カテゴリー別アーカイブ: C35 「8.8坪の家」

「8.8坪の家」-4-コンクリート打設

 遅くなってしまいましたが、10月17日にコンクリート打設を終えています。

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 ミキサー車は細い道をバックで進入してきました。

 長屋から切離された南面は、型枠を外すスペースがありません。上から引上げれるよう、金物を工夫しました。

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 型枠の間隔を保つ為、セパレーターという部材を使います。打ち上がると、この部分が打放しの表情となるのです。

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 RC部分は1階のみ、2階、3階は木造のスキップフロアーです。

 ポンプ車がゆっくりとクレーンを動かし、コンクリートを流し始めました。

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 流れを良くする為、職人は木槌で叩きます。

 強度が出れば型枠を解体。

 およそ2週間の予定です。

文責:田辺 幸香

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「8.8坪の家」-3-基礎工事

 お盆前に地盤改良工事を終え、9月5日(水)は基礎のコンクリート打設でした。

 敷地は盛土で造成された浅い谷に区分されます。

 最大4m程の自沈層があった為、柱状改良をすることになりました。

 「細工谷遺跡」という埋蔵文化財の区域でもあり、杭の本数や基礎の深さは、役所と協議済みです。

 掘方の後、型枠工事、配筋工事と進みます。

 この後、審査機関による基礎の中間検査が行われました。

 構造図を見ながら、鉄筋の径や本数、ピッチを確認します。

 検査は無事に終わり、中間検査済証を頂きました。

 この部分はこの建物の特徴となる形の1つです。

 2、3階が木造、1階はRC造。

 敷地は2面の道路に接する角地ですが、両方が4m以下で、車1台通るのがやっとです。

 この道路の関係で、今回はポンプ車を使わず、ミキサー車から直接コンクリートを打設しました。

 次回は1階RC部の型枠、配筋工事です。 

文責:田辺 幸香

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「8.8坪の家」-2-遣り方

 7月31日(火)は現場でクライアントと待ち合わせ。

 建物の位置を決める遣り方です。 

 JRの桃谷の駅から歩いて10分程。

 密集した住宅街から、一際高い建物がのぞきます。

 まずは敷地の境界線を出します。その上で建物の位置、高さを確認。

 壁の中央ラインが通り芯ですが、続いてそれらも確認して貰います。

 最後に、土地を清めて回りました。
 
 お酒、洗い米、塩を持て来て貰い四隅にまきます。神主はいませんが、こういうったものは気持ちが大切です。
 
 この数日、遠方の方からの問い合せがいくつかありました。その中に、かなりのローコスト住宅がありました。

 当事務所webサイトに、夢は必ず実現する、というメッセージを見ての連絡でした。

 この言葉に偽りはありません。但し、クライアントも同じ目標に全力で走って貰う事が条件です。

 過去最低予算。

 何度も書くとこちらのクライアントに怒られますが、非常に高い緊張感をもって、望みます。 

文責:守谷 昌紀

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「8.8坪の家」-1-プロローグ

 6千年前、大阪は生駒山の麓までが海でした。
 
 その海の中に、事務所のある平野から、大阪城辺りを頂点とする半島がせり出していました。これが上町台地です。

 徐々に陸地は広がり、現在の地形に近づいて行きます。

 海辺にあった土地にはその名残があります。西の海岸線にあたるのが「粉浜」。天王寺の東にある「桑津」。津と言う文字は船着き場を指します。

 今回の計画地も、上町台地の東海岸線にあり、波の浸食もあって出来た地形ではないかと思います。谷と付く通り、起伏が激しいのです。

 計画地は元長屋で、端の住戸部分を取り壊し、新たに家を建てることになりました。

 東西13m、南北3mで、敷地面積は約12坪。しかも隅切りに2㎡(0.6坪)とられます。

 建ぺい率は70%に緩和されますが、容積率は160%。いわゆる狭小住宅と言えます。

 更に元長屋の為、敷地境界線に壁があります。よって施工可能なラインまで後退せざる得ません。

 2方の道路からも、道路斜線によって厳しく高さが制限されます。

 これは天空率の比較によって、高さの限界値を探りました。

 非常に厳しかった高さ関係を解決すべく、駐車場の天井高は1.95mまで抑えました。

 それを利用してスキップフロアとしたのです。

 また、間口3m側から車を入れなければ、車が道にはみ出してしまいます。

 これらの条件を満たすプランを探りました。

 結果、1階をRC造の壁式構造にするしかかないという結論に至ったのです。

 当初から聞いている予算も、過去最高の厳しさ。その中で、木造とRC造の混構造という選択をしました。

 クライアントにも我慢できるところは、本当に限界まで我慢して貰いました。
 
 始めてクライアントが来所したのが、2011年の8月。1年掛かって、何とか着工までこぎつけたのです。

 現在は、海辺の街を想像させるものはありません。

 全ての条件を受け入れると、自然に黒船のような建物が立ち上がってきました。

 年内完成を目指し、新年はクライアント家族の新しい船出を迎える予定です。

文責:守谷 昌紀

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