「サンルームと吹抜のある家」-5-上棟、中間検査

 昨日、2回目の中間検査が終わりました。

 建方が始まったのが9月15日。柱や梁を組みあげる日数は、2、3日が一般的です。

 その後、筋違を入れたり金物を付けて、審査機関の中間検査を受けます。

 それらも含めて、建方から1週間から10日程でしょうか。

 最近の木造は、前もって部材が工場で加工されてきます。

 それで以前に比べて、建方の工期が短くなったのですが、今回は時間が掛かったのには理由があります。

 Rの壁面があったり、船の舳先のような梁組があったり、機械で加工できない部分が多くあったのです。

 これらの大工の手仕事による加工を、手刻みと言うのです。

 本来は、いわばここが腕の見せどころなのです。

 ようやく3階まで形になったのが、先月の終盤。

 そして昨日の検査となったのです。

 検査は主に構造体を緊結する金物と、耐力壁と言われる、構造体の強度に影響する部分のチェックになります。

 もちろん全てクリアしました。

 プロジェクト名の、吹抜も形になってきました。

 なかなか気持ちの良い抜け感です。

 舳先のような形をしているのはサンルームです。

 その屋根の下地が見事でした。

 手間の掛かったところは、確実のその手跡が残ります。

 人の目は、自然とそういう部分に目がいくものです。 

 サンルームと吹抜けはリビング・ダイニングを介してつながっています。

 昨晩は、クライアントと各部屋の仕上材の詰めをしていました。

 決めるといういことは、迷い、プレッシャーの掛かることですが、決まった跡のクライアントの表情は一様に晴れやかです。

 迷い考えた時間は、確実に空間に反映されるもの。迷って過ぎということはないのです。
 
文責:守谷 昌紀

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「四丁目の家」-14-虹色ウンテイ

 本当に暑かった今年の夏も終わり。気持ちの良い季節になって来ました。

 「暑さ寒さも彼岸まで」「天高く馬肥ゆる秋」見上げれば、今日も空の高い秋晴れです。

 25日(日)、26日(月)は、東京へ現場監理に行っていました。

 現在は、外壁仕上げ、内部仕上げを待つ状態です。 

 内部にはウンテイが出来上がっていました。

 「家で皆が遊べるように」と「健康のため」の目的で計画されたもの。

 2階の若夫婦世帯のみで、1階の親世帯にはありません。

 しかし1階のご主人も、背中を伸ばすのに良いかも、と言っていたのです。

 子供というのは、思ったままの感情を爆発させてくれます。

 つまらないものはつまらない、楽しいものは楽しい。

 創り手としては真剣勝負です。

 皆が順番に、チャレンジしてくれました。

 これだけ喜んでくれると、本当に考えた甲斐があります。

 色は原色で、のリクエストから虹の配色にすることにしました。

 子供部屋のロフト上からバルコニーまで続く虹色ウンテイです。

 若夫婦のご主人は、学生時代は体育会。

 それが元で出てきたアイデアですが、これは確かに楽しいし、体の為に良いし。

 あといくつか、家の中が楽しくなる仕掛けを考えていますが、次回には付いているかもしれません。

 次回は10月中旬に現地へ行く予定です。

文責:守谷 昌紀

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「あちこちでお茶できる家」-3-配筋検査

 酷暑と大雨の続いた8月が終わり、9月に入りました。

 月初は涼しい日が続きましたが、検査を実施した9月9日は30℃を超えました。

 現場には大型の扇風機とタープが設営されていました。

 ちょっと日影があるだけでも、随分違うでしょう。

 現場では、まず職人さんとコミュニケーションです。

 いい色に焼けたこの人がいるのは浴室が出来る場所。

 どうもひと風呂浴びた感じに見えます。

 鉄筋の径、本数、ピッチなどをチェック。
 
 問題なしです。

 敷地は閑静な住宅街ですが、隣が空き地になっています。

 結構な大きさのクリの木が植わっています。

 手前に塀を建て、これを借景にする予定。

 敷地が広い分、建物以外の余白と、近隣との関係が重要になってきます。

文責:守谷 昌紀

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「四丁目の家」-13-スイッチ、コンセント

 8月21日(日)は朝から雨。

 朝一番の新幹線で東京駅に着くと、肌寒いのです。

 昨日あたりから、急に寒くなったようで、まるで晩秋の気配です。

 9時半からお茶の水にある施工会社でまずは打合せ。11時頃に現場へ移動しました。

 外壁の下地が貼り終り、建物のフォルムが明確になってきました。

 先に渡していた事務所の横断幕は一番下に。

 この方が見やすいかもしれません。

 外回りが閉じられたおかげで開口部が明確になってきました。

 子供部屋の収納上には、高窓を設けています。

 この場所をロフトのように使えれば楽しいはずです。

 この日の打合せ内容は、スイッチ、コンセントなどの位置決め。

 前もって監督にデータを送り、紙型を貼ってもらいました。

 実物大の大きさで、実際の位置を確認して貰います。

 とても単純な手法ですが、これに勝る方法はありません。

 バルコニー一番奥の屋根には穴があいています。

 ここでにテントを張ったりすれば面白いのでは、という話から広げて行きました。

 一ヵ所、高窓に向かって太い下地が、同ピッチで並んでいます。
 
 ここにはウンテイを付ける予定です。

 子供のおもちゃ、大人のトレーニング器具。天井の高さによって様々な使い方ができるはずです。

 全ての打合わせの中で、この位置決めのが最も時間が掛かります。

 全コンセント、スイッチ、タオル掛け、ペーパーホルダー……と確認して貰うと4時間から5時間。この日も夕方になりました。

 特に小さいお子さんの居るクライアントには負担ですが、ああしておけば良かったを出来る限り少なくするのには、必須のなのです。

 救いはこの涼しさ。通常この時期なら、滝のような汗を流しながらです。

 これはとても助かりました。子供さんもどこかはしゃいでいたのです。
 
文責:守谷 昌紀

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「あちこちでお茶できる家」-2-地鎮祭

 先週の金曜日は地鎮祭でした。

 普段、現場に出られている人には「暑くて大変ですね」と言っておきながら、その大変さを改めて実感している次第です。

 この日は曇りでしたが、やはり夏は暑い。

 現地にはテントが設営され、縄張りも終わっていました。

 建物の位置も、このタイミングでチェックします。

 模型も一緒に持って行きました。

 一番上のお姉ちゃんが、伯父さんへ熱心に説明してくれました。

 何度も見た模型なので、大分愛着を持ってくれた、と思いたいです。

 式典は、神社によって意外に違いがあるものです。

 四方払いの際、色紙が入っていました。

 なかなか美しいものです。

 式典前半の鎌入れは、設計者が先に行います。

 しかし、その他は全てクライアントが初め。

 2回目ですというクライアントはあまりいないので、急に作法を聞いても結構緊張すると思います。

 玉串奉納でも、頭の中で「二礼、二拍、一礼。その後、玉串の茎の部分を時計回りに回して祭壇向きで」など、意外に覚えないといけないことが多いのです。

 私が心掛けているのは、出来るだけキビキビと、くらいです。

 間違っていたら、神主さんが指摘してくれますし、真摯に、誠意を持っていればそれで良いと思うのです。

 クライアントのお父さんから、何故建物が敷地に直角ではないのか質問がありました。

 この答えを上のお姉ちゃんが説明してくれ……という事はありませんでしたが、好条件を活かす為、建物を真南に向かわせたかったのですと、説明しました。

 式典が終わった頃に、雨がポツポツと降ってきました。今回も滑り込みセーフと言う感じでした。

文責:守谷 昌紀

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「四丁目の家」-12-月末出来高翌月80%払い

 現場監督のMさんから、写真が送られてきました。

 離れている分、いつも写真を心待ちにしています。

 建て方が終わり、外部合板貼りが終わりました。

 サッシ取り付け用の下地も出来上がっています。

 次に現場へ行くタイミングは、内部のコンセント、スイッチなどの取り付け位置の確認の際。

 そろそろクラアントと日程の調整をしなければなりません。

 今日は8月6日で月初と言えますが、月末月初の仕事として、出来高の査定があります。

 建て主と施工会社が契約する際には、その工事代の支払方法を決定しなければなりません。

 当事務所が積極的に勧めているのが、タイトルにある「月末出来高翌月80%払い」です。

 例えば「4月の工事が100万円分終わった」と、施工会社から報告があったとします。

 これを私達が、報告通り終わったかをまず確認します。

 それが確認できれば、100万円の80%を5月に建て主に請求できるというシステムです。

 緑色が施工会社からの報告、赤が私達の査定です。完全に一致しました。

 ちなみに残った20%は翌月に合わせて請求できます。

 これらの査定が終われば請求書が一旦当事務所に送られてきます。

 この請求金額を承認しましたと、押印し施工会社を送り返します。

 これを建て主に送り、正式な請求となります。

 出来上がったものに対しての8割分を支払い、振り込みが5月15日だったとすると、更に工事は進んでいます。

 もし施工会社になにか不測の事態があったとしても、建て主のリスクは最小限に出来ると考えているのです。

 それなら、完成時一括払いが一番良いことになりますが、これは施工会社が工事中、各業者への支払を工面するために借入が必要になるかもしれません。

 このようなプラスアッルファは見積りに反映される可能性があるので、健全な経営状態の施工会社が納得できる条件を探ったのが、この方法なのです。

 最も、ローンの関係で銀行が従来からの風習である、着工時1/3、棟上げ時1/3、完成時1/3のような条件を求めてくる場合もありますから、いつもこの方法ではないのですが。

 現在は、競争見積り参加の打診をする際に、この条件を書面で明示したうえで、参加、不参加を問うています。

 当初この支払方法を導入した際には「厳しい」「有難い」と施工会社からの反応はまちまちでした。

 そこで学んだのは、答えは見る方向によって変わるという当たり前の原則。施工会社を信用していないのではありませんが、設計者にとって建て主の保護は第一の目的なのです。

文責:守谷 昌紀

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「サンルームと吹抜のある家」-4-基礎配筋、受入検査

 7月末に基礎の配筋検査が行われました。

 今回は「住宅瑕疵保険」と「建築基準法」の検査です。

 審査機関の担当者、現場監督と、構造図通りに配筋されているか順にチェックしていきます。

 鉄筋の径、本数、長さ、ピッチ、かぶり厚(コンクリート面と鉄筋の距離)、全て確認し、無事合格しました。

 中間検査から3日経ち、工程は基礎のコンクリート打設です。

 ポンプ車のホース内は、コンクリートの通りが良くなるように、一度モルタルを流しておきます。

 ミキサー車が到着。

 現場は一気に活気付くのです。

 コンクリートの受入検査も始まりました。

 「塩分濃度」と「試験体の強度」は、後日結果が出ます。

 「硬さ」と「空気量」は基準値内で合格でした。

 バイブレーターを使って、奥から順に生コンを流していきます。

 他の面より530㎜掘り下げたこの部分には、マンタ型の浴槽が据付けられます。

 この浴槽の高さには拘ったのです。

文責:守谷 昌紀

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「あちこちでお茶できる家」-1-プロローグ

 当事務所の設計期間は結構長い。

 決して褒められた事ではないが、恥じるほどでもないと考えている。より多くの会話をかわすことが重要だと考えるからだ。

 本計画は2009年の3月にスタートしたが、着工まで2年4ヵ月掛かっている。しかしこれは上記の理由ではない。

 クライアントは、以前から敷地をもっており「子供が小学校に上がるタイミングで引っ越しを」と考えていたのである。

 ご主人の実家は、農家の家系(現在は兼業)。奥さんの実家は太平洋に面した宇和海の漁師。

 共に土間が大きな役割を果たしていたという。この家にも大きな玄関土間が計画された。

 開け放たれた土間、リビング、ダイニング、そして庭。

 家中のあちこちでお茶の出来る家にしようというテーマが出来あがった。

 内部は思い切った色使いの家具でカラフルに彩られた空間がある。

 「あちこちでお茶できる家」竣工は今年の年末。

 真夏にスタートし、今冬完成する。

文責:守谷 昌紀

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「サンルームと吹抜のある家」-3-湿式柱状改良

 住宅瑕疵保険、加入の義務付けは一昨年の10月のこと。

 それに伴い、構造計算が必要な建物は、地盤調査が必須となりました。

 この計画も、3階建にはやや耐力が足らず、地盤改良が必要となったのです。

 しかし、地中4.5mに固い地盤があることも分かり、湿式の柱状改良を実施することになったのです。

 地盤改良の方法は色々あります。

 湿式の柱状改良は住宅の場合最も一般的な工法と言えます。

 今回は基礎下に60cmの直径で4.5m、29本箇所です。

 まずは注入するセメントミルク分の土を取り除きます。

 それから設計深さ4.5mまで掘り進み、セメントミルクを注入。それを土と撹拌するのです。
 

 セメントが硬化すると、直径60cmのコンクリートの杭が29本、4.5mまで埋まっている格好になるのです。

 これは既成のコンクリート杭や鉄杭を打ち込むのと比べると、騒音、重機の大きさ、などにメリットがあります。

 保険の義務付け後、地盤改良会社の競争も当然激しくなりました。

 健全な競争の下、適正な金額を提示できる会社だけが、リーズナブルな利益を積み重ね、存続できるのは、どんなジャンルでも同じ。

 地盤改良は本当に安くなりました。
 
 言うは簡単ですが、各企業のたゆまぬ創意工夫が、これらを実現したと言えるのです。

文責:守谷 昌紀

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「四丁目の家」-11-けらばと破風と鼻隠し

 関東も梅雨が明けて一週間。

 監督からの写真が送られてきました。屋根の下地、野地板が貼られました。

 前回、7月4日の打合せで、結構時間を使ったのが屋根の納まり。

 屋根は雨を建物に入れないのが最大の役割ですが、他にも色々な要素を含んでいます。

 屋根内の空気の流れは大変重要なところ。

 片流れの場合、温かい空気が水上へと移動し排出するのが理想です。

 そのルートをしっかり確保出来れば、屋根の温度上昇は随分抑えられ、エネルギー負荷の軽減につながるのです。

 また屋根の側面部(妻側とも呼びます)付近を「けらば」と呼びます。

 けらばの一番端にある材が「破風」。

 写真で見ると、水下へ向かって貼られている板材です。

 また、それに直交する正面側の板材は「鼻隠し」と言い名前が変わるのです。

 独特の表現が多いのも屋根部の特徴で、それだけ大切な証拠とも言えるのです。

 一見すると「けらば」部分からの通気は無さそうに見えます。

 この箇所は綿密に打ち合わせし、通気ルートを確保しています。

 「鼻隠し」部分も同様に、出来るだけ無駄は省くという考え方で、細部を構成していきます。

 それが、軽やかで説得力ある表現を生むと考えるからです。

 現場監理という仕事を説明するのは意外に難しいのですが、このような打合せを、監督や職人としているのです。

 簡単に言えば、図面が現実に変わる最後のチェック。

 決断の時なのです。

文責:守谷 昌紀

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アトリエmの現場日記

1996年、25歳の時に生まれ育った大阪に設計事務所を設立しました。関西を中心に、東京、長野まで、注文住宅、クリニック、別荘、店舗、オフィス、保育園と、直接依頼頂いたクライアントにおよそ100件の作品を持たせて貰いました。 形態も新築、リノベーション、コンバージョンと様々で、 物づくりの現場より面白い所を私は知りません。ダイナミックな現場を、動画を交えてあますところなくお伝えします。