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ミラクルエッシャー‐1540‐

 2018年も1ヶ月を残すのみになりました。

 暦の上では冬ですが、実感としては秋と冬の境目あたりでしょうか。

 昨日は「ミラクル エッシャー展」に行ってきました。

 あべのハルカス美術館は初めてです。

 16階にありました。

 最上階は60階なので1/3程度ですが、ここでも結構な高さです。

 天王寺公園を眼下に、大阪平野を北に望みます。

 小学5年生の娘が、エッシャー展のフライヤーを貰ってきました。

 普段は絵を観に行こうと言うと「え~っ」という兄妹も、エッシャー展は「面白そう」と。

 1961年(63歳)の「滝」はよく知られた作品です。

 水の流れを何度追っても、絵としては成立していますが、自然の摂理にはかなっていません。

 エッシャーと言えばだまし絵ですが、これらは主に後期の作品です。

 版画家、M・C・エッシャーは1898年にオランダで生まれ、1972年73歳で亡くなりました。

 若い頃に建築を学んだ彼は、旅から多くのインスピレーションを受けました。

 特に1922年(24歳)と1936年(38歳)に訪れた、イスラム宮殿の傑作、スペインのアルハンブラ宮殿につよく影響を受けたようです。

 1939年の「発展Ⅱ」は、2度目の訪問後の作品。

 イスラム教では偶像崇拝を禁止しています。

 直接何かを描くことが出来ないため、単純な線を用いた幾何学模様を繰り返すデザイン(アラベスク)が発展しました。

 この作品は色濃くその影響を受けています。

 私が一番面白いと思ったのは、同じく1939年の「メタモルフォーゼⅠ」。

 変身、変化の意味ですが、写真が横だとあまりにも小さいので、90度回転したものも載せてみます。

 西洋の建築が幾何学模様に変わり、最後は中国人の若者となります。

 具象から抽象。抽象から具象。

 立体から平面。西洋から東洋。物から人。

 これだけ面白い版画は、世の中にもそうはないはず。以下は作品解説の一部です。

 1937年6月5日。エッシャーの父親は日記にこう記している。

 「謎に満ちた木版画。M(マウク。M・C・エッシャーのこと)はこれをメタモルフォーゼと呼んでいる」

 エッシャーの父は息子の版画にかなり否定的だったようです。

 展覧会の題にある「ミラクル」の名に恥じない、唯一無二の存在である自分の息子を、です。

 父親はこれ程までの名声を得たことを知る前に亡くなりました。

 エッシャーは人との交流が苦手で、かなり内向的な性格だったようで、私たちが伺い知れない何かがあったのかもしれません。

 それでも、日本の大阪の阿倍野にできた長蛇の列をみたら、彼の父親はどう思うのでしょうか。

 親、大人というものは、間違いやすい生き物です。

 子の幸せ、安定を望むあまり、簡単に子供の夢を潰してしまいます。

 それ故、本当にやりたいことかを見極める試金石とも言えるのですが。

 私の子供に限っても、展覧会が嫌いな訳ではなく、私の面白いと彼らの面白いには違いがあっただけでした。思い込みだったのです。

 いくつになっても、頭の中だけは柔軟で、若々しく在りたいものです。晩年まで変化・発展を続けていったエッシャーのように。

 しかし、オランダという国は本当に凄い国です。

 レンブラント、フェルメール、ゴッホ、エッシャー……

 大麻までOKするのはどうかと思いますが、それくらい自由でなければ、突出した才能は生まれないのでしょうか。

 色々迷っていましたが、次に行ってみたいのはやはりオランダか。煙草も吸わないので、大麻には全く興味はありませんが。

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建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
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シンプルの正体‐1498‐ 

 昨日、西日本全体を覆っていた雨雲がようやく去って行きました。

 青空を見たのは1週間振りくらいでしょうか。

 今朝、施工会社から「プレカットを進めている広島の工場で、電気がストップし、社員の出社もままならないようで、工程が読めない状態です」と連絡がありました。

 現在も話題になっていますが、数年前、タイの大雨で大手メーカーの出荷が遅れたということもありました。

 流通が進化し、日本、世界がつながっていることを実感します。

 また、信玄堤、太閤堤の名が残る通り、武力だけでなく、治水がその後の繁栄を左右したこともよく理解できます。

 特に甚大な被害がでた中国地方の方々に、心からお見舞い申し上げます。

 昨日はようやく電車も動くとのことで、伊丹へ行って行ってきました。

 梅田に着くと、宝塚線も動いておりJRで移動します。

 京都、大阪の雨を集める淀川も、茶の濁流となっていました。

 JRの伊丹駅で降りたのは、初めてかもしれません。

 伊丹は、大阪と神戸の間に位置し、酒の町として栄えました。

 江戸時代の酒蔵が残る「みやまえ文化の郷エリア」に伊丹市立美術館はあります。

 近隣に大きな美術館が多くあるので「諷刺とユーモア」という、一味違ったコンセプトで設立されました。

 現在は「ディック・ブルーナのデザイン展」が開催されています。

 ディック・ブルーナは「ミッフィー」の作者として知られ、昨年の2月に亡くなりました。

 ユトレヒトのアトリエで、彼が細い筆で、丁寧にミッフィーを描く姿がビデオで流れていました。

 1927年、オランダのユトレヒトで出版社を経営する父のもとに長男として生まれます。

 親は仕事を継ぐことを望みますが、彼は画家を志しました。父は反対したものの、自社が出版するペーパーバックの表紙をデザインする仕事を彼に任せるのです。

 その際にブルーナ社のキャラクターであるクマをデザインしたのがブラック・ベアーです。

 チケットにも使われていましたが、本を読みすぎて目が真っ赤です。

 ブルーナカラーと言われる、赤・青・黄・緑(後に灰と茶)と黒だけを使い、極めてシンプルなデザインで注目を集めました。

 20世紀初頭、オランダではデ・ステイルという芸術運動が起り、絵画ではピエト・モンドリアン、建築ではリートフェルトが牽引します。

 フェルナン・レジェやアンリ・マティスに大きな影響を受けたとありましたが、これらの運動も彼の進む道を明確にしたようです。

 館内は、ディック・ブルーナからインスピレーションを受けたアーティストの作品エリアがだけが撮影可でした。

 色々なものを見て、体感して、人は自分探しをします。

 私も「シンプルの正体」というコピーに誘われて、この展覧会にやってきました。

 ミッフィーは子供のまっすぐな瞳と向きあうため、常に顔だけは真正面を向いています。

 絵本を15.5cmの正方形としたのは、長方形だと小さな子供の顔に当たってしまうから。

 私もデザインを生業としていますが、シンプルを求める気持ちは、以下のディック・ブルーナの言葉と全く同じです。

 ぼくがシンプルを追い求めるのは、デザイン的な美しさということだけでなく、そこにイマジネーションを残したいからなのです。 
 多くを描きすぎず、ごくわずかな色を使うことで、見る人は、描かれた内容以上のものを自由に見ることができるでしょう。見る人に何かを押しつけるのではなく、自由に感じてもらえる絵を描いていきたいのです。

 先々週、京都国立近代美術館にでモンドリアンやマティスの展示もありました。

 若き日のブルーナは、南仏のヴァンスにマティスが手掛けたロザリオ礼拝堂を訪ねました。

 晩年の3年間を費やし、集大成と言われる礼拝堂のステンドグラスをみたとき「ぼくらしいものをつくりあげてみたい!」と思ったそうです。

 オリジナリティを最も求められるアートさえも、地球規模で繋がっているのです。

 先に書いた、リートフェルトが設計したシュレイダー邸は、世界遺産に登録されていますがユトレヒトにあります。

 また、オランダ中部には、レンブラントの生まれたライデン、フェルメールの愛したデルフトもあります。そしてゴッホの生まれた町も。

 ながらく「オランダへ行ったみたい」と思っていましたが、そろそろという気がしてきました。

 シンプルの正体。それは他者への敬意、期待、自由を望む気持ちだと思うのです。

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