小学校に入学し、初めての担任はとても厳しい先生でした。
勉強熱心で、多少怖いくらいの女性で、40代半ばくらいだったでしょうか。
写真の一番左がその先生です。
怖いというのもあって真面目に勉強したのですが、そのおかげか、結構成績が良かったのです。
大人しい生徒で、勉強もでき、先生の言うこともよく聞く。
使い勝手のよい生徒だったと思いますが、今思えば多少「贔屓」されていたかもしれません。
保育園の時に、頭が良いとか、悪いとか考えることはあまり無いので、「やれば出来るんだ」と思った初めの機会だったかもしれません。
その先生は、読書を特に勧めており、感想文も熱心に読んでくれました。
細やかに評価をしてくれたのも本好きになった要因だっかもしれません。
近頃は寝る前だけなので、月に1~3冊程度ですが、以来、本を欠かしたことは殆どありません。
6月に「傑作」と書いた、池井戸潤の「下町ロケット」ですが、今更私が書くまでもない人気作家だとよく分かりました。
現在まで一作たりとも外れ無し。この「陸王」も素晴らしかったのです。
足袋を100年作っている老舗メーカーが、先細りする業界を憂い、ランニングシューズ業界に参入する話です。
小さな足袋メーカーの4代目社長の葛藤と、学生時代はトップランナーでしたが、社会人になって故障、そこから復活していく若きランナーを軸に物語は展開していきます。
彼に新しく開発した「陸王」というシューズを履いて貰うところから展開は加速していきます。
大企業に所属するが故、自社のシューズと自分の損得しか考えていない悪役営業マン。ランナーのことだけを考えている職人肌のシューフィッター。新素材を見つけ新たな可能性に掛ける零細企業と、冷たい銀行の実態と、ドラマ化して貰わずとも、画が浮かんでくるような小説です。
この若きランナーは「陸王」を履きマラソンに出場。
ライバルを退け、見事に復活優勝をとげるというハッピーエンドでした。
私のクライアントも、ジョギングレベルではなく、本気のマラソンレースや、中には一昼夜走るトレイルに出場している方もいます。
そんなこともあり、今年のはじめに大阪女子国際マラソンを観戦に行きました。
マラソンは35kmあたりからが別次元の苦しさと言います。
この時もそのあたりで見ていましたが、とても2時間走ってきたスピードには見えませんが、流石に苦しそうでした。
私も26歳の時に一度だけ、静岡県の袋井でマラソンに出たことがありますが、35km辺りからは歩いてゴールしたと思います。
「35kmが折り返し点」というコピーに、至極納得したことを覚えています。
先に書いた担任の先生は6年生の時も持って貰ったと思いますが、20年程前「自宅のリノベーションを考えているから、見にきてほしい」と電話を貰いました。
リノベーションというよりは部分リフォームだったので、辞退させて貰ったのですが、その頃で70歳を超えている感じだったでしょうか。
年賀状が返ってこなくなったので少し気にはなっているのですが……
授業中に、マラソンの距離をゴロ合わせで「死に行く覚悟」と教えてくれました。
ネガティブな言葉は嫌いですが、実際にマラトンの戦いの勝利を、40km離れたアテネまでギリシャ兵が走って報告、その後絶命したという故事にのっとっているものですから、単なるロゴ合わせとも言えないかもしれません。
「陸王」の中でもっとも痛快だったセリフです。
「この2年間都合よく離れていく連中を何人も見てきました。いいときは擦り寄ってくるのに、悪くなるとあっという間にいなくなる。御社だって、そうじゃないですか。サポート契約を打ち切ったのはオレじゃない。御社のほうでしょう。なのに、レースに復帰した途端、手のひらを返したように近づいてくる。もううんざりなんですよ」
マラソンの当日、大企業のシューズではなく「陸王」を履くことを決めた場面です。
命までを掛けるかは別にしても、何もかけずに真理は見えないし、人の心を動かすことはありません。
およそ半世紀生きてきたので、教えて貰ったこと、学んだこと、知っていることは数限りなくあります。
どんなことがあっても死にませんが「42.195」で目の前にあるものに臨むだけなのです。
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■『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
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■『homify』5月7日に「碧の家」掲載
■『houzz』4月15日の特集記事 に
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■大阪ガス『住まう』11月22日発行に「中庭のある無垢な珪藻土の家」掲載
■ 『住まいの設計05・06月号』3月20日発売に「回遊できる家」掲載
■『homify』6月29日に「回遊できる家」掲載