今日はあいにくの雨ですが、サツキの美しい季節です。
普段はやや愛想のない灌木ですが、この時期は見事なもの。
先日、秋田県立美術館の階段がとても美しかったと書きました。
館の設計は安藤忠雄。
階段に合わせ、手摺も柔らかい曲面に沿って登っていきます。
スチール製ですが、まるでスクリーンのような繊細さです。
ここ数年、春先にウェスティン都ホテル京都へ行く機会があります。
今年は4月末でしたが、なぜかいつも天気にめぐまれず、この日も花曇り。
それでも八重桜が満開で、東山の新緑に文字通り花をそえていました。
ホテルは、関西が誇る巨匠、村野藤吾の設計です。
村野の芸達者は、常人には及びもつきませんが、有機的な曲線は彼の特徴といえます。
西館にあるスチール階段は、華麗さ、美しさ、軽やかさを兼ねそろえた階段です。
見るたびに、ため息に近いものが漏れるのです。
逆光につき、側面からみるとその柔らかい色使いも見てとれるでしょうか。
見下ろすと、柔らかなフォルムが一層引き立つのです。
1段目に村野の特徴がよくでています。
やはり階段自体が芸術品といえるのです。
しかしこの時期の村野の作品で、トップがステンレスのものがあったかなと考えます。
また、全体のプロポーションからすれば幾分太いようにも見えます。
もしかすると都ホテルがウェスティンブランドになった際、改修で作り直されたのかもしれません。
そうだとするなら、原型に近いプロポーションを追求したあとは見えます。
しかし、デザインする側は極限まで無駄を省きたいもの。極小は常に美しいことを知っているからです。
実際に手摺をつくる鉄工所は、当然のことですが機能を満たし、安全を担保しなければなりません。
材が小さいとたわむ、揺れが大きくなるのではという懸念が常にあります。
美しいや感動は、無難からは生まれません。一歩踏み込んだところにしかないのです。
これらは全て私の想像ですが、そう思わせる迫力を一流の建築家は常に持っています。
何かを成そうとするなら、覚悟、強い意思、勇気が必要。
手摺と階段が、それらを如実に物語っている気がするのです。