リノベーションは解体撤去工事から始まります。
重機では解体は出来ないので、全て職人による「手バラシ」。
この日は5人掛かりで、2階の壁が一気に無くなりました。
床に穴を開けて、1階にガラを落として行きます。
この日はクライアントと現場打合せでしたが、25年住んだ家なので、感慨深いものもあると思います。
などと思っていたら、2階のガラで1階があっという間に一杯になりました。
もうもうと埃が舞う中。
手作業で分別して、トラックに積んで行きます。
楽な仕事などひとつもありませんが、本当に感謝の気持ちしか沸いてきません。
屋根裏から、上棟式の際の御幣がでてきました。
クライアントに「懐かしいですか?」と聞くと、「あんまり覚えてなくって……」と。
25歳で自宅を建てられてので、感慨深いだろうと思い聞いてみたのですが、ちょっとずっこけました。
DNAの中には、全人生の記憶が残されているそうです。
映画等で、車ごと谷底へ落ちて行く際、走馬燈のように記憶が蘇るシーンがありますが、あれは本当なのだと教えて貰いました。
もしそうなら、本気の危機感を持っていれば、テストでも100点が取れた訳ですが、自在に操るのは難しいようです、
人は歯ぎしりするほどの悔しい事や、立ち直れないかもと思うような悲しみも、忘れられるから生きて行けると言えます。
だからこそ、人は人の心に残りたいのだと思います。
時々、名刺に載せている作品を見て「あっ、この建物知ってますよ」と言って貰うことが時があります。
私自身が、誰かの心に残らなくても構いません。もし建築が残ってくれたとしたら、これ以上光栄なことはありません。
いつもそんな物創りが出来ればと思っています。
文責:守谷 昌紀
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