事で、相応の時間が掛かっていたのです。

 何よりこの大楠木。

 台風の大型化、近隣への落ち葉のこともあり、ほぼ枝を落とすことになりました。

 もう一段回枝を切るのですが、それでもここまできました。

 母屋にしても、大楠木にしても、代々引き継いできたもので、ご家族にとっては苦渋の決断だったはずです。

 感謝と敬意のをもって、神主さんにお祓いをして貰ってからそれぞれの工事に入ったのです。

 計画がスタートしてここまで3年。

 ようやく地鎮祭を終え、いよいよ建物工事に入ります。

 愛情とは、ともに過ごす時間とも言います。

 愛情や情熱を込めていない建物はひとつたりともありませんが、3年ともなると……

 並々ならぬ愛情が詰まった建物とも言って、全く問題ないと思うのです。

文責:守谷 昌紀

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