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緑を囲む京都のオフィス「山本合同事務所」‐7‐エピローグ 建築の責任

 webサイトの完成は、プロジェクトの一区切りでもあります。

 「山本合同事務所」の東隣はマンションを建設中。

 その事故対策で、電線に黄色いカバーがついています。

 電柱、電線は美しくないので地中埋設になればよいのですが、新築時の引き込み工事は高額になると言われています。

 実仕事の中で、金額調整に当たる立場としては、何とも難しいところです。

 電線だけは思う所がありますが、他はこの建物がよく表現できていると思います。

 1階は、階段以外全て駐車場。

 何とか5台停めることを目標にしました。

 右手に見えるのはサインです。

 その階段を上がると、2階ワークスペースの中央にでてきます。

 手前のバームクーヘン型のデスクと、奥にある馬蹄型のデスクが、このオフィスの最大の特徴。

 人の流れに沿うようにデザインしました。

 特に馬蹄型のデスクは、中央に緑をもってくるためにこの形状を考えました。

 南側の一番奥から見返すと、3階のミーティングルームとの関係がよく分かります。

 鉢植えとは言え、大きな木が入ることを想定していたので、トップライトからの光も取り込みました。

 北面の道路側にある階段を上って3階へ。

 北側は光が入りすぎないので、カーテンウォールとし、街に大きく開いています。

 3階はミィーティングルームとしていますが、リビングのような使い方をイメージしています。

 家具などは、全てクライアントのセレクト。

 京都は景観条例があり、法律上このような切妻屋根にする必要があります。

 3階はロフトっぽい空間にしたいという要望だったので、屋根形状を上手く活かすことを考えました。

 ガラス手摺から見下ろした景色が、「緑を囲む」というコンセプトをよく表しています。

 コンパクトなキッチンも備え、さらにロフトの中のロフトのようなスペースがあります。

 ここは仮眠などに使われるのです。

 その下にあるのはトイレスペースですが、シャワーも備えました。

 ムービングキャビネットは既製品でサイズを検討し、木で制作しました。

 工場で大量生産されるものを、木で家具として作るのは、なかなかにハードルが高いもので、施工会社もかなり苦戦していました。


 
 ステンレス板をくり抜いた看板も、オリジナルのデザインです。

 物創りを生業とするなら、過去をなぞるだけでは意味がありません。しかし、無謀な挑戦をすることに価値がある訳でもありません。

 その間にある、最も総合点の高い一点を見つけ射抜かなければなりません。

 この建物は個のものです。

 しかし街は建築の集合体でもあります。観光都市京都において、その責任を感じながら仕事をしたつもりではあります。

文責:守谷 昌紀

■■■毎日放送『住人十色』4月14日5:00pm~5:30pm
「回遊できる家」放映

■■■『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
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■4月1日(日)「トレジャーキッズたかどの保育園」開園

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『住まいの設計05・06月号』3月20日発売に「回遊できる家」掲載
『関西の建築家とつくる家 Vol.2』2月1日発売に「阿倍野の長家」掲載
『homify』6月2日「イタウバハウス」掲載
『houzz』5月28日の特集記事「あちこちでお茶できる家」掲載
「阿倍野の長家」『Best of Houzz 2018』1月19日受賞

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緑を囲む京都のオフィス「山本合同事務所」‐6‐バームクーヘンも登場

 今年も残すところ1週間あまり。

 遅れ気味になっていましたが、ようやく「山本合同事務所」の引渡しが終わりました。

 このオフィスは北向きなので、光は裏側からとることになります。

 反対に言えば、北側に対しては思い切って開くことができるのです。

 駐車場脇にある階段が、キューブの中に貫入していきます。

 階段前にある看板は、クールに仕上げました。

 エントランスはワークスペース中央。

 奥に進むとオーバルカウンターを備えたメインのワークスペースです。

 南の開口から、またトップライトから、冬の柔らかい日差しが差し込んでくるのです。

 手前にあるのは、今回初登場のバームクーヘンデスク。

 この有機的なフォルムを持つ2つのデスクが、人の流れ、関係性を創造してくれることを期待しています。

 バームクーヘンの北側はガラスのカーテンウォール。

 北側道路を望み、吹抜けで3階と繋がっています。

 3階は、応接室でありリビングでもあります。

 右手に見えるのはロフトへのハシゴ。

 一番奥にあるトイレにはシャワーが備え付けてあります。

 繁忙期や打合せ後には、宿泊することも視野にいれてのことです。

 ミニキッチン、冷蔵庫は無印良品でまとめました。

 そして右手は再び吹抜け。

 3階も含めての大きな1室空間になっているのです。

 オーバルカウンターに合わせて、天井から吊り下げられたペンダントライト。

 これは、クライアントが東京で見つけてきたもの。

 シーリングファンが、緩やかに空間を撹拌してくれるでしょう。

 各席の横に移動して使う、ムービングキャビネット。

 オリジナルを木で制作しました。これはなかなの出来です。

 働く場所を快適に。

 誰もが思い、誰もが望むことです。

 その思いにどこまで応えられたのかは、本格的な業務が始まってからの評価になるでしょう。

 タイトルにある「緑」が中央にやってくるのも年始。

 いくらかの不安もありながら、楽しみにしているのです。

文責:守谷 昌紀

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緑を囲む京都のオフィス「山本合同事務所」‐5‐主役登場

 10月の最終週からようやく天候も回復。

 「山本合同事務所」もようやく外部工事の目途がつき、内装工事が本格化しています。

 壁、天井の塗装がはじまりましたが、1階駐車場はまだ下塗りの段階。

 2階ワークスペースはほぼ塗装も終了です。

 このオフィスは壁紙を使っておらず、エマルジョンペイントという、漆喰のような肌合いの塗装を仕上げとしています。

 空間が優しくなるのです。

 ワークスペースの吹抜けは、タワー状の足場があるうちに仕上げなければなりません。

 11月に入ってから再び現場へ行くと、家具が搬入されてきました。

 オーバルカウンターがワークスペース中央に据えられ、空間が引き締まります。

 夕方、クライアントも交えて、LANのネットワーク、電話等の打合せ。

 それぞれの席に、どのような配線を送るかを、1席ずつ確認して行きます。

 3階は吹抜けと繋がる、リビングのような空間。

 休憩室、打合せ室など使い方は様々です。

 小振りな無印のキッチンが入り、イメージが明確になってきたと思います。

 舞台なら、主役、ヒロイン、仇役、脇役があるように、建築にも配役があります。

 このオーバルカウンターはこの建物においてはまさに主役。

 ワーキングデスクという機能を満たし、中央に緑を内包する形状は、この空間のためだけにデザインしたもの。

 現時点での手応えは十分です。

 このあと、続いてヒロインも登場します。

 山本合同事務所劇場はクライマックスに向かうのです。

文責:守谷 昌紀

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緑を囲む京都のオフィス「山本合同事務所」‐4‐だろうでなく、かもしれないへ

 「山本合同事務所」の現場までは車で行くことがほとんどです。

 第二京阪が開通してから、名神を通ることがほとんどなくなりました。

 巨椋池からは、阪神高速京都線に乗り継ぎます。

 池と付きますが、京都最大の水場でした。干拓によってできた広い田の中を走る快走道路です。

 京都らしい景色を望みながら、所用時間は1時間15分ほど。

 この日は夕方からの打合せ。

 影がかかっていましたが、ようやく足場のない外観が見れました。

 京都市内につき、景観条例で切妻屋根が求められます。

 その条件の中で、こぶりながら働きやすいオフィスを模索しました。

 土地がら、仕事がら、移動はほぼ車。

 1階は全て駐車場となっています。

 2階がメインのワークスペースですが、壁の下地ができあがってきました。

 その上に、ちょこんと3階がのっかっているというレイアウトです。

 南端の屋根にあるトップライト。

 楕円テーブルの中央に向かって光が落ちてくるよう設計しました。

 この中央に緑を置く予定なのです。

 クライアントはとても仕事が忙しく、「その世話がちゃんとできるだろうか」と思案中。

 最終的にどうするかを決めるのはクライアントです。

 現場としては出来る限り多くの場面を想定して、備えをしておくのが仕事です。

 だろう運転でなく、かもしれない運転を。

 教習所で誰もが教わったことですが、全てに通じるものなのです。

文責:守谷 昌紀

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