敷地は上町台地の西端に位置する。
海からの玄関口でもあり、早くから多くの人々が居住していた。
古くからの住人が多く、クライアントはご近所とお互いの家の鍵を持ちあっていたという。
今回は、昭和10年代に建った四軒長屋の1住戸をフルリノベーションする計画だ。
まずは内部壁の撤去から工事は始まる。
この年代の階段の角度はかなり急だ。
後ろの柱をみると柱2本分、1間(約1.8m)で登りきっていることが分かる。
私が設計するなら、3mほどかけて登りきるので倍近い勾配となっている。
1階はLDKと水回り、そして個室が1部屋。
2階は個室、客間が1部屋ずつとなるのだが、奥の腰窓の外にバルコニーがある。
ここが洗濯干場となっていたのだがクライアントのお母様は、踏み台を置いて外にでていたそうだ。
バルコニーは後付けなので、やむを得ないとも言えるが、こういった上下移動の障害がリノベーションの動機になることは多い。
人は重力には抗えないのだ。
瓦屋根の下に隠れる空間は、やはり大きく気持ちよい。
よく見ると、野地板の上には檜皮が敷かれているのか。
クライアントは、まとまった休みにあちこちと海外へ出掛ける。
特に北欧が好きだという。その中でも青に惹かれるというのだ。
青というのは奥行きの深い色だ。この計画が目指すのは「碧(あお)の家」。
テーマカラーとなった濃い青が随所にちりばめられている。
設計期間1年8ヶ月。
この秋には、醸成された「碧(あお)の家」を見てもらうことができると思う。
文責:守谷 昌紀