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はやきこと風のごとく‐1429‐

 一昨日、11月7日発売の『ESSE』という女性誌に、「松虫の長屋」の写真が掲載されました。

 『快適で「楽しい!」家づくり』というテーマで3ページにわたり、8軒の家が紹介されています。

 写真が1枚だったのは残念ですが、選んでもらった嬉しさもあります。

 表紙は仲間由紀恵さん。もしよければ手に取ってみて下さい。

 先週末の埼玉行きですが、連休の渋滞予測もあり、夜遅めに大阪に戻るイメージでした。

 11月5日(日)ライン下りを終え、10時半頃に長瀞を出発。

 秩父から甲府へ抜ける国道140号線は通行量の多い道路。早めの出発で、昼過ぎの甲府着を目指します。

 峠では間もなく紅葉のピークといった感じでした。

 甲府まで約2時間半。

 駅前の駐車場に車を停めて、徒歩でウロウロします。

 駅北の広場では、山梨ラーメングランプリなるイベントが開催中。

 全国から味自慢のラーメン店が集まり、1杯800円で投票が行われるそうです。

 凄い行列で、うちの子供達は屋台のたこ焼きと肉まんを食べていましたが。

 駅前に建つ山梨文化会館は 丹下健三の設計。1966年の完成です。

 何本かみえる筒状の部分には、縦動線が収まっているのでしょう。コンクリートの強さ、自由な造形を活かした建物です。

 その隣に建つのは山梨県立図書館。

 高さはかなり抑えられ、時代の気分を感じさせます。

 明るく、開かれた図書館で、多くの市民が利用していました。

 駐車場が1時間無料となっており、このあたりの配慮には好感がもてます。

 2階は、受験生が多く勉強しているようでした。

 入試まであと2、3ヵ月。ピリピリとした空気感が伝わってきますが、ここで勉強できる甲府っ子は幸せにみえます。

 駅の南にある武田信玄像。

 甲府城跡も駅南にあります。

 これは豊臣が築いた城で、信玄がここで采配を振るったわけではありません。

 しかし、天守閣跡から甲府盆地を見渡せば、その美しさは他に類のないものです。

 盆地の向こうには富士山も見えます。

 戦国最強とうたわれた武田軍は、三方ヶ原の戦いで、織田、徳川連合軍を打ち破りました。

 歴史に「たられば」はありませんが、信玄がもし早世していなければ、という話はよく聞きます。

 ここ甲府が日本の首都になっていた可能性も十分にあった訳です。

 今回は11月4日(土)は青→草津、黄緑→諏訪、5日(日)はオレンジ→長瀞、赤→甲府、黄→大阪と1100kmの旅。

 大阪に戻ったのは深夜12時でした。

 土曜日は、草津で大きな虹が見えました。

 ぶつぶつ言いながらも子供が着いてきてくれるうちに、少しでも沢山の景色を見せておきたいと思います。

 年末は、夏休みにキャンセルした47都道府県最後の宮城への旅の予定です。

 冬の東北ですが、一番好きなフェリーの旅で完結したいと思っています。

 風林火山は言わずとしれた武田家の旗印。

 今度は何とか出掛けられるよう、疾(はや)きこと風のごとく正しい判断を積み重ねるのみです。

雪の延暦寺で宝の山をしる‐1346‐

 先週の寒波で、関西も北部はかなりの積雪があったようです。

 京都のクライアントは「まだ家の周りに雪がありますよ」と。

 それなら近場でも雪があるかなと思い、比叡山まで行ってきました。

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 入試も終わったので長男に「滑りに行くか」と声をかけると、友達と遊びにいくと。

 娘に聞くと、午前中は塾があると。

 重松清の「ビタミンF」にでてくる、悲哀に満ちた父親になっていないか、かなり怪しいところです。

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 昼過ぎに大阪を出て、午後2時頃に到着しました。

 比叡山延暦寺は、最澄によって創建された天台宗の総本山です。

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 世界遺産に登録されていますが、そこは娘には関係ありません。

 それで先に雪遊びですが、これだけ楽しんでくれたら来た甲斐があるというものです。

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 おきまりの雪だるまですが、納得の一品でした。

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 延暦寺にはかなり積雪がありました。

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 また、山頂だけあってアップダウンがかなり厳しい。

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 その分、有り難さが増すというものですが。

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 国宝の根本中堂が工事中だったのは残念でした。

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 総本堂とあるだけに、荘厳な建築でしたがこれは次回にお預けです。

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 比叡山は、京都と滋賀の境にあります。

 雪空でしたが、東の眼下には大津の街なみが広がります。

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 西には京都の市街地が。

 山頂は雪でしたが、京都市内は日が差しているようでした。

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 光を受けて、家々のいらかが金色に輝いています。

 沢木耕太郎の「バーボンストリート」は、私の中のベストワンエッセイです。

 その中に、高倉健の章がありました。

 彼は俳優という仕事を追求するため、度々延暦寺を訪れていました。そして住職にこんな質問をします。

 住職ほどの僧になられたら、京都の夜景をみても心は乱れないのでしょうね。

 すると、いえいえ、そんなことはありません。どれだけ修行をしても、ゆらめく街の灯をみていると、夜の街へ出てみたいといつも思います。人とはそういうものです。

 そんな話だったと思います。

 立派な人、歴史上の偉人を、別格として捉える傾向が日本人は強い気がします。

 これを、元サッカー日本代表監督のオシムは、中村俊輔らとの葛藤を語る際に「スターマニア」という言葉を使いました。

 天台宗の座主をばかにしたり、高倉健が普通の人だと言いたいわけではありません。

 同じ人間なのだから、諦めないと言い続けたいだけなのです。

 天台宗の開祖、最澄は自らの著書をこの言葉ではじめます。

 「一隅(いちぐう)を照らす」

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 続けて、「此れ即ち国宝なり」。

 社会の一隅に立ち、利己的な心を捨て、世のため人のために良いことを行う人こそが国の宝だと、最澄は言いました。

 そういう人たちに、スポットがあたりにくい世の中になってはいないだろうかと思います。

 華々しく、人前に立つ人だけで世の中はよくならないし、スティーブ・ジョブズは1人だけです。

 むしろ、地道に自分の仕事に打ち込む人こそが、宝なのだと平安時代に最澄は言ったのです。

 また、そういった人材を育てることを、一生のつとめとしました。

 国宝、市宝、社宝、家宝。

 まさに世は宝の山だったのです。

家が揺れる大音量‐1162‐ 

 雨の多かった4月前半から一転。晴天が続きます。

 昨日は「滋賀の家」の撮影でした。

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 雲ひとつない快晴。元山城の敷地につき、土塁の上から外観を狙います。

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 見事に咲いた山桜と、建物の位置関係を探る写真家。

 写真家の一番の仕事は、アングルを探すことです。気に入ったカットを、ワンカットいくらで私が購入するという流れです。

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 自営で完成したドッグランも、ようやく本物が見れました。敷地が広いだけに、建物以外の部分が重要です。

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 最近は、人物ありの写真も撮ってもらいます。

 どこに立って貰い、どう撮るのか。これは任せる他ありません。やはり経験がものを言います。

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 その間、私がサブカットを撮って回ります。

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 3時の休憩に、奥さんが手作りデザートを用意してくれました。

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 シフォンケーキは、お気に入りにお店直伝。厨房の中に入れて貰い、レクチャーを受けたとのこと。

 これは完全にプロの味。クリームブリュレも本当に美味しかったのですが、それを準備してくれることが、何より嬉しいことです。

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 計画がスタートした当初から、スタッフの田辺も本当に可愛がってもらいました。庭を眺めながらのティータイムは、最高の時間のはずです。

・前の家の時は来なかった親族が、頻繁に立ち寄るようになった。
・お客さんが長居する。
・カフェみたいと言われる。
・知らない人が、庭を散歩してタケノコを採っている。

 最後はご愛嬌ですが、本当に喜んでいるという気持ちを、目一杯伝えて貰いました。

 ただただ幸せな、午後のひと時……

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 昼の部の撮影が終り、最後は夕景の撮影です。

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 この日の日没は6:37pmでした。

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 7:00pm頃まで粘り、この日の撮影は終了。

 その後、夕食までご一緒させて貰いました。ご主人は元プロなのです。

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 パエリア、ローストビーフ、生しいたけのソテー、トマトとモッツァレラチーズ、タコのバルサミコソースあえ。

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 杯が進まないはずもなく、あっと言う間に終電の時間に。長男の彼が送ってくれました。現在就職活動中とのことです。

 ご主人は、音楽にもこだわりがあり、LDKの天井にはBOSEのスピーカーが埋めこまれています。

 長男の彼は「家が揺れるくらいの大音量で音楽をかけ、踊っている」そうです。このロケーションならそれも可能。

 ゲストが喜んでくれるのは嬉しいことですが、家族の幸せは、更に上の喜び。

 彼にとっては、冬の太陽光が奥深く届くことより、美しい景色を切り取ることより、大切なことだったのかも分かりません。

 光、風、音。人にとって大切なことは、本当の意味で人それぞれ。

 就職が決まれば、この家を出ることになるでしょう。盆暮れに帰ってきたくなる思い出が、ひとつでもできればと願うのです。

◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記