レディー・ジョーカー

 最近、低学年の子供が寝る時間は早まる傾向にあるそうです。

 共働きの家庭が増え、朝が早くなったのがその理由と新聞にありました。

 とても良い事ですが、我が家の長男は寝る時間が遅くなって来ました。起きている時間に帰ると、大概本を読んでいるのです。

 現在気に入っているのが「ヘンリーくんとゆかいな仲間たち」というシリーズ。

 横からのぞくと結構文字も小さいのです。

 朝起きてくると同時に読み始めるくらい、好きなようです。

 子供が本を読んでいる横で、テレビを付ける訳にはいかないので、私も食事を終わら一緒に本を読みます。

 おかげで、長らくカバンに入っていた「レディー・ジョーカー 高村薫著」をやっと読み終わりました。文庫本では上、中、下の3巻あります。

 ストーリーは、大手のビール会社、日の出ビールの社長が誘拐されます。

 数日拉致された後、開放。その間に、最小限の言葉で20億円の裏取引に応じるように言われます。

 レディー・ジョーカーを名乗る犯人グループからは「人質は350万キロリットルのビールだ」と脅され、ほぼ言いなりになる日の出ビールの社長。

 犯人グループは、薬局の老店主、競馬仲間の刑事、旋盤工、貸金達。

 事件を追う、警察、新聞社などが過去の事件、人間模様と絡み合いながら、物語は繊細に進行して行きます。

 特に、日の出の社長の日常、心理の動きが細やかに描かれているのですが、何の違和感もなく、実在する人物に見えてきます。

 とても面白かったのですが、読み終わった後、モチーフはグリコ・森永事件と知りました。

 80年代の半ば「かいじん21面相」「キツネ目の男」などで世間を騒がせたあの事件ですが、思い返せば同じような展開ばかり。一番違うのは犯人グループを誰だか知っているということだけ、と言えば言い過ぎでしょうか。

  小説では、警察には知らせないまま、犯行を収束させる為に日の出ビールは、要求通り20億円を犯人へ支払います。

 グリコ・森永事件は未解決のまま。高村薫が描いた犯人像が合っているのかは分かりませんが、こんな闇のストーリーがあったのかも、と思わせるには十分な展開でした。

 この本は知人に勧められ、作家、高村薫が男性か、女性かも知らずに読み始めました。この情報が多い時代、作家のことを全く知らずに作品を好きになるのは貴重なのかなとも思います。

 有名になれば、すぐにコメンテイターとして声が掛かるのでしょうが、発言している姿を見てがっかりしたことも多々あります。

 作家には、やや神秘性があったほうが良いと思っているのです。もしくは、そういう作家に私が憧れているだけかもしれませんが。

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