「中庭のある無垢な珪藻土の家」‐5‐仕事は仕事を超えてこそ、仕事として続く

 遅ればせながら、現場に当社の横断幕をあげました。

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 手前に停まっているトラックは、断熱材を吹き込む機械が積んであります。

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 玄関框(がまち)は、無節の檜。なかなか立派な材です。

 こちらの家は、無垢、嘘のないということが、重要なコンセプトになっているのです。

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 クライアントには、先週末、今週末と続けて現場に足を運んでもらいました。

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 先週との違いは、間柱に繊維状のシートが張りつけられている点。

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 外壁との隙間に、セルロースファイバーという新聞紙からできた断熱材を吹き込んでいきます。

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 一般的なグラスウールより金額は張りますが、健康によい、音が静かなどのメリットがあり、今回実現に至りました。

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 前に停まっていたトラックの荷台に、撹拌し送り出すコンプレッサーが積まれています。

 職長に「いつもより多めにね」と冗談を言うと「入れすぎるのも、効果が落ちるんですよ」と諫められました。

 失礼いたしました。

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 敷地に合わせたフォルムは、バルコニーにも見てとれます。

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 建ぺい率いっぱいに、かつ機能的で美しく。

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 そこから上を見上げると、ちょうど屋根の施工中でした。

 今回、屋根材はブルーを選択しています。

 屋根上の職人に声をかけると、幾分誇らしげに応えてくれました。

 そう、ここは人生における舞台です。

 職人の人達がお子さんと近所を通っ時、「お父さんが仕事をした家を見に行くか」と言ってもらえるよう仕事をしたいと思っています。

 単価通りの仕事なら、単価通りの家しかできません。

 仕事は仕事を超えてこそ、仕事として続いていくのだと思っています。

文責:守谷 昌紀

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「中庭のある無垢な珪藻土の家」‐4‐環境と宇宙

 この敷地は南西の角地で、隅切りがあります。

 隅切りとは、個人の敷地であっても建築基準法上、建築ができない部分のことです。

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 その敷地の特徴をどういかすか。

 それは建築設計の永遠のテーマですが、これだけ特徴があると反対に、意思決定は早くなります。

 どうせ建築できないなら、来客用の駐車スペースにするのがよいだろうと考え、プランを練っていったのです。

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 その形が、徐々に出来上がってきました。

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 夏の西側からの直射を避けるため、西に開口部はありません。

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 それがこの建物の表情と、品格を表してくれると考えています。

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 特に、屋根の端部は重要です。

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 内部からみると、その形が分かりやすいでしょうか。

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 斜めの壁と交差する部分にはスリット状の開口を設けました。

 建ぺい率をクリアするため、どこかの面積を削る必要がありました。それならこの部分にくびれをつくり、西側の顔をよりはっきりさせてはと考えたのです。

 環境と宇宙の違いは、自分が含まれているか否かの一点だけが異なっているといいます。

 環境を理解し、宇宙と一体となれたのか。

 もうすぐその答えが明確になります。

文責:守谷 昌紀

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枚方「さかたファミリー歯科クリニック」‐1‐プロローグ

 1月6日(金)、無事地鎮祭を終えた「さかたファミリー歯科クリニック」。

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 枚方駅から東に延びる国道307号線と、JR片町線が交差するあたりに敷地はある。

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 敷地の面積は約300㎡。

 90坪ほどあるのだが、車社会ではこの広さは魅力になるはずだ。

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 快晴の下、地鎮祭をとりおこなった。

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 途中で大きな計画変更もあり、いつもながら、生みの苦しみとはこうまで厳しいものかと思う。

 しかし、完成した時には全てがストーリーとなるはずだ。

 この医院のコンセプトは「さかたファミリー歯科クリニック」という名称が全て表している。

 「家族で来院して頂き、家族として接するクリニック」

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 「家族として接する」という言葉を聞くまで、「ファミリー」が入る本当の意味を、私が分かっていなかった。

 医療とは最もシンプルな社会貢献の1つである。

 そこに、どれだけ心を込めるかで、全く別次元の行為となるのだと思う。

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 そこに建築がすこしでも貢献できればこれ程嬉しいことはない。

 家族で。

 家族として。

 キーワードはやはりファミリーなのである。

文責:守谷 昌紀

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「中庭のある無垢な珪藻土の家」‐3‐現場マジック

 先週土曜日は、今年初めての現場打合せでした。

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 日差しは暖かですが、開始時の気温は3℃くらいだったでしょうか。

 この時期は、寒さ対策が打合せの精度を左右します。

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 都心部に設計する住宅において、中庭はやはり有効です。

 1月初めでも、深くまで直射が入っていました。

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 この日は、スイッチ、コンセント等の位置決め。

 壁が出来上がる前に確定しなければならないのが建築現場の宿命です。

 少しでも分かりやすくと、監督がテープでキッチンを再現してくれました。

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 洗面化粧台も造作になりそうで、高さ、平面位置と無限の選択肢があります。

 寒空の下、2~3時間をお願いしていましたが、みっちり使い切って、何とか一通りを見て回りました。

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 ご夫妻が帰られたあと、監督、棟梁と細部を詰めてきました。

 庇については、ああでもない、こうでもないと意見を出し合い、ようやく方針が見えてきました。

 まずはチョークで描き、最後に墨入れならぬマジック入れ。

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 朝8時から、現場にいること8時間。

 私達は寒かったと会社に戻りますが、棟梁はここからまたひと仕事なのです。

 会議室では解決できないことが、現場では解決できます。

 これまで何度もそういう場面を見てきましたし、皆が本気で知恵を出し合えば、解決できないことなど無いと思っています。

 現場には、磁場のような力があるのです。

 長く、しつこく、元気よく。

 これが現場での私の流儀です。

文責:守谷 昌紀

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「四世代で暮らす家」‐3‐非効率な物創りに一生を捧ぐ

 こちらの敷地は、2車線歩道付きの道路に面しています。

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 街は建築の集合体ですから、建築とは街づくりの一端を担っていることになります。

 建築家・槙文彦は「道は街の断面」と言いました。

 美しい建築を創ることは、地域への貢献だと思っています。

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 美しいの解釈はそれぞれ違うもの。

 「それぞれ」を、諦めの言葉にしないことが、物創りにおいて重要なことだとも思っています。

 また、実物は1つしか創れないので、模型をつくり、様々な角度から検討するのです。

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 これは玄関からアプローチを見返したところ。

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 右に積んでいるのは素焼きレンガです。

 実際はもう少し奥に積むのですが、透けかたを検討するため、仮に積んでくれました。

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 左下にあるのは、ガレージの床の試し塗りです。

 インナーガレージの床材なので、発色を見るためにつくったもの。

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 LDKの間接照明とカーテンBOXも、実物大模型を作成してくれました。

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 構造体との隙間を検討するために、棟梁がつくってくれたものですが、実物大模型を「モックアップ」と言います。

 設計事務所がこれを制作するのは難しいのです。

 実物大を作ろうと思うと、それなりの強度のある材(例えば木や鉄)が必要になります。

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 加工する技術、専門の工具が必要になってきます。

 私達がつくれるのは、スチレンボードというカッターで切れる、模型専用の材までなのです。

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 木を削る道具はノミ。

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 技術も、体重の乗せ方も、これはプロの技術です。

 近ごろ、こうして実際に物をつくる人への敬意が、少なすぎると感じているのは私だけでしょうか。

 量産できるものや、コピーできるシステムを構築するほうが、ビジネスとしては、展開が大きくなります。

 そして、時代の寵児ともてはやされます。

 その技術革新、ビジネスセンスは素晴らしいと思いますが、対極にあるのが建築だと思います。

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 頑丈であるということは「重い、硬い」が基本で、量産化、工場生産には向きません。

 1つとして同じものがないので、飛行機のように大きな工場があればよい訳でもないのです。

 こんな非効率な物創りに、一生を捧げる変わり者が集まるのが、建築の現場です。

 頑固、ヘンコ、変わり者。

 褒め言葉とは言えませんが、この時代において、それほど悪い言葉でもない気もします。

文責:守谷 昌紀

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「回遊できる家〈リノベーション〉」‐7‐写真家はシャッターを押すのが仕事ではない

 昨年末ですが、「「回遊できる家」の撮影をしました。

 当社の撮影は、人有りのカットを結構撮ります。

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 こちらのご家族はお子さんが4人。

 小1の長男君から、6カ月の三男君まで、男・男・女・男と、とても賑やかです。

 そして、仲がいいのです。

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 外観の撮影時も、お子さんがふらっと出てきてくれたら、その雰囲気を大切にしたいと思っています。

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 次男君が、三男君を気遣う場面。

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 今度は長男君が入ってきてくれました。

写真家の平井さんもそのあたりは心得たもので、寒い中、シャッターチャンスを待ってくれます。

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 撮影とは、風景の一場面を切り取る行為です。

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 光、人の手跡と空気感が写し出されます。

 ロフトの奥にはご主人の書斎スペースがあります。

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 そこから、リビングダイニングを見下ろせるようにしました。

 しかし、それを伝える手段は写真しかありません。

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 4人目の三男君は、このラグの上でとても機嫌がよく、ぐずる場面はありませんでした。

 「ラグはあってもいいですよね」とは、平井さんからの提案でした。

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 多少片づけてはいますが、やはりできるだけ暮らしぶりを伝えたいと思います。

 そんなワンカット、ワンカットの積み重ねが、私達のメッセージなのです。

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 人無しのカットも沢山あります。

 そんな時は、ご家族全員に隠れてもらいます。

 写真の知識、技術はもちろん大切ですが、もう一歩踏み込む勇気がその価値を左右する気がします。

 建築写真家は、シャッターを押すまでの準備、執着心にこそに差が出るのだと思うのです。

 撮影の前、彼は現場日記を一通り読んできてくれます。

 「守谷さん、現場日記は工事が始まったら、いきなり竣工という感じでしたね」と言われました。

 今年は、現場日記もできるだけ頑張って書いていこうと思います。

文責:守谷 昌紀

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