「私の家」-1-プロローグ

 4、5年前から、そろそろ私達の家を……と考えていました。

 実家の近くで古家が売りにでており、それを買ったのが3年前。2009年2月の事です。

 私にとって建築設計とは。

 誰かの幸せに貢献する建築を創る事です。

 それが感謝に値するものなら、その対価こそが報酬だと考えています。

 コスト、敷地条件等、様々な要望を受け入れ、何とか実現するのが私の仕事で、どの作品ひとつとっても簡単ではありませんでした。

 25歳で独立した私に、人生の中でも最も大きな決断を要する家や店舗の設計を任せて貰った事には感謝しかありません。

 それ故「目的は自分の家を建てる事」という建築家志望の若者に「それが人生の目標だという設計者に、大切な家を任してくれるだろうか」と詰問したことは一度や二度ではありません。

 仕事とは、あくまでも他者との関わりあいの中にあり、その緊張感こそが自分が求めていたものだったのです。

 それが自邸となると。正直に言えばまだ整理しきれていない部分もあります。しかし子供も色々な事が分りだし、これより後ろにずらすと、妻、彼らの為に創るこの家の意義が薄れてきます。

 仕事の合間に進めて来たこの計画を、本気で進めることに決めました。

 そこで問題になるのが「私」です。私自身は何を望んでいるのか。

 実はまだコンセプトが固まった訳ではありません。その葛藤から、掛かった費用に至るまで、全てここに書き綴って行きたいと思います。

 次回は、まずは古家付の土地を購入するまでの流れを。

 計画名は「私の家」とし、2013年の1月竣工を目指します。

文責:守谷 昌紀

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