雑誌取材 「サロンのある家」

 昨日は「サロンのある家」へ行っていました。竣工写真の撮影から、丁度1年ぶりです。

 雑誌の取材があったのですが、編集長、ライター、写真家の3人は東京からの来阪です。

 竣工が2006年で、4年の時間が経ちまた。その間に、ご家族も増え、植物も育ち、いっそう「らしい」家になっていました。
 
 とは言え、竣工から、これだけ時間が空いて撮影をしたのは始めてで、片付けが大変だったと思います。

 更に、小さなお子さんを見ながら、料理をしていただいたり。

 朝からの撮影が終わったのは夕方4時。

 最後に撮影があった屋上で、ビールまで頂きました。もう感謝以外ありません。

 クライアントのご夫妻からは、色々なことを学びました。

 ホスピタリティー、駆け引きしない、問題が起こった時には段階を踏んで論理的に等など。設計当時を思い出します。

 撮影ですが、今はデジカメなので、その場で見せて貰いました。とても良い感じです。

 発売は7月21日の予定。楽しみです。近付いたら、またここで紹介します。

熊野古道

 5月3日から5日まで、南紀へ出掛けました。まずは中辺路(なかへち)町へ。

 中辺路は、2004年に世界遺産へ登録された熊野古道のひとつです。

 平安時代に、皇族、貴族が、極楽浄土へ憧れ、熊野三山へ参拝したのが始まりとされます。

 江戸時代には庶民もこぞって訪れ、「蟻の熊野詣」として知られました。

 熊野大社と繋がる参道は、伊勢路、高野山からの小辺路、吉野への大峰奥駆道、海岸線を通る大辺路などがあります。

 京都、大阪、紀伊田辺へ抜け、険しい山間部を抜ける、中辺路は最も好まれたと言います。

 道中が厳しいほど、ご利益が大きいと考えたからで、非常に日本らしいものと感じました。

 道中には王子(おうじ)と呼ばれる、小さな分社が多く点在します。

 近露(ちかつゆ)王子のすぐ手前にあるのが箸折峠。花山法皇が御経を埋めたと伝えられます。

 花山法皇が食事の為、箸に使おうと附近のカヤを折りました。

 軸の赤い部分に露が伝うのを見て「これは血か露か」と言ったのが、地名の由来と言います。

 その地に残る牛馬童子像は、本人の姿とも。

 峠を下りると、近露王子。そこから「なかへち美術館」は100mほどです。

 美術館の案内に小さな宝石箱とありました。

 展示スペースは小さく、回廊で囲まれています。

 一部がパブリックスペースになっていました。

 緩やかな曲線とガラスに囲まれ、洗練された空間でした。

 小さな窓からは、日置川を望む景色が切り取られていました。

 旅行の前半は私の為、後半は子供中心のスケジュールにしました。

 公園、磯遊び、動物園へ。

 1歳くらいの子供を連れて遊ぶ、若い夫婦がいました。

 我が家に置き換えても、つい数年前のことです。しかし随分前のようにも感じます。

 子供の成長は早く、家族で旅行に行く機会など、僅かな期間かもしれません。

 時間が許す限り、一緒に出掛けようと思うのです。

なかへち

 今朝は5時に大阪を出発し、紀伊半島の中ほど、中辺地まで来ました。

 熊野古道を少し歩くと「なかへち美術館」が。先頃、プリッカー賞を受賞した、妹島和世・西沢立衛の共同設計です。

 同賞を主宰する米ハイアット財団は授賞の理由を「デリケートさと力強さ、正確さとしなやかさを兼ね備え、巧妙ながら賢過ぎない」とコメントしました。

 賢すぎないというところが、響きます。

 こぶりで里山に美しい美術館でした。

コラム

 今日は昭和の日で祝日。ゴールデンウィークの初日です。快晴で最高の出だしになりました。

 花の主役は桜からハナミズキへ。

 紅が新緑に映えます。

 3日、4日、5日は三連休にして、出かけるつもりですが、未だホテルはキャンセル待ち。どこに行くかは決まっていません。

 仕事上、住宅雑誌は良く見ます。様々なタイプが発刊されていますが、これからはwebとの両立を目指すようです。

 創刊50年を迎える老舗雑誌「住まいの設計」も、webサイトを3月23日にリニューアルしました。

 2、3の「ゲツモク日記」と「現場日記」をUPして数日経った頃、編集部から連絡がありました。「公認コラムニストとして記事を書いてみないか」というものでした。

 コラムとしては「現場日記」の「伊東内科クリニック編」のみですが、始めに声を掛けて貰ったのは単純に嬉しいことです。現在はトップページにも告知が出ています。

 コラムとは元々建築の用語で円柱のこと。それが縦に囲まれた記事を意味するものに転じ、決まった型をもつ記事となったようです。

 条件はいくつかあるのですが、内容が相応しく無い場合は打ち切りもあるとのこと。しかし、あまり考え過ぎず、感じた事を脚色せずに書きたいと思います。

 プロフィールには「公認コラムニスト」の文字も。気恥ずかしくも、誇らしくもあります。 

上野と本郷

 日曜日は、東京で打合せがありました。

 行きの新幹線からは、富士山のが完全な姿が。

 2世帯住宅の設計は、最終段階に入りました。昼からの打合せを終え、その日の夜はホテル泊。

 今日は朝から所轄の官庁廻り。それが終わると、街を見て廻ります。

 最後が上野付近だったので、今回は西郷隆盛像からスタートです。

 小さい頃、パンダを見に来て以来だと思います。

 西郷さんは以外に小さいんだな、という印象でした。

 夕方にさしかかっていたので、前川國男の東京文化会館はフォルムのみ。

 それでも前川らしいと分かります。

 月曜日だったので、安藤忠雄が保存、再生した国際子供図書館は休館日でした。

 その他、コルビュジエの西洋美術館も休館。

 一番楽しみにしていた、谷口吉生の国立博物館の法隆寺宝物館にも入れず。

 入れないとなると余計に見たくるもので、塀によじ登って1枚だけ。

 しかし残念です。

 本郷は東京大学のある街。中に入って来ました。

 一番感激したのが、安田講堂。内田祥三の設計でした。

 学生運動によってよって占拠され、機動隊が強制排除している場面は、何度も映像で見ました。

 すぐそばには、槇文彦の法学系教育棟、安藤忠雄の福武ホールがありました。

 2人の作品が並んでいるのは、東大構内だからこそでしょう。

 2つの建物を行き過ぎると、赤門がありました。

 東大と言えば赤門です。門の前で高1くらいの女の子が、自分を入れて一人で写真を撮っていました。

 高校生の頃、先生が「自分の行きたい大学を実際に見に行って来なさい」と言っていました。

 明確な目標がなかった私は「なぜわざわざ」と思っていましたが、今なら理解できます。

 本当にそこに行きたいなら、その姿を明確にイメージできるほうが、圧倒的に良いからです。彼女は数年先、ここに来るのでしょうか。

 人事ではありません。受験勉強では大した結果が残せなかった私ですかから、今は明確な夢を持って、日々精進です。

大阪城とOBP

 時間などの制約がなければ、車での移動は楽しみです。

 城東区の現場からの移動する時は、大阪城の北側を西へ抜けて行きます。この辺り、戦時中は広大な砲兵工場がありました。

 それらの大部分は空襲で破壊され、戦後はいち早くバラックが建ち並びます。アパッチ族なるものが出没した、非常に治安の悪い所だったそうです。

 現在は再開発によってOBP(大阪ビジネスパーク)と呼ばれ、大阪で最も整備されたオフィス街と言えます。

 その中でも、ひときわ目を引くのがクリスタルタワー。竹中工務店の設計施工です。

 最も美しいオフィスビルだと思います。

 研ぎ澄まされたディティールは、手が切れそうなほど。

 クリスタルタワーに向かって西進。右折すると土佐堀通りに出ます。左折して西へ向かうと大阪城が見えてきます。

 この辺りは、全てのスケールが一変し、景色もダイナミックに変化して行くのです。

 400年以上前、この石垣を人力で作り上げました。

 気の遠くなる作業だったと思いますが、美しい曲線はそれ自体がアートです。

 現在の天守閣は、徳川デザインと言われます。

 大阪夏の陣で消失したものを徳川幕府が再建したのですが、秀吉のオリジナルデザインも見てみたいものです。

 土佐堀通りを西に向かう時、大手門の前を通る脇道があります。車から天守閣と石垣が一番美しく見えるルート。

 石垣の美しさや重量感は、なかなか写真では伝わりません。必見は石垣です。

斜面

 3月中旬、最後の外観撮影が終わった「池を望む家」。

 昨日は、家族で遊びに行ってきました。昼食をご馳走になったのです

 こちらの家は裏庭があります。

 すぐ前は池。

 5歳の長男は、デッキから飛び降りて遊びだしました。

 その度に、芝生がズルッとめくれるのです。

 こちらは「やめなさい!」となりますが、ご主人は笑って遊ばせてくれました。

 下の池から上がってきたのか、小さなトカゲも見つけていました。

 傾斜はもとの形状のままです。ここは手をつけないでおこうと思っていました。
 
 斜面は視界を下にも広げ、自然に人を並ばせます。

 面と向かうより、並んで何かを見ているほうが、話し易いと思うのです。

 例えば鴨川の土手に並ぶカップルのように。

マーフィーの法則

 そう呼ばれるものには、2つあるようです。

 一つは、ウキペディアにもある、若干ネガティブなもの。もう一つは、ジョゼフ・マーフィ博士の成功法則。

 「あなたの人生はあなたの心に思い描いたとおりになる」

 という限りなく前向きなものです。

 自己啓発セミナーみたいですが、順に進めると納得できるかもしれません。正確に言うと思うだけでは駄目で「心に描き、それが潜在意識に受け入れられれば」実現するという考えです。その手順まであり、方法は以下の通り。

A. 自分の望むことをうまく想像すること(image)
B. その事を考えつづけること(think)
C. 実現を信じること(believe)
D. 行動すること(do)

 加えて注意点もあります。

a. 潜在意識は休みなく働いている。
b. 潜在意識には善悪の区別が無いので、判断、選択はできない。

 よって、間違った考え方が、潜在意識化されると……恐ろしい結果になるのです。

 以前の繰り返しになりますが、潜在意識はフロイトによって、その存在が証明されました。氷山に例えれば、心という海の水面上にあり、意識できるのが顕在意識。水面下にあるのが潜在意識です。マーフィ博士はこの比率を1:9としました。

 思い描いたものが潜在意識に受け入れられたなら、常に9人力で実現に向かっていることになります。

 成果を残している人たちは、発言、行動にいつも筋が通っています。もしこの法則を信じるなら、潜在意識まで、その考えが至っているからと言えるでしょう。

 ある時はポジティブに、ある時はネガティブにとはならないのです。

icetee

 4/10(土)、11(日)は長野県の志賀高原へ行って来ました。

 スキーの試合にエントリーしていたのです。

 宿はジャイアントスキー場が正面に見える、ホテルイタクラ

 土曜日は快晴。最高の景色です。

 幼稚園から高校2年まで、年末はここで過ごしました。

 父が友人達と作っていたスキークラブの定宿だったのです。

 父は20年振りで流石に懐かしそうにしていました。

 この試合は、学生時代の友人達が「全てのワクを超えて、楽しみ戦えるステージを」という理念で立ち上げた団体、iceteeが主催しています。

 ハンディキャップを抱えたチェアスキーの選手も、同じ条件で試合をするのです。

 スキー板一本で、果敢に滑って行きます。

 転倒した時は、見た目にもヒヤッとしますが、皆が同じステージで戦うのです。

 日曜日は、長男もレースに初出場しました。

 最初は渋っていたのですが、まわりに触発されて、自分で出ると決めました。無事完走して17人中15位。

 最年少だったので、立派な成績だと思います。

 私の成績は、初日が19人中13番と12番。

 2日目は途中でスキー板が外れて転倒。唇を切ってしまいました。

 久し振りだったので、甘くはなかったのですが、まだまだ燃えるものがありました。

 時間が許す限り、家族を連れてこの試合に出ようと思います。

 スポーツ、真剣勝負、車椅子でここまで試合に来る人達。伝えたいことが沢山あるのです。

家康と幸村

 事務所のある平野は大阪市の南東部にあります。

 大阪城(大坂城)から9km離れていますが、大坂夏の陣では戦場になっています。その時の家康伝説が残っているのです。1600年の関ヶ原の戦いで勝利を納めた家康は、天下を我が物とし、更に豊臣家の滅亡を目指します。

 鐘の文字が不吉だと難癖をつけ、大坂の陣になだれこんでいく下りは有名ですが、一方的にやりこめられた豊臣方で、一人気を吐いたのは真田幸村です。
 六文銭のノボリと、赤備え(朱に塗った鎧)で有名な真田家は長野県上田の藩主でした。ノボリの六文銭は三途の川の通行料。それをも恐れない勇猛さでならし、戦国時代随一の戦上手で知られていました。

 1614年の冬の陣では、城外に真田丸という出城を築き、家康方をかく乱します。この場所は、現在も真田山という地名で残っているのです。

 猿飛佐助、霧隠才蔵に代表される、真田十勇士は、太平の世が続いた江戸時代に、講談として脚色さてたものですが、その実力は間違いありません。

 さて平野の話です。翌年の夏の陣で、家康はここに陣を構えました。

 「八尾若江の戦」「道明寺の戦」で大敗を喫した豊臣方の真田幸村は、家康がこの地を通ると読み、地雷をしかけました。カマドに火を入れると爆発する仕掛けでしたが、偶然家康が用足しに立った時に爆発。

 同時に、真田軍が一斉攻撃を仕掛けると、家康軍は散走します。家康最大の危機でした。その爆発でお堂にあった地蔵の首が400m先の全興寺(せんこうじ)まで飛んで行き、現在も祭られているのです。

 そのお堂は、環濠都市平野の樋尻口地蔵堂。

 全興寺も朝のジョギングコースなので、お地蔵さんの頭が飛んで行く距離では……と思いますが、家康を追い詰めたのは事実のようです。

 真田家と徳川家の因縁は浅からぬものがあります。

 これに詳しいのは、池波正太郎の「真田太平記」。文庫本で12巻とかなり読み応えはありますが、気になる人は是非。

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