タグ別アーカイブ: リノベーション

朝テンションがあがる「北摂のリノベーション」‐5‐夢は描き、守り、育てるもの

 現場は北摂なので、車で現地へ向かいます。

 かなり遠くから、こちらの建物は見えてきます。

 リノベーションにつき、外観はさほど変化ありませんが、内部空間は大きく変わりました。

 2階東面が大きく開かれています。

 外壁をばらし、サッシを取り付ける作業をしているところ。

 サッシを取り付ける横材を、上からまぐさ、窓台等と呼びます。

 ここにサッシ枠をビスで止め、その上に防水層を構成して行きます。

 南にはバルコニーがありますが、こちらは掃き出し窓の取付が終わっていました。

 この大きなバルコニーは、奥さんたっての希望でした。

 「他は我慢しても、大きなバルコニーは絶対欲しい!」と計画の序盤からお聞きしていたのです。

 何とかテントを張れるくらいの広さが確保できました。

 東京で設計させて貰った「四丁目の家」ですが、内部の見せ場は何と言ってもウンテイです。

 このウンテイはバルコニーにそのままつながります。

 内部は光のスペクトルを表現していますが、外部は建物と同化させるために白としました。

 ここにロープを結んで遊んでいる写真です。

 また、その奥には5畳くらいの空の見える空間があり、実際にここでテントを張って遊んでいるのです。

 全ては「思いっきり洗濯物を干したい!」という奥さんの動機から派生してできた空間です。

 もっと言えば、これこそが計画が動き出した原動力かもしれません。

 知識や解決法は誰かに聞けても、夢だけは人から貰うことはできません。

 自分の都合で、子供の夢を壊すようなこと、夢の芽を摘むようなことはしていないか?親は常に自問自答します。

 同じように、クライアントの夢をこちらの都合で摘んではいないか?

 コスト、法規、安全と言い訳は探せば湯水ように沸いてきます。しかし、夢を実現してくれない建築家に、たとえ1円たりとも払ってくれる人は居ません。

 夢は抱くと言いますが、自分で描き、守り、そして育てるものです。できれば、いつも育てる、応援する側に居たいと思うのです。

文責:守谷 昌紀

■■■『大改造!!劇的ビフォーアフター』4月7日(日)BS朝日で「住之江の元長屋」再放送
■■■『デンタルクリニックデザイン事典vol.1』4月1日発売に「さかたファミリー歯科クリニック」掲載

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【News】
『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
ギャラクシーブックスから2017年11月27日出版
amazon <民家・住宅論>で1位になりました
■『homify』5月7日「碧の家」掲載
『houzz』4月15日の特集記事
「中庭のある無垢な珪藻土の家」が紹介されました
「トレジャーキッズたかどの保育園」
地域情報サイトに掲載されました
大阪ガス『住まう』11月22日発行に「中庭のある無垢な珪藻土の家」掲載
『住まいの設計05・06月号』3月20日発売「回遊できる家」掲載
『homify』6月29日「回遊できる家」掲載

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◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

朝テンションがあがる「北摂のリノベーション」‐4‐旅の一座の現場公演

 ゴールデンウィークの「元」中日。

 北摂の現場へ向かいます。

 大阪市内は殆ど渋滞なしでした。

 現場近くにある田んぼの畝にも野花が咲いています。

 ゴールデンウィークと言うくらいですから、本当に気持ちの良い季節になりました。

 現場は既存瓦の撤去が終わり、大屋根のルーフィング(防水紙)が貼り終わりました。

 瓦屋根の撤去工事が、なかなかに難航していると聞いていました。

 まさに下屋はその最中で、職人がヘラで瓦を固定していた土をそぎ落としています。

 下地は木材を薄くそいだもので、「トントン」というそう。

 檜皮の簡易版といったところでしょうか。初めて実物を見ました。

 この建物は築30年。私がこの世界に入ってから25年なので、わずかにタイムラグがあります。

 リノベーションとは真に生きた教材なのです。

 土をそぐ作業が終わると、垂木を通し、その間に断熱材を入れていきます。

 断熱材より僅かに垂木のほうが厚く、その隙間が通気層になります。

 夏は暑い空気を上に排出、冬は冷たい空気を下に流すことで、より断熱効果を高めるのです。

 2階には、その断熱材がすでに準備されていました。

 打合せの日は少し早めに現場へ行きます。

 打合せ時に使うサンプル、図面などを用意するのですが、何事も準備が全てです。

 公共工事等では、現場事務所が設置されますが、住宅ではない事が殆ど。

 よって、現場の一角を借りて、即席現場事務所とするのです。

 この日も、現場が用意してくれたベニアの机と、断熱材のソファで5時間程打合せをしました。

 クライアントは名古屋在住で、ゴールデンウィーク対策に車ではなく新幹線で来阪してくれました。

 時間もお金も掛けて足を運んで貰うことになります。

 よって、その時間の価値を最大にする努力をしなければなりません。

 しかし、資料に間違いがあったり、抜けがあったりで……

 全て私の責任ですが、あまりも頭に来てしまい、打合せ中に若いスタッフを叱ってしまいました。

 クライアントには不愉快な思いをさせてしまったのですが、鉄は熱いうちに打てと言います。

 間違いたてでなければ打ったとしても、意味がないとも思っているのです。

 現場を舞台とするなら、打合せは旅芸人の公演のようなものです。

 何とか楽しんで貰えるよう、旅の一座は腕を磨かなければなりません。

 本番の舞台でなければ身に付かないところも、旅芸人そっくりだと思っているのです。

文責:守谷 昌紀

■■■『大改造!!劇的ビフォーアフター』4月7日(日)BS朝日で「住之江の元長屋」再放送
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朝テンションがあがる「北摂のリノベーション」‐2‐春の思い出

 元号の発表もあり、新年度がスタートしました。

 庭木も花をつけ、現場へ向かう道中を楽しませてくれます。

 建築の集合体が街とするなら、良い家を創ることは街へ貢献することにもなるはず。

 どの仕事もそうですが、遣り甲斐はおつりがくるほどあるのです。

 内部の手バラシがほぼ終わりました。

 この建物は築30年と、フルリノベーションの中では比較的新しいほうでしょうか。

 基礎のひび割れもなく、床下も乾燥。状態は良好です。

 浴室は水気が多いので、痛んでいることもありますが、それも問題なさそう。

 こちらの建物は、宮大工が1年程掛けて建てたと教えて貰いました。

 今は亡きクライアントのお父様の知人だったそうですが、構造体はしっかりしています。

 2階の床版がないこの状態は、高い位置からの光が1階まで落ちてきます。

 教会の高窓のような光が差し、空間をドラマチックに演出するのです。

 流石に、2階床版の全部を無くす訳にはいきませんが、1箇所、2階と通じるようにしたいと考えています。

 宮大工が担当しただけあり、下屋の屋根組は極めて複雑。

 この部分をバルコニーにしようと考えており、このあたりは、監督、棟梁の腕のみせどころなのです。

 棟木には御幣がとめられていました。

 周辺は田んぼですが、まだ何も植わっていません。

 下草が生えだし、のどかな景色が広がります。

 私と同年代のクライアントが「写真と言えば、あの辺で撮ったものばかりだったな」と。

 間もなく田植えが始まるはずで、秋までは下に降りられないと思います。

 冬になれば切り株と土ばかりで絵にならないでしょう。

 そう考えれば、この時期の写真だったのかなと想像するのです。

 記憶は景色と共に残ります。誰かの人生の背景をつくっていると考えれば、やはり責任は重大です。

 新芽の匂いとともに、誰にも春の思い出があります。

 その背景を、少しでも美しく彩ってみたいと思うのです。

文責:守谷 昌紀

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朝テンションがあがる「北摂のリノベーション」‐1‐プロローグ

 関西において「北摂」と言えば、よい環境をさす。

 そのイメージを更に上回る程、この敷地の周辺環境は抜群だ。

 まず、南からの光を遮るものが一切ない。

 ご主人の実家なのだが、こういったことに住人は無頓着な事が多い。

 「田舎」とか「何もないところ」と表現されるのだ。

 しかし、こと暮らす環境としてはこれに勝るものはない。

 すこし高台になっており、南への眺望は格別だ。

 計画にかなり時間が掛かったが、3月に入りようやく解体がスタートした。

 午前中に到着したのだが、すでにかなり手バラシが進んでいる。

 手バラシの言葉通り、全てが手作業だ。

 現在は、産業廃棄物の分別は極めて厳しい。

 とくに石膏ボード等の不燃物と、木の分別は必須となっており、解体は非常に繊細な仕事となった。

 青銅、鉄と金属の道具ができ、硬いものが切れるようになった。

 さらに電動工具が進化した。

 しかし、最後は手バラシだ。

 この原始的な仕事こそが建築だし、そんなことを誇りに思っている。

 ネット社会、AIを幻想とは言わないが、人は現実に生きる。

 それらを実現するのは人の手であってほしいと思っている。

 そうでなければならないのか分からないがそうあって欲しいのだ。

 ご主人と奥さんから、色々とリクエストを頂いた。

 しかし奥さんからこの言葉を聞いたとき、「タイトルはこれがいいな」と思った。

 「朝起きるとテンションが上がる家」

 朝を制するものは、一日を制す。

 そのオーダー、責任をもってお引き受け致します。

文責:守谷 昌紀

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『関西の建築家とつくる家 Vol.2』2月1日発売「阿倍野の長家」掲載
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築80年の長屋を「碧の家 」に〈リノベーション〉‐13‐幸せの青い花

 「碧(あお)の家 」は昨年末が1年点検でした。

 碧はやはり光が当たってこその色。

 全てはそのコンセプトから始まりました。

 夏の日差しで、花壇の花が何度か枯れてしまったそうです。

 クライアントがDIYで日よけを作ってくれました。

 これで、次の夏は元気に育ってくれるでしょうか。

 花壇は左の低い所が花のエリア。

 ブルーデイジーとマーガレットが植わっています。

 リノベーションは、あるものを出来るだけ活かすのですが、側面の路地からは既存の母屋が見えています。

 こんな景色に、この家の年輪を感じることが出来るはずです。

 映画「かもめ食堂」で使われたこのケトル。

 やはり本物は絵になります。

 2階の寝室も、全く変わらずに美しい状態のままでした。

 建物を好きになって貰えたら、少しでも長く使いたいと思って貰えたら、自然と手入れをしたくなるものです。

 そんな気持ちが、空間をよくするのだと思うのです。

 ブルーデイジーの花言葉は「恵まれている」とか「幸福」だそうです。

 その語源は、学名の「felix」がラテン語でそれらを意味するところからきているそうです。

 まさに「幸せの青い花」でした。

 昨日、「1年後の感想」をUPしましたが、ここにも載せてみました。

 私が何を語るより、「碧の家」のことが良く分かって貰えると思うのです。

【1年後の感想】

住んでから一年経っての感想ですが良かったところは殆どそうなので部分的に少し言わせてもらえば…

まず

① サンルーム(室内洗濯干し部屋)が大変便利です。
雨の日のお洗濯も困る事なく不透明ガラス扉を閉めれば視線を遮る事も出来ます。

程よい大きさなので一つの部屋としても十分成り立っています。

「コレは絶対いい!」と来た人は必ず言います。

② 階段下の収納
当初は「収納どうかな?」と思ってましたが階段下を目一杯収納にとってもらったのでかなりの収納スペースになりました。
満足の収納スペースです

③二階の大きな梁
以前は隠れてた大きな梁を今回「見せる」という選択をしてもらったおかげで今まで経た時を感じる事が出来
また、これからも感じる事が出来ると思います。

フローリングを完全無垢にしており上の梁とで更に木の息遣いを感じ癒しになります。

以前の家があまりにも古いので人を呼べる事も出来ませんでしたが既に沢山の友人に来てもらいました。

皆、居心地が良いと言ってくれて「次回は泊まりたい」とさえ言ってくれます。

以前では想像出来ないです 笑

一つ、もう少し考えれば良かったと思ったのがガレージ下のコンクリート?です。

費用をおさえようと思って白っぽいコンクリート?にしたのですが少し汚れが目立つかな?と 思ってきました。
深く考えなく費用で決めたのですが暮らしてみてもう少し考えればと思いました。

現場打ち合わせの時に電気コンセントの位置を決めるのが
こんなに長い時間を費やし大変な作業と解りました。

住んでみて確かに重要かつ時間をかけるのが解りました。

自分の考えからトイレのドアにガラスを入れてトランプの4種類♠️♣️♥️♦️をガラスに貼って欲しいとお願いしました

ガラスにどの様に貼るか守谷さん、現場監督と話しをするのを聞いていたら大変そうでした…

毎回現場打ち合わせでガラスをみたてた画用紙でトランプの種類の大きさを作っていただき大きさを考える…

工事打ち合わせをしてる横の壁には何枚かの大きなトランプを壁に貼ってるのを見ると「こんなに大変な作業だったとは…トイレのドアにここまで時間を費やす家はきっとないのでは…」と考えては感謝をしました。

おかげで他にはない?トイレのドアが出来大変嬉しく思います。

設計から工事、家が出来るまでと自身が携わる事で大変良い経験、楽しい時を過ごす事が出来良かったと思います。

リノベーションして新たな家とまた、これからも時を紡いでいくと思うと微笑ましくなるのは
いうまでもないです✨✨✨✨✨

 


文責:守谷 昌紀

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築80年の長屋を「碧の家 」に〈リノベーション〉‐12‐人は思い出にも、過去にも生きる

 本日、「碧の家」をwebサイトにUPしました。

 大阪の下町にある四軒長屋の一住戸を、フルリノベーションした計画です。

 サブタイトルは「 100年を紡ぐ物語」としました。

 これは、現場日記の第2回目のタイトルでもあります。

 昭和10年代に建てられたこの長屋に、ご家族は越してこられました。

 お父様は残念ながら早世されてしまい、皆さんでこの家を守ってこられたのです。

 解体の途中、床下からでてきた火鉢は、掘り炬燵の底にあったものだろうということでした。

 昭和初期の暮らしが、目の前に活き活きと蘇ってきます。

 100年前、人は家の中でも火で暖を取っていたのです。

 リノベーションブームと言って良いほど、この言葉を頻繁に聞くようになりました。

 「価値を高める」という意味ですが、古いものの価値が低いなどということは全くありません。

 人は思い出に中にも、過去にも生きます。

 創り手は、そこをよく理解していないと、ただ封をするような仕事をしてしまうのだと思うのです。

 特定の何かを非難したい訳ではありませんが、リノベーションは新築を目指すものではありません。

 オーダーが古建築の改修ならその仕事を全うしますし、新たな価値を求めたいと言われればそれを目指します。

 私たちの仕事は、クラアイアントの幸せを実現する為にあるのですから。

 その要望にどこまで応えられたのかは、分かりませんが、真っすぐに取り組んで来たつもりではあります。

 1階の階段は反対向きに付け替えました。

 奥にある、お母様の寝室に少しでも光を届けるためです。

 階段上にあるトップライトが、その価値を高めてくれます。

 奥にあった外部通路を、通り庭と解釈しました。

 横にあるトイレは、思い切った色使いになっています。

 トランプと不思議の国のアリスの物語がここに織り込まれているのです。

 通り庭をはさんである洗面・脱衣室。

 トップライトの光が落ちてきますが、お母様の寝室にも漏れ落ちるようになっています。

 長屋の北側を、どうすれば心地よい空間にできるか。

 「住之江の長屋」、「阿倍野の長屋」と、そして「碧の家」と、様々なトライをしてきました。

 2階寝室の写真を、この計画のメインカットとしました。

 ロフトに続くこの部屋は客間。

 親族が見えた時に泊まって頂く空間です。

 そこには、100年に渡ってこの家を支えてきた梁があります。

 色を塗るのではなく、汚れを丁寧に落として貰いました。

 これは監督からの提案でした。

 「折角なら、色を付けるのでなく垢を落としてあげましょう」という考えです。

 色を付けるより余程手間のかかる仕事で、物に対する敬意がなければ出てこない考えです。

 一も二もなく賛成しました。

 「作品」という言葉は、良い意味でも、悪い意味でも使われます。

 創り手のエゴを含んだ言葉として使われる場合が校後者でしょうか。

 「商品に魂を込めれば作品となる」

 私はこの言葉を支持したいし、信じています。

文責:守谷 昌紀

■■■毎日放送『住人十色』4月14日5:00pm~5:30pm
「回遊できる家」放映

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築80年の長屋を「碧の家 」に〈リノベーション〉‐11‐リノベーションに失敗なし

 「碧の家」3月の点検で、現場日記は一区切りとしました。

 しかし、4月中旬の撮影で気付いたことが色々ありました。

 今回も2回延期でやっとの晴れ空。

 クライアントには無理なお願いばかりで……

 実は、3月に伺ったあと正面の花が枯れてしまったそうです。

 しかし、この日に合わせて再度植えていただきました。今回は根付いてくれると良いのですが。

 長屋の場合、必然的に1階の開口が少なくなり、光の取り方に工夫が必要となります。

 一番南にあるキッチンは何度か紹介しました。

 機能が集中し、1階で一番明るいところです。

 最奥の家電置場も何度か紹介しましたが、なかなかの力作です。

 トースター台がスライドするだけならともかく、買い替えた時に合わせて、スライド台が上下に位置を動かせます。

 監督と各担当者のアイデアに救われることが多々あるのです。

 洗面はトップライトから光をとっています。

 腰上は、日の光に映える水色のクロスになりました。

 壁にあるランプは施主支給。

 スイッチも同じくそうですが、焼き物には量産品にない味わいがあります。

 そして苦心に苦心を重ねたトイレの窓。

 中が透けすぎないガラスを探し、トランプのマークを四隅に張りました。

 中からみてもおかしくないよう、接着面も黒、赤となっています。

 ここがトランプである理由は、中に入れば分かるしかけです。

 不思議の国のアリスにでてくるウサギと、トランプの兵隊をイメージしたものなのです。

 2階は更に撮りどころが満載。

 写真の仕上がりが楽しみですが、ロフトは自分で撮影してきました。

 ヤコブセンデザインのドロップに座れば、南に開けた景色が楽しめます。

 その背面には本専用のニッチ。

 サン=テグジュペリの「星の王子さま」が立てかけられているのです。

 2階バルコニーで干している洗濯物を、急な雨の際に持って入れる室内干しエリア。

 この家の特徴のひとつです。

 ここは洗面と逆で、腰下を水色としました。

 収納スペースの中は可動棚を組み合わせ、PCスペースもあります。

 これは、家具レベルの細やかな大工仕事。

 もっとはっきり言えば、大工仕事の中で、家具を作って貰ったものなので、金額もかなり抑えられているのです。

 ビフォーの写真があまりなく、クライアントのタブレットのバックアップファイルをコピーさせて貰いました。

 「リノベーションに失敗なし」は私の信念です。

 今あるものに、設計料と1千万円以上の工事費をかけさせてもらって、失敗などありえません。

 しかし、それは綿密な調査と、れそれの担当者が、自身の責任を果たすことが絶対条件です。

 クライアントに信頼して貰えるまで考え、描き、仕事好きな監督、職人さえいれば、他は何も必要ないのです。

 少し力が入ってしまいました。

 この当たり前が、だんだん困難な時代になりつつあると思うのは私の思い過ごしでしょうか……

 懸命に働くこと以上に尊い行いはありません。この言葉が通じる国であって欲しいと心から願うのです。

文責:守谷 昌紀

■■■毎日放送『住人十色』4月14日5:00pm~5:30pm
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築80年の長屋を「碧の家 」に〈リノベーション〉‐9‐あと一歩

 2017年も間もなく12月に入ります。

 引越しを間近に迎え、「碧の家」も追い込み段階に。

 玄関横の自転車置場スペースの屋根が出来上がってきました。

 1階ダイニングスペースから奥にみえるのは通り庭。

 ここは、最後の最後にチョコレート色と白のタイル貼りへと変更になりました。

 ダイニングからエントランスを見返すと、追い込み感が伝わるでしょうか。

 階段を上がると、2階の中央は客間を兼ねた空間です。

 奥にある、南に面した部屋は主寝室。

 収納の一部をパソコンスペースとしました。

 南面する窓の下枠を大きくし、碧にしています。小さなカウンターのイメージです。

 チェアは今回購入した、アイブルーのセブンチェア。

 階段横にあるハシゴでロフトに上がります。

 このハシゴのディティールもかなりこだわりました。

 建物すべてで碧がテーマになっている通り、ロフトにも碧。

 ここから南の空を望めるのです。

 設計を始めるとき、「今回の計画で、必ず叶えたいことは何でしょうか」と尋ねます。

 その中に「月を見ながらくつろげる、勉強できる」がありました。ロフトはそれを具現化したものです。

 建築は未来の幸せの形。

 の実現まであと一歩のところまでやってきました。

文責:守谷 昌紀

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築80年の長屋を「碧の家 」に〈リノベーション〉‐8‐本当に好き

 今週、唯一の雨だったのが14日の火曜日。

 「碧の家 」はこの日が現場打合せでした。

 ようやく足場がとれ、碧の外観が見えるようになりました。

 曇天は曇天で映えますが、晴れの日はまた違った印象になるでしょう。

 正面にあるのは花壇。

 ここは、碧、白、グレーのタイルをランダムに貼っています。

 キッチンと外部の碧は同色です。

 壁のタイルは、水色、白、アイボリーをこちらもランダムに貼りました。

 ランダムではあるのですが、位置は1枚1枚指定しました。

 数枚違うところもありますが、概ね展開図通りです。時間があるひとは間違い探しを。

 2階の収納内は、棚を細やかにレイアウトしています。

 収納でありながら、家具のように仕えるはずですが、この景色の中にも、後で「碧」が入ってきます。

 大工工事もほぼ終了。

 最後に製作して貰うのは、ロフトへのハシゴです。

 この景色の中にも「碧」は入ってきます。

 いつも「碧」が中心にあるのです。

 ルネサンスの天才、ミケランジェロは彫刻するとき、大理石の中に居る人を掘り出してあげるイメージでノミを振るったといいます。

 格好をつけて言えば、その感じ少し分かる気がするのです。

 私の最も重要な仕事は、「本当に好き」をさぐりあてることだと思っています。

 この厳しい世間を生きて行く時、錆びや澱のようなものがまとわりついてきます。

 それらを削り落とした中に「本当に好き」はあると思っているのです。

文責:守谷 昌紀

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築80年の長屋を「碧の家 」に〈リノベーション〉‐7‐無い所からなら別

 今日は雲ひとつない秋晴れでした。

 快晴の定義は、雲の量が全天に対して1割以下。今日は0だったので完全なる快晴でした。

 週末の嵐が嘘のような天気ですが、それが自然というものです。

 どの現場もですが、台風と秋雨前線の停滞で外壁工事がやや遅れ気味。

 今日の目的は、本格的に工事が始まる外壁の色を決定することでした。

 直射が当たる壁にあてたり、影の部分にあてがったりと、慎重に検討し、残った見本がこの2つ。

 どちらになったかは、完成後のお楽しみということで。

 工事も終盤に入り、棚の割り付けなどの詳細を詰めてきました。

 ようやく階段が完成しました。

 踏面210mm、プラス蹴込30mm、蹴上200mmの登りやすい階段です。

 かつ美しく仕上がっていると思います。

 元の階段と比べると、その差は一目瞭然。

 重力のある地球で、3m上に登り、そこで暮らすということは、かなりの危険が伴うということです。

 3m、木登りする姿を想像して貰えれば分かりやすいでしょうか。

 それを安全に、スムーズな移動を可能にするのが階段です。

 初めからあれば、階段の有り難さを感じることはありませんが、無い所から出来上がったならそれは別。

 クライアントには、 何度も現場用のハシゴで登ってもらったので、「感激もひとしおですね」という話をしていました。

 これなら、お母様にも上がってもらえそうということで、次回打合せに参加して頂くことになりました。

 階段室から出ると、2階は大きな1室空間です。

 そして、右上に見えるのがロフト。

 この高低差は2.5m。ここはハシゴでつながります。

 重力のある地球において、上下の動線は常に重要で、腕のみせどころでもあるのです。

文責:守谷 昌紀

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