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夢は仕事をしてて、バタンと倒れて死にたい‐1383‐ 

 録りためていたHDDに、「ふたりの神様」という番組タイトルがありました。

 世界最高齢、ミシュラン3つ星料理人、小野二郎さん91歳。

 天ぷら職人、早乙女哲哉さん71歳。

 それぞれの道を極めたふたりの交流を描いた番組でした。

 「神対応」なる言葉が乱発されるのには、いささか食傷気味ですが「ふたりの神様」に異論のあるひとはそう居ないでしょう。

 「美味しんぼ」の連載が始まったのが、私が中学に入った頃だと思います。

 当時は、「ジャンプ」や「スピリッツ」などの漫画週刊誌を、友人何人かで回し読みしていました。

 中でも、スピリッツに連載が始まった「美味しんぼ」は、文化の香りがするというか、始めて体験する漫画でした。

 世がバブルに向かっていく時代背景もあったのか、「美食」などという言葉もよく耳にするようになります。

 その中にも、小野二郎さんは登場していました。

 置いた瞬間、重みでフワッと沈むほど、繊細に握られている通称「二郎寿司」。

 「美味しんぼ」の中でも、CGで断面解析がなされていたと思います。

 表面はしまっているが、中には空気が多くのこり、口の中でほどけるように崩れる究極の寿司。

 もともと不器用だった小野二郎さんが、自らの努力と探求によって生み出した技術です。

 30年以上前の記憶ですが、大きくは違っていないと思います。

 早乙女哲哉さんは20歳年下ですが、小野二郎さんを料理人として尊敬し、ライバルとして意識してきたとのことでした。

 互いの店も行き来し、切磋琢磨してきたのです。

 それぞれの世界の神様が、100歳になるまでやろう、とエールを送り合っている様をみて、やはり時代は変わったのかなと、思うところもあります。

 「夢は仕事をしてて、バタンと倒れて死にたい」

 レベルの違いこそあれ、気持ちは全く同じです。

 高校生の頃だったか、ビートたけしと明石家さんまが共演する光景をみて、極めたふたりが認め合う姿って素敵だなあと思っていました。

 「ふたりの神様」をみても、全く同じ気持ちになります。

 もう少し言えば、憧れ、羨望、自分の至らなさが入り混じった、甘酸っぱい気持ちというか……

 早乙女さんの店は予約が取れるんだろうかと、webサイトで調べてみるとこんなコメントがありました。

 15歳で修業をはじめてから古希を迎える今年まで、一日たりとも休んだことはない。

 さらっと書いてありますが、もう脱帽です。

 休まないことが素晴らしい訳ではありませんが、誰よりも結果をだしている人が、誰よりも努力をすれば、最高の結果をだし続けるのは当たり前です。

 まるで、肩を並べに行こう、くらいのことを書いてしまい恥ずかしい限りです。

 ふたりの寿司、天ぷらを一度でいいから食べてみたい。そう思うのです。