「高台の家 RC打放しの家」‐1‐プロローグ

 設計を始めたら、何が何でも、どんな手を使ってでも完成させなければならない。

 良い図面を描いただけで、喜んでくれるクライアントは居ないからだ。

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 この計画のスタートは2013年8月末。家族3人での来所だった。

 ご主人は学生時代を沖縄で過ごしたのだが、そのマンションがRC打放しだったそうだ。

 コンクリートに光の当たる様が美しく「いくら見ていても飽きなかった」という。 

 それから18年。家を建てるなら打放しの家をと探すうちに、「加美の家」にたどりついたとのことだった。

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 その時には、すでに土地も決まっていた。どんな街に住みたいかを考えるうちに「坂のある街」が良いとなったそうだ。

 人はどこに住むも自由。しかし、自分の積極的な意思でそれを決められる人は少ない。

 また、街、建築に対しての勉強熱心さは、凄いものがあった。

 ル・コルビジェ設計のサヴォア邸はパリに。ルイス・バラガンの自邸はメキシコシティ。いずれも現地を訪れている。ルイス・バラガンの自邸は、私達の目標、世界遺産でもある。

 その期待に応えるべく、満を持して出したファーストプランは、どんな減額案を使っても、希望金額に届かない。この事務所も20年目に入るのだが、実施設計のやり直しは初めてだった。

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 少しボリュームを抑えたセカンドプランの見積りスタートが、2014年の10月。

 見積り調整が長引く中、冬にかかるとコンクリート温度補正が必要になり、プラスのコストが発生する。この見積りも一旦ストップ。

 「この春以降で、施工時期は全て施工会社に任せる」という条件で、2015年2月から3度目の見積りがスタート。この4月、ようやく決着したのだ。

 20年間、クライアントの本気に鍛えて貰った。多少自力がついたと思っていた、その考えが甘かった。

 クライアントは、数千万円、数億円という金額を私達に託していると考えれば当然かもしれない。しかし、そんな真剣勝負の場に、居れることが何よりの幸せとも言える。

 工期はいつでも良いとは言え、そろそろ決めないといけない。

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 今年の11月、高台の家は完成する。

文責:守谷 昌紀

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