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香港・マカオの旅④ <さよなら香港、人と街と建物編>‐1633‐

 月、木、金とUPした「香港・マカオの旅」ですが、今回で最終回です。

 4日目、10月14日(月)は朝早くにホテルを出ました。

 前日のデモ時は地下鉄が運休したので、動かない可能性もあると思っていました。

 チェックアウトを済ませモンコック駅に向かうと、交差点にはパンクし、落書きされたバスが放置されたまま。

 警察がやってきたところでした。

 バリケード跡などは残っていますが、地下鉄は動いているよう。

 しかし、火はいけません。

 モンコックから一駅南のヤウマティまで移動。シャトルバスでカオルーン駅へ向かいます。

 そこからエアポート・エキスプレスで30分程。

 スムーズに空港までやって来れました。

 脱出は大げさですが、まずは空港にたどり着きほっと一息です。

 香港国際空港は世界屈指のハブ空港で、そのスケールは凄いものがあります。

 全番号のゲートがある訳ではないにせよ、500番台には驚きます。

 設計は、サー・ノーマン・フォスター。

 どうりで格好良い訳です。

 チェックインまで済ませれば更に一息。

 ちょっとゆっくり朝食です。

 「点心」の文字がある店にしました。

 メニューでロブスターとエビが入っていることまでは分かりましたがそこまで。

 兎に角熱く、かつとても美味しかったです。

 こちらも「お勧め料理」の中にあったもの。

 貝は分かりましたがその他は分からずですが、素晴らしく美味しかったのです。

 四川料理と北京料理は食べましたが、上海料理、広東料理なども機会があれば是非食べてみたいものです。

 100%満足し、機上の人となりました。

 香港は、神戸とニューヨークとホーチミンを足して3で割ったような街でした。

 マーケットの種類は香港が一番だったでしょうか。

 庶民の料理も色々食べましたが、麺よりワンタンかお粥です(笑)

 現代建築は、目を見張るものがあります。

 カオルーン南東部にあるザハ・ハディド設計の香港理工大学は、完全に映画の世界レベルです。

 エントランスで圧倒されてしまいます。

 アンビルドの女王にビルドさせる訳ですから、どれだけ香港が裕福かが分かります。

 建築というよりは、巨大な高級車といった感じ。

 旧警察本部や監獄をリノベーションした「大館」は香港島の中環(セントラル)エリアにあります。

 設計はヘルツォーク&ド・ムーロン。

 こちらの外壁は、元のレンガのサイズに合わせてデザインされているそうです。

 展示は現代美術なので、それらを邪魔する訳にはいきません。

 見せ場はほぼ階段しかないのですが、その階段が凄い。

 「階段を狙え」は日本の巨匠、村野藤吾の言葉だったと思いますが、機能あるものをアートのレベルに高めています。

 ヘルツォーク&ド・ムーロンの作品は初めてだったのですが、流石に世界でトップを走る実力は伊達ではありません。

 2度も3度も美味しいのが香港です。
 

 100万ドルの夜景は、定番ですがビクトリア・ピークから。

 高い建物が苦手なのが一番の理由です。

 I・M・ペイ設計の「中國銀行ビル」には何度も触れました。

 実はライティングも秀逸でした。

 強調された光のラインが付いたり消えたりする単純なものですが、それが余計にインパクトを与えています。

 香港に居る間、この高層ビルが気になって気になって仕方がありませんでした。

 こちらは香港名物、竹の足場です。

 工事をしている所は一度も見れませんでしたが、本当にこれで工事をするのでしょう。

 狭い土地の中で少しでも大きくと、古いビルは何とか張り出そうと必死の形相です。

 新しい建築が張り出していないところをみると、法的にはアウトなのでしょう。

 しかしこの張り出しが、まるでアーケードのような役割をしており、雨の日はとても有効。街を歩く人に優しいのです。

 乗り物はトラムが一番気に入りました。

 2階建てチンチン電車ですが、のんびりと風を感じながら乗っていると、つい居眠りしてしまう程。

 デモは激化する一方なのは聞いていましたが、今すぐの天安門事件のような状態になることはないと判断し、渡航しました。

 しかし、実際に警察がデモ隊を本気で追う姿をみると正直ドキドキしました。

 余程の事があってもゴム弾しか使わないようで、私も行くことに決めたのですが、それは現地とて同じ。

 警察が舐められている感は否めませんでした。

 旅の友はCANONの5DMARKⅡですが、一緒に随分色々なところへ行きました。

 それなりに重いですが、いざというときは武器にするくらいの覚悟はいつもしています。

 2016年と比べると一気に老眼が進み、マップの小さな文字が読めずでかなり慌てました。

 建築マップに付いていた、ルーペ付きしおりを持ってきて本当に助かったのです。

 いまさらハズキルーペを買うのもやや気恥ずかしいので、空港にあったルーペ眼鏡?を購入しました。

 新しく旅の友になって貰います。

 私が体感したことのない国が、まだまだいくらでもあります。

 旅の直後はいつもですが、出掛ける気力と英語を勉強する気力が満々なのです。

 来年、子供の受験が終わったら皆で海外へ出ようかという話になりました。

 今回のサブテーマは「僕らの深夜特急」です。

 沢木耕太郎のこの小説に触発され、海を渡った人はどのくらい居るのでしょうか。久し振りに第1巻を読み返してみました。

 あとがきの対談で、海外へ出る適齢期は26歳と結ばれていました。

 私が海外へ初めて出たのは24歳なので少しずれがありますが分かる気がします。

 子供にも、自分が稼いだお金で、1ドルを惜しんで旅して欲しいと思うのです。

 ただ、もし娘が行きたいと言ったら、行って来ればと言えるのか……

 まだそれは先なので考えないでおきます。

 これにて香港・マカオの旅はおしまい。旅日記はつい長くなってしまい失礼しました。

 次回はウィーンかアムステルダムかニューヨーク再訪か。またここでお付き合い下さい。

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香港・マカオの旅① <摩天楼、スターフェリー編>‐1630‐

 先程、香港から戻りました。

 会社に戻ると、義妹と偶然会い「台風で、関東、東北地方は大変でした」と聞きました。

 日本を離れていたので、まだ状況を把握できていませんが、被災された方々には心からお見舞い申し上げます。

 今回も多くの河川が決壊したとのことで、是非ライフジャケットを各家庭に常備して貰いたいと思っているのです。

 金曜日の朝4時まで仕事をし、5時に家を出ました。

 子供達とは、2、3日顔を会わせておらずで、バタバタと空港へ向かいました。

 朝まで働くのが良い事だとは思いませんが、仕事があるうちが華です。

 関空を9時に飛び立つと、泥のように眠っていました。

 機内アナウンスで目を覚ますと、眼下に香港が見えてきましたが、いきなり度肝を抜かれました。

 ヨーロッパの市街地に建つマンションは、中庭を囲むような配置になっていますが、その高層マンション版と言えばよいでしょうか。

 しかもそれが林立しているのです。

 ニューヨークのマンハッタンを遥かに凌ぐ規模?

 フライトチケットやホテルの予約は妻任せで、ろくに下調べもせずにやって来たので尚更です。

 香港国際空港に降り立ちました。

 香港という国?中国?それも分からずですが、まずは市街地に向かいます。

 無料シャトルバスがあると聞いており、ホテルのあるモンコックを目指します。

 何処で降りるかがあまり分かっておらずでしたが、モンコックと地名がつけば良いだろうとバスを降りました。

 持ってきたガイドブックの地図を出してさあ調べようと思うと、これが全く読めない。

 視力は今でも1.2あるのですが、思いのほか老眼が進んでおり、文字が小さすぎるのです。

 これは弱ったと思いましたが、一人旅で時間だけは余る程あります。ウロウロと歩き出しました。

 ホテルは中心街だと聞いていましたが、家電を売っていたり、金物を売っていたりで、問屋街のような感じもします。

 あまり治安も良さそうな感じはなく、若干不安になってきます。

 と思っていたら、食品を売る店もでてきました。

 どこの国の人も腹が減れば何か食べる。人はそんなに変わりません。

 昼も過ぎていたので、小汚い店(失礼)で何かしらの麺を頼みました。

 香草と生姜の効いた、優しいお味でした。ホルモン?はなかなかいけましたが。

 日本のラーメンを知っていて、海外でそれより美味しい麺を期待するほうが無理というものです。

 ただ、思ったより暑く、ベトナムあたりと同じような食文化があるのかもしれません。

 再度歩き出すと、やや近代的な街並みが見えてきて、ようやく自分の居場所が分かりました。

 香港は大きく分けて、中国本土とつながる「九龍(カオルーン)」エリアと、南に海峡を挟んである「香港島」エリアに分かれます。

 現在、香港では各地でデモがくり広げられていますが、モンコックもそのひとつになっています。

 モンコックから南の香港島に向かって真っすぐ伸びるメインストリートが「ネイザンロード」です。それが分かり、ようやくホテルにチェックインしました。

 受付の女性に「この地図、無料ですか?」と聞くと、

  Three? 

 と聞き返されてしまいました。

 地図は3部も要りませんが、口が日本語モードで、下唇をかんでの”エフ” の発音ができていなかったようです。

 ここで、コミュニケーションも海外モードに切り替え、早速街へ。

 何も知らないとはいえ、香港にノーマン・フォスター、I・M・ペイシーザー・ペリの建物があることは何となく知っています。

 妻に付箋だけは貼っておいて貰いました。地下鉄で海峡を越えて香港島へ。

 イギリスでは「サー」の称号も持つフォスターに敬意をこめて、まずは「香港上海銀行ビル(1986年)」へ。

 ただ、目はすぐに隣の隣にあるペイの「中國銀行ビル(1990年)」へ行きます。

 こちらも建築書で何度も見ていましたが、写真とは全く違う美しさです。

 極めて単純なフォルムが、圧倒的な存在感を放っていました。

 香港島に居る時、どこにいても目印にしていました。こういった建築が本当のランドマークだと納得したのです。

 このエリアで最も高い、ペリの「国際金融センター(2005年)」もすぐ北にあります。

 香港島の高層ビル群の南には「ビクトリアピーク」という小高い山があります。

「ピークトラム」はその急こう配をかなりのスピードで真っすぐに駆け登って行きます。

 下りは、下手なジェットコースターより余程怖いと、後で知るのですが。

 一番右にペイの「中國銀行ビル」、中央あたりにペリの「国際金融センター」、そして一番左、対岸の九龍エリアにあるのが、KPF設計の「世界貿易センタービル(ICC)」。

 「世界貿易センタービル(ICC)」は485mで香港で最も高いビル。

 「摩天楼」という言葉がぴたりとくるくらい、競って天に迫っていく様は圧巻でした。

 「中國銀行ビル」を設計したI・M・ペイはルーブル美術館のガラスのピラミッドで知られ、1983年にプリツカー賞を受賞しています。

 今年の春に亡くなったのですが、享年をみると102歳。

 フランク・ロイド・ライト、村野藤吾をはじめ、建築家に長寿は多いのですが100歳越えとは恐れ入りました。

 夜景には少し時間があるのと、まだ街の様子も、デモのことも把握出来ていないので、この日は一旦九龍に戻ることにしました。

 沢木耕太郎の「深夜特急」は、バックパッカーのバイブルと言われています。

 その26歳の沢木が何度も乗ったというスターフェリー。

 出港し、香港島を見返します。

 西の空に日が沈んで行く景色を彼も見たのでしょう。

 なかなか行けない海外で、香港を選んだのはやはり「深夜特急」のスタートの地だったからだと思います。

 20代の後半、疲弊しきっていた私を救ってくれたのもまた旅でした。
 
  Breeze is nice. 

 「深夜特急1‐香港・マカオ編‐」ではなかったと思いますが、旅先で若き沢木青年が聞いた言葉です。

 私が深夜特急を読んだのは、20歳くらいの頃だったと思います。

 その言葉が、30年経って思わず口から洩れてしまうくらい、幸せで、心地よかったのです。

 「僕らの深夜特急」香港・マカオ編だけですが、順次アップして行きます。

 良ければまたのぞきにきて下さい。

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『houzz』4月15日の特集記事
「中庭のある無垢な珪藻土の家」が紹介されました
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