タグ別アーカイブ: 大三島

目指せ、下町のプリンス‐1595‐

 昨年の夏季休暇は、広島県の尾道愛媛県の大三島を回りました。

 大三島は大学時代の後輩の家を訪ねたのですが、先日、第一子が誕生したと聞き、ささやかなお祝いを送ったのです。

 不要だと伝えていましたが、内祝いが返ってきました。

 本人曰く「和歌山人の魂の味」抹茶アイスでした。

 和歌山、吹田、京都、鹿児島、ハワイを渡り歩いた彼が選んだものなので間違いないはず。

 早速、コーヒーブレイクに頂きましたが、和歌山人の魂を、ひしと感じたのです。

 大変美味しゅうございました。

 彼らが暮らす大三島の周辺環境は、素晴らしいの一言に尽きます。

 私なら毎日釣りをして、仕事にならないでしょうが、子供さんはのびのびと育つでしょう。

 あまり小さい時は負担になると思うので、3歳くらいになった時を狙って、また押しかけてみたいと思います。

 我が町「平野」は間もなく夏祭りシーズンです。

 私は海外へ出かけるのも大好きですが、働き、暮らす場所としての下町は気にいっています。

 アーケードのある商店街。

 肉屋の手造りコロッケ。

 細々とですが(失礼!)、まだ釣具屋も残っています。

 

 こちらの模型屋さんは、シャッターを見ると微妙な感じ。

 こんなショーウィンドウに張り付き、お年玉でプラモデルを買ったものです。

 下町の特徴を一言で表せば「外に開いている」ということでしょうか。

 職住一体となっている場合が多いので、町行く人にアピールしなければならないからです。

 大学時代の後輩が、芦屋の六麓荘に住んでいました。

 家に泊めて貰ったことがあるのですが、六麓荘の中でも一番山手の方で、間違いなく関西一の高級住宅地です。

 広い庭があり、塀で囲まれ、プライバシーが確保されていますが、高台なので各住宅からの眺望も申し分ありません。

 竹中工務店出身の建築家・永田祐三さん設計の煉瓦造りの作品がすぐそばにありました。当たり前ですが、建築雑誌で見た街並みそのままだったのです。

 それに比べると、町工場まで混在し、同じ日本かと訝りたくなりますが、職と住が近い良さもあります。

 働く姿を真近でみれるのは、最も良い点でしょう。

 閑静な住宅街では普通ないものが、道端に転がっています。

 これは車軸でしょうか。

 こんな車の部品でも使えるのか。

 何しろ工場があると重機があるので、閑静な住宅街にはないことが起るのです。街に動きがあるのも下町の特徴でしょう。

 離島が良い、閑静な住宅街が良い、下町が良いという単純な話ではありませんが、子供は環境を受け入れ、活かし、成長していかなければなりません。

 そして、自分が大人になった時、どこで暮らすのかを決める時がやってきます。

 そう考えると、私もこの下町を離れる選択肢もありました。

 子供が小さい時は両親の助けが必要でしたし、現在のように急にスタッフが足りなくなると、妻にも店番をして貰わなければなりません。

 また、遅い時間まで仕事をしたければ、家が近いに越したことはありません。

 創業は天王寺だったのですが、会社を平野に移転したことで、多少下に見られることは理解しています。

 大メーカーの営業マンなどの応対を見れば明らかです。

 しかし、それでも多くのクライアントがこの下町まで足を運んでくれたことが、私のプライドなのです。

 おそらく子供が独立するまではこの地で暮らすでしょうが、会社は市内の中心へ出ていく気持ちはあります。
 

 かなり年老いたネコに見えますが、何故ここに暮らしているのだろうかと考えます。

 首輪がないところを見ると、どこで暮らしても良いはずです。

 もし話すことができたらこう言うに違いありません。

 「住めば都だニャア」と。

 今、自分が暮らす場所こそが、自分にとっての都そのもの。それ以外の人生は、今現在ありません。

 何と深く、前向きな言葉だったのかということが理解できました。

 積極的理由ではないにしても、下町で暮らすという選択をしたことに悔いはありません。

 名コメディアン東八郎の次男、東孝之はTake2のボケ担当。相方が女優・田中美佐子の旦那さんと言った方が分かりやすいでしょうか。

 東孝之の「下町のプリンス」というニックネームが私は大好きです。

 我が家の長男にも、下町のバイタリティは吸収し、かといって下品でない「下町のプリンス」を目指して欲しいと思っているのです。

 これは私の目標でもあったのですが。

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しまなみ海道をめぐる<大三島で暮らす編>‐1511‐

 尾道をでて、ようやくしまなみ海道をめぐります。

 向島、因島と渡りますが、橋がそれぞれを地続きにしてくれました。

 一昨年、「村上海賊の娘」を読みました。

 その舞台を見て回りたいと思ったのもきっかけにあります。

 村上海賊の資料館、因島水軍城に立ち寄りました。

 その潮流の早さに驚き、島並の美しさに息をのみます。

 この豊かで、温暖な島々を牛耳っていたのが村上海賊でした。

 しまなみ海道の丁度真ん中あたり、大三島(おおみしま)に入りました。

 小さな集落の最奥。

 後輩が暮らす、築50年の民家は小高い丘の上にありました。

 この島で奥さんも迎えたと聞いたので、そのお祝いもしたかったのです。

 ただ、お祝いの品を家内が全て家に忘れてくるという大失態でしたが。

 チワワを飼っていることも聞いていました。

 イヌと暮らしてみたいという娘の希望も叶えることができたのです。

 両親の郷里が岡山と香川で、小さい頃、夏休みは田舎で過ごしました。

 その経験は、私にとって大きな価値があったと思います。

 決して豊かではないけれど、ゆったりした時間の中で、人にとって何が大切なのかを、私なりに体感していました。

 夕食は、瀬戸内海を望むカフェを予約して貰いました。

 新婚夫婦の写真を1枚。

 しかし、ちょっとふざけたこの写真が、彼の本質をよく表しています。

 アコウ、アジ、イカ、タコ。

 魚にはうるさい娘も大満足です。

 大人に一番人気だったのは、ハモシャブ。

 軽く皮を浸し、さっとダシをくぐらせるのがよいそう。

 美味しく、楽しい時間はあっという間に過ぎて行きます。

 遅くまで、久し振りの会話を楽しんだのです。

 翌朝、島豆腐などと一緒に、ミカンジュースが食卓に並びました。

 奥さんが生産したもので、皮は一緒に絞らないタイプで、甘く、とても柔らかい味わいでした。

 様々な職業を経験した移住組の穏やかな奥さん。美味しいミカンを沢山生産されることを楽しみにしています。

 ようやく仲良くなった頃、帰路につかなければならないのが旅の理です。

 最後の昼食は、「ファミリーレストランよし川」へ。

 大阪のファミリーレストランとは、随分趣きが異なります。

 海鮮丼を頼み、もう思い残すことはありません。

 大三島と言えば、伊東豊雄ミュージアムもあります。

 スティールハットの隣に建つのは、氏の自邸を再現したシルバーハット。

 大三島の美しさに惚れこんでこの地を選んだそうですが、今回はほぼ素通り。

 その訳は、私が多くの仕事を持ちこんでいたからです。

 昨年の夏季休暇、仕事が追いつかずで全ての旅行をキャンセルしました。

 しかし今年は「滞在中に仕事をしていても、彼なら許容してくれるだろう」という気持ちもありました。

 食事以外の時間は、奥さんの書斎を借りて仕事をさせて貰いました。

 2人と別れてから、子供たちにはちょっと海に浸かってもらい、海を望む図書館で仕事。

 旅先図書館も、我が家では定番です。

 夕刻になり、大三島を後にしました。

 愛媛の東予港を夜に発ち、月曜日の早朝、大阪南港に帰ってきました。

 船旅の終わりにはいつも思います。

 少し海は汚れているけれど、ここが私の戦う場所だと。

 2学年下の彼は、私が結婚したと知り、お祝いに湯飲み茶わんを持ってきてくれました。

 もう10年以上前のことです。

 私は、手土産はできるだけ食べ物など、無くなるものにしています。

 人の好みは様々だし、押しつけがましいのは嫌だなと思うからです。

 しかし、この湯飲み茶わんは絶妙でした。

 適度な厚み、風合い、品格を備え、そしてそこまで主張が強くない。

 ひとことで言えば「センスがよい」となるのですが、その審美眼を常に磨いていると感じるのです。

 彼は、日本各地、また海外でも、自分の職能で生計を立ててきました。

 この大三島で暮らすにあたって、日本各地をめぐった上で、人の温かいこの地を選んだそうです。

 ひなびた温泉地なども回っていましたが、そんな観光資源に恵まれた地は、総じて斜陽の雰囲気をもっていたそうです。

 聞けば納得できますが、本質を見抜くのは簡単ではありません。この話は妻越しに聞いたのですが、彼らしい選択だと感じました。

 人間は自由なものとして生まれたが、いたるところで鎖につながれている。

 フランスの哲学者ジャン・ジャック・ルソーの言葉ですが、人は自由を求める一方で、アンカーのようなものも求めています。

 そのアンカーとは、家族だったり、仕事だったり、人それぞれです。

 逆説的に言えば、だからこそ自由を求めるのだと思います。

 そういえば、母方のルーツを探っていくと、愛媛県にたどり着きます。私の中のDNAには、この海が含まれているかもしれません。

 祖父母が皆亡くなった今、勝手ながらこの地を第三の故郷とすることにしました。

 私は自由をこよなく愛すると書きましたが、彼ほど自由の風を感じさせる人はいません。

 矢付き、槍折れた時は、自由の風と、潮風に吹かれに行きたいと思います。

 何より、この地なら娘が喜んでついてきてくれるのです。

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「回遊できる家」放映

■■■『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
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