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「四世代で暮らす家」‐3‐非効率な物創りに一生を捧ぐ

 こちらの敷地は、2車線歩道付きの道路に面しています。

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 街は建築の集合体ですから、建築とは街づくりの一端を担っていることになります。

 建築家・槙文彦は「道は街の断面」と言いました。

 美しい建築を創ることは、地域への貢献だと思っています。

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 美しいの解釈はそれぞれ違うもの。

 「それぞれ」を、諦めの言葉にしないことが、物創りにおいて重要なことだとも思っています。

 また、実物は1つしか創れないので、模型をつくり、様々な角度から検討するのです。

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 これは玄関からアプローチを見返したところ。

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 右に積んでいるのは素焼きレンガです。

 実際はもう少し奥に積むのですが、透けかたを検討するため、仮に積んでくれました。

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 左下にあるのは、ガレージの床の試し塗りです。

 インナーガレージの床材なので、発色を見るためにつくったもの。

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 LDKの間接照明とカーテンBOXも、実物大模型を作成してくれました。

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 構造体との隙間を検討するために、棟梁がつくってくれたものですが、実物大模型を「モックアップ」と言います。

 設計事務所がこれを制作するのは難しいのです。

 実物大を作ろうと思うと、それなりの強度のある材(例えば木や鉄)が必要になります。

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 加工する技術、専門の工具が必要になってきます。

 私達がつくれるのは、スチレンボードというカッターで切れる、模型専用の材までなのです。

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 木を削る道具はノミ。

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 技術も、体重の乗せ方も、これはプロの技術です。

 近ごろ、こうして実際に物をつくる人への敬意が、少なすぎると感じているのは私だけでしょうか。

 量産できるものや、コピーできるシステムを構築するほうが、ビジネスとしては、展開が大きくなります。

 そして、時代の寵児ともてはやされます。

 その技術革新、ビジネスセンスは素晴らしいと思いますが、対極にあるのが建築だと思います。

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 頑丈であるということは「重い、硬い」が基本で、量産化、工場生産には向きません。

 1つとして同じものがないので、飛行機のように大きな工場があればよい訳でもないのです。

 こんな非効率な物創りに、一生を捧げる変わり者が集まるのが、建築の現場です。

 頑固、ヘンコ、変わり者。

 褒め言葉とは言えませんが、この時代において、それほど悪い言葉でもない気もします。

文責:守谷 昌紀

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