カテゴリー別アーカイブ: C31 「四丁目の家」

「四丁目の家」-13-スイッチ、コンセント

 8月21日(日)は朝から雨。

 朝一番の新幹線で東京駅に着くと、肌寒いのです。

 昨日あたりから、急に寒くなったようで、まるで晩秋の気配です。

 9時半からお茶の水にある施工会社でまずは打合せ。11時頃に現場へ移動しました。

 外壁の下地が貼り終り、建物のフォルムが明確になってきました。

 先に渡していた事務所の横断幕は一番下に。

 この方が見やすいかもしれません。

 外回りが閉じられたおかげで開口部が明確になってきました。

 子供部屋の収納上には、高窓を設けています。

 この場所をロフトのように使えれば楽しいはずです。

 この日の打合せ内容は、スイッチ、コンセントなどの位置決め。

 前もって監督にデータを送り、紙型を貼ってもらいました。

 実物大の大きさで、実際の位置を確認して貰います。

 とても単純な手法ですが、これに勝る方法はありません。

 バルコニー一番奥の屋根には穴があいています。

 ここでにテントを張ったりすれば面白いのでは、という話から広げて行きました。

 一ヵ所、高窓に向かって太い下地が、同ピッチで並んでいます。
 
 ここにはウンテイを付ける予定です。

 子供のおもちゃ、大人のトレーニング器具。天井の高さによって様々な使い方ができるはずです。

 全ての打合わせの中で、この位置決めのが最も時間が掛かります。

 全コンセント、スイッチ、タオル掛け、ペーパーホルダー……と確認して貰うと4時間から5時間。この日も夕方になりました。

 特に小さいお子さんの居るクライアントには負担ですが、ああしておけば良かったを出来る限り少なくするのには、必須のなのです。

 救いはこの涼しさ。通常この時期なら、滝のような汗を流しながらです。

 これはとても助かりました。子供さんもどこかはしゃいでいたのです。
 
文責:守谷 昌紀

メディア掲載情報

◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

「四丁目の家」-12-月末出来高翌月80%払い

 現場監督のMさんから、写真が送られてきました。

 離れている分、いつも写真を心待ちにしています。

 建て方が終わり、外部合板貼りが終わりました。

 サッシ取り付け用の下地も出来上がっています。

 次に現場へ行くタイミングは、内部のコンセント、スイッチなどの取り付け位置の確認の際。

 そろそろクラアントと日程の調整をしなければなりません。

 今日は8月6日で月初と言えますが、月末月初の仕事として、出来高の査定があります。

 建て主と施工会社が契約する際には、その工事代の支払方法を決定しなければなりません。

 当事務所が積極的に勧めているのが、タイトルにある「月末出来高翌月80%払い」です。

 例えば「4月の工事が100万円分終わった」と、施工会社から報告があったとします。

 これを私達が、報告通り終わったかをまず確認します。

 それが確認できれば、100万円の80%を5月に建て主に請求できるというシステムです。

 緑色が施工会社からの報告、赤が私達の査定です。完全に一致しました。

 ちなみに残った20%は翌月に合わせて請求できます。

 これらの査定が終われば請求書が一旦当事務所に送られてきます。

 この請求金額を承認しましたと、押印し施工会社を送り返します。

 これを建て主に送り、正式な請求となります。

 出来上がったものに対しての8割分を支払い、振り込みが5月15日だったとすると、更に工事は進んでいます。

 もし施工会社になにか不測の事態があったとしても、建て主のリスクは最小限に出来ると考えているのです。

 それなら、完成時一括払いが一番良いことになりますが、これは施工会社が工事中、各業者への支払を工面するために借入が必要になるかもしれません。

 このようなプラスアッルファは見積りに反映される可能性があるので、健全な経営状態の施工会社が納得できる条件を探ったのが、この方法なのです。

 最も、ローンの関係で銀行が従来からの風習である、着工時1/3、棟上げ時1/3、完成時1/3のような条件を求めてくる場合もありますから、いつもこの方法ではないのですが。

 現在は、競争見積り参加の打診をする際に、この条件を書面で明示したうえで、参加、不参加を問うています。

 当初この支払方法を導入した際には「厳しい」「有難い」と施工会社からの反応はまちまちでした。

 そこで学んだのは、答えは見る方向によって変わるという当たり前の原則。施工会社を信用していないのではありませんが、設計者にとって建て主の保護は第一の目的なのです。

文責:守谷 昌紀

メディア掲載情報

◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

「四丁目の家」-11-けらばと破風と鼻隠し

 関東も梅雨が明けて一週間。

 監督からの写真が送られてきました。屋根の下地、野地板が貼られました。

 前回、7月4日の打合せで、結構時間を使ったのが屋根の納まり。

 屋根は雨を建物に入れないのが最大の役割ですが、他にも色々な要素を含んでいます。

 屋根内の空気の流れは大変重要なところ。

 片流れの場合、温かい空気が水上へと移動し排出するのが理想です。

 そのルートをしっかり確保出来れば、屋根の温度上昇は随分抑えられ、エネルギー負荷の軽減につながるのです。

 また屋根の側面部(妻側とも呼びます)付近を「けらば」と呼びます。

 けらばの一番端にある材が「破風」。

 写真で見ると、水下へ向かって貼られている板材です。

 また、それに直交する正面側の板材は「鼻隠し」と言い名前が変わるのです。

 独特の表現が多いのも屋根部の特徴で、それだけ大切な証拠とも言えるのです。

 一見すると「けらば」部分からの通気は無さそうに見えます。

 この箇所は綿密に打ち合わせし、通気ルートを確保しています。

 「鼻隠し」部分も同様に、出来るだけ無駄は省くという考え方で、細部を構成していきます。

 それが、軽やかで説得力ある表現を生むと考えるからです。

 現場監理という仕事を説明するのは意外に難しいのですが、このような打合せを、監督や職人としているのです。

 簡単に言えば、図面が現実に変わる最後のチェック。

 決断の時なのです。

文責:守谷 昌紀

メディア掲載情報

◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

「四丁目の家」-10-棟上げ、東京の下町にて

 日曜日は朝一番の新幹線で東京駅へ。

 そのまま地下鉄に乗り換え、現場へ向かいました。

 詳細な模型も作りますが、実際の構造体を見るのは初めて。

 私にとってもファーストコンタクトです。

 まずの印象は「大きい」です。

 前日が建て方だったので、大きな木槌が残っていました。

 2階にも上がってきました。

 休日、人のいないの現場に入るのは、最高に気分がいいのです。
 
 南側は間口いっぱいの一室空間。

 数字以上の広さを確信しました。

 「布団は、バルコニーに思いきり広げて干したい!」が奥さんの要望。

 木造なので、どれだけ張り出せるかと、屋根の形状には特に注意しました。

 現場を見た後、近くにあるクライアントの自宅で打合せ。

 都内のマンションなので、ある程度の狭さをイメージしていたのですが、1階で庭付きなのです。

 しかも広い。

 奥の菜園は奥さんのお父さん作。

 「四丁目の家」では1階に住まれます。

 今は、キュウリ、ナスの季節。

 トマトもそろそろ赤くなり始めていました。

 何とか、鳥や小動物に食べて貰おうと、美味しくなろうと野菜は進化してきました。

 少しでも離れた所に、糞の中にある種が運ばれるとその種は繁栄します。

 自分では動けない分、植物はとても純粋と言えるのです。

 建築も同じく動けないもの。

 動けない、変われないからこそ、特にに純粋であらねばならないと思うのです。

 何に対して純粋か。それは、住まい手の幸せ。
 
文責:守谷 昌紀

メディア掲載情報

◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

「四丁目の家」-9-私が現場で見るところ

 梅雨にしては、雨の日は少なめ。

 しかし降る時はまとまって、というのが近年の傾向と言えます。現場は若干の遅れが出ていますが、先週配筋検査が終わりました。

 6月4日(土)に捨てコンの打設が終了。

 捨コンとは基礎のコンクリートの下に打つコンクリート。

 現場には行けていないのですが、写真を見ると人力による打設です。

 コンクリートを撹拌しながら運ぶミキサー車と、それを打設するポンプ車が必要ですが、道が狭いので人力になったようです。

 昔はこの一輪車(ねこ車)をあちこで見たものです。

 捨コンが固まれば、その上に基礎の鉄筋を組んで行きます。

 設計図書に記載されている直径の鉄筋が、既定の本数入っているかなどをチェックするのが配筋検査です。

 一昨年の秋、全ての新築住宅に住宅瑕疵保険への加入が義務付けられました。

 主に構造体の安全と、雨漏りに対して10年間の保証を義務付けたものですが、6月10日(金)はその中間検査でした。

 もちろん問題なく合格。

 鉄筋は細い針金で緊結します。それらが下に落ちていたり、ゴミが落ちていたりするのは駄目な現場です。

 仕事にとって大切なことは沢山ありますが、もし1つ上げるなら「整理整頓」でしょうか。言葉は定義が大切です。

 【整理】⇒ 要不要を区分けし、不要なものを処分すること。
 
 【整頓】⇒ 理にかなった配置にすること。

 子供の頃から言われて続けたことですが、建築現場に置いても全く同じです。必要なものだけが機能的に配置されている現場なら、ミスが起こる確率は最小値まで下がるはずです。

 私が現場監理に行った時、注意するのはもう一点。「最も面倒な箇所に十分注意が行き届いているか」です。

 専門の知識がなくても、大概のことはこれで分かると思っています。難しい事は出来るが、簡単なことはしない事など、あり得ないのです。

文責:守谷 昌紀

メディア掲載情報

◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

「四丁目の家」-8-根切と根切り

 先月末から、掘方が始まりました。

 今年の梅雨入りは特別早く、やや気にはなります。

 現場では根切が始まりました。

 この写真はクライアンより。携帯で送ってくれたのです。

 距離が離れているので、写真を見ると安心できます。

 監督にも催促しようと思っていると、届きました。まさに以心伝心。

 根切が終わり、砕石を敷いているところ。

 「根切り」でなく「根切」。

 建築用語は、送り仮名を出来るだけ省く風習があります。

 読み違いなどを無くす、知恵だったと思いまが、他にも色々な専門用語があります。

 これが代用のきかない言葉なら当たり前なのですが、そうでもないのです。

 また敷地が「バチッている」といえば『直角がでていない』ことを指します。漢字の八から来ているのです。

 また「矩手(かねて)」もしくは「矩の手(かねのて)」という言葉も良く使います。直角を意味し「矩が出ていない」というと『直角が出ていない』を意味します。

 25歳で独立した私は、現場経験が少なかったこともあり、何故「直角と言わないんだろう」とか「斜めになっているでいいんじゃないか」とか思っていました。

 しかし、今その意味が分かる気がします。

 世間では「直角」という言葉に変わって行っても、建築現場でそれが変わらなかった。それだけ重要だったからだと思います。

 直角が出ていない根切など、何の意味も持ちません。目指していなければ別ですが。  

 瞬くまに15年が過ぎました。若者に「みつけ」と言うのは……などと教えているのです。
 
文責:守谷 昌紀

メディア掲載情報

◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

「四丁目の家」-7-手作りでする地鎮祭

 昨日は朝一番の新幹線に乗って東京へ。

 まず施工会社の事務所へ向かいました。

 東京駅から御茶ノ水までは地下鉄で3駅。

 地鎮祭までの時間を使って、電気設備、水道設備の工事担当者、そして現場監督、社長と初回打合せです。

 2時間では時間が足らず課題は残りましたが、内容ある打合せでした。

 そのまま現場までは車で30分ほど。

 雨模様の中、地鎮祭の準備が進められます。

 かなり激しく降っていたのですが、クライアントの到着と同時にピタリと上がりました。
 
 今回は手作りの地鎮祭ですが、こちらの施工会社はカマ、クワ、スキを持っているのです。

 自社でこれらを持っているのは初めて聞きました。

 まずは私がカマで忌み草を刈り取ります。

 親世帯のご主人にクワをいれて貰います。

 こちらのお家は二世帯住宅なのです。

 形にはこだわらないので、皆さんもいかがですかと社長。
 
 皆さんにも順に手伝って貰うことに。

 まずは子世帯のご主人。

 次に奥さん。

 一番上のお姉ちゃんは小学4年生。 

 2番目のお姉ちゃんは小学2年生。

 一番下の妹さんは、ちょっと恥ずかしくて辞退。

 その後、四隅にお神酒をまき、最後に乾杯。

 何とか天気も持ち、無事式典は終了しました。

 その後、ご自宅に伺い打合せに。

 当たり前の事ですが、私は工事中の追加金額をださない事に、こだわり仕事をしてきました。
 
 しかし、午前中の打合せで議題に上がったのは、やはり震災の影響による資材不足、資材の高騰の話。

 金額、納期が全く読めない物も結構あるという話でした。

 まずは最悪の場合を想定し、施工会社の社長から現状を報告して貰います。
 
 その上で、さらに削減出来るところがないか、代替品はないかを探し、出来る限り追加を出さないよう、全力であたるとお伝えしたのです。
 
 本音を言えば、最終的には何とかなると思っています。

 これから全てが改善する方向に動くでしょうし、国民の総意として「何とかしないと」という気持ちがある以上、驚くべき速さで復興、正常化は進むと思います。
 

 それ程、人の意思は大きな力を持っていると思うのです。

 現場へ直接行ける回数は、残すところ6回。時間を惜しんで現場、人と関わって行きたいと思います。

文責:守谷 昌紀

メディア掲載情報

◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

「四丁目の家」-6-さあ再開!

 前回「四丁目の家」の現場日記を書いたのが2月15日。

 東京は大雪でしたが解体も終え、3月の地鎮祭を待つのみとなっていました。

 敷地はきれいに整地され、いよいよと言う時……

 合板、断熱材をはじめとする、建築資材の不足は大きな問題です。

 しかし何時までも立ち止まっている訳にはいきません。

 まだ余震が続く中、自粛ムードもありますが今週の土曜日、地鎮祭をとりおこなう事になりました。
 
 地鎮祭は、土地の神様を鎮め、工事の安全を願うもの。これだけ多くの命、街が失われたいまこそ、最も大切な儀式と言えます。

 建築と都市に係わる仕事をしていて「今頑張らずしていつ頑張るのか」と思ったのは今回で2回目です。1度目は16年前の阪神・淡路大震災の時でした。

 当時はこの世界に入って1年目。建築に携わっているのもも関わらず、その無力さを痛感したのです。しかし、今なら出来ることがあります。

 頑丈で、人類の幸せに真っ直ぐつながる建築を作る。

 その積み重ねが、必ず日本を、世界を良くすると信じます。

 何の問題も起こらなかった街と、火事で全てが焼失した街があったなら、10年後は後者の方が発展を遂げる、という話しを聞いたことがあります。

 亡くなった方には心がらご冥福をお祈りする事しかできません。しかし、人類は何度もこのような危機を乗り越えてきました。全ての試練は、私達を進歩、発展させる為にあると考える他ないのです。

 今ほど仕事に使命感を感じた時はありません。そして、全力に悔いなしと言い聞かせるのです。

文責:守谷 昌紀

メディア掲載情報

◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

「四丁目の家」-5-初めての解体スタート

 週末から週明けにかけて、大阪もかなり雪が降りました。

 しかし、関東地方は更に大雪のようです。

 いよいよ始まった解体も、何度か中断しました。

 東側棟は無事完了しました。

 残念ながら解体中は、現地へ行く予定がありません。

 よって今回の写真は、施工会社から送って貰ったもの。

 携帯電話、E-mail、スカイプと本当に便利になりました。

 今から13年前、1997年の年末に、「白馬の山小屋」という改修計画の仕事が始まりました。

 当時で築30年の山小屋を改修する計画で、大学時代の先輩からの依頼でした。何とか一作目の住宅が完成した頃だったのです。

 現場は長野県小谷村。もちろん施工会社は一社知らず。村役場へ行き、何社かを紹介して貰いました。

 現地へは経費を抑えるため、大阪を夜9時頃出る、夜行「ちくま」で。早朝に白馬へ着くのです。席はリクライニングしませんが、乗客も少なく横になって寝られました。懐かしいのですが、現在は運休されているようです。

 現場監理が始まると、監督が「デジカメ」で撮った画像を送ると言うのです。私はメールなど使ったことがなく、弟のアドレスに送って貰いました。これがデジタル画像初体験でした。
 
 初めてのクライアント、初めての土地、初めての建物。建築は初めてのことばかり。それはクライアントも私達も施工会社も同じ。建築の大きな特徴かもしれません。

 初めての事でも、困難に見える課題でも、必ず何とかなると思っています。実際に何とかなってきたからです。極端ですが、私が中学から持ち越している課題は一つもありません。

 次回現地へ行くのは、3月初めの予定。地鎮祭の予定です。

文責:守谷 昌紀

建築家 / 大阪  一級建築士事務所 アトリエm
守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

「四丁目の家」-4-模型と想像

 近所に仮住まいも見つかり、間もなく解体が始まります。

 実際の、ここまでの流れは以下の通りです。

 企画の提案→設計・監理請負契約の締結→基本図面の作成→実施図面の作成→見積徴収→見積調整→施工会社と工事請負契約の締結

 住宅展示場をを持っている、ハウスメーカーや施工会社は別ですが、建築設計という仕事は、未だない建築を提案し、更に一緒に仕事を進めるか、判断を仰がないとなりません。

 無いものを何とか伝えるよう、手を尽くす必要があるのです。最も難しいのは、やはり「企画の提案」でしょうか。

 3D画像も進化していますが、模型に勝るものはないと考えています。S=1/100の模型で全体のボリューム、プランを提案するのです。

 大切なのは環境。

 周辺敷地も合わせて模型を作成します。

 そして、太陽の当たり方や、建物と街の関係を詰めて行きます。
 
 今回もそうでしたが、一度で方向性が決まることは中々ありません。

 無事契約となり、基本計画が固まれば、図面も模型もS=1/50に移行します。

 ここから実施図面の作成です。

 実施図に合わせて、出来る限り細部も作って行きます。

 この時に、テレビや電話、パソコン等、どこに置くかが決まると、設備の面でも精度が違ってきます。

 大切なのは「仮でも良いから決めること」です。

 縮尺こそ違え、目を近付けてその気で見れば、出来上がりのままの視界が開けます。

 とは言え、最後まで実物のない状況は変わりません。

 しかし、ネガティブに考える必要はありません。

 無いからこそ、人の頭は最大限の想像力を発揮するのです。

 共に想像し、一緒に造り上げていくことこそが、建築そのものと言えるのです。
 
文責:守谷 昌紀

建築家 / 大阪  一級建築士事務所 アトリエm
守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記