タグ別アーカイブ: 滋賀 建築家

「滋賀の家」‐8‐人いきれ

 今日の大阪は36度。

 37度の予報もあり、もう40度が目前。まるで砂漠の中にいるようです。

 いつもは涼しい現場も、昨日は35度近くあったでしょうか。

 汗が噴出してきます。

 クロスに糊をつける機械がサンルームに据えられました。

 仕上げ工事も佳境に入りました。

 内装、家具、塗装と、多くの職人が入り、人口密度はかなり高め。

 人いきれで蒸せかえっています。

 塗装工事も終盤の仕事です。彼らは、青・赤・黄のペンキがあれば、どんな色でも作ります。

 初めて現場で見たときは、感動しました。感覚がものを言う、これぞプロの技術。

 「いきれ」は「熱れ」が語源のよう。最終的に出来を左右するのは、熱の総量です。

 7月末の引渡しに向けて、今年も熱い夏になりそう。

文責:守谷 昌紀

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「滋賀の家」‐6‐親子大工

 6月4日(水)、関西の梅雨入りが発表されました。

 火曜日は、梅雨入り前の最後の晴れ間。

 風が気持ちよい、最高の現場日和でした。


 リビング・ダイニングには大きな吹抜けがあります。

 前回までは足場があったので、ぐっと開放的になりました。


 階段も完成。

 2階に上がると、吹抜けに面したセカンドリビングがあります。

 ここから、南に広がる森が見下ろせるのです。


 1階は棟梁の担当。

 2階は息子さんが担当。

 こういったケースは結構あります。親子で同じ仕事をするのは私の憧れでもあります。

 親子大工に支えられ、梅雨が明けるころには完成の予定。

文責:守谷 昌紀

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「滋賀の家」‐5‐景色を切り取る

 3月からUPしていなかった滋賀の家。

 工事は順調に進んでします。

 桜の見ごろは4月中旬くらいでした。土手に咲く見事な1本。

 堀は淡桃色に染まります。

 反対の土塁側が南からの景色。

 庭にはスイセンも咲いています。

 これらの景色をどう取り込むか。

 開口部は慎重に計画しました。

 南には、サンルームも張り出しています。 ここでお茶を飲みながら、庭で遊ぶ犬を眺めている。

 そんな景色をイメージしています。

 深い位置に切られた上下の開口。 それらにはさまれるのはテレビ台です。

 テレビがあまり前面にでてこないよう、考えました。

 どこまで光をコントロールできているか。 どのような景色が切り取られているか。

 次回打合せにはシートが取れ、その結果がを見れそうです。

文責:守谷 昌紀

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「滋賀の家」‐3‐親子は風見鶏

 先週水曜日は、配筋検査で野洲の現場へ。

 琵琶湖対岸に見える、比良山系もうっすらと雪化粧。

 建物が完成すれば、2階からの景色は更に素晴らしいものとなるはず。

 住宅瑕疵保険の検査は、問題なく合格。朝10時に着いた時から、直接の光が当たっていました。

 ここは、戦国時代まで城だった敷地。周囲は人工の土塁に囲まれています。

 その上に杉が育ち、その高さをどう解釈するかがポイントでした。

 その土塁の裏は矢場となっています。矢場とは、戦に備え弓矢の練習をする場所の事。

 この場で、400年前まで実際に矢を射ていたのです。

 打ち合わせに、離れの一部屋を借りていました。そこで出して貰った石油ストーブがかっこいいのです。

 聞くと、亡きお父さんの愛用品で「アラジン」というイギリス製のもの。石油の減りも少ないという事でした。
 
 家に対し、夢やこだわりを持っている人が私たちのクライアントです。それらは、原体験の良かったところ、そうで無かったところが、基準となっていることがほとんどです。心理学者で、文化庁長官もつとめた河合隼雄は、著書にこう書いています。

 「親子は風見鶏のような関係。同じ方向を向くか、反対を向くかになる。それほどまで影響が強い」
 
 よって両親、祖父母から、好み、センスにも多くの影響を受けていることになるのです。こんなストーブがある家なら間違いありません。 

 時代が時代なら、この敷地には入れなかったはず。良い時代に生まれたものです。

文責:守谷 昌紀

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「滋賀の家」‐1‐プロローグ

 2013年も1ヵ月を切りました。電話があったのは3月下旬のこと。

 滋賀県で住宅の新築を考えているという相談でした。

 普段の流れとして、まずは事務所で話しを聞かせて貰います。そして、求めあえる可能性があると感じられれば、次の段階へ進みます。

 これは自分で作ったルールですが、今回はまず伺いました。理由の一つは遠いこと。もう一つの理由は、それ以上に敷地を見てみたいと思ったから。
 
 元城だったそうなのです。

 始めて訪れた時は、梅が咲いていました。しかし、スタートしてから、次々に課題が出てきます。

 まずは市街化調整区域であること。この城は、この場所500年以上存在しているよう。

 それが、後に地図上に引かれたラインによって、次々に規制が出てくることを、納得してくれるクライアントは居ません。

 行政の立場上、そう言わざる得ないのは分りますが「市街化調整区域に建物は建ててほしくない」という言葉をどう伝えればいいのか……

 思い出すと愚痴しか出てきませんが、最終的には行政の担当者も協力の上、何とか母屋を建て替える計画で、進むことになりました。

 山を背にした敷地は、背後に土塁がめぐらされています。高さ5mはあるでしょうか。

 正面には堀があり、合せてこの敷地を守ってきたです。

 この夏まで、堀には鯉が住んでいまいた。しかし、この地域を襲った秋の豪雨で土砂が流入。全滅したそうです。

 自然は過酷で、社会も過酷です。

 この地を守るという強い意思がなければ、この地が脈々と受け継がれることは無かったでしょう。クライアントもさぞかしと思いきや……以外にもさっぱりした方なのです。

 しかし私としては、ご先祖様に顔向け出来るよう、これからも受け継いで行きたいという家を設計しなければなりません。

 次の夏には、建物の奥深くまで光が届く、眺めの良い家がここに建っている予定です。

文責:守谷 昌紀

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