クライアントは、ピアニストとバレエダンサーとそのご両親だ。
よって、ピアノ練習室とバレエのトレーニングルームがある。それらを中心に、プランは練られた。
姉妹は、ともに留学も含めて、その才能、技術を磨いてこられた。
ピアニストのお姉さんはパリで3年間、バレエダンサーの妹さんは、ロシア、イギリス、フランスで。
本場での勉強、暮らしは、何にも代えがたい経験だろうと思う。
要望は色々あったが、建物に直喩として取り入れたのが、タイトルとした「どこにもない箱」だった。
3つのボックスを組み合わせた形状と共に、特徴あるのがその色彩だ。
白、エメラルドグリーン、グレーを採用したのだが、エメラルドグリーンはパリのオペラ・ガルニエをモチーフとしている。
屋根は緑青がふいているのが、エメラルドグリーンと映るのだ。
私が始めて訪れた海外もパリだった。
1995年、24歳の時のことだが、1番初めに行くなら、やはり芸術の都パリだと思っていたのだ。
残念ながら、24歳の私は1人でオペラ・ガルニエでオペラを観る勇気がなく、今となっては口惜しい限りである。
このエメラルドグリーンを、手仕事の塗り壁でどこまで再現できるのか。
この計画にとって重要なポイントだ。
「家は家族の未来の幸せの形」だと考えている。
何を幸せと感じるかは、誰もが違うので、ひとつとして同じ家はない。
新たに生まれるこの家は、ご家族にとっての原風景となる。
「どこにもない箱」を実現したいと思うのだ。
文責:守谷 昌紀
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