この空間の核になるのは、オーバル・コミュニケーション・カウンター。
オーバル(oval)は楕円を表します。
そのカウンターに切れ込むように独立するエントランスゲート。
カウンターは最後に搬入される為、現在はゲートのみの状態です。
建築工事においては、現場制作と、工場制作とに分かれます。
壁は勿論現場制作ですが、カウンターに呼応する曲線となっています。
ようやくフォルムが浮かび上がって来ました。
消防法により、燃えない軽量鉄骨(ライトゲージ)で組まれます。
監督と話すのが、その工事の責任者。
「楕円の壁がなんとかできてほっとしてます」と言っていました。
楕円は、円と違って、均一な変化ではありません。
数学の時間に戻ります。
楕円は、2つの焦点からの距離の和が、一定となる曲線です。
このオフィスの壁は、3つの楕円で構成されています。
現場では、2つの焦点にビスを打ち込み、伸びない釣り糸を結びつけ、監督が直接床に描くのです。
そのラインに合わせ、スリットが入ったライトゲージを床に敷き。
そこに柱材を立て、両面に石膏ボードを貼り付けて壁は完成。
「ほっとした」の言葉通り、難易度の高い工事です。
カウンターは、更に4つの楕円が組み合わさって、出来ています。
それらをいくつかのパーツに分解。
7階にあるこのオフィスに搬入できるよう、通路幅を検討し、サイズを決定しました。
何故そんな面倒な楕円を使うのか。
人の世は、全てが関係性です。自分ひとりで完結できることはありません。
特に仕事においては、対象者があり、無限の選択肢が常にあります。
中心と半径を決めれば、1つの形に限定される円より、焦点を決めたとしても、距離を和の選択が無限にある、楕円の方が、適しているのは間違いありません。
しかし、面倒には常にコストが掛かります。それに納得して貰った場合のみ、実現へと至るのです。
感謝の気持ちを持ちつつ、楕円という思想が、この新しいオフィスに活気と変化を与えてくれると信じているのです。
文責:守谷 昌紀