住み継ぐ「コンクリート打放し H型プランの平屋」‐5‐プランを上から眺めてみよう

 近代建築の三大巨匠のひとり、ル・コルビュジエは「住宅は住むための機械である」と言いました。

 住むという機能を満たす機械であるという意味です。

 快適に住むための機能は多々ありますが、光と風をいかに取り込むかは、最大の課題と言っても良いでしょう。

 旧家であり、敷地が大きなこの計画では、各部屋が全て外部と接するプランを考えました。

 東の中庭にある大楠は、あまりにも成長したため、枝を大きく落としました。

 そこから新芽がでて、更にそれらが紅葉しています。

 若干かわいそうではありますが、あたりがグッと明るくなったのもまた事実なのです。

 コンクリート打ち放しの壁式構造は、なかなかに時間が掛かる構造体です。

 鉄筋を組み、型枠を起し、その中に配管をし、そしてコンクリート打設。

 そこから硬化するまで養生が必要です。

 鉄とコンクリートがそれぞれの短所を補いあう、非常に強い素材で、木造や鉄骨でも基礎として使われます。

 全てが基礎のようなものですから、強いに決まっているのです。

 型枠工事に先駆けて、足場がすでに組まれていました。

 結構高かったのですが、上から見下ろしてみました。

 右手が南となる、H型プランが良く分かります。

 南棟の先には和の庭園が残っています。

 こちらはクライアントのご両親が暮らすエリア。

 この庭は緩衝帯にもなっているのです。

 「機械」という言葉の解釈は色々あります。

 「機械的に」という言葉には、淡々と無感情でといったニユアンスが強いでしょうか。

 しかし、コルビジュエが言ったのは「目的に向かって真っすぐに」と言ったニュアンスではないかと思っています。

 この計画は、方向性がなかなか定まりませんでした。

 「2階建て新築」→「前棟リノベーション」→「平屋新築」と実際に3度企画提案をしています。

 それぞれ、与えられた条件での中で「目的に向かって真っすぐに」と考えれば、どの提案にも迷いはありませんでした。

 ただ、恵まれた敷地条件を最も活かせるのは「平屋新築」だとも思っていましたし、高い足場から見下ろしてそう確信しました。

 水は高い所から低い所に流れるように、最後には行くべきところに行くのだと思っています。

 建築に、誘導や焦りは禁物なのです。

文責:守谷 昌紀

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