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ゆるかわも描く、変幻自在の天才絵師‐2066‐

地下鉄四つ橋線の肥後橋駅から土佐堀川沿いを西に歩いて3分。

筑前橋からは公共建築が連続して見えます。

大阪市立科学館、国立国際美術館、そして大阪中之島美術館です。

日曜日は、朝こそ冷え込みましたが、日中はすかっと晴れました。

2022年2月の開館で、設計者は遠藤克彦さん。

長きに渡るコンペで勝ち取ったのですが、私は初めて訪れました。

中央にあるエントランスホールからとにかく大きい。

4階、5階にある展示室まで、巨大な吹き抜けの中に2本のエスカレーターがあります。

ここまで贅沢に吹き抜けを使っている美術館はあまり見たことがありません。

4階で開催されている長沢芦雪の特別展示を観にやってきたのです。

入口横にはヤノベケンジさんの作品。

アートには、良いとか悪いとかそういったものとは違う次元の価値がある。

そんな感じでしょうか。

朝一番に行ったのですが、最終日ということもあり館内はすぐに一杯になりました。

残念ながら会場内で撮影可能なのはここだけ。

芦雪は様々な動物を描いていますが、群れているものが多くあります。

江戸時代中期、1754年に丹波篠山の下級武士の家に生まれたのですが、幼い頃に淀へ養子に出されています。

その寂しさが、こういった群れる動物たちを描かせたと考えられているそうです。

それまでになかった写実主義によって、日本の絵画を変えたと言われる円山応挙に若くして弟子入りします。

早くにその技術も習得し、奇想の絵師と言われるようになりますが、その転機は応挙の名代として串本にある寺に赴いてからでした。

南紀の温暖な気候がそうさせたのか、無量寺の襖に描かれた虎図と龍図は最高傑作とも言われます。

こちらは前期のみの展示だったようで、是非無量寺まで行ってみたいと思います。

私は長い掛け軸に描かれた、タコの絵がとても気に入りました。

牛の絵にあるように、大胆な構図がとても刺激的ですが、こういった「ゆるかわ」な動物も沢山描かれています。

この絵は、濃い色の背景に、明るく描かれた子犬が2匹。

スポットライトを浴びているような効果があると解説にはありました。

猿や子犬の柔らかそうな毛、きりっと描かれた虎や龍の髭、そしてぬめっとした光沢を墨の濃淡で描き切った蛸。

変幻自在の天才絵師の名に相応しいと、大満足の特別展でした。

1799年、大坂で客死し、45年の人生を終えるのですが、もっともっと彼の絵を見てみたかった気がします。

帰りに北側へ回ってみると、ここにもヤノベケンジワールドが。

「アートには、良いとか悪いとかそういったものとは違う次元の価値がある」と書きました。

このネコちゃんの前で、多くの人たちが記念撮影していました。

楽しくなければアートじゃない。

そう思っているのですが、残念ながら我が家の子供達にはあまり伝わらなかったのが、少し心残りではありますが。

点青三昧

点青=絵を描くこと。三昧=それに打ち込むと。

芦雪はよくこの言葉を好んで使ったそうです。

彼の絵を観て、やはり私はアートが大好きなんだと認識しました。

やる気十分でアトリエに帰って、私も点線三昧です。

■■■8月1日プールのある「ささき整形外科 デイケアセンター」オープン

■■4月6日 『かんさい情報ネットten.』 浅越ゴエさんのコーナー に出演

10月27日『houzz』の特集記事
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10月11日『homify』の特集記事
「白馬の山小屋<リノベーション>」掲載

■ 『ESSE-online』にコラム連載

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新たな扉を開く鍵‐1523‐

 今年の3月から、太陽の塔の内部が一般公開されています。

 2008年以来だそうです。

 できれば原型を見ておきたかったと歯噛みしても時すでに遅し。

 終わったことは仕方がないので、耐震改修が終わった内部を、ようやく見に行ってきました。

 高所嫌いの私にとって、モノレールは乗りたいものではありません。

 できるだけ下は見ないようにします。

 ファーストコンタクトはその車窓から。

 これがなかなかの景色なのです。

 塔の右手から背面に回ります。

 見る位置によって、刻々と変わる中央の「太陽の顔」。

 側面からみるとより怒りを感じます。

 この顔部分を実現できたのは、セブンドリーマーズの系列会社、スーパーレンジン工業の技術力が大きいのです。

 内部観覧の入口は、「黒い太陽」の下にありました。

 来るまで想像もしていなかったのですが、内部は撮影禁止とのこと。

 理由を聞くと「著作権の問題などで」とのことでした。

 日本の「禁止好き」は何に起因するのかと、文句の一つも言いたくなります。

 岡本太郎は、少しでも多くの人に知って貰いたい、見て貰いたいと思っているのではと思うのですが……

 仕方ないので、パンフレットを写しました。

 「生命の樹」は、高さ70mの塔内を貫きます。

 原始生物から、最頂部のクロマニヨン人まで、進化の順にびっしりと生き物のモニュメントが張り付いています。

 樹の5色は5大陸を指し、周囲の赤いヒダは「知のヒダ」と名付けられました。

 開催当初は、エスカレーターで登りながら観覧したのですが、現在は階段に変わっています。

 現行の建築基準法なら、階段には3mまたは4mごとに踊り場が求められ、階段の占める体積がどうしても大きくなります。

 また耐震補強によって、壁が20cm厚くなったことで、内部空間が小さくなり、枝部分が階段に刺さっている箇所もありました。

 それでも、「見れるようになって良かった」と思える迫力でした。

 今度は子供も連れて行こうと思います。

 「さすがだな」と余韻に浸りながら、モノレールで移動していると、南茨木駅前の広場に「サン・チャイルド」が見えました。

 茨木市出身の現代美術家、ヤノベケンジさんの代表作です。

 この夏、福島市が「サン・チャイルド」を展示するも、1ヵ月で撤去を決めたというニュースは記憶に新しいところ。

 胸にある、ガイガーカウンター(放射線量計測器)が「000」を指しているのが、0でなければ危険だという誤解を招くというのが、主な理由ということでした。

 サン・チャイルドは、東日本大震災を受けて、希望を持てるようにという意図で制作された6.2mの作品です。

 原発近くで被災された方々の気持ちは、当事者以外は理解することは不可能です。

 また、表現、解釈は自由なので、この問題に正解はありません。

 私は自分の仕事にプライドを持っているつもりです。

 小規模なリノベーションであっても、互いが幸せになりえると思えば、喜んで仕事をします。

 しかし、社会の評価というものには、グループ分け、レッテル貼りが存在します。

 住宅作家、クリニックが得意、ビルものが専門等など。

 「得意」があるのは素晴らしいことですが、この実績ベースの評価が最重要なら、第1作目をもつことは不可能です。

 また、新たなジャンルの仕事がはじまることもありません。
 
 反対の言い方をすれば、そうではないクライアントが一定の割合で居てくれたので、多種多様な作品を持たせて貰うことができました。

 これは私に限ったことではないはずです。

 ただ、「どれだけ大きな規模の仕事をしたことがあるか」という物差しは確実に存在します。

 芸術家で、太陽の塔より大きな作品を持っている人はそう居ないと思うので、その意味では岡本太郎は頂点に居る存在かもしれません。

 6.2mの作品を持っている人もごく僅かだと思いますが。

 もし、新たな扉を開く鍵が存在するとすれば、それが道端に落ちていることはないはずです。

 間違いなく、今手元にある仕事、また身の周りにあるはずなのです。

 サン・チャイルドが右手に持つものは、「希望の太陽」というそうです。

 その鍵を見つけるには、希望という太陽で、自分の手元、足元をいつも照らす必要がある。

 そんなメッセージだと解釈して、自分の励みにするだけなのです。

■■■毎日放送『住人十色』4月14日5:00pm~5:30pm

「回遊できる家」放映

■■■『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
ギャラクシーブックスから11月27日出版
amazon <民家・住宅論>で1位になりました

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【Events】
■4月1日「トレジャーキッズたかどの保育園」開園

【News】
『住まいの設計05・06月号』3月20日発売「回遊できる家」掲載
『関西の建築家とつくる家 Vol.2』2月1日発売「阿倍野の長家」掲載
『homify』6月29日「回遊できる家」掲載
『homify』6月2日「イタウバハウス」掲載
『houzz』5月28日の特集記事「あちこちでお茶できる家」掲載

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