エルマーの冒険

 昨年のクリスマス、突然子供へプレゼントを頂きました。

 3歳の娘には「シルバニアファミリー」の人形、6歳の長男へは「エルマーの冒険」スゴロクだったのです。

 下の娘は、兄のおもちゃでばかりだったので、人形で遊ぶ姿を見て何というかホッとしたのです。

 それを機に、兄妹ともスゴロクに目覚めました。

 娘はもうひとつルールが分からず、邪魔をしたりもしますが、それでも一緒にしたいものです。

 妻はこのスゴロクに原作があると知り、早速買って来たのです。ヤフーオークションでですが。

 長男にとって、初めて絵本でない「本」でしたが、それこそむさぼるように読み始めました。
 

 内容は少年が竜の子供を助ける冒険物語。

 その地図が巻頭についており、自分も冒険している気分になれるのが楽しいようです。

 友人に聞くと有名な本らしく、やはり絵本から本への変わり目にあるものと言っていました。

 本好きの私としては、全く知らなかったのが恥ずかしいのですが、スゴロクのプレゼントには本当に感謝しています。

 私が読む面白さを知ったのは学研の「ひみつシリーズ」でしたが、絵のない「本」なら「野口英世」の伝記が記憶の一番初めです。

 「良書を読むための条件は、悪書を読まぬことである。人生は短く、時間と力には限りがあるから」-ショーペンハウワー-哲学者

 学生たちの本離れは確実に進んでいると実感しますが、解決策は簡単だと思います。どんな本が面白かったか、人に聞けば良いだけのはず。

 そういう私も、最近読書量が減っています。まず、長く鞄に入っていう「レディ・ジョーカー」を読み終えないといけません。

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住人十色

 日を追うにつれ、被害が明らかになる東日本大震災。

 天災の恐ろしさに、ただ向かい合う他ありません。土曜日に、メッセージをUPさせて頂きました。

 横浜のエピック・ゲーム・ジャパンへ連絡すると、品川で被災し15km歩いて帰社したとのこと。

 「現状を見るとこれくらいで文句言ってはいけませんよね」とも。

 事務所の照明を半分にしました。どれ程の効果があるか分かりませんが、何か行動したいという気持ちです。

 昨日は、朝から快晴で「頑張れる家」の写真撮影に行っていました。こちらのほうはまた現場日記でお届けしたいと思います。

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 この時期なので、もしかすると延期かなと思っていたのですが「光庭の家」

の前に、撮影クルーの荷物が。

 日曜、月曜と『住人十色』という番組の撮影だったのです。

 昼過ぎにつくと、街中でのロケが終わり、現場はちょっと休憩という感じでした。

 ナビゲーターは『世界ふしぎ発見』でミステリーハンターを務める宮地眞理子さん。

 とても感じの良い人でした。

 テレビの撮影は、やはりカメラが回るとピリッとします。

 この人出の多さこそ、テレビが娯楽の王様たるゆえんかもしれません。

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 少しの間見学していたのですが、宮地さんの声を聞くと、さすがはタレントさん、という感じになります。

 聞き取りやすく、心地よく耳に残るというか。これは少しでも見習わなくてはなりません。

 普段講師を務める奥さんが、インテリアコーディネーターとしての知識と経験に裏付けされた、収納レクチャーを、という感じで撮影は進んで行きます。

 現場の雰囲気は、とても和やかな感じ。

 ただ下のボクは、沢山の大人が居るのでちょっと退屈気味です。

 多くの方の協力で番組は出来上がって行きます。放送は4月23日(土)夕方5時からの予定。

 このような状況なので、変更の可能性も高いのですが、確定したらまたお知らせします。

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地震

 昨日、3月11日(金)の午後3時前。大阪でも、今まで経験したことのない、ゆっくりと揺さぶられるような揺れを感じました。

 大阪の震度は3でしたが、まるで眩暈のような揺れで、念の為スタッフと机の下に入りました。徐々に詳細が分かってきましたが、初めての感覚に、若干胸騒ぎのようなものを感じていました。

 実は昨日入所したスタッフが1名います。彼の実家は千葉県船橋で、すぐに親御さんから連絡があったのです。

 三陸沖が震源地で震度7という速報はあったのですが、次第にかなりの広範囲にわたる、過去最大級の地震だったことも分かって来ました。

 どうしても16年前、1月17日を思い出します。私は社会人1年目で、一件目の設計事務所に勤めていました。大学時代は、甲南大学のスキー部と行動していた事もあり、阪神間に多くの友人がいました。

 建築を志していたにも関わらず、ただ事務所で店番をし、何の役にもたたない自分の無力感に打ちひしがれていたのです。その後西宮市役所へ行った際、その現実を知りました。

 新しいスタッフには「気になるなら帰ってあげれば」と伝えました。仕事とは人の役にたつ為の修行です。まずは近しい人へ、出来ることをして欲しいと思います。

 阪神・淡路大震災の時、地震後の市民の節度ある行動は、日本の道徳観の高さを示し、海外からも驚嘆の声がありました。

 略奪などが起こっても、全く不思議のない状況だったのです。

 被災された方は本当に大変だと思いますが、皆応援しているので、是非落ち着いて行動して欲しいと思います。

 反対に、テレビの後ろでVサインで騒いでいる少年達を見て、現実も知ります。電車が動かず、多くの人が家に帰れなくても、自分たちが生きていて、友人が居ればそれで良い。

 自分でなければ、家族でなければ、知人でなければ他人事という考えは結局、自分も幸せになれません。家族、街、国があってこその自分ですから。

 こんな事を考えるのは、彼らが真剣に仕事に打ち込んだ後だと思います。

 こんな時何かできないかと考え、昨年、応急危険度判定士の資格を取りました。建築士会から要請があれば、手伝いに行こうと思います。

 こんな時こそ、大人は大人の責任を果たす必要があると思います。子供達、少年達に示さなければならないのです。

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切磋琢磨 天王寺

 昨日は、3つ年下の設計事務所の所長と食事に行っていました。

 先月、建築相談員としてハービス大阪へ行った時、前の時間を担当していたのが彼で、少し話をしたのです。

 その後、食事でもと声を掛けて貰いました。今まで同業と交流が少なかったので、まずは単純に嬉しいことです。

 先週の研修旅行も合わせて、色々な人に話を聞き、自分ができていないこと、できていることが明確になったと思います。

 これまで、良い仕事をして、事務所を成長させることだけを考えてきました。例えば「業界の為に」などと言うコメントを聞いても、全くピンとこなかったのです。

 脳科学者、林成之さんが、脳の根源的な本能として「生きたい」「知りたい」「仲間になりたい」があると書いていました。この本能に合わない事は上手くいかないのです。最後の項は、仕事、スポーツにおいても同じです。

 相手がいなければ、健全な競争は生まれません。人は成長しないということになります。生物の歴史を振り返っても、広い意味で回りと上手く付き合えなかった種は、滅びているのです。

 業界の為などとは言いませんが、競争の場に身を置き、切磋琢磨して私たちも成長したいし、回りに刺激を与える存在になりたいと思っています。

 これまでは、何も介さず直接指名して貰ったクライアントとのみ、仕事をしてきました。それが最も大切なことには変わりませんが、今回建築プロデュース会社に登録することにしました。

 また、公のコンペにも、積極的に参加して行きたいと思っています。

 今まで避けて通って来たところに、チャレンジしたいと思っているのです。

 昨晩は、これぞ天王寺という店を紹介したかったのですが、共に満席で、少し悔いが残っています。

 また機会を作って、今度は天王寺の裏路地を満喫して貰おうと思っています。

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4日で横浜と東京をめぐる旅

 先週金曜日から今日の夕方まで、横浜、東京へ出張です。

 金曜、土曜は、大阪ガスが主催する研修会に参加しました。

 エネルギー問題を抜きにして、もはや建築は成り立ちません。

 各社、環境に配慮した、新しいシステムを次々に考えています。

 横浜市港北区にあるこの家は、そんな実験住宅なのです。

 設計は小泉雅生。機能性はもちろんですが、プラン、デザインも面白い住宅でした。

 その後もう一軒、麻生区にある住宅を見学しその日は横浜泊。

 ホテルニューグランドはマッカーサーも宿泊したそうです。

 その風格はさすがという感じでした。

 夕食は中華街の、聘珍樓へ行きました。

 北京ダックが有名なようで、とても美味しかったです。

 元横浜ベイスターズの工藤公康選手も来店していました。

 一番の収穫は、同業者と宴席で話しができたこと。

 参加者はみな設計事務所の所長で、下は32歳から上は60歳まで。加えて皆話題が豊富。

 盛り上がらないはずがないのです。またたく間に、横浜の夜は更けて行きました。

 土曜日はガス会社主催のコンテストで優秀作品賞をとった住宅の見学。

 所長の自邸兼アトリエで、チャレンジ精神に満ちていました。

 住宅で内部を見れることは滅多にないので、本当に勉強になります。

 昼は旧外国人居留地に戻って昼食。

 そのあとは洋館めぐり。

 青、ピンク、黒など、思い切った色使いがなされていて、今までのイメージが随分変わりました。

 最後は、横浜港の大桟橋を見学して、あとはは大阪に帰るだけ。

 私は日、月と所用があるので、ここで失礼しました。

 日曜日は午前中に用事をすませて、まずは浅草のアサヒスーパードライホールへ。

 スタルクのこの作品を一度見ておきたかったのです。

 駅を降りるといきなり凄い人。浅草寺への観光客と、どうもスカイツリーを見に来ている人でごったがえしているようです。

 私としては、2つ一度に見れたので、ちょっと得をした気分。

 その後は浅草寺へ。

 これが、想像をはるかに超える賑わいでした。

 お賽銭の前も凄い行列。

 ビートたけしの「浅草キッド」という曲に♪夢を託した100円を、投げて真面目におがんでる~♪という部分があります。

 ひょうきん族世代の私は、投げて真面目に拝んできました。

 賽銭は当時の物価と比較して、3倍の300円に。

 田園調布線に乗って、用賀でアトリエワンの「マドビル」という作品を見て、一駅向こうにある、天工人の極小住宅を見てきました。

 こちらは個人住宅なので載せるのは辞めておきますが、これは相当にアグレッシブな作品でした。

 そのまま京王線の若葉台まで移動して、大学時代からの友人宅へお邪魔しました。

 こちらのお子さん、私と誕生日が同じなのです。

 ナニワ生まれの浪速育ちで、7月28日生まれ。かれは稲城育ちですが。

 長男がジーンズをはいているのを見て、随分大きくなったなと感じたことを思いだし、持って行きました。

 家族の幸せそうな顔を見て、ホテルへ向かったのです。

 今日の夕方に、横浜で改修したオフィスの写真撮影をして予定は終了です。

 こちらはまた現場日記にでもUPします。

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ライブ イーグルス

3月1日(火)大阪ドーム。7:00pmからイーグルスのコンサートが始まりました。

前にライブへ行ったのはいつだろうと考えてみると……高校生の頃行った、ハウンド・ドッグでしょうか。本当に久しぶりです。

一昨年のマイケル・ジャクソンの件もあり、見たいアーチストがいたら、すぐ行動しようと思っていました。

そんな時、テレビでイーグルスの日本公演を知ったのです。

遅ればせながら予約すると、スタンドの真ん中あたり。ステージから左斜め45度、およそ70m程。メンバーは小指大でした。ちなみにチケットは¥12,000-。

コンサートが終わり、まず来て良かったと思いました。

60代半ばにさしかかったメンバーはもう初老と言って良い風貌でした。1985年、最高にかっこ良いと思っていたドン・ヘンリーは若干お腹が出ていました。

しかし、彼のやや鼻にかかった、高めのハスキーな声は、今まで何回聴いたか分からない、歌声そのものでした。

コンサート後半の中頃、ドラムがハイハットを刻むイントロが流れてきた時、今まで何度聞いたか分からないその曲に感激しました。

私が一番好きな曲「ボーイズ・オブ・サマー」。イーグルス解散の後、ドン・ヘンリーがソロで発表した曲です。

その後バンドは復活し今回の公演に繋がっていますが、ソロ曲は演奏されないんだろうと、思っていたのです。

若干残念だったこともありました……それは隣席のこと。

30歳代くらいの女性2人組は、開演後2曲目くらいに席に着きました。「7時に来るのが大変な人も多いだろうな」とか思っていたのです。

彼女は席に着くと、すぐさまテイクアウトの牛丼を食べ始めました。「まあ腹が減っては、聴けないかもな」と考えていると、3曲目に「ホテル・カルフォルニア」が始まったのです。

物悲しい、ツインネックのギターの音色に、甘く切ない歌声。まぎれもなくあの名曲だったのですが、それは牛丼の匂いの中で……これが一生で一回の生「ホテル・カルフォルニア」体験です。

ちょっと笑い話です。

もしまた機会があればできれば、アリーナで聴きたいと思います。遠くスタンドから見ていると、どうせなら、あの熱気中で聴きたいと思ったです。

最後は平井堅もカバーしていた「ディスペラード」でコンサートは終了しました。

良くライブは皆で造り上げるもの、と言いますが、良いも悪いも、身をもって体験しました。

久々のライブ。とっても良かったです

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和歌山中華そば

 昨日は映画を観ようと、朝からなんばパークスへ。

 シネコンへのエレベーターが混んでいたので、まさかと思いましたが、すでにチケットは完売。

 朝1回目が売り切れていたのは『毎日かあさん』だけ。

 本当に「絶賛上映中」でした。嬉しい気持ちもあり、残念な気持ちもあり。

 早速本屋さんで「るるぶ」を見て行先を考えます。

 ラピート、サザンを乗り継いで和歌山へ行くことにしました。目的はないと言えば無し。あると言えば和歌山ラーメン。

 和歌山市には南海電車とJRが乗り入れています。

 これが市内の東西で結構離れているのです。海側の西に南海、東にJRという関係。

 なんばから1時間ほどで着きました。駅前にあった観光案内には「中華そば、ラーメンマップ」なるものまでありました。

 両駅の中間にあるのが「ぶらくり丁」という商店街。

 南海の駅から15分くらいでしょうか。しかし目標にしていた店が休み。よく見ると、日曜休みが結構あるのです。

 それなら一番人気の店まで行こう、となったのです。JR和歌山駅から更に南で、上の子供をおんぶしたり歩かせたりで、結局1時間程掛かりました。

 ようやくついた井出商店。店内は驚くほど狭く、中央テーブルに14席、壁際のカウンターに12席くらいでしょうか。

 中華そばという言葉にもこだわっているようです。


 
 行列も覚悟していたのですが、到着が1時半頃で一段落していたのか、スッと入れました。

 私達は大盛中華そばを2つと、サバのき寿司と巻き寿司を注文。

 長男は、豚骨スープの匂いを「臭い、臭い」と言っていましたが、味は美味しかったようで「段々いい匂いに変わってきた」とか言いながら、かなり食べました。

 いわゆるこってり系のスープで、麺は細めの柔らかめ。常連っぽい人は「硬め」と注文していました。

 会計は全部で1700円。味も金額も納得です。

 有名店にある少し横柄な感じも全く無く「店内が狭いのでバギーを預かりましょうか」と言ってくれたのです。

 こんなところで、満足度は全く変わります。

 その後、近くにある妻の妹夫婦の新居に寄って、JRで天王寺へ向かいました。

 途中で買った「コアラのマーチ」に、眉毛有りが。

 話しは聞いていたのですが、子供が初めて見せてくれました。

 日曜日をちょっと幸せにする、こんな企業努力は大歓迎です。

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決断は真昼間に

 昨晩は雨。それもあり、今朝は随分温かく感じました。

 庭の梅もついに満開を迎えました。

 最も寒い時期に咲き始め、雪に降られ、春を迎える前に散っていく。

 この家に引っ越して2年。

 短い付き合いですが、梅とはなんと慎ましい花かと感じます。

 今週の月曜日、ようやく伊東内科クリニックのサイトをUPしました。

 公開する前、まずはクライアントへ下書きを送ります。すると院長から良ければ使って下さいと、写真が届きました。

 11月。紅葉が最盛期を迎えるほんの手前でしょうか。

 赤、橙、緑が大変美しいイロハモミジ。

 共に最も愛されてきた庭木の一つでしょう。

 変化がダイナミックで、散り際が潔いのが愛される理由でしょうか。
 
 2月に入り、プロ野球もすでにキャンプ中。

 最近、野球を見る機会はめっきり減りましたが、シーズンオフにイチローを見るのを楽しみにしています。

 彼の言葉は、いつだって爽快だからです。

 今シーズン(?)観た番組は、コピーライターの糸井重里氏との対談でした。

 2009年春のWBC(ワールド・ベースボール・クラッシク)の話しもしていたので、再放送だったのかもしれません。その中で、こう言っていました。

 僕は「寝ずに考えたんだけど」は信用しないんです。だって、そうでしょう。夜に書いたラブレターなんて翌朝見れないじゃないですか。大事な決断こそ、いつも以上に寝て、お天道様の下で!ですよ。

 ごもっとも!です。夜に仕事を引き延ばしてしまう者としては、耳の痛いところ。今後、大切な決断は必ず午前中にします。

 彼は以前、俳優としてドラマにも出演しました。その理由はこうです。

 野球でも自分がイメージ出来れば、ほぼその通りのパフォーマンスが出来る。演技もイメージさえ出来れば、何とかなると思っていました。

 彼にとって、演技も、野球も大して違いがないのです。それよりはイメージできるかのほうが重要ということです。更に言えば、イメージ出来たことを実現できると信じれるかどうかが、最も大切なことと言えます。

 糸井重里が「これ程質問にまっすぐに答えようとする人を、見たことがない」と言っていました。彼の根底にあるのは、目的に対し誰よりも純粋で真面目だと思うのです。

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前川の言葉

 先々週の2月8日、京都市は京都会館のネーミングライツ(命名権 )を売却したと発表しました。

 相手先は市内にある半導体メーカーの「ローム」で、50年52億円という破格の規模。施設として古くなった会館を改修したいという京都市の思惑と、ロームの地域貢献が一致したとありました。

 そんな事もあり、昨日は京都へ。

 京都会館は京都市左京区、平安神宮も近い岡崎にあります。

 日本の近代建築化に大きく貢献した、前川國男の代表作で、完成は1960年。築50年を超えました。

 疎水沿いに建つその姿は、古めかしく映るかもしれません。

 この日は、ブラスバンド大会があったようで、結構賑わっていました。

 前川の代表作としては、上野の東京文化会館などがあります。

 いずれも鉄筋コンクリート造ですが、その重量感を適切なものにするため、前川は腐心していたと思います。

 木造であるかのような、細やかなデザインが細部に行き届いているのです。

 手摺もRC(鉄筋コンクリート造)ならではの造形を、軽やかに楽しく仕上げられています。

 質感の違う素材の組み合わせも巧み。コルビュジエに師事し、丹下健三を育てた彼の言葉が、私は好きです。

 「建築で一番大切なものは永遠性だよ」

 「人間は、はかない存在である。頼れる確固たる存在が必要だ。それに建築は応える必要がある」
  
 「一本の鋲を用いるにも 一握のセメントを用いるにも 国家を 社会を 農村を思わねばならない」

 「自然は美しいね。なぜだと思う。自らに責任を持っているからだよ」

 ホテルフジタ京都は鴨川沿いに建つ名門ホテルで、同じく近代建築の巨匠、吉村順三の設計です。

 先月末、経営難も有り閉館されるとニュースにありました。今年で40年目。近くで見ると、解体の準備か、バリケードがはられていました。

 対比を書きたいのではありませんが、その建築の運命を決めるのは、根底に流れる哲学が影響すると思います。

 責任を果たすため、懸命に生きるからこそ自然、人は美しいのです。

現場力

 先週の前半。午前中に1本の電話が掛かってきました。

 初めにスタッフの女性が出ました。

 彼女の最後の質問は

「失礼ですが、お名前をお聞きして宜しいでしょうか?」

 でした。建築相談と聞き代わると

 「プランは無料で作成して貰えるのですか?」

 という内容でした。

 それに対して私の返答は

 「求めて頂ける可能性があると感じたら、無料でさせて頂きます。よければ、また事務所に遊びに来て下さい」

 完全に駄目です。大きくは、2つの間違いがありました。

 1つ目は、webサイトに無料でプランすると書いてあるので、聞かれたなら「無料でします」と答えるべきです。嘘はありませんが、注釈は無用です。

 計画は、いつも多くの建築家と比べられるコンペだと思っています。報酬を担保するより、全力でプランを全考える方が、よほど事務所の為になると思っています。もちろん、選んで貰えないというイメージは一切持っていません。

 2つ目はスタッフが名前を聞いた事。

 普段から、問い合わせの際には、名前、連絡先は聞かなくて良いと言ってあります。

 例えば服を買いに行ったとき、名前を言えと言われたら、すぐに店を出るはずです。関係が出来上がるまでは、匿名性も大事だと思うのです。

 

 一昨年に竣工した写真スタジオOhanaの石井さんに、撮影の前はどんな準備をするんですか、と聞きました。

 「何もしませんよ。その時のひらめきが大事ですから」と。

 それが「現場力です」とも。
 
 知らない設計事務所に、電話するだけでも勇気が要ったはずです。その対応がこれでは。

 全ての仕事は、一本の電話から。

 スケジュールが立て込んでおり、皆にちょっとした慢心があったのかもしれません。

 その時、その現場で、どんな仕事が出来るかにかかっているのです。

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