「黒壁の家」-3-環濠のあった街

 計画のオファーを貰った際、まずは土地について調べます。


 建物は土地と切り離せないもの。

 その場所の歴史を知る事は、重要な事とだと考えています。大阪なら、6千年前の地形をイメージすると、分り良いのです。

 大阪の西の玄関、住吉の港から少し東に入ったあたり。上町台地の上にあり、概ね地盤がしっかりしていると想像できます。

 計画地から少し歩くと、幹線道路が南北に通っています。

 この道を境に、2m程の高低差があるのです。海岸線の名残なのかなと思っていました。

 クライアントのご両親に聞くと、堀が有ったと分りました。こちらは環濠都市だったそうです。

 環濠都市とは、商人が自衛の為、周りに堀をめぐらせた都市を言います。最も有名なのは堺郷。平野郷も大きな環濠都市で、共に信長が重用した宣教師、フロイスの記述にも出てくるのです。

 それらが、計画に直接の影響を与えるかは別ですが、古の風景が想像出来ると、更に愛着も湧いてくるものです。

 何千年もの間、ここには暮らしがありました。そして今この家が建つのです。

文責:守谷 昌紀

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