
2020年4月2日。

姫路城の桜は、ほぼ満開でした。
兵庫県太子町の「ささき整形外科クリニック」に初めて伺う前に立ち寄ったのです。
新型コロナの緊急事態宣言が発令されたのは、その5日後でした。

世の中の情勢を見極めながら、プールのある「ささき整形外科 デイケアセンター」は、2022年12月に着工。
”生まれ故郷である太子町で、介護が必要な方が治療・リハビリを通じて、いつまでも元気に暮らしていけるお手伝いをするために、この度ささき整形外科デイケアセンターを開設いたします。
「ささき整形外科デイケアセンター」は要介護、要支援状態からの機能の改善を目指したデイケアです。”
患者さんには、足腰への負担が少ない水中での運動を勧めますが、その施設が足りていないことが計画の動機になったのです。

その純粋な思いからスタートした、全国的にも珍しいプールのあるデイケアセンターは、2023年の8月に竣工したのです。

患者さんが増える一方の母体である「ささき整形外科クリニック」ですが、2つの施設は隣り合っています。
院長から「何とかリハビリする空間を増やせませんか」という相談を受けたのは、「ささき整形外科デイケアセンター」が竣工した1ヶ月後でした。

クリニック側の駐車場を一部取り壊し、リハビリ棟を増築する計画を進めることになったのです。

ただ、計画は困難を極めました。
駐車場をできる限り残し、リハビリする空間を少しでも大きくしたい。
相反する課題が、常に中央に立ちはだかります。
また、既存建物に増築棟をつなげるのは、法規として大変ハードルが高いのです。
更に、消防、土木事務所、保健所と、関係省庁との協議を繰り返しました。
院長が望む空間を確保するには、4階建てにする必要があることも分かってきました。
何より、クリニックの営業を止めずに完成させなければなりません。
あらゆる課題を解決できたのは、着工予定日の数日前だったのです。

2つの施設の間に建つリハビリ棟は、中立的な意味合いを込めて真っ白なキューブとしました。

その上で、開口から入ってくる光を制限し、外壁に光をできるだけ当てないよう、4枚の庇を外周に巡らせました。
その陰影が、この建物をより印象的なものとし、地域のランドマークとなってくれることを期待しています。

5年前の4月2日、姫路城は咲き誇る桜とは対照的に、人影はまばらでした。
あれから本当に色々なことがありました。
胸が痛いほどの閉塞感、終わりの見えない感染拡大……
新型コロナ前夜に計画がスタートし、この地に2件の建築を設計、デザインさせて貰うことなど想像もできなかったのです。
それらの経験をさせて貰い、改めて「医療」の重要性を感じます。
クリニックを営業しながらの計画は、まるで綱渡りのような緊張感です。
それでも、私の職能を必要として貰えるなら、これほど光栄なことはありません。
何としてでも、お盆までに完成させなければなりません。
その冒険の旅を、またここで書けることは幸せ以外の何物でもありません。
■■■2月12日(水)大阪市中央区上町1-24-6に移転しました
「上町のアトリエ付き住宅〈リノベーション〉」
電話、faxは変更ありません■■■
■9月17日(火)「尼崎園田えぐち内科・内視鏡クリニック」開業■
■8月30日『homify』の特集記事に「阿倍野の長屋<リノベーション>」掲載■