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「阿倍野の長屋」‐10‐アドリブのジャムセッション、それが現場監理だ

■10月3日(土)13:00-15:00高槻高校(母校)文化祭の相談コーナーに参加します■

 何故か綱渡り竣工が続いた2015年の前半。

 引越し屋さんが引くくらい工事をしていた前回。「阿倍野の長屋」も、ようやく竣工検査を迎えることになりました。

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 2ヶ月前から、生活が始まっているので、今更検査もないのですが。

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 しかしけじめは肝心です。

 この計画、若いご夫妻がのセンスを、形にすることに拘りました。

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 レンガ、タイルの貼り方なども、奥さんが響き、選んでこられたものを尊重しました。

 全体のバランスを私が取ったという感じです。

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 クライミングウォールのホールドも「カラフルは止めて、淡色のグレーで行きたい」というのも、クライアントからのアイデア。

 1も2もなく賛成しました。

 こういったところで、少し主張を抑えると、空間のまとまりがとても良くなります。

 手前に見えるのは光庭。四軒長屋の中央に外部を挿入しているのです。

 反対に、こういった空間構成や、環境を紐解くのは私達の仕事です。

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 1年生になったばかりのお兄ちゃんは、早速、練習の成果を披露してくれました。

 こういった、プラスのオプションは、減額の際に無くなる場合が多いのですが、これも、夫妻のこだわりによって実現した箇所です。

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 四軒長屋の中央二軒。加えて北向き。

 それを解決するには、この方法しかないと考えていました。

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 ロフトとLDKはスキップフロアとなっており、緩やかに繋がっています。

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 中学生くらいまでは、子供部屋として使えると思います。

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 静かになったなと思ったら、お兄ちゃんはロフトで本を読んでいました。

 ここは、何となく目線が切れる空間です。家族の個性にもよるのですが、こういったしつらえが、とても大事だと考えています。

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 奥さんが最後まで迷っていたのが、キッチン横にある洗面壁の目地。

 最終的には、私の推した白目地にしてくれました。これは、とても感謝してもらいました。

 リノベーションの場合は、特に全てがコントロール出来る訳ではありません。

 現場は刻々と変化しますし、施工者の考え方もあります。

 そこに立ち、空間を感じ、クライアントが喜べる、最高の答えを求めなくてはなりません。

 アドリブのジャムセッション。それが設計に対し、監理という仕事なのです。

文責:守谷 昌紀

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「阿倍野の長屋」‐5‐この道45年のスーパー大工

 阿倍野からはハルカスが徒歩圏内。

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 繁華街に遠からず近からずで、住みやすい街だと思います。

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 前回UPした、2階LDKの写真。

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 一昨日はこの状態へ変わりました。

 まさに、この長屋が劇的に変わるタイミング。

 サッシがついている部分を光庭とするため、屋根が取り払われたのです。

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 子供さんが遊んでいたロフト部分に光が差しています。この部分は屋根を補修するエリアです。

 昨晩は晴れ予報だったのが、運悪く深夜に雨が降り、監督、棟梁とも現場に駆けつけたとのことでした。

 自然の中で働くというのは、本当に大変です。

 しかし、それらをどれだけ内部に近づけることが出来るか。これが、私達の永遠の目標なのです。

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 脚立がある部分は洗面になるので、再び屋内に戻ります。

 現場にいる間に、屋根組みが始まりました。

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 棟梁の顔が普段より引き締まって見えるのは気のせいではないでしょう。

 この道45年。しかし「これだけのリノベーションはやったことがない」と。

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 この現場も「滋賀の家」同様、親子大工です。しかし。このところは、助っ人が来ての3人体制。

 新しい構造材と、旧構造体が入り乱れ、見れば見るほど、なんとダイナミックなリノベーションなのかと思います。

 私が設計したのですが。

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 長男君が、棟梁に手紙を書いてきてくれました。次男君も、心から楽しみにしているようです。

 2008年、フジテレビのスーパーニュースで「境内の中の家」を特集で放送して貰いました。

 神社の中の家で、大工工事のみ奥さんのお父さんが参加。しかも石川からというストーリーもあり、取材になりました。

 その時のフレーズが「この道50年のスーパー大工」でした。今回も、そのフレーズが蘇ってきます。

 「この道45年のスーパー大工」

 若者の建築現場離れが進みますが、これだけ遣り甲斐のある仕事は、そうそう無い気がするのです。

 文責:守谷 昌紀

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「阿倍野の長屋」‐4‐ダイナミックに、劇的に、遠からず、近からず

 昨日、BSで「劇的ビフォーアフター」私の担当回が放送だったようです。

 こちらの家族は、「住之江の元長屋」も見学済み。しかし、この計画こそ番組以上に番組らしいと思います。

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 4軒長屋の中央2軒を、フルリノベーション。

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 向かって左にあるのは駐車場。

 天井高さは、2m弱まで抑えています。

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 中から駐車場をみると、上階が下がっているのが分かるでしょうか。

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 この部屋は、ご主人のお母さんがゴロゴロ出来る部屋として計画しました。

 小柄な方で、畳がよいとのことで、天井も2.2mまで抑えました。この部屋からLDKまでの階段が6段。メインテーマを体言する空間なのです。

 その距離、遠からず、近からず。

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 LDKから見渡した時、奥の部屋が沈んでいるのが分かるでしょうか。

 先に種明かしをすると、手前に見える黒いサッシの向うは中庭になります。

 光が差し込み、屋上へ続く外部階段が出来るのです。

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 天井高を押さえた、駐車場、お母さんの和室の上にあるのが、子供用ロフト。階段が出来る前に、すでに体験済み。

 それでも完成した時は、感激して貰う自信があります。
 
 設計した本人が、現場に幾たびに驚く位、ダイナミックな計画なのです。

文責:守谷 昌紀

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「阿倍野の長屋」‐3‐明るい家族に、明るい家を

 最近、どの施工会社に聞いても忙しい、忙しいと。

 世の中の景気が良いのか、優秀な施工会社と仕事をしているからか。

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 職人の手を確保するのが兎に角大変とのこと。

 ようやく腕利きの大工が現場に来てくれました。

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 この日はスイッチ、コンセントなどの位置確認でしたが、こちらの家族は、本当に皆が明るい。

 上のお兄ちゃんはこの4月から小学生。出来れば入学までに、と言われていたのですが、それは適いませんでした。

 計画はなかなかスムーズに進まないものですが、この明るさに随分助けて貰った気がします。

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 現在は仮住まいなので、本来の家に朝夕、お迎えをして貰っているのです。

 よって、この日の打合せはご主人のお母さんも見えて、5人全員がそろいました。

 リノベーションは、過程が面白いもの。この土壁を見て、何も感じない人はいません。

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 現場につき、細心の注意を払う必要はありますが、出来るだけ見に来て欲しいと思います。

 古いものに手を入れ、それがどこまで変わるのかを体感して欲しいと思います。

 また、ユニットでなく、手作りの家の良さは、必ず伝わると思うのです。

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 笑う門には福来る。

 笑顔と積極性だけが、全てを好転させてくれるはず。明るい家族に明るい家を、です。

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 模型の子供部屋は外していますが、必ず笑って遊んでくれると思います。

 2階に外部があるのが見えるるでしょうか。今回も、劇的にリノベーションしてみたいと思います。

文責:守谷 昌紀

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「阿倍野の長屋」‐2‐清き水の中で

 家を建てる動機はさまざまです。

 しかし、子供の成長に合わせて「思い切って建て替えようか」というケースが一番多いでしょうか。

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 この計画も、上の男の子が小学校に上がるまでに、という目標がありました。

 ただ、竣工は5月末となり、お兄ちゃんには2ヶ月間、苦労を書けることになってしまいました。

 下の男の子も、何度も一緒に来所してくれました。夜の打合せが多く、お弁当持参の回もあったのです。

 このおにぎりを見るだけで、幸せな家庭が想像できるのです。

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 現場は解体が終わりました。

 ここからは、大工の手による解体と、構造の付け替え工事へと進んで行きます。

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 築44年と聞いていましたが、奥の壁を見ていると、もう少し古いのかもしれません。

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 切妻屋根の場合、屋根裏はいつも宝の山。今回も当然狙って行きます。

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 リノベーションは調査が全てです。計画の最中、何度も現地へ足を運びました。

 夫妻が不在の時は、ご主人のお母さんが応対してくれます。

 いつもお茶菓子が置かれていたのですが、これは若奥さんが準備してくれたもの。

 ある時は栗の和菓子でした。毎回、趣向が凝らされているのです。

 お菓子が無くても、勿論全力で取り組みます。しかし、人の心を動かすのは、やはり人の心です。

 栗の和菓子から「期待してます」、熱いほうじ茶のポットから「寒い中お疲れ様です」というメッセージを感じ、より意気に燃えるのです。

 駆け引きや、疑いのない、清き水の中で仕事をさせて貰っていること。それこそが、私達にとっての誇りなのです。

 ただ、それには結果を出すのが必須条件となります。

 今回も簡単ではない計画です。熟練大工の到着が待ち遠しいところ。

文責:守谷 昌紀

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【News】
『大改造!!劇的ビフォーアフター』9月20日に「住之江の元長屋」再放送

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「阿倍野の長屋」‐1‐5段の距離がいいと思うんです

 2013年の3月。

 「大阪の住まい力アップ:第1回リフォーム・リノベーションコンクール」で「住之江の元長屋」が、最優秀賞を受賞した。

 イベントの一環で、オープンハウスを開催することになったのが、その年の9月。

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 結構な雨の中、夫妻は小さなお子さん2人を連れて現地に見えた。

 ご主人のお母様も一緒に来られ、その5名が「松虫の長屋」の住人である。

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 屋根上からハルカスが見えるこの地域は、古くからの住宅地で、密集している。

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 築44年、四軒長屋の中央二棟をリノベーションして住んでおられた。


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 光を求め、塔屋ができ、洗濯干し場が屋根上に出来る。非常に良く乾くはずだ。

 その洗濯干しは残しつつも、家の中を明るくしたいという相談だった。洗濯干し場は、いつも重要な課題なのだ。

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 北側道路を挟んだお向かいは、外壁が白で良い反射光を提供してくれる。

 これを活かさない手はないが、十分ではない。

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 大きく環境を変えようとするなら、屋根上部分から直接の光を取り込む必要がある。今回は2階に大きな光庭をとるプランを考えた。

 ご主人のお母様と同居になる奥さんが、その距離感を「5段くらいが丁度良いのでは」と言った。

 近すぎず遠すぎずという意味だが、絶妙の距離感だと感じる。

 連棟の中央に光をとりこみ、5段の距離がいい家。

 これが「松虫の長屋」のメインテーマである。

文責:守谷 昌紀

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【News】
■webマガジン『homify』12月15日に「Ohana」掲載
『大改造!!劇的ビフォーアフター』9月20日に「住之江の元長屋」再放送

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