タグ別アーカイブ: 打放し

永住したい打ち放しのマンション「R Grey」‐2‐型枠講座

 基礎が打設され、壁の型枠工事が始まりました。

 鉄筋コンクリートの建物は、硬いプリンをつくるようなものです。

 型枠とはプリンを入れるカップのようなものと考えると分かりやすいでしょうか。

 躯体が出来あがっていく流れを簡単に説明してみます。

 鉄筋コンクリートは、文字通り中に鉄筋が入っているので、内側の型枠でカップを塞いでしまう前に鉄筋を組み上げていきます。

 難易度が高いのが、窓や庇などの部分。

 特に庇は、カップに穴があいているような状態になっています。

 プリンの原液を流し込むと、当然その穴から噴き出してきます。

 コンクリートが時間とともに硬化する性質を利用して、噴き出してくるコンクリートをコテで押さえ付けるのです。

 いかに手作りなプリンかが分かってもらえるでしょうか。

 また、コンクリートはプリント違って、かなりの重さがあります。

 その側圧に耐えるため、型枠は鋼管で支えられています。

 正しい壁の厚みを保持するため、プリンの中ではセパレーターという鉄の棒によって、内外の型枠が固定されるのです。

 横60cm、建て45cmで、このセパレーターをレイアウトしています。

 完全に硬化が終わったあと、型枠を外した段階では、セパレーターの先端の白い樹脂部分が、コンクリートに埋まった状態で残っています。

 この部分をPコーン(通称ピーコン)といいます。

 樹脂性になっているのは、後でコンクリート内から取り出しやすいからです。 

 外部においては、このPコン跡のくぼみは雨漏りの原因になるので、モルタルで埋めてしまいます。

 外壁から5mmの面落ちで仕上げますが、パネルの継ぎ目とこのわずかな陰影が、コンクリート打ち放しの表情を決定付けるのです。

 建築設計と料理は本当に似ていると思います。

 コンクリトー打放しは、手作りプリンとかなり近しいのです。

文責:守谷 昌紀

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永住したい打ち放しのマンション「R Grey」‐1‐プロローグ

 当社の隣に、弟がマンションを建てると書いたのが、2016年の9月

 あれから半年。いつもながら難航した金額調整を経て、ようやく着工することになった。

 計画開始時点では、父が昭和56年に建てたガラス屋の倉庫が残っていた。

 昨年の10月初旬から、まずは解体をスタート。

 3週間かけて完了。

 更地になったあとの4ヵ月は、甥っ子たちの遊び場だ。

 そして先月下旬から、地盤改良工事をスタートした。

 プランは1LDKで、空間に拘りのあるシングル、もしくは若い夫婦に住んで貰えればと思っている。

 オーナーとなる弟は、木造3階建ても考えていたが、最終的には鉄筋コンクリート(以下RC)造を選択した。

 コンセプトは「長く住みたい」「永住したい」アパートメントハウス。

 共同住宅である以上「頑丈」「燃えない」「プライバシー」は最優先となる。

 RC造の壁式構造は、阪神淡路大震災でも一棟も倒壊していないといわれている。

 室内のフローリング以外、ほとんどの材が燃えない、燃えにくい材で構成している。

 遮音性能も含めて、3点全てにおいてRC造が他の構造を勝っている。

 しかし、木造、鉄骨造より躯体のコストがかかるのは明らかだ。

 それでも、RC造にできたのには理由がある。

 はっきり書くが、敷地は父の持ち物で、非常に安い賃料で弟が借りているからだ。

 共同住宅は収益のために建てられる。土地へのコストが圧倒的に安いので、家賃と比べて建物の質は間違いなく高いと言える。

 まだ最終的な家賃は決まっていないが、決定すればここでも公開しようと思う。

 全部で6住戸。1住戸はすでに予約をもらっている。

 この計画は、兄である私に設計を頼むのが前提となっていなかった。

 私としても、共同住宅に関しては非常に複雑な思いがあった。

 街に愛着がなければ、ゴミのポイ捨て、路上駐輪など周辺住人にとっては、プラスの要素はない。

 自分達が暮らす空間、建物、そして、街へと順に愛着を持って貰えるような建物でなければ、設計をしたいと思えなかったのだ。

 家賃のコストパフォーマンスが高い理由は先に書いた。

 この建物を好きになって貰えるかは、私達設計者、また施工者の能力にかかっている。

 竣工予定は今年の9月。

 春に次ぐ転勤シーズンに、沢山のオファーを貰うイメージをもって、計画は本格的にスタートする。

文責:守谷 昌紀

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