「伊東内科クリニック」-27-エピローグ

 「伊東内科クリニック」が開院して2週間が過ぎました。

 この現場日記の1回目にこう書きました。

 『医師というよりは、町のお医者さんでいたい。クリニックとはピットのようなもの。治すというよりは、癒す感じ。ただ、手助けするよりは積極的に。

 自身のキャリアの最後は、育った地域に恩返しをする』

 これは計画が始まった当初のクライアントの言葉です。

 それに対して私が出した答は『木の葉が揺れるクリニック』。

 密集した市街地から切り取られた光庭に、一本の木が屹立していることに意味があると考えたのです。

 内科のクリニックの設計をしたのは今回が初めて。クライアントもそれを承知の上で、依頼してくれました。

 実績がものを言う世の中。他の建築家に依頼する理由は、いくらでもあったはずです。

 自らの直感を信じ、チャンスを貰ったことに、心から感謝しています。

 建築家を名乗る以上、どんな用途であれ、私にしか出来ない回答があると信じています。

 目指すのは良心に訴えかけるような仕事。それは自分の良心と向かい合うほか、実現する方法は無いと思うからです。
 
 竣工写真の撮影は来週の予定ですが、ひとまずこれで一区切りにしたいと思います。

 本当の結果が出るのは、10年後、15年後でしょうか。ただ、私には活き活きと働く院長と、スタッフの姿しかイメージ出来ないのです。
 
文責:守谷 昌紀
建築家 / 大阪  一級建築士事務所 アトリエm

「Shabby House」-11-設備位置と家具

スイッチやコンセントの位置確認が終わった「Shabby House」。

アルミ製サッシの枠もつき、空間の大枠が出来上がって来ました。

設備関係の位置決めは、現場で型紙を貼るのにこだわっています。

壁が出来上がったあとに、決定出来ればよいのですが、設備の配線は壁を閉じる前に済ませる必要があります。

それで、どうしてもこのタイミングになるのです。

この方法を取り入れてからか、完璧とは言えないまでも、かなり精度が上がったと思います。

それでも出来上がってみないと分からないのが空間で、そこが面白くもあり、難しいところ。

正面はは素焼きのレンガ貼りで、下地の準備が進んでいます。

このレンガも粗面にこだわりました。先日このメーカーに寄ってきました。

大阪市役所のすぐ北、大江橋の北にある大江ビルというレトロな建物に入居しているのです。

社長とは初めて会ったのですが、商品と人物がかぶるほど、素朴な人で立ち寄って良かったと思えたのです。

現場は、内部仕上げから家具工事へと移って行きますが、家具は数点が名古屋の家具会社が制作したものを建築工事で取り付けます。

その家具は、非常に造りこまれており、クライアントが大変に気に入っているのです。その出来上がりは流石のものでした。

高価な一点ものなので、取り付けの失敗は許されません。正直言えば出来れば避けたいところかもしれません。

しかし、それを超えて行くことで私達、施工会社の存在価値があると思うのです。

文責:守谷 昌紀

建築家 / 大阪  一級建築士事務所 アトリエm