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磯崎へ、空間へ‐1567‐

 3月6日(水)の早朝と言えばよいのか、5日(火)の深夜と言えばよいのか、「磯崎新、プリツカー賞を受賞」のニュースが飛び込んできました。

 プリツカー賞は建築界のノーベル賞と言われ、1979年に設立されました。

 以来の40年の間に、日本人建築家は8名が受賞。

 丹下健三、槙文彦、安藤忠雄、妹島和世、西沢立衛 (SANAA)、伊東豊雄、坂茂、そして磯崎新ですが、後半5名はこの10年内の受賞です。

 磯崎は私の世代なら特にスターアーキテクトです。

 現在87歳となり、その実績を見ると正直遅すぎた感もあります。

 2015年の9月に「なら100年会館」へ行った際にもそのような事を書いていました。

 紹介記事では「第一線で活躍し続ける国際的建築家、そして理論家でもある」というものが大半でした。

 代表著書「空間へ」が、初めに勤めた設計事務所に置いてありました。

 24歳の時初めて手にとったのですが、私にとってはかなり難解でした。

 それに相反するように、建築は極めて明快です。

 そのような磯崎建築へのリスペクトは何度か書きました。

 出世作と言われる「北九州市立美術館」を訪れたのは2014年の8月。

 この日は生憎の雨模様。

 モヤの中から突然2本の筒が表れた景色に感激したのです。

 長男は相変わらずおちょけて、それを見て娘が爆笑するという構図です。

 さらに遡ること8年。

 岡山の山間部にある、「奈義町現代美術館」を訪れたのは、雪も見える2006年の1月でした。

 水盤に浮かぶ作品は、確か磯崎夫人の作品だったと思います。

 黄色いヴォールトの中はまるで万華鏡。

 荒川修作+マドリン・ギンズの養老天命反転地へと繋がっていくコラボレーション作品です。

 新しい才能の発掘にも尽力した、磯崎らしい仕事と言えるでしょう。

 2005年の3月に長男が生まれ、久し振りに温泉でもと訪れたのが奥津温泉。

 ひなびた風景に好感を持ちましたが、そのついでに寄ったのが先の奈義現代美術館です。

 「モノ」としての建築より「場」としての空間の重要性を、磯崎は繰り返して説いています。

 建築の創造は私の仕事です。

 よって、建築は常に興味の対象のかなり上位にありますが、記憶は「モノ」としてではなく「場」「空間」として残るものです。

 「景色」と言った方が、一般的かもしれません。

 「せんとくんと」だったり、「アイーンを笑う」だったり、「川のせせらぎが聞こえる和室」だったりです。

 東大丹下研究室のエースであり、プリツカー賞までたどり着いた、日本最高レベルの英知の向こうを張るつもりはありません。

 しかし、市井で懸命に生き抜くクライアトへ、できるだけ分かりやすく、平易に建築、空間の役割を伝えてきたつもりではあります。

 風景として、景色として、場としての建築というものを理解しなければ、建築自体が主役であると勘違いをしてしまいます。

 この本質を指して、本田宗一郎は「どんなに機械が進歩しても、人間の上に君臨させてはいけない」と言ったのです。

 こういったニュースを聞くと、ピリッと気合が入ります。

 日本人建築家の躍進を冒頭に上げました。私も現役でいる限り、目指すのは常に頂点です。

 日本の英知がたどり着くまでに、87年の月日が掛かったことに呆然ともしますが、まだ39年あるとも言えます。

 建築という背景に、一生を捧げると決めました。

 それは、磯崎も私も全く同じはずです。

■■■『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
ギャラクシーブックスから2017年11月27日出版
amazon <民家・住宅論>で1位になりました

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【News】
大阪ガス『住まう』11月22日発行に「中庭のある無垢な珪藻土の家」掲載
『住まいの設計05・06月号』3月20日発売「回遊できる家」掲載
『関西の建築家とつくる家 Vol.2』2月1日発売「阿倍野の長家」掲載
『homify』6月29日「回遊できる家」掲載
『homify』6月2日「イタウバハウス」掲載
『houzz』5月28日の特集記事「あちこちでお茶できる家」掲載

メディア掲載情報

◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

「ほんもの」と「いかもの」‐1425‐

 今日は昼から、上京区で進めているオフィスビルの現場へ行っていました。

 この現場は二条城のすぐ北にあります。

 大阪の現場からの移動でしたが、少し早くついたので初めて立ち寄ってきました。

 堀川通りに面する東大手門は、いつも観光客であふれているのが車からみえていたのです。

 二条城は1603年、徳川家康によって築城された平城です。

 本丸には5層の天守閣がありましたが、1750年の落雷で焼失しています。

 よって、いわゆる城らしい佇まいは濠を残すのみ。

 今年は「イヤダロナ」で覚えた大政奉還から150年。

 徳川慶喜が天皇家に行政の権限を戻すと宣言したのが二条城です。

 まさにここから近代が始まったのです。

 東大手門から入り、西に進みます。

 唐門をくぐると、二の丸御殿が正面にみえてきます。

 唐門のきらびやかな彫刻は、日光東照宮を彷彿させます。

 しかし、他の建築と比べると多少違和感を覚えるのも事実なのです。

 二の丸御殿の正面に立ってみます。

 手前に見えるのは車寄せ。牛車で入れる大きさになっており、檜皮葺きは神社建築を思わせます。

 その奥の高い大屋根は遠侍と呼ばれる棟。

 瓦屋根は、日本建築の迫力をもっとも感じさせるもの。

 妻面には大きな菊の御紋が施されています。

 これは天皇家に敬意を示したものでしょう。

 残念ながら内部の撮影は禁止でした。

 二の丸御殿は、多くの棟が雁行しながら繋がっています。そのすべてが世界遺産であり、国宝に指定されています。

 その中央あたりにある大広間が、大政奉還の実際の舞台となったところです。

 棟の前に中庭があり、写真を撮ってみるとそのケラバにも菊の御紋がみえました。

 しかし、さらにその上の鬼瓦には葵の御紋が。みてとれるでしょうか。

 当然ながら、葵の御紋は徳川家の家紋。

 このあたりに、歴史、建前、プライドが見え隠れして、とても面白いのです。

 建築家・磯崎新の『建築における「日本的なもの」』という著書に、以下のようなことを書いています。

 ブルーノ・タウトという建築家が、伊勢神宮、桂離宮を天皇的で「ほんもの」とし、日光東照宮を将軍的で「いかもの」と表現した。

 磯崎はこれらを、ハイアート、キッチュと区別しています。

 270年の平和を築いた徳川家を、馬鹿にしたい訳ではありません。しかし、こと建築においてはブルーノ・タウトの説を支持したいのです。

 今日、プロ野球のドラフト会議が開かれました。

 高校生スラッガー、早稲田の清宮幸太郎選手は7球団からの指名があり日本ハムが交渉権を引き当てたとニュースにありました。

 過去のドラフトでは8球団からの指名が最高で、その1人が野茂英雄です。

 彼が本物であることは説明の必要はありません。

 多くの球団が指名したとしても、大成していない選手もいます。

 「やっとスタートラインに立てた」というコメントが載っていましたが、868本以上のホームランを打ち、是非、本物中の本物になって欲しいものです。

 もちろん、人のことを心配する前に、自分の精進、自社の精進です。ハイアートを目指すしかありません。

 「ほんもの」と「いかもの」が混在する場所。二条城はとても面白いところだったのです。

裏をみせ 表をみせて 散るもみじ ‐1202‐

 日曜の天気予報は二転三転して晴れになりました。

 奈良へ行っていたのですが、帰りになら100年会館へ寄ってきました。

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 なら100年会館は、JR奈良駅の西側にある多目的ホール。開館は1999年ですが、私が大学生の頃計画が発表されました。

 設計は磯崎新で、そのパースを見て「実物を見てみたい」と強く思ったものです。実際見たのは昨日が初めてでしたが。

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 楕円の平面に、更に大きな楕円を重ね、アプローチとしています。

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 外壁は、工場生産の打放しコンクリートパネル。

 この有機的な曲線に、瓦のようなタイルが貼られています。

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 内部空間もその形状が活かされているのです。

 磯崎新は、東京都庁等を設計した丹下健三事務所出身のエリートです。1960年代から第一線で活躍し続ける建築家。

 現在84歳ですが、私が初めて見た作品は、1984年完成の西脇市岡之山美術館でした。

 他にも色々見に行きました。 

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 2006年の1月、奈義町現代美術館

 岡山県北部の山手にあり、自然の美しいところです。

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 荒川修作+マドリン・ギンズ、岡崎和郎、宮脇愛の為の美術館で、とても分り易いコンセプトで創られています。

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 荒川修作らとコラボレートした円筒状の館があります。

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 この建築自体が劇術作品なのです。

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 彼の出身は大分で、九州にも多くの作品があります。

 北九州市立美術館は1974年の完成ですが、2014年の8月に訪れました。

 プリツカー賞こそ受賞していませんが、海外での受賞暦も華々しいものがあります。生きる巨匠と言って間違いありません。

 年初から『建築における「日本的なもの」』という彼の著書を読んでいました。

 結論が分らない程ではありませんが、分り易い文章ではありません。(文末に抜粋しておいたので、興味がある人はどうぞ)

 自分のよりどころにしてきた文章があります。

 人々にとって何等かの生きるよすがと成り得ない小説を、私は一作たりとも書きたくない。

 私は複雑で高邁なものは信じないし虚無に対して常に反抗的である。

 それぞれの場所で傷ついたり挫折したりしながらも、なお闘おうとしている人々のために、私は小説を書いてきたし、またこれからも、そうであり続ける。

 -宮本輝-小説家

 磯崎が創る建築は分り易いのですが、ロジックは難解です。

 難しい事を平易な言葉で伝えることがプロの仕事だと思ってきました。しかし、難しい事を知らなくて良い訳ではありません。

 真理に近付きたいと勉強して来たが、逆のことが足りていなかったのでは。

 磯崎の仕事を見てそんな事を考えます。

 裏をみせ 表をみせて 散るもみじ -良寛-

 光と影、正義と悪。単純と複雑。表だけ、裏だけで進むことは出来ません。

 生きるとは、単純で複雑なものです。

師をめぐる、巡礼の旅‐1089‐

 今年の夏休み旅。14日(木)福岡市に入ったところまで書きました。

 ホテルにチェックインして、夜の天神エリアへ。

 名物の屋台で、焼きラーメンを汗だくで炒める店主。

 南国とは言わずとも、開放的な雰囲気があります。

 屋台がよかったのですが、子供がいるので断念。今度の楽しみにします。

 翌朝、早起きして中心部を歩きました。

 中洲エリアにある、アルド・ロッシ設計のイル・パラッツォ(1989年)。

 単純ですが、ひときわ目を惹きます。

 巨匠・吉村順三の河庄(1959年)。

 コンクリート打放しのルーバーを楽しみにしていました。

 しかし、グレーとピンクで塗装がなされており……

 これは正直かなり残念。

 ホテル近くの福岡銀行本店(1975年)。

 黒川紀章、初期の仕事です。

 屋内というにはあまりにも高い天井。

 特別な存在感を放っています。

 朝食のあと福岡を発ち、北九州市立美術館へ。車で1時間程でした。

 こちらも、磯崎新の初期の作品です。

 学生の頃、白黒写真で見て以来、ずっと訪れたいと思っていました。

 磯崎の建築は、単純な造形を用い、一度に建物を印象付ける力があります。そんなところに憧れていたのです。

 一方、より限られた素材で、対比という思想を持ち込めば、より美しい建築が出来るのではとも思っていました。私の作品「加美の家」のモチーフになっているのです。

 訪れるより先に、創ってしまったのですが。

 麗しの磯崎を訪ね、今回の建築巡礼、目的は果たしました。

 しかし、建築めぐりだけでは家族は退屈します。

 午後には日本最大級の鍾乳洞、秋芳洞に到着。

 子供達は探検気分で楽しんでいました。15日(金)は山口泊。

 最終日、16日(土)は朝から萩へ移動。

 市内では、維新の志士、高杉晋作、木戸孝允(桂小五郎)の生家を回りました。

 そして、最後の目的地、松下村塾に到着。

 1856年、吉田松陰は叔父からこの私塾を引き継ぎました。

 そして、多くの幕末の志士を育てるのです。

 倒幕を強く訴える松陰が、維新を見届けることはありませんでした。

 大老・井伊直弼による安政の大獄によって斬首されるのです。1859年のこと。

 日本の近代化は、薩長土肥という地方の力によって成し遂げられています。

 それを差し引いても、この本州西端の小さな私塾から、育った人物の数は目を見張ります。

 先の2人を初め、久坂玄瑞、伊藤博文も松下村塾出身。

 松陰は、相当にクレイジーな部分もあったようです。

 しかし、少々狂気のようなものが無ければ、人の心に火をつけることは出来ないのでは。8畳の小さな講堂を見ながら、そんな事を思っていました。

 当の本人はこんな言葉を残しています。

 「みだりに人の師となるべからず。みだりに人を師とすべからず」

 師を持っていない私にとって、世界に残る名建築、そして珠玉の名言が、師そのもの。勿論みだりではないつもりです。

<目指せ、家族で47都道府県制覇>
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