「どこにもない箱」の家‐1‐プロローグ

 クライアントは、ピアニストとバレエダンサーとそのご両親だ。

 よって、ピアノ練習室とバレエのトレーニングルームがある。それらを中心に、プランは練られた。

 姉妹は、ともに留学も含めて、その才能、技術を磨いてこられた。

 ピアニストのお姉さんはパリで3年間、バレエダンサーの妹さんは、ロシア、イギリス、フランスで。

 本場での勉強、暮らしは、何にも代えがたい経験だろうと思う。

 要望は色々あったが、建物に直喩として取り入れたのが、タイトルとした「どこにもない箱」だった。

 3つのボックスを組み合わせた形状と共に、特徴あるのがその色彩だ。

 白、エメラルドグリーン、グレーを採用したのだが、エメラルドグリーンはパリのオペラ・ガルニエをモチーフとしている。

 屋根は緑青がふいているのが、エメラルドグリーンと映るのだ。

 私が始めて訪れた海外もパリだった。

 1995年、24歳の時のことだが、1番初めに行くなら、やはり芸術の都パリだと思っていたのだ。

 残念ながら、24歳の私は1人でオペラ・ガルニエでオペラを観る勇気がなく、今となっては口惜しい限りである。

 このエメラルドグリーンを、手仕事の塗り壁でどこまで再現できるのか。

 この計画にとって重要なポイントだ。

 「家は家族の未来の幸せの形」だと考えている。

 何を幸せと感じるかは、誰もが違うので、ひとつとして同じ家はない。

 新たに生まれるこの家は、ご家族にとっての原風景となる。

 「どこにもない箱」を実現したいと思うのだ。

文責:守谷 昌紀

■■■毎日放送『住人十色』4月14日5:00pm~5:30pm
「回遊できる家」放映

■■■『住まいの設計05・06月号』3月20日発売に「回遊できる家」掲載

■■■『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
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建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
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(仮称)トレジャーキッズたかどの保育園‐10‐いよいよ開園、その全容をお伝えします

 明日からは、2018年度が始まります。

 「トレジャーキッズたかどの保育園」もいよいよ開園です。

 4月8日(日)10:00am~11:00amには内覧会が開催されます。

 住所:大阪市旭区高殿7丁目16-29

 ハクモクレンも道路沿いに植わりました。

 もう書いてよいと思いますが、本当にタイトなスケジュールでした。

 1ヵ月で法的申請関係を全てクリアし、実施図面を描き上げました。今までで最も厳しいスケジュールだったと思います。

 しかし、のど元過ぎれば熱さ忘れるで、今は懐かしい思い出です。

 アプローチ横にあるのは、通称「ソロバン」。

 親御さんがお迎えに来たとき、先生方、ママ友と話をしたい場面があります。

 その時間を、子供達が退屈しないよう考えたものです。

 着想は、運営会社の担当者さんから。現場を知り、いつも子供のことを見ている人でなければ出てこない要望です。

 広い園庭には、芝生と砂場があります。

 古タイヤは、園長先生が自ら持ち込んだもの。

 泥んこになったらすぐに足が洗え、シャワーも浴びれるのです。

 ホール正面には500色の色えんぴつが飾られる予定。

『人はひといろじゃない。白木の園で自分色をみつけてください。

たっぷりの太陽を浴びて、立派なげん木に育ってほしい』

というメッセージを込めました。

 中に進むと事務室と調理室。

 各部屋には、木製の室名札が掛ります。

 エントランスホールから、調理室が見えるような窓を設けました。

 業務用の機器は、見るからにタフそう。

 機能美と言ってよいでしょう。

 1階は、園庭に沿う形で廊下が伸び、それを介して南からの光が差し込んできます。

 丁度「くの字」の折れ点にあるのが「ほしぐみ」0歳児室。

 この部屋は、廊下からの採光が厳しい為、トップライトを設けました。

 お昼寝には、丁度良い自然光になるはずです。

 見上げた景色は、さながら教会のよう。

 家具や建具は最も淡い白木としました。

 最奥にある隣の部屋は「つきぐみ」1歳児室です。

 少し淡いナチュラルな木の色としています。

 0歳児室のと間にあるのは児用トイレ。

 5歳児室で使う、最も濃い木の色としました。

 ここではお兄ちゃんお姉ちゃんを目指そう、という意味です。

 事務室に最も近い「にじぐみ」は2歳児室。

 この日は、仮の打合せ室になっていました。

 さらに少し濃い色に。

 エントランス前の階段を上がって2階へ。

 奥には調理室、左手にはエレベーターが見えます。

 2階は、園庭とは反対側に廊下があります。

 ホール周りにあるのは、まず「あおぞらえほんしつ」。

 この部屋もトップライトから光をとりました。

 向かいにあるのが「もりのひみつきち」。

 大きな園の中にある小さな空間は、色々な場面で役だってくれるはず。

 一番手前にあるのが「だいちぐみ」5歳児室です。

 トイレでも使った、最も濃い色にしました。

 しっかりした木へと成長して欲しいのです。

 隣にあるトイレは、3歳から5歳児仕様です。

 小さな便器がかわいらしいもの。

 2階の折れ点にあるのは「こもれびひろば」。

 0歳児室のトップライトの光を、木漏れ日に見立てました。

 左手にある可動間仕切を開くと、最奥にある3、4歳児室と繋がります。

 「かぜぐみ」と「そらぐみ」です。

 広さおよそ50畳。

 「こもれびひろば」と合わせると、約75畳あります。

 カーテンは仮のもので、最終的にはレース+緑になります。こちらからも木漏れ日が。

 4月2日の入園式はここで行われます。

 2階は園庭に向いて屋外廊下があり、まさに縁側として使って貰えれるはず。

 開園に向けて、続々と荷物が運ばれてきました。

 手前に写っているのは、運営会社の担当者の方です。

 毎週現場では、3時間から5時間掛けて定例会議が行われました。

 他園の担当、採用という仕事があるにも関わらず、最終回以外全て同席して頂きました。

 そして、全ての相談、質問に対して、ほぼ即断、即決で返答してくれたのです。

 通称「ソロバン」も、この方から提案を受け、考えデザインしました。

 勿論のこと、現場監督をはじめ、現場に関わった全ての職人の頑張りがあってこそ工期内に完成しました。

 しかし、即断、即決がなければ、また、良い園にしたいという愛情がなければ、このスケジュールで完成しなかったと思います。

 先日、住宅誌で付けて貰った作品のタイトルは「光と風と笑いで満たす」でした。

 6年間の間に、泣いたり、べそをかくこともあるでしょう。そんな時は「もりのひみつきち」へ。45年前の私が一番欲しかった空間でした。

 しかし、それらも含めて笑いで満ちた園となることを確信しています。

 多くの大人が、沢山の愛情と情熱を注いだんだよと、胸を張って伝えてみたいのです。

文責:守谷 昌紀

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建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
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「中庭のある無垢な珪藻土の家」‐11‐守谷さんに怒られるデ

 「中庭のある無垢な珪藻土の家」の撮影でした。

 竣工は2017年の3月末なので、1年越しの撮影になりました。

 天気がもうひとつで、2度も延期していたのです。

 3度目の正直で、青空に恵まれました。

 撮影中に、中庭のチューリップが満開になるくらい、気温もぐんぐん上昇。春の陽気となったのです。

 この計画のテーマは「不自然でない家」。

 「例えばカロリーゼロって不自然じゃないですか」と言われ、心底納得したものです。

 外壁は、自然な風合いの塗り壁を選択。

 敷地形状、光のとりかた、そして中庭との関係。

 全て必然性をもとめ、模索しました。

 内部の壁は全て珪藻土塗りです。

 自然素材なので当然といえば当然ですが、やはり空間が優しいのです。

 床材も、天然の檜を選んでいますが、これはご主人のこだわりです。

 2階の子供部屋にも南から光が差しこんできます。

 南西角地の長所を存分に引き出したつもりです。

 ちなみに、こげ茶の塗装は全てマグネットペイント。こちらは奥さんのセレクト。

 午後3時にお子さんが帰宅してから、ご家族にも撮影に参加して貰いました。

 熱心にお絵かきをするお姉ちゃん。

 一心不乱に、ショベルカーで遊ぶ弟君。

 人はこれだけ何か打ち込めるのかと感心します。

 弟君は帰ってくるなり、私に向かって「もうショベルカーで壁をガリガリしません!」と宣言してくれました。

 どうやら、壁に落書きをしたりするとお姉ちゃんが「そんなことしたら、守谷さんに怒られるデ!」と言ってくれているようです。

 どんな役回りでも、覚えてくれていたなら、ただただ嬉しい限りです。

 夕景を撮り終えると、夜の7時過ぎになりました。

 ご主人は私の著書も購入して下さり、「サインをしておいて下さいね」と。

 本当に有り難いことです。

 お姉ちゃんは、覚えたての文字でこんな手紙を渡してくれました。

 こんな瞬間があると、全てを忘れて笑顔で帰宅できます。

 そんな場面に立ち会えるよう、年度末に向かってラストスパートを掛けるのです。

文責:守谷 昌紀

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築80年の長屋を「碧の家 」に〈リノベーション〉‐10‐エンジンは常に2馬力

 昨年末に完成した「碧の家 」ですが、4ヵ月点検に行ってきました。

 正面には小さな花壇があります。

 左の青い花はブルーデイジー。碧はこの計画のテーマカラーでもあります。

 花弁の形で分かるように、他の花もキク科の種でコーディネートされています。

 クライアントと監督が、花屋さんでセレクトし植えてくれたもの。近所の園に通う園児が「かわいい花壇」と言ってくれるそうです。

 一通りの点検を終え、コーヒーを煎れてもらいました。

 キッチン奥にある窓には、面格子がついています。

 設計者とは、間違いのない選択をしたくなる生き物です。

 とても主張の強いデザインなので、私がこの面格子を勧めることはありません。

 しかし、この空間にとても合っています。

 レンジ、炊飯器、トースターに加えて、ネスカフェバリスタまで、全てワインレッドで統一されています。

 また、それらを置くこのフロアキャビネットは造り付け。

 向かいのキッチン前も同じタイルで合せました。

 このケトル、2006年公開の映画「かもめ食堂」で使われたものだそうです。

 こういったサイドストーリーが、空間の味をより濃厚なものにしてくれます。

 「かもめ食堂」は、フィンランドのヘルシンキに実在する日本人経営の食堂で、そこが映画の舞台となっています。

 2016年のフィンランド行きの最終日に寄ってみたのですが残念ながら定休日でした。

 リビングの隣にあるお母様の寝室からは、通り庭がみえます。

 もとはモルタル塗りの予定でした。

 工事中に私が「通り庭」と言ったのを機に、タイル貼りにしたいという要望がありました。

 変更、トラブルは大歓迎。

 沢山のタイルサンプルを取り寄せ、チョコレートと白の組み合わせを選んで貰いました。

 2階のロフトにはチェアが届いていました。

 アルネ・ヤコブセンデザインのドロップ。

 ベルギーから届くのに2ヵ月掛かったそうです。青い壁にそのフォルムが引き立っています。

 この計画のテーマには、「碧」や「北欧」がありますが、これらは私が提案するものではありません。

 クライアントとよく話し、好きの中心にあるものを純化し、結晶化させていくような作業だと思っています。

 クライアントは多くのお金、時間を掛けて家を建てるので常に本気です。

 これまでの人生で、経験した空間、素材、景色をこの機に一気に思い出し、語ってくれます。

 その中で、幹になる部分を見つけ出せれば、もう計画は成功したのと同じだと思っています。

 また、私が「これ大丈夫かなあ」と迷う部分が少しくらいあったほうが、住まい手の個性が醸し出されるものなのです。

 あくまで一般論ですが、創り手は自分のしたい事をさせてくれるクライアントを求めている傾向があります。

 そういった方も大歓迎ですが、むしろ自分の価値観や主義主張を持っている人と仕事をしたほうが、面白いとも思っています。

 その時に心掛けているのはぶつかり合うのでなく、同じ方向を向くこと。

 そうすれば、エンジンは常に2馬力。仕事をさせて貰いながら応援までしてもらえるのです。

 「碧の家 」劇場はひとまずここで一区切り。

 4月初めに撮影する予定ですが、これが私たちにとって答え合わせのようなもの。

 正解だったと信じていますが。

文責:守谷 昌紀

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(仮称)トレジャーキッズたかどの保育園‐9‐街角のペインター

 今日は、最後の定例会議でした。

 天気は生憎でしたが、園庭も大分出来上がってきました。

 外壁の杉板工事も概ね終わり、感じがでてきました。

 内部は、家具の取付が始まっていました。

 0歳児室では取付の最中でした。

 この部屋は、ヘの字のプランの角にあたるため、トップライトから光をとることにしました。

 柔らかい光が優しい雰囲気を醸し出していると思います。

 見上げた2階部分の反対にあるのが「こもれびひろば」です。

 トップライトの光を、壁の上部に設けたハイサイドからおすそ分けしてもらいました。

 その光を木漏れ日に見立てたのです。

 3、4歳児室のパーティションを開ければこの大空間に。

 外観を印象付ける杉板ですが、淡い白の塗装をしています。

 庇の下とはいえ、外部にあるので保護を兼ねて塗料を塗るのです。

 塗装チームの職長が「とってもいい感じですねエ。普通は焦げ茶なんかに塗るところを、こんな色合いで仕上るんですね。とっても遣り甲斐があります」と。

 同年代の彼に、なぜここを白木にしたのか説明しました。

 塗装職人は、自分で色を調合できなければ商売になりません。

 街角のペインターは、色に対して繊細な感覚をもっているのです。

 言ってみれば、プロ中のプロから褒めて貰ったことになります。

 その顔をみれば、お世辞ではないと思います。

 これがもしお世辞だったら、もう人間不信に落ちいってしまうのです。

文責:守谷 昌紀

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【Events】

「R Grey」入居募集中
大阪市平野区平野西5-6-24
モデルルームオープン


「さかたファミリー歯科クリニック」7月26日 OPEN■
枚方市津田西町1-24-8

【News】
『関西の建築家とつくる家 Vol.2』2月1日発売に「松虫の長家」掲載
『MY HOME 100選vol.19』12月16日発売に「野洲の家」掲載
『ESSE』11月7日発売に「松虫の長屋」掲載
『建築家カタログ2016』8月29日発売に「遠里小野の家」掲載

『homify』1月2日「切妻と中庭の家」掲載
『homify』(インドネシア語)1月1日「白馬の山小屋」掲載『homify』(スペイン語)9月26日に「松虫の長屋」掲載
『homify』7月21日「白馬の山小屋」掲載

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(仮称)トレジャーキッズたかどの保育園‐8‐光と風を振り付ける

 昨日は、今週2回目の定例会議でした。

 最終盤一歩手前。現場にとっては最も大切な時期です。

 運営会社の担当者の方には無理を言っての開催でしたが、その甲斐あって見事な青空。

 ようやく足場が取れましたが、たかどの園には快晴が良く似合います。

 一番の特徴はぐるりと巡らせた軒下空間です。

 フェンスの中に入ると、南にある園庭の価値がよく分かります。

 この日は、ガラスの取付作業をしていました。

 ガラスとアルミサッシの隙間に接着剤を打ち込んで固定して行きますが、この材をコーキングと言います。

 私の実家はガラス屋で、コーキング打ちはよく手伝いました。

 この作業をした後、ガラスに紙テープを貼ります。

 間違ってぶつからないようそうするのですが、それ程ガラスの透明度が高いということです。

 壁下地ができると、室内に光がまわりだします。

 このガラスという材料が普及して、建築は劇的に変化しました。

 光を遮らず、安定した室内空間を生み出すことが出来るからですが、それらが可動することで、欲しい時に風を導くことが出来きます。

 冬のこの時期は、室内深くまで光を入れ、夏は直射を完全に遮断してくれるのが、深い軒の役割。

 建築には無駄な材などありません。

 最も広い「こもれびひろば」につながる園児室。

 曲面壁ができるのを、今か、今かと楽しみにしています。

 この日は、屋外廊下の防水工事も行われていました。

 2階の最奥まで進み園庭を見下ろすと、明るい園だと実感できます。

 『大改造!!劇的ビフォーアフター』で私が貰ったニックネームは「光と風の振付師」

 フィギアスケートと同じで、振付師は主役になれません。

 ここで過ごす、園児、保育士の日常を、振付師としてどう演出できるか。

 光と風を読み、どんな空間を生み出せるかだけで、私たちの職能は評価されるのです。

 幼少期の大切な時期、また職場として人生の多くの時間を過ごす保育士の皆さんに、愛してもらえる園を目指し、工事は最終盤に入って行きます。

文責:守谷 昌紀

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(仮称)トレジャーキッズたかどの保育園‐7‐空間に奏でるメロディー

 現場へ向かう途中、耳元でガサッと音がして、飛びのきました。

 見ると子猫が飛び降りてきたよう。

 猫が外に出てくれば、春の足音も多少大きくなってきたということでしょう。

 トレジャーキッズたかどの保育園の園児室は、全部で5部屋あります。

 1階は「0歳児室」「1歳児室」「2歳児室」の3部屋。

 いずれも縁側のような廊下を介して園庭に面しています。

 2階は「3、4歳児室」「5歳児室」の2部屋。

 これらの間に、広いホールがあります。

 それらの仕上げを確定する前に、コンセプトを全て整理してみました。

 こちらの園は、エントランスに入ってすぐのところに、500色の色えんぴつが飾られます。

 それで、こんなメインコンセプトはどうでしょうかと提案してみました。


『人はひといろじゃない。白木の園で自分色をみつけてください。

 たっぷりの太陽を浴びて、立派なげん木に育ってほしい』

 外観は、白木を基調とした、明るく、優しい建物に仕上げていくつもりです。

 年齢とともに、しっかりした色の木に育っていくという物語を考えました。

 園児室も白木を基調としていますが、扉と家具は、その物語に沿った素材をセレクト。場所性を明確にしました。

 扉材、家具材、シート材と違ったメーカーから、素材を探し出すのは、なかなか骨が折れるものです。

 しかし、こんなところから物語が生まれるのだと考えています。

 この部屋は、『もりのひみつきち』。

 コンセプトは以下の通りです。

 園全体を森とするなら、友達同士が集合する隠れ家のような空間。

 全体行動がちょっと苦手な園児くんの遊び場だったり、時にはメソメソしたい園児さんも居るはず。

 先生と父兄だって、狭い場所だからこそ話しやすいこともあるかもしれない。

 森の中にある、小さな野原をイメージしているので、床も壁も草色とした。

  秘密基地らしい物を置いて貰えるとなお良い。

 次は、『あおぞらえほんしつ』。

 ホールから窓をのぞくと、青い壁が見えます。(壁工事はこれからです)

 ここは、トップライトで光を確保している空間なのです。

 コンセプトは以下の通り。

 階段を上がったホール向きに腰窓があり、そこから内部を垣間見ることができる。

 西面の壁のみに、水色のアクセントクロス。

 床は、少し濃い青のフロアリュームを。

 空を連想させる爽やかな空間に。

 青は心を落ち浮かせる色。爽やかな絵本室になると思います。

 そして、お遊戯会などでは園児室と繋がり、大空間となるのが『こもれびひろば』です。

 5.4m半径の柔らかな曲面壁の上部、ハイサイドウィンドウからは、1階へ落ちるトップライトの光が、ホールにもこぼれてくる。

 屋根、壁を透過しての光は、森の木漏れ日に似ている。

 その木漏れ日のもと、あそび、語らって貰えたら……

 曲面壁の部分のみ、優しく鮮やかな黄緑の壁紙を貼り、「木漏れ日広場」としてみたい。

 曲面壁はこれからですが、酸素を供給する緑は、まさに自然の象徴。

 人は緑をみると心癒されるのです。

 デザインとは、誰かと共有できると信じるからこそ意味があると思っています。

 その時に、押しつけすぎず、強引になりすぎないよう心掛けているつもりですが……

 空間に私が奏でたメロディーは、園児のみなへ届くのでしょうか。

 工事は終盤に入っていきます。

文責:守谷 昌紀

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(仮称)トレジャーキッズたかどの保育園‐6‐園長先生きたる

 寒い中でも、日が差せば見た目は春。

 暦の上では立春を過ぎました。

 「トレジャーキッズたかどの保育園」は4月開園。2月はめまぐるしく現場が進んで行きます。

 定例打合せが週1回あるのですが、その前に現場を見て回ります。

 2階は、3歳から5歳の園児室と大きなホールがあります。

 屋外階段、屋内階段、そしてエレベーターで2階へアプローチできるのです。

 1階のホールから中部を見渡すと、外壁がピンクになっています。

 これは硬い発泡スチロールのような断熱材が吹き付けられたもの。外気に接する壁は、全て断熱が施されています。

 奥へ歩いていくと、ヘの字に曲がっている所が0歳児室になる予定。

 ここにトップライトから光が落ちてくるのです。

 屋内階段から2階へ上がってみます。

 右奥にみえるのがトップライト。この光が1階へ落ちるのです。

 この日は、園長先生が初めて現場にこられ、ぐるりと案内させてもらいました。

 トップライトの前には、曲面壁ができ、その上部にある窓から光がこぼれてきます。

 向かいにはこの大開口があり、とても明るい空間です。

 更に、最も大きな園児室と繋がれるようになっています。

 合せて約80畳の大空間が生まれるのです。

 園長先生から「お遊戯会の舞台として使えるでしょうか?」という質問がありました。

 とてもいい舞台になると思います。

 現場案内が終われば、仕事が終わりではありません。

 そのまま現場事務所へ移動して、定例会議がスタート。

 運営会社の担当者の方と園長先生。施工会社の現場所長と、電気設備、機械設備の担当者、そして私と田辺さんの7人で、打合せは4時間超。

 途中、入れ替わり立ち代わり、他の業者さんもやってきます。

 毎週金曜日の午後は、ほぼこの現場へエネルギーを費やしてきました。

 建築で一番面白いのは、創り上げていく過程です。

 そこにフォーカスしたのが「大改造!!劇的ビフォーアフター」でした。

 全ての工程の、初めと終わりを全てVTRに収め、その素材を編集するのです。

 諸事情により、レギュラー放送はなくなったのですが、匠的に言えば面白いに決まっていると断言できます。

 この舞台がどうやって生れてきたのか、先生方、親御さん、なにより園児の皆さんに知って欲しいと思うのは、創り手のエゴでしょうか。

 そのくらい現場は面白いし、過程が愛着を生むのです。

文責:守谷 昌紀

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(仮称)トレジャーキッズたかどの保育園‐5‐光という食材

 新年が始まったと思っていたら、気が付けば1月も下旬に。

 2018年、1回目の現場日記です。

 「トレジャーキッズたかどの保育園」は、12月初旬から建て方工事が始まりました。

 年末までに、外壁材のALC版搬入工事を終えていました。

 ALC版とは軽量気泡コンクリート版のこと。揺れに強く、鉄骨造と相性のよい外壁材です。

 現在は屋根工事にはいっており、材をクレーンで搬入中でした。

 広い園庭ですが、足場があったり重機が入ったりと、工事中はやはり狭く感じます。

 東側道路に一番近い部分は、エントランス、事務室、階段などが集まっています。

 そこから西に向かって園児室が3部屋。

 1階は0歳から2歳までの園児室の予定です。

 園庭をLの字囲むように園児室を配置していますが、曲がり角部にある部屋は、やや採光には不利。

 トップライトを採用することにしました。

 上階にはコミュニケーションホールがありますが、その一部をアールで切り取り、屋根面から光を落とすことにしたのです。

 北向きの屋根部に切ってあるので、常に柔らかい光が安定して落ちてくるはず。

 0歳児室となる予定です。

 広い園庭からは2階へ直接つながる外部階段があります。

 それが2階の外部廊下につながり、全ての園児室前にめぐらせました。

 この空間は、床、壁とも木で仕上られ、まさに縁側のような空間となります。

 縁側という外部空間を挟んでの光は幾分優しく、また、雨の日でも開口部を開けることができます。

 常に安定した光と、風(=新鮮な空気)を取り込む日本人の知恵なのです。

 運営会社の株式会社セリオは、園の食事には大変拘っていて、できるだけ昔から日本にあるようなものを目指しているそうです。

 答えは、過去の歴史にあることがよくあると私も思うのです。

 2階の一番奥は、3、4歳児室となる予定。

 この空間は、コミュニケーションホールと可動間仕切で繋がります。

 その間仕切りをフルオープンにすると、幅8m、奥行き19mの大空間が生まれます。

 お遊戯会、作品展など、色々な催しに使って貰えると思いますが、文字通りそこにコミュニケーションが生まれたなら、これほど嬉しいことはありません。

 不利も有利も、材料に変わりありません。

 それをどう料理し、幸せな皿とするかが設計の醍醐味なのです。

文責:守谷 昌紀

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緑を囲む京都のオフィス「山本合同事務所」‐6‐バームクーヘンも登場

 今年も残すところ1週間あまり。

 遅れ気味になっていましたが、ようやく「山本合同事務所」の引渡しが終わりました。

 このオフィスは北向きなので、光は裏側からとることになります。

 反対に言えば、北側に対しては思い切って開くことができるのです。

 駐車場脇にある階段が、キューブの中に貫入していきます。

 階段前にある看板は、クールに仕上げました。

 エントランスはワークスペース中央。

 奥に進むとオーバルカウンターを備えたメインのワークスペースです。

 南の開口から、またトップライトから、冬の柔らかい日差しが差し込んでくるのです。

 手前にあるのは、今回初登場のバームクーヘンデスク。

 この有機的なフォルムを持つ2つのデスクが、人の流れ、関係性を創造してくれることを期待しています。

 バームクーヘンの北側はガラスのカーテンウォール。

 北側道路を望み、吹抜けで3階と繋がっています。

 3階は、応接室でありリビングでもあります。

 右手に見えるのはロフトへのハシゴ。

 一番奥にあるトイレにはシャワーが備え付けてあります。

 繁忙期や打合せ後には、宿泊することも視野にいれてのことです。

 ミニキッチン、冷蔵庫は無印良品でまとめました。

 そして右手は再び吹抜け。

 3階も含めての大きな1室空間になっているのです。

 オーバルカウンターに合わせて、天井から吊り下げられたペンダントライト。

 これは、クライアントが東京で見つけてきたもの。

 シーリングファンが、緩やかに空間を撹拌してくれるでしょう。

 各席の横に移動して使う、ムービングキャビネット。

 オリジナルを木で制作しました。これはなかなの出来です。

 働く場所を快適に。

 誰もが思い、誰もが望むことです。

 その思いにどこまで応えられたのかは、本格的な業務が始まってからの評価になるでしょう。

 タイトルにある「緑」が中央にやってくるのも年始。

 いくらかの不安もありながら、楽しみにしているのです。

文責:守谷 昌紀

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