池原の悲しき恋人

 昨日、長男と池原ダムへ行って来ました。

 奈良県の最南端に位置しますが、訪れるのは9年振りです。

 ここでのターゲットはブラックバス。外来魚問題はさけて通れないので、少し歴史を書いてみます。

 ブラックバスは、大正末期に食用として北米から輸入されました。初めは芦ノ湖、その後いくつかの湖に移植されます。

 繁殖力が強く、かつ攻撃的な肉食魚で、ルアーフィッシィングの対象となりました。

 そんな理由もあり、人為的に多くの湖に放流されていったのです。琵琶湖ではモロコ、ニゴロブナの減少が大きな問題になりました。

 滋賀県では2003年に再放流禁止条例、そして外来生物法へとつながっていきます。

 ブラックバスはアメリカでは、最もポピュラーなルアーフィッシィングの対象魚です。釣り人はライセンス料を払って釣りをし、そのお金が自然保護に役立てられる。

 ルアーフィッシングに造詣の深かった作家・開口健は、これを例に、バスフィッシングが将来、水辺の保護に役立つ可能性がある、とも書いていました。これはあくまで釣り人側の意見ですが。
 

 池原ダムでは村も重要な観光資源と考えています。

 入漁料を払って釣りを楽しむ体制が出来ていったのです。役場も一体となって、1988年、フロリダバスという種を輸入、放流します。
 
 これはブラックバスの亜種で、より大きく育つのです。20代の頃、休みは常に湖上で過ごしました。その理由がこのフロリダバスです。

 1996年5月4日は朝から雨が降っていました。

 その夕方、65cm、6kg弱のバスを釣りあげたのです。他の釣り人に勧められ、地元で有名な人の所へ持っていきまいた。

 「日本記録級かもしれない」と。

 釣り雑誌に連絡してくれ、結構な数の雑誌に載ったのです。私は思いました。今、日本一に最も近いのはバスフィッシングかもしれない、と。

 年齢と共に仕事も増え、子供もでき、釣行回数は減って行きました。

 外来生物の抱える問題はおそらく解決方法がありません。またバスフィッシングを正当化する方法もありません。

 しかし、私の人生において、より自然との関わりを深めてくれたのは間違いありません。

 池原ダムは「バス釣りの聖地」とも言われます。聖地で、33cmの悲しき恋人と再会を楽しんだのです。

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