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松原/脳神経外科「うえだクリニック」‐2‐小さなトップライト2つ

 暑い、熱い4月後半になりました。

 現場では、型枠大工が3名。

 汗を流しながら基礎の立ち上がり部を組み上げています。

 親方は50歳中頃でしょうか。

 若者2人を含めて3名のチームですが、1人はもしかすると10代かもしれません。

 若者の現場離れが進む中、1人でも居てくれると嬉しいですし、一声掛けたくなります。

 「是非またウチの現場にきてよ」と伝えました。

 当然ですが、建物は地面に近いところからでき上がって行きます。

 スポーツでも足腰が大切なように、基礎がしっかりしていなければ、地震に耐えられるはずもありません。

 整理整頓がされた現場に、悪い仕事があることはないのです。

 基礎を見れば、敷地一杯だということと、細かい間仕切壁が沢山あることが分かります。

 クリニックという性格上、多くの機能=部屋が必要になってくるのです。

 その中でも、中枢部であり、かつ司令塔となるのが診察室です。

 経験上ですが、院長は自らの診察に適した空間の大きさをよく把握しています。

 かなりの時間をこの空間で働くので、少し大きめの、ゆったりとした空間を提案するのですが、ジャストサイズを指示して貰うことが殆ど。

 人気のクリニックなら、ナースがテキパキと動いている姿を思い浮かべることが出来ると思います。

 無用に大きい空間では、動きに無駄がでてしまい、診察の質が落ちてしまいかねないのです。

 その空間を少しでも快適にしたいと思い、ある提案をしてみました。

 反対に、待合室はゆったりと大きく確保しています。

 南面のもっともよいエリアを贅沢に使い、吹抜けとしました。

 高い位置にある正面のルーバー越しに、かつ側面から、柔らかい光を取り込むことに注力しています。

 2つある診察室には、小さなトップライトを提案しました。

 模型を俯瞰した写真が分かりやすいでしょうか。

 様々な患者さんが来院するので、明るすぎるのも問題となりえます。

 よって、その光を止めれるような機能を持たせ、望遠鏡のような長いストロークをとりました。

 これによって、より間接光に近いものとなるのです。

 地域の皆さんに長く愛される医院を目指します。

 その為にはここで働く皆さんに、この建物、この空間を好きになって貰わなければなりません。

 そんな大それたことが出来るのかは分かりません。

 それでも目指さなければ、現実となることはないはずです。

 この小さなトップライト2つに、創り手としての気持ちを込めたつもりなのです。

文責:守谷 昌紀

■■■『大改造!!劇的ビフォーアフター』4月7日(日)BS朝日で「住之江の元長屋」再放送
■■■『デンタルクリニックデザイン事典vol.1』4月1日発売に「さかたファミリー歯科クリニック」掲載

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【News】
『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
ギャラクシーブックスから2017年11月27日出版
amazon <民家・住宅論>で1位になりました
『houzz』4月15日の特集記事
「中庭のある無垢な珪藻土の家」が紹介されました
「トレジャーキッズたかどの保育園」
地域情報サイトに掲載されました
大阪ガス『住まう』11月22日発行に「中庭のある無垢な珪藻土の家」掲載
『住まいの設計05・06月号』3月20日発売「回遊できる家」掲載
『homify』6月29日「回遊できる家」掲載

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◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

松原/脳神経外科「うえだクリニック」‐1‐プロローグ

 南大阪の幹線道路北側に「Uクリニック」の計画地はある。

 間口は15m程あり、日当たりもよい。

 前面道路はひっきりなしに車が往来し、駅が近いこともあって、自転車、歩行者も多い。大変に活気のある通りだ。

 3月末、土地の掘削から工事がスタートした。

 この地に木造2階建ての、クリニックを新築するのだが、本クリニックは脳神経外科・内科が標榜されている。

 院長はドイツ留学などを経て、その職能を研鑽してきた。脳に対しての高い専門性が一番の特徴である。

 設備においての特徴は、CT、レントゲン等とともに、最新鋭のMRIを備えていることだ。

 MRIは、磁石による強い磁波と電波を使って、体の断面映像を撮影するので、被ばくがなく体に優しい医療機器なのである。

 最新鋭の医療機器を導入するために、キュービクルという小さな変電所も敷地内に設ける必要がある。

 建物のコンセプトは回を改めようと思ったのは、現場を視察したからだ。

 良い診療をするためには、最先端の医療機器も必要だし、広い待合も欲しい。

 法が許容する最大の建物を計画することになり、工事車両を止める余白もない。

 しかし、建物西側にはキュービクル置場がある。

 それもギリギリで計画したのだが、職人はここに工事車両を停めるという。

 後輪の半分は、空中を通過しながらも見事に納まった。

 これも日々の研鑽の成果と言える。

 西も北も境界ギリギリ。

 東の奥もギリギリ。

 道路側もギリギリ。

 何もかもギリギリだが、数センチの精度で、ユンボを操る様を見るのはとても楽しい。

 実業の誇らしさを感じる瞬間だ。

 昨年だったか、ある映画監督がITを「虚業」と表現した。それに対し、ITの寵児が牙をむいたというニュースがあった。

 表現の自由は常にあるが、他者を非難する必要はない。ただ、気持ちとしては理解できる。

 この不器用な男たちの力仕事と技術なくして、建築という実業はなりたたないのだ。

 どんなクリニックとするのか?

 ここまでに院長とは20回程の打合せを重ねたが、コンパスは同じ方向を指していると確信している。

 その成果をこの秋に収穫するつもりである。

文責:守谷 昌紀

■■■『デンタルクリニックデザイン事典vol.1』4月1日発売に「さかたファミリー歯科クリニック」掲載
■■■『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
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枚方「さかたファミリー歯科クリニック」‐5‐庇にスポットライトを

 「さかたファミリー歯科クリニック」はようやく足場がとれました。

 できれば青空で見たかったところですが、梅雨入り後につきいたしかたありません。

 外観の特徴は、4段になって全体を覆う庇です。

 日本における木造建築は、軒と庇の建築と言っても過言ではありません。

 高温多湿の気候のなか、躯体である木をそれらが守ってきました。

 庇は主従の関係でいえば「従」にあたります。

 従の存在である庇を、「主」の存在にしてみたいと考えました。そこに強烈なスポットライトを当ててみたいと考えたのです。

 庇は外壁へ当たる直射を抑え、夏のエネルギー使用料を抑制してくれます。

 また、木造建築の深い軒のように、建物を守る役目も果たします。

 自生する木にとっての「葉」の役割と非常に似ています。このクリニックを一本の大木と見立てることができるのです。

 しかし内部の工事は遅れ気味。

 職人たちは、懸命に働いてくれてはいるのですが……

 7月のオープンに向けて最後の頑張りどころです。

 建築とはディティールの積み重ねです。

 間接照明が収まる部分も、美しく仕上がっています。

 この庇のディティールは、「平野西の家」、「あちこちでお茶できる家」と、積み重ねてきました。

 「あちこちでお茶できる家」の際は、先端をそろえるために少し「折れ」をつけました。

 しかし「さかたファミリー歯科クリニック」で、「折れ」は採用しませんでした。

 この庇は葉のような存在です。葉は折れていないし、少し動きがあっても構わないと考えたのです。

 建築とは夢や希望を形にしたものです。

 私たちの夢と希望が、街の人たちへ届くかどうか……

 内覧会を開催する予定なので、また告知したいと思います。

文責:守谷 昌紀

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枚方「さかたファミリー歯科クリニック」‐4‐成長できる

 今日は生憎の雨ですが、今年の5月は天候に恵まれました。

 「さかたファミリー歯科」は、幹線道路に面したクリニックです。

 車で来院される方には、5台の駐車スペースを確保しています。

 道路は敷地の北側にあり、エントランスは西向き。

 エントランスホールに入ると、受付、階段、そして広い通路に繋がっているのです。

 通路は待合を兼ねた空間になっており、左側には診察室が並びます。

 最も広い診察室にはチェアが3台入る予定。

 それらはパーティションで区切られますが、その奥には個室が2部屋あります。

 2階にも、3台のチェアを設置できるスペースがあり、最大8台のチェアが設置できる建物となっているのです。

 オープン当初は3台からのスタートなので、成長できるクリニックなのです。

 エントランスを見上げると吹抜け。

 2階ホールは、L字の大きな窓とトップライトから光が落ちてきます。

 このオープンな空間は、キッズスペースとして開放される予定。

 2階ホールの奥にある空間は、将来的には個室としてチェアが置けるように配管が準備されています。

 院長室は2畳弱の小さな空間ですが、1畳ほどの専用バルコニーをとりました。

 4畳ほどあるスタッフルームにも、南向きのバルコニーを準備しています。

 日々の仕事の中で、プライバシーが保たれた小さな外部が、心に潤いを与えてくれるのではと考えたからです。

 建築は無機物です。しかし人の愛情によって変化も成長もします。

 院長、スタッフの皆さん、そしてここを訪れる全ての人に愛されるクリニックを目指し、工事も終盤を迎えます。

文責:守谷 昌紀

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枚方「さかたファミリー歯科クリニック」‐3‐アイコン

 正面に「7月 OPEN」の横断幕がとりつけられました。

 この建物のイメージカラーは白と薄紫。

 それに合わせせて、クライアントが準備してくれたものです。

 横断幕が張られているのは、ちょうど2階の大開口部の位置。

 上品かつシンボリックな建物を目指しています。

 この敷地が台形であるがゆえ、面白い空間が生まれます。

 これは院長室の前にあるバルコニー。

 現在はブルーシートがかかっていますが、休憩時間には、ここから空が見上げられるのです。

 間接照明の真っすぐな光のラインが、斜行する壁をより明確にしてくれるはずです。

 さらに、陰影でそのフォルムを明確にするため、当初は庇をデザインしていました。

 しかし減額調整でそれらは全て中止。何とか実現できないかと、しつこく現場に相談中です。

 パソコンが普及して、アイコンという言葉がよく使われるようになりました。

 もとはイコンが語源で、ギリシャ語でイメージを指すとあります。

 一度訪れてくれた人の頭の中に、アイコンとして、像として残るようなクリニックにしたいのです。

文責:守谷 昌紀

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枚方「さかたファミリー歯科クリニック」‐3‐最後に笑う

枚方「さかたファミリー歯科クリニック」‐3‐

幹線道路に面した「さかたファミリー歯科クリニック」。

向かって左にみえる壁が、斜行しているのが分かるでしょうか。

敷地の一辺が斜めに広がっているのです。

幹線道路沿いの歯科クリニックなので、できるだけ駐車場を広くとりたいという要望がありました。

駐車場、またそれらのアプローチを確保した上で、プランをするとこのような形状になっていきました。

 

エントランスを入ってすぐのホールを見上げると、壁が斜めになっているのがよく分かります。

それらを利用して、小さいながらも、院長室、スタッフルームにも外光を取り入れる工夫をしました。

そして、これは減額案でなくなった庇。

何とか安価に、美しく作る方法がないか、監督と相談しています。

そのモックアップが上がってきました。この庇が、建物の形状を引き立てるのは間違いありません。

契約。コスト。全て理解しています。

しかし、思いで仕事をしなければ、経済効率という引き波に飲み込まれてしまうだけだとも思います。

監督の笑顔は、苦笑いか、満面の笑みか。

最後は後者になると決まっているのですが。

文責:守谷 昌紀

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枚方「さかたファミリー歯科クリニック」‐2‐上等上棟

 大安の昨日、「さかたファミリー歯科クリニック」が棟上げを迎えました。

 幹線道路沿いに建ちますが、あらためて大きなクリニックだと感じます。

 その大工工事をしきってくれる棟梁は41歳。

 脂がのりきっている感じです。

 この日は、4人のチームを指揮しての建方でした。

 正面開口部は、このクリニックの顔。

 棟梁とベテラン大工の2人が、手慣れた動きで、梁を叩き込んでいきます。

 仕事ができる人は、みていてもリズムがいい。

 それを確認するだけで、信頼できそうだなと思うのです。

 この大きな開口部は、エントランスの吹抜けに、北側の安定した光を供給してくれるはずです。

 午後4時頃、垂木を固定しているところまで見届けて、次の打合せに移動しました。

 棟梁とチームを組んでいた、ちょっとこわもてのベテラン大工。

 屋根上に声をかけると、思いもよらずはにかんだ笑顔で応えてくれました。

 自分の現場でなければ、絶対声をかけないくらいの迫力は持ち合わせていました。

 ちょっと不器用で、腕自慢が集まる現場が、私のもう1つの仕事場です。

 もし、全てロボットだけの現場になったら、違う仕事を考えます。

 やはり建築は、人がつくるから上等なのです。

文責:守谷 昌紀

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枚方「さかたファミリー歯科クリニック」‐1‐プロローグ

 1月6日(金)、無事地鎮祭を終えた「さかたファミリー歯科クリニック」。

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 枚方駅から東に延びる国道307号線と、JR片町線が交差するあたりに敷地はある。

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 敷地の面積は約300㎡。

 90坪ほどあるのだが、車社会ではこの広さは魅力になるはずだ。

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 快晴の下、地鎮祭をとりおこなった。

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 途中で大きな計画変更もあり、いつもながら、生みの苦しみとはこうまで厳しいものかと思う。

 しかし、完成した時には全てがストーリーとなるはずだ。

 この医院のコンセプトは「さかたファミリー歯科クリニック」という名称が全て表している。

 「家族で来院して頂き、家族として接するクリニック」

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 「家族として接する」という言葉を聞くまで、「ファミリー」が入る本当の意味を、私が分かっていなかった。

 医療とは最もシンプルな社会貢献の1つである。

 そこに、どれだけ心を込めるかで、全く別次元の行為となるのだと思う。

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 そこに建築がすこしでも貢献できればこれ程嬉しいことはない。

 家族で。

 家族として。

 キーワードはやはりファミリーなのである。

文責:守谷 昌紀

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