竣工間際の現場は、日々刻々と状況が変化します。
「住吉区歯科医師会館」は開館まじか。先週は何度か朝一番に現場へ向かいました。
自転車で朝の長居公園を走るのは、極めて爽快。
柔らかい朝日が、足の長い木漏れ日を演出してくれるのです。
「長居」の交差点あたりに、賑やかな景色が見えてきました。
「大阪オクトーバーフェスト」の会場でした。
本家、オクトーバーフェストは、ドイツのミュンヘンで9月半ばから10月上旬に開催される世界最大級のビールの祭典とあります。
10年目になるそうですが、長居公園で催されているとは知りませんでした。
会館のほうは、外構工事も大詰めで、ジューンベリーの植え付けも終わっていました。
この日は、1階大会議室に飾られる絵画の作者、marianeさんが、現場に足を運んでくれました。
アトリエのある長野県から、遠路はるばるの来阪です。
お会いしたのは2度目ですが、取付場所、取付方法については、何度も打合せしました。
作品は、和紙に描かれており、フレームはありません。
よって、現場には緊張感が漂います。
設計上は、ピタリと納まる予定がなかなか……
簡単には行かないのが建築現場なのです。
ついには、ご本人にも手伝って貰いました。
また、アクリル板の取付けは私も加勢しました。
家業がガラス屋だったので、アクリル板の扱いは私が一番経験があったかもしれません。
1時間程掛けて、あるべき場所に作品が納まったのです。
「こんな風に壁の中に納めて貰ったのは初めてです」と、大変喜んでくれたのです。
彼女は、創作の環境をもとめて昨年長野県へ移住しています。
収蔵されるこの作品については、一度しっかり説明しようと思いますが、「繊細」という言葉を越える精緻な筆遣いに驚きます。
逆の言い方をすれば、筆で描いたと思えない程なのです。
少し立ち話をしているとき、こんな話がでました。
「子供は皆、絵をかくのが好きですよね。でも、『上手い』とか『下手』とか言われて、好きじゃなくなっていくんですよね」
音楽家、画家、小説家など、誰でもできることを職業にすることは簡単ではありません。
究極の仕事のひとつだと思っていますし、私も絵が上手かったなら、画家を目指していた確率は高いです。
彼女においても、その初志を貫くことは、決して平坦な道のりではなかったようです。
庭のブロック塀とコンクリートの隙間に咲くナデシコです。
「鉢植えのほうは毎日水をあげているのに元気がないんだけど、あんな場所に勝手に生えたほうはあんなに元気」
と妻が言っていました。
トマトも原産地のアンデスに近い、乾いた土で育てた方が美味しいと言います。
何とか動物に食べて貰いたい。遠くに種を運んで貰いたいと、懸命に赤く、美味しくなろうと努力するのです。
「○○を保障しなさい」とか、「□□は担保しなさい」と騒がしい世の中です。
それが、バイタリティを奪っていたり、自分の足で立つチャンスを奪っていることになりはしないのでしょうか。
先週で、スタッフ見習いのアルバイト中だった若者が辞めることになりました。
職業選択は自由なので、続けるも辞めるも、勿論のことお互い自由です。
ただ、どんな生き方、働き方が、美しい花を咲かせることができるのかは、ナデシコをみても明らかだと私は思っています。
そうそう、marianeさんから長野名物、「根元 八幡屋礒五郎」の七味をお土産に頂きました。
小さい頃、志賀高原の正月スキーは毎年の恒例行事でした。
初詣での善光寺参りの帰りに、ここの店に寄ったものです。
誰かの人生において、ピリッとくる七味だと思えば、私の存在も許容してもらえはしないでしょうか。
建築家が居なくても家は建ちます。七味が無くても蕎麦は美味しいものです。
なので、より美味しい人生をと言う人のみに必要とされる仕事だということは、少し声を大きくして言っておきたいと思うのです。
■■■『大改造!!劇的ビフォーアフター』4月7日(日)BS朝日で「住之江の元長屋」再放送
■■■『デンタルクリニックデザイン事典vol.1』4月1日発売に「さかたファミリー歯科クリニック」掲載
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【News】
■『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
ギャラクシーブックスから2017年11月27日出版
amazon <民家・住宅論>で1位になりました
■『homify』5月7日に「碧の家」掲載
■『houzz』4月15日の特集記事 に
「中庭のある無垢な珪藻土の家」が紹介されました
■「トレジャーキッズたかどの保育園」が
地域情報サイトに掲載されました
■大阪ガス『住まう』11月22日発行に「中庭のある無垢な珪藻土の家」掲載
■ 『住まいの設計05・06月号』3月20日発売に「回遊できる家」掲載
■『homify』6月29日に「回遊できる家」掲載