タイトルにあげながら、ここまであまり触れてこなかったのが中庭です。
外構工事が始まり、ようやく形状が見えてきました。
LDKへの日差しは遮らず、外部からの目線は切りたい。
中庭に要求される機能は、多くの場合変わりません。
外構工事は別というケースもありますが、間違いなく一体のもの。
「服はコーディネートしますが、帽子と靴は他の人に見てもらってください」とはなりません。
外部に木製建具をつかわせてもらったのは、1999年の「紫竹の家」以来です。
庇、シャッターの雨対策。防火設備から外れる位置にもってくるという法規対策。そしてクライアントの熱意が、実現に導いてくれました。
やはり、木は職人が手加工できるため、こまかなところまで、こだわることができます。
LDKの床養生もとれ、ようやくあらわれた節無しの檜。
最後の最後まで、悩んでもらった箇所です。
もちろん安価ということはなく、最終的にはクライアントが直接webで購入。支給してもらいました。
階段の1段目にある引出し収納も、総檜づくりで家具職人の力作です。
キッチン前のカウンターのニッチも、珪藻土が塗りまわされています。
キッチン横にある和室に日がさしこむと、珪藻土のコテあとがより鮮明になります。
よい素材や、職人の技量が問われる工事は、やはり金額がはります。
しかし、クライントはただ安ければよいと思っている訳ではありません。
素材、大きさ、形状と無限の選択肢があるなかで、最も総合点の高い一点を射抜かなければなりません。
それが建築設計という仕事です。
この難しさが面白さに変わったのは、自分の決断にクライアントが心から喜んでくれたときから。
はじめに勇気、そして決断ありきなのです。
文責:守谷 昌紀