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(仮称)トレジャーキッズたかどの保育園‐7‐空間に奏でるメロディー

 現場へ向かう途中、耳元でガサッと音がして、飛びのきました。

 見ると子猫が飛び降りてきたよう。

 猫が外に出てくれば、春の足音も多少大きくなってきたということでしょう。

 トレジャーキッズたかどの保育園の園児室は、全部で5部屋あります。

 1階は「0歳児室」「1歳児室」「2歳児室」の3部屋。

 いずれも縁側のような廊下を介して園庭に面しています。

 2階は「3、4歳児室」「5歳児室」の2部屋。

 これらの間に、広いホールがあります。

 それらの仕上げを確定する前に、コンセプトを全て整理してみました。

 こちらの園は、エントランスに入ってすぐのところに、500色の色えんぴつが飾られます。

 それで、こんなメインコンセプトはどうでしょうかと提案してみました。


『人はひといろじゃない。白木の園で自分色をみつけてください。

 たっぷりの太陽を浴びて、立派なげん木に育ってほしい』

 外観は、白木を基調とした、明るく、優しい建物に仕上げていくつもりです。

 年齢とともに、しっかりした色の木に育っていくという物語を考えました。

 園児室も白木を基調としていますが、扉と家具は、その物語に沿った素材をセレクト。場所性を明確にしました。

 扉材、家具材、シート材と違ったメーカーから、素材を探し出すのは、なかなか骨が折れるものです。

 しかし、こんなところから物語が生まれるのだと考えています。

 この部屋は、『もりのひみつきち』。

 コンセプトは以下の通りです。

 園全体を森とするなら、友達同士が集合する隠れ家のような空間。

 全体行動がちょっと苦手な園児くんの遊び場だったり、時にはメソメソしたい園児さんも居るはず。

 先生と父兄だって、狭い場所だからこそ話しやすいこともあるかもしれない。

 森の中にある、小さな野原をイメージしているので、床も壁も草色とした。

  秘密基地らしい物を置いて貰えるとなお良い。

 次は、『あおぞらえほんしつ』。

 ホールから窓をのぞくと、青い壁が見えます。(壁工事はこれからです)

 ここは、トップライトで光を確保している空間なのです。

 コンセプトは以下の通り。

 階段を上がったホール向きに腰窓があり、そこから内部を垣間見ることができる。

 西面の壁のみに、水色のアクセントクロス。

 床は、少し濃い青のフロアリュームを。

 空を連想させる爽やかな空間に。

 青は心を落ち浮かせる色。爽やかな絵本室になると思います。

 そして、お遊戯会などでは園児室と繋がり、大空間となるのが『こもれびひろば』です。

 5.4m半径の柔らかな曲面壁の上部、ハイサイドウィンドウからは、1階へ落ちるトップライトの光が、ホールにもこぼれてくる。

 屋根、壁を透過しての光は、森の木漏れ日に似ている。

 その木漏れ日のもと、あそび、語らって貰えたら……

 曲面壁の部分のみ、優しく鮮やかな黄緑の壁紙を貼り、「木漏れ日広場」としてみたい。

 曲面壁はこれからですが、酸素を供給する緑は、まさに自然の象徴。

 人は緑をみると心癒されるのです。

 デザインとは、誰かと共有できると信じるからこそ意味があると思っています。

 その時に、押しつけすぎず、強引になりすぎないよう心掛けているつもりですが……

 空間に私が奏でたメロディーは、園児のみなへ届くのでしょうか。

 工事は終盤に入っていきます。

文責:守谷 昌紀

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