カテゴリー別アーカイブ: C27 「伊東内科クリニック」

「伊東内科クリニック」-18-カルテのIN、OUT

 先週金曜日に続いて、火曜日も打ち合わせの為現場へ。

 工期も残すところ1ヵ月になりました。

 金曜日に、そろそろ秋の気配が……と書いたのですが、8月の最終日も暑い一日になりました。

 左官職人が、サッシと木材の間にモルタルを詰めています。

 トロ詰めと言いますが、これは木造用サッシにはない作業です。

 大開口を実現するために、鉄骨造用のサッシを使っている部分があるのです。

 トコロテンを押し出すような器具で、モルタルを注入して行きます。

 待合の正面は、ガラスを待つのみとなりました。

 診察室と受付の間には小さな窓があります。

 「伊東内科クリニック」は電子カルテの予定ですが、それでもA4大のペーパーのやり取りもあるそうです。

 小さな窓の中央に仕切り板を入れ、INとOUTで使い分ければ、という発想です。

 こつこつとディティールを積み上げて行きます。

文責:守谷 昌紀
建築家 / 大阪  一級建築士事務所 アトリエm

「伊東内科クリニック」-17-診察室には

 お盆を過ぎてはや2週間。

 高校野球が終われば、夏はあっと言う間。国語の先生が言っていた言葉を思い出します。

 空も濃紺からスカイブルーへ変わったような。

 待合室も下地の大半が出来上がりました。

 曲面壁の前に待合ソファーが来るのです。

 昼からはクライアントと、造り付け家具の打合せ。メインは診察机です。

 ここまで、ケーススタディーを繰り返してきました。

 最終形が見えてきたので、実寸でベニヤを切ってもらったのです。

 早速、診察を再現です。これはクライアントに座って貰う他ありません。

 普段は、全く感じないのですが、患者さん(役の工務店の若手)の手を持つ感じが、完全にお医者さんのものでした。

 力が入り過ぎず、緩すぎず。無駄な力感が無いのです。

 当然なのでしょうが、流石だなと感じました。

 診察室では、血圧を測ったり、問診したり、パソコンを打ったりと、行動は複雑です。

 それらに最適で、しかも患者さんと良い距離感を保てる形状を探ってきました。

 中央の出っ張りを更に95mm引っ込めることにしました。

 納得できるところまで、徹底的にいきます。

 その後は、床材や待合ソファーの相談です。

 色、素材にも勿論こだわっています。

 無難でなく、とんがりすぎず、このクリニックのコンセプトを表現できる、素材と色の組み合わせを探ります。

 全てを満足する、一本のラインがどこかにあるはずです。

文責:守谷 昌紀
建築家 / 大阪  一級建築士事務所 アトリエm

「伊東内科クリニック」-16-野江

 お盆前では、クライアントと最終の打合せ。

 現場までは地下鉄で行きますが、野江という街は本当に便利なところです。

 梅田から地下鉄で9分、京橋から京阪で4分。

 車でも梅田から10分程でしょうか。

 最寄駅の野江内代からは歩いて2、3分。

 そんなこともあり、今回はオープンハウスならぬ、オープンクリニックを開催しようと考えています。

 開院してからは、なかなか無い機会なので、近くの方は是非遊びに来て下さい。

 詳細はまたお知らせします。

 歩道に置かれた、鉢植えのヒマワリ。

 疲れ果てたものもあり。

 元気なものもあり。

 この花、どうしても人の姿を連想してしまうのです。 

文責:守谷 昌紀
建築家 / 大阪  一級建築士事務所 アトリエm

「伊東内科クリニック」-15-3×6板

 内部工事が一段落し、外壁工事が始まりました。

 「伊東内科クリニック」は目地のない、大きな壁面で構成されています。

 目地がないとは言え、使われる材料は人が扱える大きさ。

 3×6(サブロク)板と呼ばれます。3尺×6尺のことで、910mm×1820mm。

 建築現場では古来よりの尺寸法が一般的なのです。

 現場内には、所狭しと3×6板のボードが積まれています。

 階段は鉄筋コンクリート造なので、型枠工事も始まりました。

 ちなみに、これらも3×6板の合板で作られます。

 よって現場に未だ階段はなく、上がり下がりはハシゴ。 

 これは大工さんの手製。エレベーターシャフトの中に移動されていました。

 若干怖さが軽減されました。 

 この時期の現場は、本当に暑い。

 飲み物の差し入れがあり、私も一本頂きました。

 夕方の現場では「今日のビールは上手いで」という声が聞こえてくるのです。
 
文責:守谷 昌紀
建築家 / 大阪  一級建築士事務所 アトリエm

「伊東内科クリニック」-14-お年寄りにとって

 クライアントと、現場で話しをしていた時のこと。

 「おしゃれだけど、お年寄りにとって居心地は……みたいなのは、避けたいですね」という話になりました。

 お年寄りであっても、子供であっても、居心地の良い、何か楽しみのある、そんな空間にします、と答えました。

 中学生の時、古文の先生が「お子様ランチはダメ。小学生だって、中学生だって、ビフテキが美味しいに決まってるんだから」と言いました。

 何でも本物が良いという話ですが、そんな建築、空間を目指します。

 内部間仕切り壁が随分出来てきました。

 今回は電子カルテが導入されます。そのネットワークは全てメインサーバールームに集まってきます。

 このあたりの設備は、クリニックならではのもの。

 先日のクリニックオープンの横断幕に続いて、当事務所も掛けさせて貰いました。

 相談すると快諾してくれたのです。

 このクリニックの事を、アトリエmのことを街にアピールしたいという気持ちからです。

 私も40歳になりました、迷いなく真っすぐに行動したいと思うのです。

文責:守谷 昌紀
建築家 / 大阪  一級建築士事務所 アトリエm

「伊東内科クリニック」-13-横断幕

 現場も待ち望んでいた梅雨明け。

 明けてしまうと、雨が待ちどうしいような猛暑が続きます。

 一雨欲しいと言ったら、勝手過ぎるでしょうか。

 光庭からも完全な青空が。

 クリニックの南、およそ20mにも建築中の現場があります。

 こちらは薬局が建つ予定なのです。

 断熱材が入り、内部の暑さは随分ましになりました。

 ただ雨よけのシートが風を妨げるので、作業は大変です。

 クリニックの天井高さは3.5m。

 一般住宅が2.4~2.5mとすれば、1m高くなります。

 まだ階段がないので、大工さんが作ったハシゴが掛かっていますが、下りる際はちょっと緊張します。

 昼一番に着いた時にはなかった横断幕が、入口の上に付いていました。

 11月にOPENするには9月末に完成し、様々な検査を順次受ける必要があります。

 建築基準法、バリアフリー法、保健医療関係等々。

 全てクリアして、秋の開院を迎えるのです。

文責:守谷 昌紀
建築家 / 大阪  一級建築士事務所 アトリエm

「伊東内科クリニック」-12-開口部

 今か今かと梅雨明けを待ちますが、日曜日も雨。

 お昼前から打合せがありました。

 地下鉄の野江内代駅を出ると、叩きつけるような雨。

 日曜日の現場はひっそりしたものです。

 壁が出来上がりつつある2階は、随分感じが出てきました。

 しっかり掃除がされていたので、一人ひっそり感を楽しみます。

 クライアントが見え、打合せを始めました。この日は、スイッチ類の位置、開口部が中心です。

 開口部は、建物の目と考えています。

 その建物の感情というか表情を決定付ける重要jな場所。

 「開口部を狙え」は吉村順三の言葉だったでしょうか。

 前々回だったか、現場に積んであった角材に、皆で腰掛けました。

 その時、施工会社の社長が「伊東さん勝手に座ってすみません」と。

 ここにある物は、全てクライントの物。許可も得ずに……という冗談だったのですが、思わず笑ってしまいました。

 しかし考えてみればその通りです。角材であるうちは施工会社のもの、壁になったらクライアントのもの。

 そうではない考え方はとても良いと思うのです。
 
文責:守谷 昌紀
建築家 / 大阪  一級建築士事務所 アトリエm

「伊東内科クリニック」-11-中間検査

 今日で6月も終わり。明日からは2010年も後半戦です。

 しかしこの時期の現場は暑い。

 梅雨時なので、現場には雨除けのシートが張られています。これで風が抜けないのです。

 職人さんと話していると「幾ら水分をっても全部汗になり、トイレに行かない」と言っていました。

 2階は外壁面が出来上がりつつあります。光庭を囲んで、主要な空間を配置しました。

 この日は、昼過ぎから中間検査でした。
 
 建築基準法の躯体検査と、住宅かし保険の屋根工事の検査が同時に行われます。検査機関の方も当然大汗です。

 この柱の足元には、土台と柱を緊結するホールダウン金物。

 この耐力壁は、筋かいと構造用合板で構成されます。柱頭にはホールダウン金物。

 検査では主にこのような耐力壁と、屋根工事部を見て貰うのです。

 全て問題なく、中間検査の検査済証を貰えました。

 現在は光庭にハシゴを掛けて上り下りしています。

 途中かから待合を見下ろすと、R状の壁が良く分かります。

 土曜日の棟上式で、お札は現場の一番高いところに納められました。

 ここから内装工事が本格化していきます。

文責:守谷 昌紀

建築家 / 大阪  一級建築士事務所 アトリエm

「伊東内科クリニック」-10-上棟式

 建方工事は先々週に終えていましたが、上棟式は6月26日(土)に催されました。

 10年に渡る海外生活を終えたクライアントが6月22日(火)に帰国。それで、この日程となったのです。

 当日は雨でしたが、防水工事が終わっているので、さほど問題はありません。

 まず、この日を迎えられたことが何より。雨降って地固まるです。

 施工会社の社長の進行で、お札を棟木に貼り、そちらに向かって2礼2拍1礼。

 クライアントには日本酒を四隅にまいて頂きました。参列者の皆さんで乾杯しますが、その前にご挨拶をお願いしました。

 こういった式典をしたほうが良いですかと、尋ねられた場合「気持ちの問題なので、どちらでも良いと思います」と答えます。差し障りの無い答えですが本心です。

 出来れば催したいと言う方は是非と思いますし、そういった事は苦手だという方が無理に開くことは無いと思います。式典の有無で仕事に差がある事は無いので、より気持ちの強いほうで、と思うのです。

 もし一点だけ開いたほうが良い点があるとするなら、自分の言葉で現場の方々へ思いを伝えられるという事でしょうか。

 その後、クライアントからお土産が参列者に手渡されました。

 午前中からの式典だったので、現場の方はこれを機に仕事へ戻りました。こういった日は、躯体が出来上がった達成感、安堵感から、現場が良い雰囲気になるものです。

 ひと時ですが、普段の喧噪とは違う緩やかな空気が流れていました。
  

 待合の天井高さは3.6m。その正面にある光庭が、この建物の中心です。

 現在は現場の休憩スペースとなっています。

文責:守谷 昌紀

建築家 / 大阪  一級建築士事務所 アトリエm

「伊東内科クリニック」-9-建方

 6月13日の日曜日、近畿地方も梅雨入りしました。

 3日後の6月16日(水)が建方。

 心配していましたが、梅雨の合間を縫って晴れ間が広がりました。

 レッカー車を据え、工場で事前に加工が済んでいる木材を組み上げて行きます。

 以前は、現場でノミやカンナで刻んだものを、先に済ませるのでプレカットと言います。

 一抹の寂しさはありますが、後継者不足、コストダウン、精度などなどの理由を考えればやむ得ないのかもしれません。

 とは言え、やはり最終的には人の経験と技術です。

 レッカーで吊り上げた梁をゆっくりと下ろして行きます。

 中央にある柱を支点にして、掘り込まれた溝に、梁を押し入れます。

 支点がある場合、反対の人は持ち上げ、こじる感じです。

 そのあとは大きな木槌で叩き込みます。

 梁の上を歩く姿は、さながらスパイダーマン。

 思わず手を合わせたくなるのです。

 建方は大工さんを長とした、チームワークが全てです。

 都会の真ん中でレッカーを使うには、何重にもなった電線の間を通し、しかも左右に動かし、上げ下げします。神業と言えば大げさかもしれませんが、熟練の技には間違いありません。今回は複雑な構成なので、あと2日は掛かりそうです。

 現場日記を読んだ方から、どんな建物になるんだ?イメージを見せて欲しいと、コメントを貰いました。

 いつも勿体つけていたのですが、模型写真をUPしてみます。

 機能にあわせて直方体と曲面を組みあわせて建物を構成しました。

 曲面壁の部分に待合室があります。 

 待合の正面には受付。その後ろには光庭があります。待ち時間に、少しでも自然を……と考えたのです。
 
文責:守谷 昌紀

建築家 / 大阪  一級建築士事務所 アトリエm