カテゴリー別アーカイブ: C31 「四丁目の家」

「四丁目の家」-3-無事契約

 昨年の12月15日は最終の金額調整でした。本日1月9日は大安。無事契約に至りました。

 年末に最終金額が決定し今日を迎えたのですが、私は大阪のため今回はスカイプで参加です。スカイプとは無料のインターネットテレビ電話のことです。

 施工会社の社長には東京のクライアントの自宅へ行ってもらい、スカイプで私が説明をしながら、署名、押印と進行しました。

 私の押印が必要なものは、前もって送ってあります。

 着工は3月初旬。いよいよ始まるという感じです。
 
 ここからは、契約について書いてみたいと思います。

 文字が多く読み辛いかもしれませんが、興味のある方は読み進めてください。

 ここでいう契約とは「建築工事請負契約」のこと。これとは別に「設計・工事監理委託業務請負契約」というものもあります。

 後者は私たちのような建築士事務所と交わすもので、前者が施工会社と交わすもの。

 施工者と設計者が一体の場合「設計・工事監理委託業務請負契約」はない場合がほとんどです。

 今回の工事なら、当事務所の設計・監理の報酬は工事金額の10%なので、工事請負契約の額は10倍ということになります。

 「工事請負契約」をクライアントがどのような条件で交わすかを提示するのは、私たちの大切な仕事なのです。特に、支払条件と、どのような約款を付けるかが重要で、施工会社へは競争見積りの参加を募る際に伝えておきます。

 まず約款です。

 俗に言う旧四会連合、正確には民間連合協定工事請負契約書。

 この添付を条件にしています。これは公共工事などでも使われる、最も校正なものです。

 この約款の添付は、法律で義務付けられている訳ではありません。よって、施工者側が自社で作成する約款を添付する場合もあります。

 他の事をとやかく言う必要はないのですが、自分で作った約款が自分に厳しいとは考えにくいのです。
 
 もう一つ重要なのが支払条件。以前は着工時に1/3、棟上げ時(躯体完成時)に1/3、竣工時に1/3が一般的でした。

 当事務所が条件にしているのは、月末出来高翌月80%払いです。

 具体的に言うと、4月の工事が100万円分出来上がったとしたら、翌月に80万円支払います。5月の工事が200万円分完成したとしたら、160万円と4月の残り20万円を合わせた180万円を支払うというものです。

 出来上がっていないものに対しての支払いを無くし、更に20%分を持ち越していくという支払方法です。

 万が一施工会社が倒産した場合、残工事を同額で施工してくれるとは考えにくく、クライアントの保護と施工会社が納得できるギリギリの線と考えています。

 もし代理人的な設計者がいない場合でも、契約は納得できるまで説明を聞いてから、サインしなければなりません。目の前に契約書があっても、当然サインしない権利も持っているのですから。明確な説明がなければ、順延したって構わないのです。

 知人にアドバイスを求められた時は、気になることと、聞きにくいことは全て聞いて下さいと伝えます。何せ大きなお金が動くのですから。

 契約のポイントは約款と支払条件。不要なのは遠慮です。
 
文責:守谷 昌紀

建築家 / 大阪  一級建築士事務所 アトリエm
守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

「四丁目の家」-2-減額リスト

 現在は見積り調整の真っ最中。

 webサイトにも「夢は必ず実現する」と書きました。そんな綺麗ごとを、と思う人もいるかもしれませんが、必ず実現すると思っています。現実と格闘する覚悟さえあれば。

 ちょっとかっこをつけましたが、競争見積りを実施しても、大概見積りはオーバーします。夢が現実を下回ることは有りません。クライアントの希望を叶えようと思えば思う程、その額は大きくなります。

 事務所を立ち上げた頃、毎回毎回こんな経験を繰り返していました。クライアントが見積りを初めて見た時、変な空気になったこともしばしば。

 しかし、最終的には希望の金額に収る、もしくは納得して増額して貰うなどして、建物は竣工していったのです。

 私は思いました。「粘り強く減額作業をし、施工会社と交渉し続ければ、必ず何とかなる。着地点はあるんだ」と。私はもとよりしつこい人間なのです。

 ただ、これを効率よく、分かりやすく進めるにはどうすれば良いかを考えました。

 そこで考えたのが現在の減額リスト。

 当事務所で考えた減額項目を、分かりやすいようジャンル毎に列記します。

 採用すれば幾ら減と、各項ごとに金額を明記して貰うのです。

 更にその各項に、○、□、△、×などの評価付けをして貰います。

 ○、□を採用すれば工事金額は幾ら、○、□、△まで採用した場合は幾らと、エクセルで表計算しながら進める事にしたのです。

 金額が合わなければ、更に減額項目を作成する、評価付けを厳しくするなどして、クライアントと最終着地点を模索します。

 採用項目が決まれば、施工会社にそれを伝え、最終金額の提示を求めるという流れです。

 項目は多い少ないありますが、概ね100項目程。初めて見た時は皆げんなりするものですが、金額が近づき出すと、遣り甲斐も出てきます。

 中にはこの作業が一番思い出に残ったというクライアントもいました。夢の実現は、共に葛藤するしかないのです。

 あれは辞めましょう、これは残しましょうとこちらが言うより、大切なお金と照らし合わせて、今後の暮らしに何が大切かを考えるのが一番です。

 この時間はとても大切な時間と考えます。実際残るべきものは残り、省かれるものは省かれるものなのです。

文責:守谷 昌紀

建築家 / 大阪  一級建築士事務所 アトリエm

「四丁目の家」-1-プロローグ

 「四丁目の家」は二世帯住宅の新築計画。

 ご主人は京都の出身で、奥さんは東京の生まれ。奥さんの実家が都内にあり、建て直して一緒に住むことになったのです。

 初めて計画の話を聞いたのは2006年の10月。紆余局圧ありましたが、見積り調整が済めば、着工できるところまできました。

 現在、若夫婦の住まいは同じ街の「三丁目」にあります。

 それで奥さんの実家を「四丁目の家」と呼んでいたのです。

 東京に「四丁目の家」は数あれど、家族にとってはここだけ。

 竣工すると同時に、三世代が一つ屋根の下へ。この呼び名は無くなるかもしれませんが、それも悪くないと思うのです。

 この家には、外部と内部をつなぐ仕掛けや、屋内でも遊べる機能を色々考えています。さてどこまで実現できるか……

 大阪から現場監理に行ける回数は7回前後。緊迫感も漂わせながらスタートします。

文責:守谷 昌紀

建築家 / 大阪  一級建築士事務所 アトリエm