「サンルームと吹抜のある家」-10-取扱い説明

 日曜日の昼過ぎから、キッチンの取扱い説明がありました。

 現在は引っ越し直後。よって最も片付いている部屋、サンルームの写真を載せてみます。

 南向きのこの部屋は、明るく、床のタイルもあって、異国の雰囲気が漂うのです。

 プロジェクト名にもある通り、この部屋が果たす役割は大きいと思っています。

 階段仕上げはカーペット。

 色はボルドーです。

 これは奥さんのセンスですが、大きな玄関にピタリと合っています。

 キッチンの収納に、キャンベルスープストックされていました。

 ポップアートの先駆者、アンディー・ウォーホールがその題材に使ったことでも有名です。

 奥さんいわく「ちょっと独特な味がするけど、牛乳で割るととても美味しいですよ」と。

 ウォーホールが使ったのはトマトスープですが、その理由は好きだったから、だそう。

 2缶頂いたので、今度食べてみます。

 キッチンハウスの担当者が、順に説明を進めて行きます。キッチンというのは、洗う、切る、焼く、収納する等、沢山の機能が集中する箇所です。

 しかも毎日使うものなので、タフさ、便利さも求められます。必然的に金額も張ってくるのですが、このあたりの頃合いを見極める事は、家づくりの中でも大変重要な部分になってきます。

 食器というのは、好みがはっきりでます。

 シンプルなものが好きな人、かわいいものが好きな人。

 色々好みがありますが空間の好みと若干違うことが多い気もします。

 夕方まで居ると、リビングのハイサイドから、奥深くまで光が差し込んで来ました。

 午前中はやや光が入り過ぎるので、対策を練っていますが、明るく、開放感のある空間になったと思います。

 

 外部床に使われる御影石。ピンコロが現場に入ってきました。

 少しピンクがかった、ものにしています。

 数日間、車を外に駐車して貰うことになりますが、仕上りを楽しみにしています。

文責:守谷 昌紀

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「四丁目の家」-17-ファサード

 一昨日、監督より写真を送って貰いました。

 外壁工事が終わり、足場が取れたと報告があったからです。建築用語で、外観の正面をファサードと言うのです。

 外壁は目地の無い、フラットな仕上げにしました。

 屋根が大きく張り出しているのは、思う存分洗濯物を干いたいという要望から。

 奥に開いている穴は、ここでテントを張れば星が見えるようにという設計意図です。

 屋根は南に向かって登っており、2階の天井は高いところで3.2mあります。

 屋根形状こそがこの建物を物語っているのです。

 この計画、第1回目の現場日記は2010年11月27日でした。

 3月の大震災もあり、工事は大きく遅れました。しかし、それも良い思い出と言えるかは、最後の仕上がり次第です。

 計画がスタートした当初、ご主人は大阪に単身赴任でした。途中からご主人も東京へ転勤すると、よりメール、電話でのやり取りが多くなります。

 昨年の「Epic Games Japan」に引き続き、私達はどこに居ても仕事ができる、という大きな経験になりました。

 しかし返す返すも最後が肝心です。

 残すは外構だけになりました。来週末は現地へ最終の検査へ行く予定です。

文責:守谷 昌紀

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「あちこちでお茶できる家」-6-山並みのように

 12月に入りました。この計画も竣工まで残すところあと2ヶ月。

 計画名の通り、家の中が楽しい空間になるように設計したのですが、もちろん外観にもこだわっています。

 屋根勾配は左右で違い、更に棟(屋根の一番高い部分)の高さが、正面より裏側の方が低いのです。

 屋根のラインが、山並みのように柔らかで、見る方向によって、違う勾配を持たせたかったのです。

 加えて、1階の平面も南へ開く、「へ」の字型のプランとなっています。

 では、それによって構造体にどんな事が起こっているか。

 全ての柱の長さが変わり、直交しない梁が多く出てくるのです。

 これらの加工は、工場では出来ず、現場で大工の手加工によって、納められました。

 屋根の高低差を活かし、ロフトも設けています。

 手刻みの出来る大工が減っているという声を、良く現場でも耳にします。

 出来るだけ工場で加工しておけば、工期も短縮でき、ミスも減るのですが、やはり出るだけ人の手が加わって欲しいと思うのです。

 それでこそ、職人という仕事に皆が敬意を持ち、物づくりの楽しさ、やりがいを伝える事が出来ると思うのです。

 現場では、審査機関の中間検査も終了しました。

 これからは仕上げ、納り等の詳細を詰めて行きます。

 出来上がった時、柔らかな稜線のような形となっているか。楽しみにしています。

文責:守谷 昌紀

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「サンルームと吹抜のある家」-9-タイル

 11月27日(日)、引越しの荷物を仮置きしながら工事が続いています。

 キッチンが据えられ、内部は完成に向っています。

 クライアントは白い框扉のデザインを気に入りました。

 コンロ脇の壁はモザイクタイルです。

 沢山ある中からピンクと白とゴールドのマーブル柄を選びました。

 吹抜けのあるリビングの壁の一面は、2階から3階の天井まで凹凸のあるレンガ貼です。

 この部分は「何か別の材で演出できるものを」と言うご主人の希望でした。

 足場が外され外観も見えるようになりました。

 弧状の外壁もレンガ貼りです。

 エントランスの床は全て大理石です。

 ここは真っ白では無く、サーモンピンクの石を選びました。

 残すは機器の取付と外構工事です。

文責:田辺 幸香

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「四丁目の家」-16-黒板

 先月の終わりに現場へ行ってから、なかなか東京に行けていません。

 次回は最終検査の時になりそうです。12月の中旬頃でしょうか。

 2階は若夫婦世帯が暮らすエリアです。

 リビングの壁には黒板があります。壁に黒板塗料を塗った、小さいですが本物の黒板です。

 黒板は意外にリクエストが多いのです。
 
 学校に対して、良い印象がある人も、そうでない人も、やはり空間へ対する原体験となっているのは間違いありません。

 特に、小学校の6年間というのは、その長さ以上に、人の成長に大きな影響を与えていると感じます。

 例えば、教室の床にワックッス掛けをして事を懐かしそうに話す人は本当に多いです。

 その時、皆で作業した雰囲気やその匂いまで克明に覚えていたりするものです。

 また、そこにあった無機質とも言える時計が、結構好きだったとか、妙な机を買うくらいなら、教室の机の方が好きだ、と言ったクライアントも居ました。

 ノスタルジックな気分も合わせてでしょうが、機能、価格を追求した物は、意外と良い物が多いのです。

 黒板はその中でも、象徴的なものと言えるでしょう。

 ホワイトボードでも機能は同じですが、あの黒緑色の板に、白いチョークで書きたいという欲求は、よく分かる気がします。
 
 何度でも消せるというのが、最大の魅力というのも間違いありません。

 2階のキッチンがようやく据え付けられました。

 このエリアはモノトーンの感じでまとめています。

 ウンテイの塗装も済んでいます。

 虹の配色が、モノトーンの空間に遊びを加えます。

 このウンテイはバルコニーまで続きます。

 流石に先端部まで行くと危険なので、途中で止めていますが、それでもかなりの高さです。

 機能として続いているといるのですが、外と内を繋げたいという意思表示でもあります。

 洗練された空間に、遊び心を取り入れ、都心でも光、風、雨を感じれる家。

 そんな感じをイメージでして考えました。 

文責:守谷 昌紀

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「サンルームと吹抜のある家」-8-階段

 2階建て以上の建物にとって、階段は大変重要な部分です。

 上下の階を繋ぐ動線という機能を満足し、有効巾、蹴上げ、蹴込みの寸法、手摺の高さ等々、全てのサイズが適切でなければなりません。

 かつ美しく。

 R状になったエントランスホールに、ようやく階段の下地がつきました。

 平面的、断面的にも非常に複雑で、鉄工所も苦労をしていました。 

 しかし、注がれたエネルギーは嘘をつかないものです。

 見下ろした時も、柔らかなRがとても優しい感じに仕上がっています。

 上下の動線には、天井高さにも細心の注意が必要です。

 2階から3階への階段はこの部分を曲面に仕上げました。

 3階まで上がると、南の開口から深くまで光が差し込む感じがよく分かります。

 手摺が付けばこの空間もほぼ完成です。

 竣工が迫る現場は、多くの職人にあふれ活気に満ちています。

 てんてこ舞いの忙しさですが、ネコ車でコンクリートを運ぶ姿にも微笑ましささえ感じるのです。

 バルコニーの床は半透明のグレーチングが敷かれました。

 ここからは詰めの段階。この先の頑張りいかんで、建物は大きく変わります。
 
文責:守谷 昌紀

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「サンルームと吹抜のある家」-7-内装工事

 現場の内装工事は、最終段階に入っています。

 本日は、クライアントに壁紙と塗装の色確認をして貰いました。

 2階にあるトイレの壁は、1面がR状になっています。

 間接照明で照らされるこの壁は、ゼブラ柄になりました。

 家の隅に追いやられたトイレではなく、1つの部屋として扱いたいというクライアントの考えでした。

 「ここは遊んでみよう!」と言うことになったのです。

 部屋の色は一つのテーマを中心に構成することが多いのですが、この家は新たなチャレンジです。
 
 8つの部屋と各階のホールはそれぞれにイメージがあり、同じ仕様はありません。

 3部屋には、天井、巾木、窓枠等にモールも付きます。

 R壁面や木枠等との取合いに苦戦しましたが、順に取付けが始まりました。

 2階から3階へ上がる階段も完成に近づいています。

 1階から2階への階段は、現在、和歌山の鉄工所で調整中です。

 納期は迫って来ましたが、近日取付くことになっています。

文責:田辺 幸香

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「あちこちでお茶できる家」-5-上棟式

 11月5日(土)は朝から雨でした。夕方からは上棟式が行われました。

 現場は人数を増やして、最後の追い込みでした。

 垂直方向とこれに対して23°振れた部分が交わる箇所は、現場も苦戦していました。

 何とか骨組みが完成です。

 御幣にはクライアント、施工会社、設計事務所の名前を書きました。
 

 お供えするお米と粗塩は、クライアントが準備したものです。

 建物の四方に酒、水、米、塩を撒いて清めて回ります。

 最後に工事部長が最終汚水桝も清めていました。

 御幣は施工会社→設計事務所→クライアント→棟梁へと手渡しされ、棟の一番高い所へ奉ります。

 最後に日本酒で乾杯。

 式を滞り無く終えることが出来ました。

 打合せ中は事務所の中でお絵描したり、紙飛行機で遊んだりして、いつも姉妹で待っています。

 この日は二人共、走り回っていました。

 今後は現場での打合せ回数が増えると思います。

文責:田辺 幸香

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「あちこちでお茶できる家」-4-外構

 前回のUPからやや時間が経ってしまいました。

 その理由は、また追々。

 事務所の始まる前に、現場へ行ってきました。 

 出来る限り現場へ車で行くことは避けています。

 環境の事と、どうしても車で来なければならない施工者が優先されるべきと言う考えでそうしています。

 しかし、早朝で時間が短縮できることもあり、この日は車で。

 快晴の朝。しかし川沿いの道は気持ち良いものです。

 誰もいない現場は更に気持ちが良いのです。

 建物の外回りの工事を「外構」工事と言います。

 間もなくコンクリートが打設されるという事で、現場のチェックへ。

 見て回っていると敷地にイガグリがポツポツと。

 前回も書きましたが、理由は隣地に栗の木。

 誰も獲っている様子はなく、大量に落ちています。

 敷地内に転がり込んでくるものだけでも、栗ごはんが出来そうなくらいはありました。

 郊外の住宅地だけあって、柿の木も。

 実りの秋。

 年始の竣工に向けて、今からが最も大切な時期です。

 今週には上棟を控えています。

文責:守谷 昌紀

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「四丁目の家」-15-子供部屋の平等

 10月30日(日)は1ヶ月振りの現場打合せに。

 東京行きの日は、何故か雨が多かった気がします。この日の朝も、大阪は雨。しかし東京に着くと晴れ空でした。

 しかし天気は西から。昼頃からはポツポツと降ってきました。

 外壁下地が出来ている予定でしたが、それは間に合わず。

 やや残念です。

 内部には建具枠が搬入されていました。

 枠など普段気にする事はないと思いますが、建物にとってはとても重要な部分です。

 動かない壁と、動く扉の境目にあると言えば、その重要性が伝わるかもしれません。

 どのような寸法で納められているかで、機能、美しさも、大きく変わるのです。

 特に重要視しているのが、引戸のレール。

 可動域が空間の邪魔をしない事と、微妙な位置でキープできるのが引戸の一番の長所でしょう。

 また、段差2mm以内のバリアフリーを目指し、M型のレールが床に埋め込まれます。

 これがステンレス製というのが大事です。随分キズが付きにくいのです。

 監督から、大工の棟梁が「苦労して取り付けたウンテイも、ボードを貼ってしまえば、何か当たり前に見えるのが残念」と言っていたと聞きました。

 気持ちは解ります。

 しかし、見せたいのをぐっと我慢し、目的に向って、真っ直ぐに進むのが本当のプロ。

 100kg近い大人が、ぶら下がっても良いように下地はスチールのプレートと一体になっています。

 登梁に直交するよう角材を取り付け、このウンテイ1つ1つを固定して行きます。

 よって、1つずつが専用の梁に付いているとようなもの。はやり気持ちは解ります。

 「子供部屋は出来る限り平等に」という要望は、思いのほか多くあるものです。

 この計画でも、すでに部屋の取り合いになっているとかいないとか。

 いつも元気な三姉妹も、この日は一人だけでした。

 お姉ちゃん2人は、いとこと東京タワーに行ったそうです。

 更に彼女も途中でお祖父ちゃんの家へ。

 お父さんお母さん、お祖父ちゃんお祖母ちゃんは、打合せに集中できて良いのですが、私は少し寂しい気も……

 今考えると、何時間にもわたる打合せに、三姉妹だから我慢できたのかもしれせん。時には、取っ組み合いの喧嘩もしていましたが。

 彼女たちとも間もなくお別れです。建ってからも本当の付き合が始まるとも言えますが、物理的に会う機会が減るのは間違いありません。

文責:守谷 昌紀

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◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

1996年、25歳の時に生まれ育った大阪に設計事務所を設立しました。関西を中心に、東京、長野まで、注文住宅、クリニック、別荘、店舗、オフィス、保育園と、直接依頼頂いたクライアントにおよそ100件の作品を持たせて貰いました。 形態も新築、リノベーション、コンバージョンと様々で、 物づくりの現場より面白い所を私は知りません。ダイナミックな現場を、動画を交えてあますところなくお伝えします。