カテゴリー別アーカイブ: 03 朝テンションがあがる「北摂のリノベーション」

朝テンションがあがる「北摂のリノベーション」‐4‐旅の一座の現場公演

 ゴールデンウィークの「元」中日。

 北摂の現場へ向かいます。

 大阪市内は殆ど渋滞なしでした。

 現場近くにある田んぼの畝にも野花が咲いています。

 ゴールデンウィークと言うくらいですから、本当に気持ちの良い季節になりました。

 現場は既存瓦の撤去が終わり、大屋根のルーフィング(防水紙)が貼り終わりました。

 瓦屋根の撤去工事が、なかなかに難航していると聞いていました。

 まさに下屋はその最中で、職人がヘラで瓦を固定していた土をそぎ落としています。

 下地は木材を薄くそいだもので、「トントン」というそう。

 檜皮の簡易版といったところでしょうか。初めて実物を見ました。

 この建物は築30年。私がこの世界に入ってから25年なので、わずかにタイムラグがあります。

 リノベーションとは真に生きた教材なのです。

 土をそぐ作業が終わると、垂木を通し、その間に断熱材を入れていきます。

 断熱材より僅かに垂木のほうが厚く、その隙間が通気層になります。

 夏は暑い空気を上に排出、冬は冷たい空気を下に流すことで、より断熱効果を高めるのです。

 2階には、その断熱材がすでに準備されていました。

 打合せの日は少し早めに現場へ行きます。

 打合せ時に使うサンプル、図面などを用意するのですが、何事も準備が全てです。

 公共工事等では、現場事務所が設置されますが、住宅ではない事が殆ど。

 よって、現場の一角を借りて、即席現場事務所とするのです。

 この日も、現場が用意してくれたベニアの机と、断熱材のソファで5時間程打合せをしました。

 クライアントは名古屋在住で、ゴールデンウィーク対策に車ではなく新幹線で来阪してくれました。

 時間もお金も掛けて足を運んで貰うことになります。

 よって、その時間の価値を最大にする努力をしなければなりません。

 しかし、資料に間違いがあったり、抜けがあったりで……

 全て私の責任ですが、あまりも頭に来てしまい、打合せ中に若いスタッフを叱ってしまいました。

 クライアントには不愉快な思いをさせてしまったのですが、鉄は熱いうちに打てと言います。

 間違いたてでなければ打ったとしても、意味がないとも思っているのです。

 現場を舞台とするなら、打合せは旅芸人の公演のようなものです。

 何とか楽しんで貰えるよう、旅の一座は腕を磨かなければなりません。

 本番の舞台でなければ身に付かないところも、旅芸人そっくりだと思っているのです。

文責:守谷 昌紀

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建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
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朝テンションがあがる「北摂のリノベーション」‐3‐屋根が主役

 昨年の北摂エリアは、地震、豪雨、に台風と厳しい天災が続きました。

 こちらのお家も震災で棟瓦が少しずれ、知り合いの建築会社がブルーシートを掛けてくれたそうです。

 瓦屋根は、葺き替えがしやすく、自然に優しい材でもあります。

 問題が起った部分だけをやり替えれば良い点は、他の材に無い特徴と言えます。

 一昔前なら、少し器用な人は、自分でメンテナンスしていたでしょう。

 焼き物である重さは、台風に対しては優れていますが、地震に対して優れているとは言い難いのが一番の課題でしょうか。

 近くに見える古い民家は、鋼板屋根に変わっていますが、茅葺きの上を覆ったのではと想像します。

 この勾配で瓦で葺くことはほぼないからです。

 この計画でも、瓦屋根を葺き替えるかは、最後の最後までクライアントも悩んでいました。

 コスト面が大きかったのですが、最終的に葺き替えという方向に決まりました。

 2階には屋根上に敷く断熱材が準備されています。

 断熱材の上に通気層をとるのですが、雨を止めると共に、断熱も屋根まわりに求められる重要な機能です。

 長らく大屋根を支えてきた棟束には「への六棟」とあるのでしょうか。

 昔の大工は、通りを「いろはにほへと」で表しました。

 重い瓦屋根を支えてきた丸太の小屋梁です。

 水平に墨が打たれており「三寸上り」とあります。

 建築において、水平、垂直が常に基本となるのです。

 瓦の撤去中で、バラ板の隙間から光が差しています。

 ブルーシートを透過した青い光をステンドグラスのようと言えば過ぎるでしょうか。

 しかし、この強い光を止めるのも屋根の役割なのです。

 解体撤去が進む中、鬼瓦が置いてありました。監督も「立派なので捨てにくかったのでは」と。

 折角葺き替えをさせて貰うことになったので、安全、断熱、遮熱、そして美しさを備えた屋根にしたいと思います。

 雨、風、光を最前線で食い止めているのが屋根です。

 この計画に置いては、ロケーションも含めて、屋根が主役になりえると思っているのです。

文責:守谷 昌紀

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朝テンションがあがる「北摂のリノベーション」‐2‐春の思い出

 元号の発表もあり、新年度がスタートしました。

 庭木も花をつけ、現場へ向かう道中を楽しませてくれます。

 建築の集合体が街とするなら、良い家を創ることは街へ貢献することにもなるはず。

 どの仕事もそうですが、遣り甲斐はおつりがくるほどあるのです。

 内部の手バラシがほぼ終わりました。

 この建物は築30年と、フルリノベーションの中では比較的新しいほうでしょうか。

 基礎のひび割れもなく、床下も乾燥。状態は良好です。

 浴室は水気が多いので、痛んでいることもありますが、それも問題なさそう。

 こちらの建物は、宮大工が1年程掛けて建てたと教えて貰いました。

 今は亡きクライアントのお父様の知人だったそうですが、構造体はしっかりしています。

 2階の床版がないこの状態は、高い位置からの光が1階まで落ちてきます。

 教会の高窓のような光が差し、空間をドラマチックに演出するのです。

 流石に、2階床版の全部を無くす訳にはいきませんが、1箇所、2階と通じるようにしたいと考えています。

 宮大工が担当しただけあり、下屋の屋根組は極めて複雑。

 この部分をバルコニーにしようと考えており、このあたりは、監督、棟梁の腕のみせどころなのです。

 棟木には御幣がとめられていました。

 周辺は田んぼですが、まだ何も植わっていません。

 下草が生えだし、のどかな景色が広がります。

 私と同年代のクライアントが「写真と言えば、あの辺で撮ったものばかりだったな」と。

 間もなく田植えが始まるはずで、秋までは下に降りられないと思います。

 冬になれば切り株と土ばかりで絵にならないでしょう。

 そう考えれば、この時期の写真だったのかなと想像するのです。

 記憶は景色と共に残ります。誰かの人生の背景をつくっていると考えれば、やはり責任は重大です。

 新芽の匂いとともに、誰にも春の思い出があります。

 その背景を、少しでも美しく彩ってみたいと思うのです。

文責:守谷 昌紀

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朝テンションがあがる「北摂のリノベーション」‐1‐プロローグ

 関西において「北摂」と言えば、よい環境をさす。

 そのイメージを更に上回る程、この敷地の周辺環境は抜群だ。

 まず、南からの光を遮るものが一切ない。

 ご主人の実家なのだが、こういったことに住人は無頓着な事が多い。

 「田舎」とか「何もないところ」と表現されるのだ。

 しかし、こと暮らす環境としてはこれに勝るものはない。

 すこし高台になっており、南への眺望は格別だ。

 計画にかなり時間が掛かったが、3月に入りようやく解体がスタートした。

 午前中に到着したのだが、すでにかなり手バラシが進んでいる。

 手バラシの言葉通り、全てが手作業だ。

 現在は、産業廃棄物の分別は極めて厳しい。

 とくに石膏ボード等の不燃物と、木の分別は必須となっており、解体は非常に繊細な仕事となった。

 青銅、鉄と金属の道具ができ、硬いものが切れるようになった。

 さらに電動工具が進化した。

 しかし、最後は手バラシだ。

 この原始的な仕事こそが建築だし、そんなことを誇りに思っている。

 ネット社会、AIを幻想とは言わないが、人は現実に生きる。

 それらを実現するのは人の手であってほしいと思っている。

 そうでなければならないのか分からないがそうあって欲しいのだ。

 ご主人と奥さんから、色々とリクエストを頂いた。

 しかし奥さんからこの言葉を聞いたとき、「タイトルはこれがいいな」と思った。

 「朝起きるとテンションが上がる家」

 朝を制するものは、一日を制す。

 そのオーダー、責任をもってお引き受け致します。

文責:守谷 昌紀

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