朝は騒がしいヒヨドリと、セミの音で目が覚めます。
小さな庭に、よくこれだけのセミが居るなと。
彼らが一週間の夏を謳歌するように、後悔の無い夏にしたいものです。
縁側から、抜け殻のある景色も夏の間だけ。窓は採光、通風、そして景色を見る為にあります。
逆の立場から言えば、建物の雰囲気を伝える役割もあるのです。
加美の家は、和室が大きくせり出しています。
この部屋は、日本舞踊の練習場でもあり、窓を光の舞台に見立てました。
柏の家は、2階にあるダイニングが北側に面しています。
北側は大開口に向いています。よって、内部が見え難いガラスを使いました。
ちょっとシャイな家なのです。
Ohanaは写真スタジオなので、撮影の楽しさを街に伝えたいと考えました。
生き物に例えるなら、目が大きな建物です。建物は、窓によって街と繋がっているのです。
会社にとっての窓は、やはり電話でしょうか。
電話の発明者はグラハム・ベル。1876年にアメリカでの特許を取得しました。
fax、携帯電話、スマートフォンと進化、多様化して行きますが、電話とそれ以前を比べると、小さな変化かもしれません。
コミュニケーションを取るには、その場に行くか、誰かに何かを届けて貰う必要があったところから、一気に電子のスピードになったのですから。
2002年に再スタートを切ってから、全く面識の無い人から、ポツポツとオファーを貰うようになりました。
一番初めのオファーはよく覚えています。久宝寺近く、築50年くらいの平屋で、20坪くらいだったでしょうか。
若いご夫妻で、予算は1000万円前後。リノベーションを選択しました。
綿密に測量し、屋根裏を最大限に使うプランを考え、気合を入れてプレゼンテーションしました。気に入って貰ったと感じたのですが、結果的に実現しませんでした。
しかし、こんな経験の繰り返しが、私を個人的に知らない人でも、web、書籍をみてオファーをくれるという自信に繋がったのです。
バタバタしている時、困難な課題があるとき、つい電話に出る声のトーンが……
そんな時、スタッフに自分に言い聞かせます。
「この電話が、世界と繋がる窓なんだ。70億人と繋がれる可能性がある」
電話の音は、希望の鐘の音。間違っても「またか~」なんて言って駄目なんのです。