建築の計画が始まると、構造体を何にするかを決めなければなりません。

木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、そしてそれぞれの混構造。構造体としてのコストは「木造<鉄骨造<鉄筋コンクリート造」という並びになります。

それぞれに特徴があるので、鉄骨造から解説してみます。鉄骨造もブレース構造とラーメン構造がありますが、今回は最もポピュラーなラーメン構造についてです。

ちなみに「ラーメン」は柱と梁といったフレームだけで成立する構造体を指し、ドイツ語で額縁を意味する”Rahmen”と書きます。

日本の国民食、ラーメン(拉麺)とは全く関係ありません。

1. どこで製作される?

鉄骨は、こういった国土交通大臣によって認定された認定工場で製作されます。

どのくらいの規模の工事まで請け負えるかは、認定グレードによって5段階に区分されています。

大型サイズの角形鋼管を「コラム」と呼びますが、丸型鋼管を使用することもあります。

鋼管という工業製品は品質が安定しているので、重要なのは接合部です。強度の強い「溶け込み溶接」が採用されます。

十分な溶け込みを確保するため、コラムの端部が開先加工されています。

2. どんな作業がされる?

柱と基礎を緊結する部分に、「ベースプレート」が溶接されました。

次の写真は柱の頭部や中間部の梁が取りつく部材です。

通称「サイコロ」と呼ばれています。

運搬上、柱に全ての梁を取り付けるのは無理なので、「継手」まで70cmほどの短い梁をサイコロに溶接します。

次の写真は梁組みが複雑な例です。
こういった部分の確認が非常に重要なのです。

溶接部の検査については後述します。

3. 検査

完成した状態で寸法のチェックをしています。

継手の位置なども重要ですがやはり溶接部です。

溶接部を超音波探傷検査で確認しています。

チョークで梁に描いてあるスケッチのように、溶接部は盛り上がっているので、斜角探傷法で調査します。

探触子から斜めに入射された超音波は、傷などがあれば反射されます。
その時間によって、どの深さに欠陥があるかが分かるのです。

4. 基礎と鉄骨

鉄骨は基礎に固定されて建物の躯体となります。

コンクリートを打設すると鉄筋は見えなくなるので、打設前に配筋検査を行います。

鉄筋のサイズ、定着、コンクリートの被り厚が確保されているかを確認しているところです。

柱が取りつく、「基礎柱型」は特に重要です。

施工精度による強度のばらつきを避けるため、ISベースやベースパックと言われる、ユニットを使用することも多い箇所です。

5. 建方

コンクリートの打設の前には、「受け入れ検査」を行います。

生コンクリートのスランプ値(やわらかさ)、空気量、塩化物含有量などの試験を合格したものを打設するのです。

また、テストピースを製作し、7日後、28日後に強度試験を実施します。

検査に合格した生コンクリートを打設。

養生期間を置き、コンクリート強度が確認できたら今度は建て方です。

重機によって柱、梁が建てこまれていきます。

先述した 基礎柱型部で、鉄骨の柱と基礎が緊結されるのです。

継手部分で梁を固定。

まずは仮止め。

そして、指定のボルトを規定のトルクで締め付けて完成です。

鉄骨造のまとめ

鉄骨は「 構造計算通りの強度を出しやすい構造体」 と書きました。

木造より金額的には高くなりますが、しっかりとした設計、監理をすればとても頑丈で安全な構造体ができあがります。

何より強度のある鉄骨でなければこういった大空間をつくることは難しいのです。

構造体としてのコストは「木造<鉄骨造<鉄筋コンクリート造」という並びになります。

コスト、目的と合せて選択することになりますが、建築を計画する際、いきなり大きな分岐点がやってくるのです。

鉄骨造の躯体としての魅力をまとめてみました。

かなり専門的な話になりましたが、参考にして貰えればと思います。

(2022.4.11)