四代住み継ぐ「薪ストーブのある入母屋の家〈リノベーション〉」‐1‐プロローグ

【本計画は、完成後の現場日記公開です。今回は2020年9月15日時点の記事です。】

区画のゆったりした閑静な住宅街。

昭和37年頃に開発された地域で、建物もその時期に新築された。

南にある庭もよく手入れされ、住まい手の愛着が伝わってくる。

各部屋は、建物中央に伸びる廊下の南北に配置されていた。

南の部屋で、最も玄関に近いのが応接間。

この年代の家なら、応接間がもっとも環境の良い位置にあることが殆どだ。

応接間の西に並ぶ和室も、同じく南面しており条件がよい。

最近までは主だった住人が居らずで、親族が集まった際の子供の遊び場となっていたそうだ。

和室の北に繋がるのがダイニング。

屋根の北面にトップライトがある。

当時としてはかなり思い切った試みだったと思う。

家族で暮らしていたクライアントは、「あまり暗いと感じたことはありません」とのことだった。

祖母、両親、そして本人が暮らした、築58年の日本家屋を撤去して建て直すという選択と、フルリノベーションという選択があった。

結果として、フルリノベーションとなった理由は色々あるが、「愛着」が一番大きかったのだと思う。

形状はそのままに、まずエントランス位置を反転させた。

それに伴って動線が大きく変わるが、それが劇的に景色を変えてくれるはずだ。

主だった部屋は全て南の庭に開き、かつ動線にも光を落とすことを考えた。

リビングの一角には薪ストーブがある。

高性能の機種で、炎がゆらぐ風景と共に暖房器具としての期待も高い。

これまで何度もトライしたのだが、ようやく実現できることに私がワクワクしている。

活躍の時期はもちろん冬。その時期までの完成は少し難しいだろうか……

既存ストックの活用が叫ばれるが、現実的にはそこまで加速している感はない。

理由は非常に簡単。

既存建物を解体し、新築するほうがビジネスとしてリスクが少ないからだ。

そこは物創りに一生を捧げた50歳の建築家と、63歳の監督の意地を見せたいと思う。

物と人を愛することが、物創りの原点のはずだから……

四代に渡って住み継がれる、住み継ぎたいと思って貰えるものにしたいと思う。

規模としてはかなり大きなリノベーションだが、桜が咲く頃までには完成させたいと思う。

文責:守谷 昌紀

■■■1月27日 『Best of Houzz 2021』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞 

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